• 作成日 : 2022年4月22日

給与計算における端数処理の方法

給与計算における端数処理の方法

給与計算では、1円未満の端数が発生します。また、給与計算のもととなる労働時間を集計する際、1分単位の扱いに戸惑うかもしれません。ここでは、給与計算の端数処理について解説します。

割増賃金や労働時間の計算などで認められている端数処理について、そのタイミングや具体的な数字をもとに紹介します。月次の給与計算の際の参考にしてください。

給与計算における端数処理はどうしたらよい?

時給の従業員の給与を計算する場合、「3時間23分」の勤務時間のように端数がある場合、「15分単位」での切り捨て処理を行ってもいいのか迷うケースがあります。また、基本給や手当、残業時間を合算したあと、支給額に1円未満の数字が出てしまうこともあります。

給与計算の端数処理を間違うと労働基準法違反となってしまうため注意しましょう。

切り捨て、それとも切り上げ?

労働基準法第24条では、賃金は、「1 通貨で」「2 直接労働者に」「3 その全額を」「4 毎月一回以上」「5 一定期日を定めて」支払わなければならないと定められています。これが賃金支払の5原則といわれる所以(ゆえん)です。そのため、労働時間数を勝手に切り捨てる処理は賃金を全額支払ったことにならず、労働基準法違反となります。

労働時間が「1時間22分」や「5時間18分」となるような場合には、分単位で労働時間を集計し、正確に給与計算を行わなければいけません。端数処理を行う場合に認められるのは切り上げの方法です。たとえば、「1時間22分」働いたアルバイトの勤怠集計を、「1時間30分」と切り上げるのは、労働者にとって有利になる処理のため、法律に違反することにはなりません。

ただし、遅刻や早退の時間を切り上げて計算する端数処理は、賃金カットにつながるため原則として違法です。たとえば「1分でも遅刻をした場合は15分単位で減給」というルールは、実際に働いた勤務時間まで無給となってしまうため注意しましょう。

労働基準法違反とはならない端数処理とは

原則として労働時間の切り捨ては認められませんが、便宜上認められる端数処理もあります。

端数処理が認められるケース

  • 割増賃金計算の端数処理
  • 1か月の賃金支払における端数処理

これらの端数処理は、労働者にとって不利にならず、事務処理をしやすくする目的として認められています。また、先に上げたように遅刻や早退などの働いていない時間を、端数処理をして切り上げるのは「ノーワーク・ノーペイの原則」に反するとして違法になりますが、就業規則の定めに従って懲戒処分等の制裁の範囲で減給を行うことは、労働基準法第91条で認められています。

ただし、懲戒処分として減給を行う場合、労働契約法上の客観的合理性や社会通念上の相当性が必要になるため簡単ではありません。遅刻や早退が減給の対象になるようなきちんとした理由や就業規則に制裁の対象となる根拠もない場合や、就業規則に根拠が定められていたとしても、その就業規則が周知されていない場合には、減給の制裁を科すのは困難でしょう。

また、たった5分や10分の遅刻がたまたまあっただけで、懲戒処分とするには処分として重すぎると判断されるような場合にも、処分が無効になる可能性があります。

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

引用:労働基準法第91条|e-Gov法令検索

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

引用:労働契約法第15条|e-Gov法令検索

給与計算で端数処理を行うタイミング

では、例外的に認められている給与計算の端数処理について、タイミング別に詳しく見ていきましょう。

割増賃金に該当する1か月の労働時間数の計算

冒頭で、賃金は労働した時間数に合わせて支払われなければならないとお話しました。しかし、時間外労働や休日労働、深夜労働といった割増賃金が発生する労働時間については、1か月を合算した際の端数処理が認められています。

1か月における時間外労働、休日労働および深夜業のおのおのの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。

引用: 残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。|厚生労働省 鹿児島労働局

たとえば、時間外労働時間の1か月の合計時間数が「20時間25分」だった場合、30分未満の端数である25分を切り捨て、「20時間」とすることが認められます。しかし、「20時間35紛」となった場合には「21時間」に切り上げることも必要です。切り捨てだけが認められるわけではありません。

割増賃金の計算

割増賃金の計算では、以下のA~Dのような端数処理が認められています。

A.1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる。

B.1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、Aと同様に処理する。

引用:3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか|厚生労働省 東京労働局

例えば、時間外労働の計算の際は、1か月の基本給から1時間あたりの賃金を算出し、1.25をかけて計算します。このときに計算する「1時間あたりの賃金額」「1時間あたりの割増賃金額」のいずれも、「1,825.50円」のように端数が出た場合は、50銭未満切り捨て・以上を切り上げのルールに従い、「1,826円」とすることが可能です。

また、割増賃金額を計算した結果、時間外労働、休日労働、深夜労働のおのおのの1か月の総額に1円未満の端数がある場合にも、同様に50銭を基準として切り捨て・切り上げを行います。

割増賃金の詳細については、以下の記事も参考にしてください。

1か月の賃金支払いの計算

労働基準法では、賃金の全額払いが定められていますが、一定額に満たない賃金の処理については、以下のように100円単位で丸めるような端数処理が認められています。

D.1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことが出来る。

引用:3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか|厚生労働省 東京労働局

また、1か月の賃金で1,000円未満の金額を、翌月に繰り越す処理も認められています。

E.1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことが出来る。

引用:3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか|厚生労働省 東京労働局

なお、これらの1か月の賃金の端数処理を行う場合は、その旨を事前に就業規則に定めておく必要があります。その都度端数処理の方法が変わるというような取り扱いは認められないため、就業規則でルール化することを忘れないように注意しましょう。

給与計算での端数処理の計算方法

具体例を用いながら、以下に給与計算の端数処理の計算方法について解説します。

割増賃金の労働時間

時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金が発生する労働時間は、それぞれの1か月の合計を、30分未満は切り捨て、それ以上は1時間に繰り上げての処理が可能です。

【例】1か月の割増賃金の労働時間

  • 時間外労働時間:40時間48分→41時間
  • 休日労働時間:4時間25分→4時間
  • 深夜労働時間:55分→1時間

なお、割増賃金率については、時間外労働と深夜労働は1.25倍ですが、休日労働は1.35倍と異なります。さらに月60時間を超える分の時間外労働には1.5倍の割増賃金(中小企業は2023年3月31日までは猶予)が発生するため、割増賃金を間違わないよう、区分して計算しましょう。

割増賃金の計算

割増賃金を計算するには、1時間あたりの賃金を算出する必要があります。月給制の場合、1時間あたりの賃金は以下の式で求めます。割増賃金の端数簡易処理の方法で実際に計算してみましょう。

(365日または366日-年間の所定休日の日数)×1日の所定労働時間数÷12か月=1か月の平均所定労働時間数

(基本給+手当)÷ 1か月の平均所定労働時間数 = 1時間あたりの賃金単価

たとえば基本給20万円、手当5万円、1か月の平均所定労働日数22日、1時間の所定労働時間7.5時間の労働者の場合、以下のようになります。

(365日-101日)×7.5時間÷12か月=165時間
(20万円+5万円)÷165時間=1,515.1515…円

50銭未満の端数を切り捨てて、50銭以上1円未満の端数は1円に切り上げることが可能ですので、1時間あたりの賃金は「1,515円」ということになります。さらにそこに、それぞれの割増賃金率をかけて、1時間あたりの割増賃金額を算出します。

  • 時間外労働の1時間あたり割増賃金=1,515×1.25=1,893.75円=1,894円
  • 休日労働1時間あたりの割増賃金=1,515×1.35=2,045.25円=2,045円
  • 深夜労働1時間あたりの割増賃金=1,515×1.25=1,893.75円=1,894円

これを、上述の例で出した1か月の割増賃金の労働時間数にかけると、1か月の割増賃金の総額が求められます。

  • 時間外労働時間:41時間×1,894円=77,654円
  • 休日労働時間:4時間×2,045円=8,180円
  • 深夜労働時間:1時間×1,894円=1,894円
  • 割増賃金額総額:87,728円

なお、1時間あたりの賃金額や割増賃金額を簡易処理せずに計算し、1か月の割増賃金の総額に1円未満の端数が発生した場合も、50銭を基準として切り捨て、切り上げを行います。

1か月の賃金の計算

基本給20万、各種手当5万円、そして計算した割増賃金を足すと、総支給額が「337,728円」となりました。ここから、各種保険料および所得税を以下の通り控除します。

【控除額】

総支給額ー控除額=1か月の支給額|337,728円ー56,823円=280,905円

1か月の賃金計算では、支給額に100円未満の数字がある場合、50円を基準に切り捨て、切り上げが可能です。また、1,000円未満を翌月に繰り越す端数処理も認められています。そのため、支給方法には以下の方法があります。

  1. 端数処理は行わずに、全額支給する:支給額280,905円
  2. 100円未満の端数処理を行う:支給額280,900円
  3. 1,000円未満を翌月に繰り越す:支給額280,000円

2と3の処理を実施する場合は、事前に就業規則に規定する必要があります。就業規則の定めがなく、支給額に対して端数処理を行った場合は労働基準法違反となる可能性がありますので注意が必要です。

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賃金は、労働時間に対して全額支払うのが原則です。割増賃金や1か月の支給額など、例外として認められている端数処理を行う場合は、ルールを順守する形で行わなければいけません。

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よくある質問

給与計算における端数処理はどうすればよいですか?

労働時間数分の賃金を支払うのが原則です。1分単位を切り捨てるといった処理は労働基準法に反する可能性があります。端数処理を実施する場合は、事務処理の簡便を目的とした例外に限ります。詳しくはこちらをご覧ください。

どのタイミングで端数処理を行えばよいですか?

「1か月の時間外・休日・深夜労働時間数」「1時間あたりの賃金額および割増賃金額」「1か月の割増賃金の総額」「1か月の賃金支払額」を計算するタイミングで例外として認められた方法による端数処理が行えます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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