• 更新日 : 2024年11月22日

子ども・子育て拠出金とは?会社負担はいくら?計算方法や端数処理を解説

子ども・子育て拠出金と、子育て支援や児童手当の拠出金として充てられる拠出金であり、企業が費用の一部を負担しています。

本記事では、子ども・子育て拠出金の仕組み、会社が負担する拠出金率、計算方法などを解説します。企業の人事労務担当者の方は、拠出金率の確認に役立ててください。

子ども・子育て拠出金とは?

子ども・子育て拠出金とは、子どもや子育て支援に必要なお金を事業者の負担によって集める制度です。児童手当や子育て支援、仕事と子育ての両立支援事業などの費用に充当する目的として徴収されます。

なお、従業員を雇用する事業者は、子ども・子育て拠出金の納付をしなければなりません。厚生年金保険加入の被保険者を使用する事業主は、子ども・子育て拠出金の納付者として子ども・子育ての費用を負担する形で協力しています。

子ども・子育て拠出金の用途

子ども・子育て拠出金は、税金として徴収され、次世代の子ども支援や子育て支援事業の運営費に充てられています。

児童手当
  • 支給対象者:0歳~18歳に達した年の年度末(3月31日)までに該当する子ども
  • 支給額:3歳未満1万5,000円、3歳以上高校生年代まで1万円(第3子以降は3万円)
  • 支給時期:前月までの2カ月分を偶数月(年6回)に支給
地域子ども・子育て支援事業
  • 放課後児童クラブ
  • 延長保育事業
  • 病児保育事業
仕事・子育て両立支援事業
  • 多様な働き方(就労形態)に対応する目的とした企業主導型の保育事業
  • 保育待機児童の解消や仕事と子育ての両立を目的とする
保育の運営費0歳~2歳児相当分

出典元:こども家庭庁「児童手当制度のご案内」

こども家庭庁「参考資料」

全国保育士養成協議会「仕事・子育て両立支援事業の概要 (企業主導型保育事業)」

をもとに作成

子ども・子育て拠出金の仕組み

子ども・子育て拠出金は、拠出金の負担者や対象となる条件、拠出金の納付方法などにより成り立っています。

子ども・子育て拠出金の負担者

子ども・子育て拠出金に充てる費用は、日本年金機構の厚生年金保険に加入する被保険者の雇用者である事業所が負担します。税金として納める拠出金は、全額が事業所負担となっているため、被保険者個人の負担は発生しません。

拠出金の対象範囲は、厚生年金保険が適用される事業者になるため、会社員や公務員などの70歳未満の被保険者を雇用する事業所が該当します。

個人事業主や自営業者の場合は、厚生年金保険に加入できないため、子ども・子育て拠出金の納税対象ではありません。ただし、5人以上の従業員を常時雇用している個人事業所(※農林漁業やサービス業は除外対象)の場合は、強制適用事業所(※法律にのっとって厚生年金保険や健康保険への加入が義務付けられている事業所のこと)に該当しているため、厚生年金保険に加入する必要があります。

子ども・子育て拠出金の対象条件

先述の通り、子ども・子育て拠出金は児童手当や子育て支援の費用に充てる拠出金という位置づけのため、一見すると子どものいる従業員のみを対象条件とされているように感じられがちです。

しかし、子ども・子育て拠出金の対象条件は従業員の子どもの有無に関係ありません。独身者でも子育て中の従業員でも関係なく厚生年金保険加入者であれば全員が対象です。したがって、子ども・子育て拠出金の対象事業所は、厚生年金保険加入者に支払った人数分の給与や賞与に対して拠出金を納税しなければなりません。

子ども・子育て拠出金の納付方法

子ども・子育て拠出金は、社会保険の納入告知書により一括で納付可能です。社会保険納入告知書には、次の納付項目が含まれています。

  • 厚生年金保険料
  • 船員保険料
  • 健康保険料
  • 子ども・子育て拠出金 など

子ども・子育て拠出金の納付方法は、日本年金機構より毎月20日を目途に送られてくる納入告知書を使って納付することも方法のひとつです。納入告知書は、次の書類が含まれています。

  • 領収済通知書
  • 領収控
  • 納入告知書(納付書)・領収証書

これらは、日本年金機構から領収済通知書が最前面の状態で届きますが、この時点では未納の状態です。そのため、これらの書類を切り離さず、金融機関に持ち込み、納入告知書に記載された負担額を納めましょう。

また、子ども・子育て拠出金は、ネットバンクを活用した口座自動振替やATMでの納付も可能となっており、預金口座振替依頼書を提出すれば手続きが行えます。ただし、口座自動振替の利用可否については、管轄の収納機関(年金事務所)に確認が必要です。

さらに、Pay-easy(ペイジー)によるネット決済でも、子ども・子育て拠出金の納付ができるので、パソコンやスマートフォン、ATMを通じて、24時間365日納付ができるようになってます。

子ども・子育て拠出金の拠出金率とは?

子ども・子育て拠出金率は、2024(令和6)年4月の段階で0.36%となっています。拠出金率が直近で変更されたのは2020(令和2)年4月です。当時は0.34%から0.36%の改定でした(※2024年11月12日)。

拠出金率の推移は、以下のとおりです。

年度拠出金率
2013(平成25)年0.15%
2014(平成26)年0.15%
2015(平成27)年0.15%
2016(平成28)年0.20%
2017(平成29)年0.23%
2018(平成30)年0.29%
2019(令和元)年0.34%
2020(令和2)年0.36%
2021(令和3)年0.36%
2022(令和4)年0.36%
2023(令和5)年0.36%
2024(令和6)年0.36%

出典元:国立国会図書館デジタルコレクション「少子化対策の諸財源」

子ども・子育て拠出金率の上限は、法律で0.40%までと定められています。現段階では、令和7年に改定される予定です。なお、子ども・子育て拠出金率は、正式決定された後に毎年4月1日以降から日本年金機構の公式ホームページ「大切なおしらせ」で確認できます。

参考:日本年金機構「子ども・子育て拠出金率が改定されました」

子ども・子育て拠出金の計算方法

子ども・子育て拠出金を計算するには、料率と計算の手順を知ることで事業所ごとの納付額を把握できます。

子ども・子育て拠出金の計算方法は、事業所で雇用する厚生年金保険加入者の加入者保険料に対しての標準報酬額と年度ごとの拠出金の料率を使って計算します。計算式は次の通りです。

標準報酬月額+標準賞与額)× 拠出金率 = 子ども・子育て拠出金額

拠出金率で算出された金額は、1円未満の端数が考えられるでしょう。子ども・子育て拠出金の計算では、1円未満の端数を切り捨てると定められています。

標準報酬月額の概要

標準報酬月額は、事業所が従業員に支払う毎月の給与などが該当します。具体的には、次のとおりです。

これらの手当は、標準報酬月額に含まれます。標準報酬月額は、従業員が事業所から労働対価として受け取る報酬を月単位で標準化した金額です。

標準賞与額の概要

標準賞与額は、事業所から支給される税引き前の賞与額が計算に用いられます。標準賞与額は、1,000円未満の端数を切り捨てて計算します。

標準報酬月額と標準賞与額の設定制限

標準報酬月額と標準賞与額は、次の制限の範囲で設定します。

  • 健康保険:年度内に支給された報酬累計額573万円を上限とする
  • 厚生年金保険:1カ月に支給された報酬150万円を上限とする

子ども・子育て拠出金の計算例

ここでは、具体的な子ども・子育て拠出金の計算例をいくつか紹介します。

【従業員Aさんの場合】

  • 標準報酬月額:35万6,000円
  • 標準賞与額:53万4,000円
(356,000円+534,000円)× 0.36% = 3,204円

子ども・子育て拠出金:3,204円

【従業員Bさんの場合】

  • 標準報酬月額:26万4,700円
  • 標準賞与額:47万6,000円
(264,700円+476,000円)× 0.36% = 2,666円(※2666.52円以下を切り捨て)

子ども・子育て拠出金:2,666円

【契約社員Cさんの場合】

  • 標準報酬月額:25万円
  • 標準賞与額:0円(賞与なし)
250,000円 × 0.36% =900円

子ども・子育て拠出金:900円

子ども・子育て拠出金の確認方法

子ども・子育て拠出金の金額は、日本年金機構から届く保険料納入告知額・領収済額通知書で確認できます。領収済額通知書には、健康保険料や厚生年金保険料だけではなく、「子ども・子育て拠出金」の項目もあります。

健康保険料や厚生年金保険料は、事業所と被保険者の折半で支払う社会保険料です。一方、子ども・子育て拠出金は、折半で負担する保険料よりも低くはなりますが事業所が全額負担の税金となります。

子ども・子育て拠出金は事業所が全額負担する税金と覚えておこう

子ども・子育て拠出金は、健康保険料や厚生年金保険料などを事業所と被保険者である従業員で折半する仕組みではありません。子どもがいる被保険者の有無などは関係なく、厚生年金保険に加入する従業員の分だけ事業所が全額負担する税金です。

子ども・子育て拠出金の計算方法は、厚生年金保険に加入する従業員の標準報酬月額と標準賞与額を合算した金額に、子ども・子育て拠出金率を掛け合わせて算出します。なお、2024(令和6)年度の拠出金率は、2020(令和2)年度から0.36%と据え置きです。

なお、2025(令和7)年度には拠出金率の限度が0.40%まで引き上げられる予定もあるため、厚生年金保険料よりも低い税金でも、年度が替わったら日本年金機構の公式ホームページの告知を確認しましょう。


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