- 更新日 : 2025年1月14日
36協定とは?違反した場合の罰則や事例を解説
労働者を、法定労働時間を超えて労働させるには36協定が必要です。36協定なしの時間外労働は労働基準法違反になり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則が科せられます。
36協定で締結できる時間外労働時間には上限があり、これを超えたり特別条項の定めを逸脱したりすることは認められません。違反しないよう、必要な対策が求められます。
目次
36協定とは?
36協定の正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」です。
時間外労働や休日労働について労使間で締結する協定で、労働基準法第36条に関する協定であることから36協定(サブロク協定)と呼ばれています。以下に説明する内容の協定で、残業など時間外に労働させる際に不可欠な労使協定となっています。
36協定における残業時間の上限について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
労働基準法における時間外労働と休日出勤
労働基準法では法定労働時間の上限を1日につき8時間・1週につき40時間、また1週につき少なくとも1日を休日とすることを規定しています。
法定労働時間を超える労働時間、および休日における労働を、労働基準法は原則として認めていません。例外的に36協定を締結している場合にのみ、労働者に時間外・休日労働をさせることができます。
36協定における残業時間の上限と法定休日
36協定は時間外労働や休日労働について、労働者に労働させることが可能な時間を労使間で定めておくための協定です。時間外労働については次の上限時間まで労働時間を延長できる時間として、休日労働については日数を決めておきます。
36協定で時間外労働時間とすることができる上限
- 1ヶ月45時間
- 1年360時間
36協定の特別条項とは?
36協定の特別条項とは、時間外労働や休日労働が必要になる特別な場合の定めのことをいいます。特別条項付の36協定を締結することで、臨時にやむを得ない事情があった場合により長時間の時外労働が可能になります。特別条項にも上限が定められ、休日労働の時間と回数も制限されています。
特別条項付の36協定で時間外労働時間とすることができる上限
- 年720時間
- 時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間
- 45時間を超える時間外労働の月が年6回
- 時間外労働と休日労働の合計の2~6ヶ月の平均労働時間が80時間
36協定に違反した場合の罰則
36協定に違反すると場合によって労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰則が科せられます。
36協定違反は労働基準法第32条の「労働時間」、第35条の「休日」の規定に違反したことになり、第119条第1項の規定により使用者は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に科せられる可能性があります。
罰則の対象者は労働者ではなく使用者です。企業や労働時間の管理にあたっていた管理者に罰則が科せられます。
また36協定違反によって企業名が公表されることによるダメージにも注意が必要です。企業イメージが大きく損なわれ、対外的にマイナスとなる恐れがあります。
詳しくは次の記事を参照してください。
36協定違反となるケースと事例
労働基準法の規定を無視し、ルールに反するような時間外労働は認められません。どのような場合に36協定違反となるのか、具体的な事例をもとにご説明します。
36協定を締結せずに時間外労働させた場合
労働者に時間外労働をさせるために、36協定は必ず締結する必要があります。36協定を締結せずに労働者に時間外労働をさせると、36協定違反になります。また36協定は締結後、労働基準監督署に届け出なければなりません。届け出ていない36協定には効力がないため、未届の状態で労働者に時間外労働させることも36協定違反に該当します。
事例1) 36協定を締結していたが、労働基準監督署への届け出をしていないまま従業員に時間外労働をさせた。
時間外労働時間が上限を超えた場合
36協定で締結できる時間外労働時間は月45時間・年360時間までです。この上限を超えて労働者に時間外労働させると36協定違反になります。
事例2) 締結した36協定に特別条項を付けていないのにもかかわらず、特別条項付の36協定を締結したと勘違いし、臨時的な特別の事情があった場合として月80時間の時間外労働を行わせた。
休日労働が特別条項の上限を超えた場合
特別条項付の36協定を締結していても労働者にさせられる時間外労働時間は年720時間・時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間・45時間を超える時間外労働の月が年6回・時間外労働と休日労働の合計の2~6ヶ月の平均労働時間が80時間です。
この上限を超えて時間外労働させると36協定違反になります。
事例3) 時間外労働時間と休日労働時間の合計が月100時間を超えた。
事例4) 月45時間を超える時間外労働をさせた月が年6回を超えた。
勤めている企業が36協定に違反している場合の対応方法
勤め先が36協定に違反している場合、労働者には是正に向けて何らかの行動を起こすことが求められます。従業員ができる行動として、次の2つが考えられます。
- 勤め先に直接申し入れる
- 労働基準監督署に相談・通報する
「1.勤め先に直接申し入れる」方法は管理者などに36協定違反があることを申し立てて、必要な対応を促すものです。
「2.労働基準監督署に相談・通報する」方法では、労働基準監督署に調査に入ってもらい、強制的に違法を正します。立ち入り調査で36協定違反が発覚すると指導や是正勧告が行われます。
36協定違反が発覚したら企業はどうする?
企業は36協定違反が発覚した場合は、速やかに適切な対応を行う必要があります。36協定に関する労働基準法違反として扱われないためには、放置せずに速やかに対応しなければなりません。どのように対処していくべきか、社内で発覚した場合と従業員に通報された場合について理解しておきましょう。
社内で発覚した場合
36協定違反が社内で発覚した場合は、速やかに適切な措置を取ることで是正することができます。適切な措置には、以下のようなものが挙げられます。
- 36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る。
- 増員や業務効率化を図り、時間外労働を減らす。
- 労働時間を適切に管理し、36協定違反を未然に防ぐ。
従業員に通報された場合
従業員に36協定違反を通報された場合は労働基準監督署による調査が行われ、以下のような指導や是正勧告の対象になります。
- 労働基準法違反に対する是正勧告
- 36協定の適正な運用についての指導
- 長時間労働の抑制についての指導
- 過重労働による健康障害防止についての専用指導文書により指導
36協定に違反しないための対策
36協定違反を起こさないようにするためには、時間外・休日労働する場合の社内手続きを決め、周知しておくことが効果的です。
残業や休日労働が認められる条件や時間、踏まなければならない手続きなどをあらかじめ決めておくことで、必要性のない時間外労働をなくすことができます。管理者・労働者の両方の時間外労働に対する意識の変革にもつながり、36協定違反となるような長時間労働が抑制できます。
労働時間管理の徹底も36協定違反を防ぐために必要です。労働時間の状況を把握できていないようでは、36協定違反をことはできません。労働時間が管理できていると長時間労働となっている労働者に対しては業務量を調整する、全体として労働時間が多い部署には人員を追加するなど、36協定違反にならないような対策をとることができます。
36協定に関する協定書のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
36協定の正しい知識を持ち、違反しないための対策をしましょう
労働者に時間外労働をさせるには、36協定の締結が必要不可欠です。
36協定で締結できる時間外労働時間は特別条項なしの場合で月45時間・年360時間まで、特別条項付の場合で年720時間・時間外労働と休日労働の合計月100時間・45時間を超える時間外労働の月年6回・時間外労働と休日労働の合計の2~6ヶ月の平均労働時間80時間です。
上限を超えて労働者に時間外労働させることはできません。
36協定に違反しないためには、時間外労働についてルールを設けることが大切です。
36協定なしで残業や休日労働を行わせると労働基準法違反になり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則の対象になります。不注意や理解不足による違反のないよう、36協定について正しい知識を持っておきましょう。
よくある質問
36協定とは何ですか?
労働者に時間外労働させるために、必ず締結しなければならない協定です。詳しくはこちらをご覧ください。
36協定違反が発覚したら企業はどうしたらよいですか?
違反の内容や原因を明らかにし、速やかに是正しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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