• 更新日 : 2025年3月4日

退職後に必要な手続きの順番は?期限や準備物とあわせて流れを解説

退職後の手続きは、健康保険や年金、失業保険などの期限があるため、早めの対応が必要です。期限を過ぎたり、準備すべき書類などに不備があったりすると、トラブルにつながる可能性が高まります。

本記事では、手続きの順番や期限、必要な準備物について具体的に解説します。手続き漏れを防ぎ、適切に退職手続きを進めるためにも、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

退職後に行う手続きの順番

会社を退職した後は、さまざまな手続きが必要で、それぞれ期限や順番も異なります。事前に全体の流れを把握すれば、必要な手続きが明確になり、適切に手続きを進めることが可能です。以下では、退職後に行う手続きについて解説します。

住民税の支払いに関する手続き

従業員が退職する際に会社側がすべき住民税の手続きは、退職後に転職先が決まっているかどうかで異なります。

転職先が決まっている場合、会社は住民税の支払いを転職先の給与から天引きするための手続きが必要です。住民税を納税している市の公式サイトから「給与所得者異動届出書」をダウンロードし、必要事項を記入したうえで従業員に書類を交付します。従業員が転職先に書類を提出すると、転職先の会社により住民税の支払いを給与から天引きする手続きが行われます。

しかし、場合によっては転職先が決まっていないこともあるでしょう。転職が未確定であれば、退職時期により住民税の支払い手続きが異なるため注意が必要です。

退職時期が1月1日〜5月31日の場合は、住民税の支払い手続きは必要ありません。住民税は、1年間の所得に対する税金を6月1日〜5月31日までの1年間で納税します。しかし、1月1日〜5月31日までの間に退職する場合は、納税していない住民税が退職する月の給与や退職金から徴収されます。

退職時期が6月1日〜12月31日の場合、退職してから翌年5月までの住民税の支払い手続きは従業員自身が行わなければいけません。自治体から送付される納付書に従い、住民税を支払いましょう。

上記のように、従業員の状況により住民税の支払い手続きは異なるため、注意が必要です。

失業保険の受給申請(必要な場合)

失業保険は、求職者が安定した生活を送れるように、再就職をサポートするための支援として給付される制度です。

退職後は、失業保険を受給するための申請手続きが必要です。基本手当は、原則自分で申請しなければ受給できません。

詳しい手続きについては、後ほど解説します。

年金の加入

年金とは、老後の生活を支えるために、終身または一定期間で決まった金額が給付される制度です。

退職後、正しい手続きをせずに納付していなければ、将来障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されなかったり、老齢基礎年金を受給できなかったりする可能性が高まります。早めの手続きを心がけましょう。

年金の加入に関する詳しい手続きについては、後ほど解説します。

健康保険の切り替え

健康保険とは、病気やケガ、出産、死亡などの非常事態に備えるために保険料を支払い、必要なときに保険給付が受けられる公的な医療保険制度です。

退職の際に健康保険を切り替えなければ、退職した翌日から国民健康保険に加入する必要があります。ただし、国民健康保険への加入は退職後に市区町村での手続きが必要です。

また、退職前の健康保険については退職日の翌日まで保険料が請求されます。退職後に国民健康保険に加入する場合、退職日の翌日から保険料が発生しますが、前職の健康保険料の支払い義務は退職日までです。万が一、手続きが遅れてしまうと、延滞金の支払いを求められることもあるため注意が必要です。

健康保険の切り替えの詳細は、後ほど解説します。

所得税の手続き

所得税は、個人の所得に対して発生する税金で、1年間の所得全額から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用することで税額を計算します。

そのため、退職後でも所得税の手続きは、納税のために義務付けられています。適切な手続きをせず、年末調整確定申告ができなければ、税金を納めすぎている状態でも還付されません。逆に納税額が足りていない場合は、ペナルティにより本来の納税額に加算税が課される可能性があるため、早めに手続きを進めましょう。

所得税の手続きの詳細は、後ほど解説します。

退職後に会社から受け取る書類と返却するもの

退職後、従業員は会社から必要な書類を受け取り、返却すべきものは会社に返す必要があります。会社から与えられた書類や物品は、転職や税金関連の手続きにおいても重要です。

以下では、退職後に会社から受け取る書類と返却するものについて、具体的に解説します。

会社から受け取る書類

退職後、会社から受け取る書類は以下のとおりです。

雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。会社に在籍している間は会社が保管しており、退職の際に一時的に被保険者が保管します。次の転職先が決まっている場合は、転職先の会社に提出します。

年金手帳は、公的年金に加入していることを証明する手帳です。しかし、2022年4月1日から年金手帳は廃止され、現在では基礎年金番号通知書が発行されます。基礎年金番号通知書や年金手帳は、年金の手続きに必要な書類のため退職時に返却してもらいましょう。

源泉徴収書は、1年間に会社から支払われた給与・賞与や自分が納めた所得税の金額が記載された書類です。主に所得税の年末調整のために必要であり、転職しない場合でも確定申告の際に必要となるため、必ず受け取るようにしましょう。

また、必要に応じて離職票も受け取ってください。離職票は、失業給付を受給する際の手続きに必要な書類です。離職票は、退職後10日前後に退職した会社から郵送されるのが一般的です。しかし、転職先が決まっている場合は必要のない書類のため、会社によっては退職者から希望がなければ発行しない場合があります。

会社に返却するもの

退社する際は会社に返却するものもあるため、事前に準備しておくことが重要です。一般的に会社に返却するものは以下のとおりです。

  • 健康保険被保険者証
  • 社員証や名刺
  • 社用パソコンや携帯電話
  • 会社の経費で購入した事務用品
  • 社外秘資料やデータなど

2024年12月2日以降は、新たに健康保険被保険者証は発行されませんが、有効期限まで​は​最長1年利用可能です。ただし、健康保険は会社を通して加入しているため、退職した翌日以降は健康保険被保険者証の効力がなくなります。そのため、会社を辞める際は健康保険被保険者証を返却してください。

社員証や名刺は、会社の社員であることを証明するもののため、退職日までに会社に返却しましょう。万が一、所持したまま紛失してしまうと、弁償を求められる可能性があります。トラブルを防ぐためにも、会社に返却してください。

会社から借りたパソコンや携帯電話も忘れず返却します。返却の際、社外秘データの処理方法は上司の指示に従い、対処することが重要です。会社の経費で購入したものも、会社の所有物となるため必ずすべて返却してください。

上記のものは会社に返却しなければトラブルにつながる可能性が高まるため、退職前に再度返却すべきものを会社に確認しておきましょう。

失業保険の受給申請【離職票が届いたら】

失業保険を受給するためには、退職後に必要な手続きを速やかに進めることが重要です。失業保険を受給するための第一歩は「離職票」の受け取りです。離職票は、会社から退職後に発行され、ハローワークでの失業保険受給申請に必須となります。

離職票が届いたら、必要書類を揃えて早めにハローワークで手続きをしましょう。以下では、失業保険の受給申請方法を具体的に解説します。

持ち物や必要書類

失業保険を受給するためには、以下の必要書類を用意してください。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 個人番号確認書類
  • 身元確認書類
    • 運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書
    • 公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書
  • 写真(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

参考:厚生労働省「雇用保険の具体的な手続き

上記を持参してハローワークに提出することで、スムーズに失業保険の手続きを進められます。

申請期限

失業保険の基本的な申請期限は、離職した日から30〜60日以内と定められています。退職してから次の転職先が決まっていない場合は、早めに申請することが重要です。

しかし、申請期限は個人の状況により異なる場合があります。

妊娠・出産した方の場合、申請期間は最長4年間延長可能です。基本的には30日以内とされていますが、妊娠により期間中に申請できる状況でない場合は手続きをすれば延長可能です。また、延長手続きにも期限があり、延長後の受給期間の最終日までとされているため、忘れずに手続きしましょう。

定年退職の後、再就職をご検討の場合、退職した翌日から2ヶ月以内は失業保険を申請できます。また、2ヶ月以内に受給期間延長の申請をすることで、最長1年間、受給期間の延長も可能です。

上記のように個人の状況により、申請期限も異なるため忘れないように早めに手続きをしましょう。

受給までの流れ

失業保険を受給するためには、以下の流れに沿って手続きしましょう。

  1. ハローワークで離職票を提出し、求職申込みをする
  2. 手続き完了後に待機する
  3. 雇用保険受給者初回説明会に参加する
  4. 失業認定を受ける(初回認定以降は、4週間に1回失業認定を受ける)
  5. 基本手当を受給する

参考:公益財団法人 生命保険文化センター「生活基盤の安定を図る生活設計」

まず、退職後にお住まいの地域を管轄するハローワークで「求職の申込み」を行い、雇用主から受け取った「離職票」を提出します。離職票に記載された退職理由が受給条件や日数に影響するため、誤りがないか事前に確認しておきましょう。

離職届の提出後、受給資格が確定すると「受給者初回説明会」の日時が通知されます。説明会に参加したら、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取りましょう。

失業保険を受けるには、4週間に1度、直前の28日間に失業していることを報告する「失業認定」を受ける必要があります。「失業認定申告書」に4週間の間に行った求職活動を記入し、本当に仕事を探している証拠として提出し、確認されると認定を受けられます。

失業認定後、5営業日程度で基本手当が指定の金融機関口座に振り込まれ、手続きが終了です。

上記の手続きを期限内に行い、漏れのないように確認しながら進めましょう。

年金の加入手続き【退職後14日以内】

退職後、厚生年金保険から国民年金への切り替え手続きは、退職日の翌日から起算して14日以内に行う必要があります。年金加入の手続きはお住まいの市区町村役場の国民年金担当窓口で行います。必要な書類として、年金手帳や基礎年金番号通知書、本人確認書類、退職日が確認できる書類を持参してください。

手続きを怠ると、年金受給額に影響を及ぼす可能性があるため、速やかに対応することが重要です。

退職後に離職期間がある場合

すぐに転職せずに1日以上の離職期間がある場合、国民年金への切り替え手続きを行いましょう。国民年金に切り替える際は、原則自分で行う必要があり、お住まいの役所にある国民年金窓口から手続きを行います。

手続きの際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 基礎年金番号通知書、または年金手帳
  • 退職日が証明できるもの
    • 離職票
    • 健康保険資格喪失証明書
    • 退職証明書
  • マイナンバーカード
  • 印鑑
  • 通帳やクレジットカード

ただし、国民年金の保険料を支払うかどうかは、退職日と転職先への入社日のタイミングにより異なるため注意が必要です。

家族の扶養に入る場合

退職後、1年間の見込み年収が130万円未満の場合、厚生年金に加入している配偶者の扶養に入れます。扶養に入る場合、保険料の支払いは不要で、第3号被保険者として扱われます。第3号被保険者とは、会社員や公務員の扶養に入っている人です。

基礎年金番号さえ伝えれば、配偶者の会社が年金加入の手続きを行ってくれることが一般的です。しかし、場合によっては非課税証明書が必要の場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

退職日の翌日に入社する場合は手続き不要

退職した翌日に転職先に入社する場合は、国民年金への切り替え手続きは不要で、基本的な手続きは会社が行います。

手続きにあたり従業員は、基礎年金番号通知書のような基礎年金番号がわかる書類の提出が必要です。

転職先の会社でも基本的には厚生年金を継続することとなるため、国民年金に加入する必要はありません。

健康保険の切り替え手続き【退職後5日~20日以内】

健康保険の切り替え手続きは、5〜20日以内に行うことが一般的です。準備物や手続き場所、手続き方法について事前に確認し、スムーズに手続きするとトラブルを防げます。以下では、健康保険の切り替え手続きについて解説します。

家族の扶養に入る場合(退職後5日以内)

退職後、家族の健康保険の扶養に入る場合、退職日の翌日から5日以内に手続きを行う必要があります。手続きの際は、家族の勤務先の健康保険組合を通して行います。必要な書類として、退職証明書や雇用保険被保険者離職票のコピーなどが求められるため、事前に確認が必要です。

手続きが遅れると、扶養開始日が遅れる可能性があるため注意しましょう。

国民健康保険に加入する場合(退職後14日以内)

国民健康保険に加入する場合、退職してから14日以内に手続きを行う必要があります。期間を過ぎてしまうと、加入資格がなくなる可能性があるため速やかな手続きが重要です。

国民健康保険に加入する際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 退職日が確認できる書類(健康保険喪失証明書)
  • 本人確認書類
  • マイナンバーカード
  • 保険料の口座振替用のキャッシュカードまたは通帳

上記の書類をお住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口に提出します。ただし、必要な書類は市区町村により異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

健康保険の任意継続制度を利用する場合(退職後20日以内)

退職後、健康保険の任意継続制度を利用することで、退職前と同じ健康保険を最大2年間継続できます。手続きは、退職後20日以内に行う必要があります。

任意継続被保険者に加入できる対象者と条件は、以下のとおりです。

  • 退職により健康保険の被保険者資格を失った方
  • 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヶ月以上被保険者であったこと(任意継続被保険者、共済組合の組合員たる被保険者などは除く)
  • 資格喪失日から「20日以内」に健保組合必着で申し出をすること

健康保険の任意継続制度に必要な書類は以下のとおりです。

  • 任意継続被保険者資格取得申請書
  • 退職日が確認できる書類
  • 本人確認書類
  • マイナンバーカード
  • 保険料の口座振替用のキャッシュカードまたは通帳

退職後の健康保険の切り替えは、医療費の負担を避けるためにも速やかに行いましょう。

退職日の翌日に入社する場合は手続き不要

退職日の翌日に新しい会社へ入社する場合、健康保険の切り替え手続きは基本的に不要です。退職に伴い前職の健康保険資格が喪失されても、翌日から新たな勤務先の健康保険に自動的に加入するためです。

新たに健康保険に加入する場合、前職の保険証は退職時に返却し、転職先から新しい保険証を入社後に受け取ります。ただし、保険証の発行には時間がかかることがあるため、医療機関を受診する際は一時的に全額自己負担となる可能性があります。しかし、後日新しい保険証を提示することで、自己負担分の払い戻しが受けられることを覚えておきましょう。

所得税の手続き【年末調整もしくは確定申告】

退職後は、所得税の手続きも必要です。年末調整や確定申告にも関わるため、​必ず確認しておきましょう。​

年内に転職した場合は年末調整

年内に転職した場合、年末調整は転職先で行われます。そのため、前職の給与所得を含めた正確な所得税計算が必要です。前職から源泉徴収票を受け取り、転職先に提出します。源泉徴収票は、前職での給与や源泉徴収額が記載されている書類です。

新しい勤務先では、源泉徴収票を基に年間の総所得を計算し、適切な税額を算出します。もし前職の源泉徴収票の提出が遅れると、年末調整が正確に行われない可能性があります。実施されなかった場合は、翌年に自分で確定申告を行い、税額の精算をしなければいけません。

そのため、年内に転職した際には、期限内に源泉徴収票を提出しましょう。

年内に再就職しなかった場合は確定申告

年内に再就職しない場合は、退職後の年末調整を受けられないため、自身で確定申告を行う必要があります。確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、所得税を計算して確定する手続きです。

確定申告を行うことで、源泉徴収された所得税の過不足を精算でき、払い過ぎた税金が還付される可能性があります。申告の際は、退職時に受け取った源泉徴収票が必要です。

また、申告期間は翌年の2月16日から3月15日までですが、還付申告は翌年1月から可能です。申告書は税務署で入手するか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成できます。適切な手続きを行い、正確な税額の精算を心がけましょう。

退職後に必要な手続きの順番を確認してスムーズに対応しよう

退職後は、健康保険や年金、所得税に関する手続きなど、期限が設けられている手続きが多くあります。事前にそれぞれの期限を確認し、スムーズに対応することが重要です。

また、失業保険の申請や源泉徴収票の受け取りなども忘れずに行いましょう。事前に手続きの流れや必要書類を確認しておくことで、余計なトラブルを回避できます。計画的に進めて安心した生活を送る準備を整えましょう。


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