- 更新日 : 2024年10月18日
出勤簿とは?保存期間や書き方を解説(テンプレート付き)
出勤簿とは、従業員の出勤時刻や退勤時刻などの記録です。給料計算の基礎になるため、会社は出勤簿をきちんと作成・管理しなければなりません。労働基準法でも労働者名簿や賃金台帳と並び、保存期間が定められています。タイムカードも出勤簿と同じように「その他労働関係に関する重要な書類」として、一定期間の保存が義務づけられています。
目次
出勤簿とは?
出勤簿とは、従業員の出勤日や労働日数、出勤・退勤時刻などを記した文書です。労働基準法によって定められた法定帳簿の一つで、従業員を雇用する事業者に作成が義務付けられています。
労働基準法が定める出勤簿の性格・位置づけをみていきましょう。
出勤簿は法定三帳簿の一つ
労働基準法は、労働者保護を目的としている法律です。立場の弱い従業員を守るため、会社・事業主にさまざまな義務を課しています。労働者名簿や賃金台帳の備え付けも、以下のように労働基準法に規定されています。
使用者は、事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
② 前項の規定により記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。第108条(賃金台帳)
使用者は、事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
また労働基準法は、第109条において労働者名簿と賃金台帳、およびこの2つ以外の帳簿などについて保存期間を定めています。
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない。
出勤簿は「その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。そのことから会社・事業主は労働者名簿や賃金台帳と同じように、出勤簿を作成しなければなりません。労働者名簿・賃金台帳・出勤簿は、会社・事業主が従業員について必ず作成、管理、保存しておかなければならない書類や資料であり、3つはセットで「法定三帳簿」と呼ばれます。
出勤簿とタイムカードの違い
出勤や退勤の記録にタイムカードを利用している会社もありますが、出勤簿とタイムカードは明確に異なります。
出勤簿は労働者の出勤日や時間などを正確に記録し、証拠書類として使える書類です。
これに対し、タイムカードは従業員が各自で出勤・退勤の際に使用するものであり、正確な出勤・退勤時間を反映しているとは限りません。タイムカードを出勤簿として扱う場合には、その時間が適正かどうかを判断するため、作業日報や残業許可証といった補足資料が必要です。
出勤簿と賃金台帳の違い
賃金台帳とは、労働基準法第108条の規定により、会社・事業主に作成が義務づけられている帳票です。労働基準法施行規則第54条の規定に基づき、賃金台帳には次の内容の記載が求められます。
- 労働者氏名
- 性別
- 賃金の計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
- 休日労働時間数
- 基本給や手当等の種類とその金額
- 控除項目とその金額
賃金台帳には、様式第20号(常用)・様式第21号(日雇)が定められていて、厚生労働省のホームページからダウンロードして使用することができます。しかし、記載しなければならない内容に漏れがなければ、異なる様式を使っても問題ありません。
出勤簿には賃金台帳と違い、定められた様式はありません。しかし、前述のように記載しなければならない項目は定められているので注意が必要です。
出勤簿の目的
出勤簿をつける目的は、従業員の労働日や労働時間を正確に把握し、労働基準法や就業規則に違反しないよう管理することです。
労働基準法では、労働時間について原則として1日8時間、または週に40時間までと定めています。この労働時間を超過する場合、割増賃金の支払いが必要です。出勤簿を適切に管理することで、法に沿った賃金の支払いができます。
出勤簿の保存は義務?
出勤簿は、労働基準法第109条において記録の保存が義務づけられている「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。出勤簿の保存が行われていないと労働基準法違反となり、第120条の規定により30万円以下の罰金が科せられます。
出勤簿に記載すべき項目と書き方
出勤簿には、必ず記載すべき項目があります。
ここでは、記載項目と書き方を解説します。
出勤日・労働日数
出勤簿は、従業員が出勤した日と労働日数の記載が必要です。労働時間にかかわらず、出勤したときは出勤日として扱います。リモートワーク、在宅勤務などで労働している日も、同じく出勤日として記載してください。
ただし、リモートワークなどタイムカードによる出退勤の記録ができない場合は、出勤状況を把握するための方法を考える必要があります。
出勤(始業)・退勤(終業)の時刻
出勤日ごとに、出勤(始業)と退勤(終業)の時間も記載が必要です。また、労働時間を正確に計算するために、休憩時間も記載しなければなりません。休憩時間は、1日のうちで6時間以上働く場合、以下のように付与することが義務付けられています。
- 6時間超8時間以内:45分
- 8時間超:1時間
出退勤の時刻は正確に記録することが必要であり、タイムカードやICカードなど、ツールの活用が必要になるでしょう。
日ごとの労働時間数
日ごとの労働時間数は、出勤と退勤の時間、および休憩時間によって算出しましょう。出勤から退勤までの勤務時間を計算し、休憩時間を差し引けば労働時間がわかります。
たとえば、始業時刻が8時30分、終業時刻が17時30分、休憩時間が12時〜13時の1時間というケースでは、労働時間は「9時間-1時間=8時間」になります。
時間外労働を行った日付・時刻・時間数
労働基準法で定められた労働者の法定労働時間は、原則として1日8時間、週に40時間です。この時間を超えて労働を行った場合は時間外労働に該当するため、日付・時刻・時間数を正確に記載する必要があります。
変形労働時間制を採用している場合は、注意が必要です。日や週ごとなどで所定労働時間が変わるため、その都度時間外労働時間を正確に算出しなければなりません。
休日労働(休日出勤)を行った日付・時刻・時間数
労働基準法で定められた法定休日に出勤した場合は休日労働に該当するため、日付や時刻、時間数の記載が必要です。
法定休日は、毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日と定められています。曜日の限定はありません。
週休2日制で土日を休日にしている会社であれば、土日のどちらかが法定休日となります。どちらが法定休日かは、就業規則で定められているのが一般的です。
日曜日が法定休日であれば、土曜日は法定外休日になり、出勤しても休日労働にはなりません。出勤簿には、あくまで法定休日に出勤した休日労働のみを記載します。
深夜労働を行った日付・時刻・時間数
労働基準法では、事業者が労働者を深夜時間に労働させた場合、割増賃金を支払うことを義務付けています。
この場合の深夜時間とは22時〜翌5時までの時間帯と規定されており、これらの時間帯に労働させた場合は出勤簿へ日付と時刻、時間数を記載しなければなりません。給与計算では記載された内容で算出し、割増賃金の支払いが必要です。
出勤簿(エクセル)のひな形・テンプレート
出勤簿の作成は、テンプレートがあると便利です。以下のURLからエクセルですぐに使えるテンプレートを無料でダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
出勤簿は手書きでも良い?
手書きや自己申告の出勤簿は違法ではありませんが、推奨される方法とはいえません。厚生労働省は労働時間を把握するための方法として、「客観的な記録」によることを定めているためです。
手書きの記録は従業員が自由に改ざんできるため、会社は正確な労働時間を把握できない可能性があります。
営業など外勤の仕事では、労働時間を客観的に把握する方法がないため、手書き・自己申告でもやむを得ないといえるでしょう。しかし、客観的に労働時間を把握する手段があるにもかかわらず手書きや自己申告による出勤簿により勤怠管理をすることは、違法になる可能性があります。
やむを得ない場合以外、出勤簿は手書きではなく、タイムカードやICカードによる打刻など、客観的に把握できる方法で記録することをおすすめします。
出勤簿の保存期間は?民法改正や賃金台帳との違いなど
出勤簿は労働基準法第109条に規定されている「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当し、労働者名簿や賃金台帳と合わせて「法定三帳簿」と呼ばれる帳簿です。定められている内容を記載しなければならず、不備があれば労働基準法違反として罰則が科せられます。保存も定められた期間、行わなければなりません。
出勤簿の保存期間は、民法改正により3年から5年に変更
民法改正に伴い、労働基準法の賃金が請求できる期間も変更になりました。賃金請求権が時効によって消滅するまでの期間が2年間から5年間に延長されています。これに伴って出勤簿の保存期間も3年間から5年間に変更されました(経過措置として当分の間は3年間)。
労働基準法は第115条において賃金請求権の定めをしています。今回の民法改正では、この定めの根拠となった民法の使用人の給料などに関する短期消滅時効が廃止になり、また一般債権に係る消滅時効についても見直しが行われました。
このことを踏まえて労働基準法も改正になり、賃金請求権が時効によって消滅するまでの期間が2年から5年に延長となっています。出勤簿の保存期間が3年間から5年間に変更になったのも、民法改正があったことによるものです。
賃金台帳の保存期間は7年
賃金台帳の保存期間は、労働基準法では5年(当面の間は3年)と規定されています。保存期間は、原則として労働者の最後の賃金について記入を行った日から数えます。ただし、記録に関する賃金の支払期日が記録の完結の日などより遅い場合には、 当該支払期日が記録の保存期間の起算日となります。
しかし、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は、7年間の保管が必要になります。源泉徴収簿とは、従業員から申告された扶養家族の状況や、毎月の給与の金額、その給与における源泉徴収額などを記録する帳簿です。
源泉徴収簿の作成は、法律で義務づけられてはいませんが、毎月の給与に対する源泉徴収や年末調整などを正確かつ効率的に行うために、国税庁から様式が配布されています。また定められた内容が記載していれば、賃金台帳と源泉徴収簿を兼用とすることが認められています。しかし、源泉徴収簿を兼ねた賃金台帳を年末調整の根拠として用いる場合は、保存期間を7年間としなければなりません。
タイムカードの保存期間は5年
タイムカードは出勤簿と同じ、労働基準法第109条に規定されている「その他労働関係に関する重要な書類」の一つです。そのため保管も出勤簿と同じく5年間、行わなければなりません。
しかし、前述の通り賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は、タイムカードも7年間が保存期間となります。
アルバイトやパートの方の出勤簿も保存が必要?
出勤簿は雇用形態にかかわらず作成、保存が求められます。アルバイトやパートといった非正規雇用についても出勤簿が必要です。
出勤簿を効率よく管理するには?
出勤簿への記載項目は多く、給与に反映されるためには正確な記載が欠かせません。シフト制や裁量労働制・フレックスタイム制など、さまざまな雇用形態がある場合、管理には時間と手間がかかります。
効率的に管理するためには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システム「マネーフォワード クラウド勤怠」であれば、出勤簿の管理を大幅に効率化できます。パソコンやスマホから出退勤の打刻ができ、打刻機を使ったICカード打刻も可能です。出退勤打刻の漏れを防ぎ、タイムカードでの収集・集計作業といった手間を省きます。
基本勤務制だけでなく、シフト制や裁量労働制・フレックスタイム制など、さまざまな就業ルールにも対応できます。また、勤務予定(シフト)を入力することで予定を確認することができ、所定時間と時間外の自動集計も可能です。
出勤簿やタイムカードは保存期間に注意して適切に取り扱おう
出勤簿は、労働者名簿や賃金台帳と合わせて「法定三帳簿」と呼ばれています。労働基準法第109条に規定されている「その他労働関係に関する重要な書類」に該当し、会社には作成、保存が義務づけられています。労働者の氏名や労働日数、労働時間数などの定められた内容を記載しなければならず、不備があれば労働基準法違反となります。
保管期間も定められていて、5年間の保存が必要です。労働基準法ではタイムカードも保存期間は5年間とされていますが、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は7年間の保存が必要です。必要な保管期間の違いに注意して、適切に取り扱いましょう。
よくある質問
出勤簿とはなんですか?
出勤日・労働日数、出勤・退勤時刻、日ごとの労働時間数、時間外労働を行った日付・時刻・時間数、休日労働(休日出勤)を行った日付・時刻・時間数、深夜労働を行った日付・時刻・時間数を記した帳簿です。詳しくはこちらをご覧ください。
出勤簿の保存期間について教えてください。
労働基準法第109条に規定されている「その他労働関係に関する重要な書類」として、5年間の保存が必要です(経過措置として当分の間は3年間)。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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