• 更新日 : 2024年12月13日

つわりによる休職の情報まとめ!診断書は必要?産休まで休職はOK?

妊娠のサインでもあるつわりは、吐き気やおう吐などの症状のことです。就業中の妊婦さんの中には、つわりによる体調の変化によって不安になる方もいることでしょう。つわりには個人差がありますが、場合によっては、休職を検討する必要性があります。

本記事では、つわりのによる休職や、その制度、適切な相談対応を中心に解説します。

つわりによる体調不良で休職することはできる?法的に問題ない?

つわりによる体調不良を理由に休職することは可能です。男女雇用機会均等法の第13条では、「妊娠中や出産後の女性労働者は、健康検査の受診のうえ医師からの指導により勤務時間の短縮・休暇申請が可能」と定められています。そのため、法的にも問題ありませんが、会社の就業規則次第では欠勤扱いになるので、まずは会社の休職制度について確認しておくことが大切です。

引用元:厚生労働省|働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

そもそも休職制度とは?

休職制度とは、従業員が業務以外の理由で長期的な休みを取得するための制度です。業務以外の理由は、つわりや自己都合による病気やケガによる療養や留学・資格取得の目的で会社に籍を置いたまま休むなどの形式が考えられます。

休職期間中は、雇用関係が維持されつつ、無給となる場合がほとんどです。一方で休職中の社会保険料や税金の支払い義務は継続します。そのため、つわりで休職する場合は、休職中の生活保障となる傷病手当金などの申請が必要です。

つわりが理由で休職している人の割合は?

以下の表は、妊娠中に起きやすい症状と割合になります。つわりは、妊娠中に最も起きやすい症状です。

妊娠中の症状妊娠・出産時に勤務していた女性労働者

(1,727人中)

つわり66.8%
妊婦貧血40.1%
妊娠浮腫(ふしゅ)34.7%

出典元:厚生労働省|事業所における妊産婦の健康管理体制に 関する実態調査報告書」

つわりを含めた妊娠中の症状により主治医からの指導で休職した割合は、329人中の318人(96.7%)です。その中でもつわりの症状で医師の指導を受けた方は、約17%を占めております。

事業主は、医師の指導により、休職を求められた際は、必要な措置を講じなければなりません。

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つわりが理由で休職する期間はどれくらい?

民間企業が行った調査によると、つわりを理由に最も休みたいという時期は、妊娠3カ月頃(妊娠8週から11週の間)という統計があります。では、実際につわりが理由で休職する期間は、どのくらいなんでしょうか。ここではつわりの特徴と、休職を検討する際に知っておきたいことについて触れていきましょう。

つわりは個人差がある

現在、つわりが起こる原因については、インターネット上にはさまざまな情報が書き込まれていますが、完全に解明されていません。

つわりは、症状の重さや医師の診断などに個人差があるため、休職が必要となる判断基準も人それぞれです。中には、つわりがほとんどなく出産を迎えるというケースもあります。つわりが軽ければ日常生活を送れますが、重い場合は治療や入院のための休職を要します。

安定期に入る15週までは休むべき

つわりの期間と重さは個人差がありますが、安定期に入る15週あたりまで続くと言われているため、休職の目安として安定期までと考えられています。つわりの症状の一つである吐き気や味覚の変化などは、安定期に入ると通常の状態に戻り、改善される場合が多いとされています。

また、つわりの症状が緩和される時期は個々によって異なるので、人事労務担当者は妊婦の従業員に対し医師の適切なケアをしてもらうよう促すとともに、柔軟な対応を心がけましょう。

産休まで休職はできる?

つわりで休職した場合は、そのまま産休まで休職することも可能です。ただし、会社によっては続けての休職を許可しない場合もあります。産休前に休職した場合は、会社から給与が支給されません。そのため、つわりによる休職から産休まで続けて休む場合は、収入がなくなる可能性があります。

休職制度は、会社との雇用関係を維持したまま長期休暇を取得できます。ただし、休職中は社会保険料や税金を負担する義務が続くでしょう。それらの負担は、休職中に申請できる生活保障(傷病手当金など)で補うことになります。つわりの症状が重いときは、主治医の診断により、生活保障を受けながら産休まで休職できる場合もあるでしょう。

休職の延長はできる?

休職の延長は、医師の診断があれば可能ですが、職場の状況なども気になるところでしょう。つわりは、安定期を見越した予定どおりに落ち着くとは限りません。そのため、つわりの症状が重く、医師の指導により仕事を休んでいたとしても休職期間が足りなくなる場合があります。

休職の延長を申請する場合は、職場の理解も大きく影響すると考えられます。少ない人員で回している職場や専門性の高い業務の担当であれば、休職の延長に対して肩身の狭い思いをするかもしれません。妊娠中や出産時の休職は医師の診断があれば延長も可能ですが、実際に延長するかしないかは会社側の判断に委ねられます。

つわりで休職するために診断書は必要?

つわりで休職する場合は医師の診断は必要ですが、診断書は不要です。妊娠中や出産時の女性労働者は、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)が医師の作成した診断書と同じ効力を持つ証明ツールとなります。

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)とは?

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)は、妊産婦の雇用先となる事業所に対して、妊産婦の健康検査状況や必要な措置などを伝えるための連絡カードです。詳細は以下の通りです。

  • 妊娠中の通勤への対応:交通機関などの混雑時を避けた出勤退社時間の調整など
  • 妊娠中の休憩への配慮:勤務中の適度な休憩や捕食に必要な休憩時間の延長や回数の増加など
  • 妊娠中または出産後の症状への対応:医師の指導事項に沿った措置として勤務時間の短縮や休業など

会社は、母健連絡カードに記載されている医師の指示をもとに対応することが、男女雇用機会均等法の第13条で義務づけられています。母健連絡カードがあれば、医師の作成した診断書と同等の効力が期待できるのです。

妊娠中・つわりがひどいときに使える休職制度

つわりなど妊娠中の症状が重いときには、次の休職制度や手当などが利用できます。

産前休暇

産前休暇は、産前産後休業(産休)の産前に該当する部分の休業制度です。産前に取得できる期間は、出産予定日の6週間前の日以内と定められています。出産すれば出産後の休暇も必要になるため、合わせて産休とも呼ばれています。なお、産休は、労働基準法により母体保護という観点から認められている休業制度です。

出産手当金

産前産後休業を取得した女性労働者は、全国健康保険協会などの健康保険の保険者に申請することで出産手当金を受給できます。出産手当金は、健康保険の被保険者のみ受給資格のある給付金です。次の内容のもとで支給されます。

出産手当金
支給対象期間出産日以前の42日~出産日翌日以降56日までの範囲内

※会社を休んで給与の支給がなかった期間が対象

※出産が予定日より遅れた場合は出産予定日を基準とする

1日につき支給される金額【支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額の平均額】÷ 30日×3分の2

※支給開始日以前の期間が12カ月に満たない場合の条件

  • 支給開始日を含めた月以前の継続した各標準報酬月額の平均額
  • 30万円(標準報酬月額の平均額)

どちらか低い額で支給される

出典元:全国健康保険協会「出産手当金について」

つわり休暇

つわり休暇は、男女雇用機会均等法の第13条に基づき、つわりの症状の重さによって医師から必要性を認められた場合に取得できる休暇です。医師による見解では、診断書を作成する必要がありません。事業主は、母性管理カードに記された医師による休職指導があれば、従う必要があります。

傷病休暇

妊娠中やつわりなどの症状に治療が必要な場合は、傷病休暇が利用できます。傷病休暇とは、年次有給休暇以外で業務外の傷病を理由に取得する休暇です。妊娠中のつわりが重い場合は、傷病休暇になる可能性があります。

妊娠中は、妊娠悪祖(にんしんおそ)や、貧血などさまざまな症状が考えられるでしょう。それだけに、医師の健康受診による指導や就業の措置は重要です。

傷病手当金

つわりが原因で療養が必要な場合、傷病手当金の申請ができます。傷病手当金とは、業務外の病気やケガの療養期間に被保険者に対して支給されます。

傷病休暇は、各社の就業規定よって取り扱いが異なっており、傷病休暇を有給休暇として処理する場合もあれば、別枠で傷病専用の休暇制度として対応する場合があります。

傷病休暇は基本的に就業していないとみなされるため、無給です。そのため、長期で傷病休暇を取得した場合は収入のない状態が続きます。なお、傷病手当金は、生活保障という位置づけで健康保険から支給される手当金です。傷病手当金の詳細は、次のような仕組みになっています。

傷病手当金
申請期限労務不能と診断された日の翌日から2年以内の日ごとに該当する
受給条件
  • 業務外のケガや病気での療養(妊娠中の治療を要する症状も含む)
  • 仕事に就けない状態であること
  • 給与の支払いがないこと
  • 連続して3日の待期期間を含み4日以上仕事を休んでいること
受給可能期間同じ原因のケガや病気について、支給開始から通算して1年6カ月間
支給額【直近1年間の標準報酬月額の平均額】÷ 30日×3分の2×支給日数

※被保険者期間が1年に満たない場合は次のどちらか低い方の金額

  • 資格取得後の平均額
  • 健康保険全被保険者の平均額

出典元:全国健康保険協会京都支部「傷病手当金について」

つわりで休職する際に、どのように職場に伝えればいい?

つわりで休職する場合は、職場にどのような伝え方をすればよいのでしょうか。ここでは、2つのポイントを紹介します。

在宅勤務に変更できるか確認する

妊娠中のつわりが重い場合は、在宅勤務に変更することも一つの手です。出社勤務の場合は、就業時間が決められているだけではなく通勤時の混雑や遅延などの影響を受けます。通勤中につわりの症状が出れば通常時間での勤務が難しくなるでしょう。

在宅勤務の場合は、つわりの症状がない時間帯を選んで業務ができる可能性があります。通勤の必要性もないため、移動の負担が生じません。自身とこれから誕生する赤ちゃんを守るためにも在宅勤務への変更を確認してみてもよいでしょう。

母健連絡カードを提出して記載内容に応じてもらう

母健連絡カードは、会社に提出することで記載内容の措置を求められる効力があります。記載内容の措置は、先述した妊娠中の通勤緩和や休憩に関する措置、妊娠中の症状などに関する措置のことです。

妊娠中のつわりがひどい場合は、母健連絡カードに記した医師の指導によって、休職の措置を求められます。会社側には、母健連絡カードの提出で記載内容に応じてもらいましょう。

「つわりで休職したい」と言われた際の、企業側の正しい対応法

妊娠中の従業員から「つわりで休職させてほしい」と言われた場合は、企業側として次の対応が求められます。

母健連絡カードを提出された場合の適切な対応

つわりによる休職を求められた使用者は、母健連絡カードを提出された場合に、その記載内容の通り対応をしなくてはなりません。もし、記載内容どおりの対応(措置)をしなかった場合は、企業名の公表などの罰則が科せられます。

さらに、母健連絡カードを提出した妊娠中の女性労働者に適切な対応をせず、体調が悪化した場合は訴訟問題に発展する可能性もあります。

母健連絡カード未提出の場合に必要な対応

女性労働者が母健連絡カード未提出の場合は、母健連絡カードについて説明しましょう。主治医に確認したうえで提出するようにします。

主治医による指導が適切と判断できれば、迅速な措置も必要です。また、傷病手当金を引き合いに出すことも対応の一つであり、主治医による診断書や母健連絡カードの提出がなければ、休暇中は無給となることを伝える必要があります。

法改正に敏感な対応

妊娠中の女性労働者に対しての法改正は、これからも変化することが考えられます。そのため、法改正に対して敏感な対応が求められるでしょう。法改正に気づかずに、つわりの女性労働者への対応で法令違反となってしまえば会社のイメージにも影響します。法改正の情報は、常に最新の情報を入手しましょう。

妊娠に対してハラスメントや不利益な対応は避ける

女性労働者の妊娠・出産は、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などで尊厳が守られています。そのため、妊娠に対してのハラスメントや不利益な対応は、避けなければなりません。職場の上司による浅はかな言動がハラスメントと認定される可能性もあるでしょう。

別な言い方をすると、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)とも表現されるほど、差別的な問題発言となる場合があります。つわりの女性労働者への対応には、十分注意が必要です。


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