- 更新日 : 2024年4月1日
年末調整で戻ってくる平均金額は?簡単な計算方法も紹介
年末調整は毎月天引きされた所得税と、正式に計算した1年間の所得税の調整を行う作業で、調整時に所得税が還付されるケースが多いです。
ただし、場合によっては不足税額が発生し、年末調整で逆に徴収がなされることもあります。
今回は年末調整の仕組みを確認したうえで、今年の年末調整の金額は還付なのか徴収なのか、そしていくらになるのか試算をしてみましょう。
目次
年末調整の還付金の平均額は?
あくまで推定の計算ですが、源泉所得税及復興特別所得税の還付金の合計(2,635,725,000,000円)を、令和4年分調査で年末調整を行った1年を通じて勤務した給与所得者+1年未満勤続者(52,650,300人)で割ると、約50,060円です。
つまり、年末調整の還付金の平均は5万円前後と想定できます。
参考:民間給与実態統計調査結果令和4年分調査 第18表 給与階級別の扶養人員別表 、第147回 国税庁統計年報書(執筆時点で最新の資料にて計算)
ただし、年末調整の還付金額(追加徴収)は、人それぞれ異なるので注意してください(以下の内容を参考にしてください)
年末調整で金額の還付が起きる理由
年末調整では多くの場合、所得税の還付が発生します。これには、年末調整の仕組みに理由があります。
仕組みについて理解するために、年末調整の目的や意味をおさらいしましょう。
まず、年末調整には「毎月の給与から天引きしてきた累計の所得税額(源泉徴収)」と「1年間の給与総額をもとに正確に計算した所得税額」との差額を計算し、1年間の控除額を正しく反映するという目的があります。
毎月の給与から天引きする所得税(源泉徴収)の金額は、入社時や前年の年末調整時に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の情報に基づいて決定されます。ここで反映されるのは基本的に、本人やその扶養家族の情報です。この情報を基に、毎月の所得税(源泉徴収)計算に扶養控除などが反映されます。
しかし、所得税には扶養控除の他にも多くの控除制度があり、その多くは年末調整時の申告により確定します。控除に必要な情報が、年末近くにならないと確定しないためです。
例えば「生命保険料控除」「地震保険料控除」などでは、毎年10月から11月頃に各保険会社から保険料控除証明書という書類が送られてきます。これらの書類を確認することで、初めて正確な控除額が判明し、申告が可能です。
このように、多くの控除の情報は毎月の給与計算の時点ではわかりません。年末調整時にこれらの情報を加えて改めて計算すると、毎月の給与計算の際よりも控除額が多く計算されるため、還付が発生します。
年末調整は還付でなく徴収されることもある
払いすぎていた所得税を従業員に還付することが多い年末調整ですが、不足金額を徴収するケースもあります。下記のような場合、年末調整の結果「不足金額の徴収」が発生する可能性があるので確認しておきましょう。
年の途中で扶養家族が減った場合
多くの場合、還付を受けることが多い年末調整ですが、中には年末調整で計算した所得税に月々の所得税(源泉徴収)の合計が足りず、不足金額を徴収されるケースもあります。理由はいくつか考えられますが、年の途中で家族や収入の状況が変化した場合などに、不足金額の徴収が発生するケースが多いです。
年の途中で扶養家族が減った場合
入社時や前年の年末調整時に申告した扶養家族の人数が、その年の途中で減少すると徴収が発生することはあります。扶養控除が、12月31日時点での扶養家族の人数で決定するためです。
例えば、年の途中まで家族を扶養していた方がいたとしましょう。この従業員が離婚し11月に扶養家族が減った場合、年末調整では扶養家族から外して計算します。
10月までの給与計算では、扶養控除による所得税減額を適用されている状態で所得税(源泉徴収)の天引きを受けていました。それが年末調整の際には、扶養控除による減額を受けずに所得税を計算し直すことになります。その他の控除の状況にもよりますが、この差分が原因となって不足が発生し徴収を受けることがあります。
賞与額が想定より高額になった場合
賞与が高額になった場合も、不足金額の徴収となる場合があります。賞与から天引きされる所得税(源泉徴収)の計算方法が原因です。
まず、賞与の所得税(源泉徴収)は以下の式により計算されます。
毎月の給与であれば、源泉所得税率の計算根拠はその月の社会保険料控除後の給与額です。しかし、賞与の場合は前月に支給された給与の源泉所得税率が適用されてしまいます。その結果、前月の給与と比較して賞与の金額が高額の場合、賞与の源泉徴収税率は支給金額に対して大幅に低くなることがあるでしょう。
一方で、年末調整では給与と賞与を合計し一年の収入として再計算されるため、賞与から天引きされた低額な所得税(源泉徴収)の分、不足金額が発生し徴収が発生することがあります。
年末調整でいくら戻ってくる?概算方法
年末調整で戻ってくる金額については、あらかじめ決まっている要素で試算をすることで、還付になるか徴収になるかをある程度予想できます。詳細な計算方法となると長くなってしまいますが、ここでは大まかな計算の流れを説明します。
年末調整の計算方法
年末調整の計算の大まかな流れは、以下の通りです。
① 給与総額の集計
1月から12月に受け取った給与及び賞与を集計します。この際、徴収した各種保険料(社会保険料など)と所得税(源泉徴収)の合計も確認しましょう。
② 給与所得の算出
給与総額を元に、以下の表から給与所得控除額を計算します。
収入 | 給与所得控除額 |
---|---|
162.5万円以下 | 一律で55万円 |
162.5万円を超え180万円以下 | 収入×40%-10万円 |
180万円を超え360万円以下 | 収入×30%+8万円 |
360万円を超え660万円以下 | 収入×20%+44万円 |
660万円を超え850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円を超える場合 | 195万円(上限) |
引用:給与所得控除|国税庁HP
給与総額から、算出した給与所得控除額を引いた金額が給与所得の金額です。
③ 所得控除の計算
自身の状況や生命保険会社などからの書類を確認し、以下の各種控除金額を集計します。
④ 課税所得額の計算
②の給与所得から、③の所得控除を差し引きます。ここで計算された金額が課税所得です。
⑤ 所得税を算出する
課税所得の金額を、下の表に当てはめて所得税を算出します。
課税される所得金額 | 税率(%) | 控除額(円) |
---|---|---|
1,000円から194.9万円まで | 5% | 0円 |
195万円から 329.9万円まで | 10% | 97,500円 |
330万円から 694.9万円まで | 20% | 427,500円 |
695万円から 899.9万円まで | 23% | 636,000円 |
900万円から 1,799.9万円まで | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円から 3,999.9万円まで | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用:所得税の税率|国税庁HP
⑥ 住宅ローン控除の適用(該当者のみ)
住宅ローン控除がある場合は、所得税から差し引きます。
⑦ 復興特別所得税の加算による年調年税額の算出
算出された所得税に、以下の計算式で復興特別所得税を上乗せし、最終的な年調年税額を計算します。
⑧ 年調年税額と源泉徴収税額の過不足を精算する
①であらかじめ集計しておいた所得税(源泉徴収)から、⑦で求めた年調年税額の差分を算出します。プラスであれば還付であり、マイナスであれば徴収です。
アルバイトは年末調整でいくら戻ってくる?
アルバイト勤務の方の場合でも「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し税法上の区分が「甲」であれば、年末調整の対象です。
月々の給与から源泉徴収を受けていた場合で、年末に確定した年収が103万円以下だった場合は、それまで天引きされた金額が全額戻ってきます。これは、収入が103万円以下の場合、所得税が非課税、つまり0円となるためです。
iDeco加入者は年末調整でいくら戻ってくる?
iDecoの掛け金は年末調整の対象です。正確には「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、支払った掛金と同じ金額だけ課税所得から控除されます。
例えば、毎月12,000円のiDeCoの掛金を支払っていた場合は、年間で144,000円が課税所得から差し引かれ減税となります。なお、具体的に年末調整で戻ってくる金額は、元々の課税所得によって変動します。
住宅ローンを組んだ場合の対応
住宅ローンを組んでいた場合も、ローンの残額に応じて控除の対象となります。正式名称は「住宅借入金等特別控除」と呼ばれ、ローンの年末残高の1%相当額(原則として最大40万円まで)が、その年の所得税から控除されます。なお、あまり多くないケースですが、住宅取得対価がローンの年末残高より少ない場合は、そちらの対価の1%が適用されます。
ただし、住宅ローンを新たに組んだ場合は、初年度は確定申告が必要です。入居の翌年の確定申告(一般的な会社員であれば翌年1月4日から3月15日までの期間)に申告しましょう。
年末調整で還付される金額を試算してみよう
年末調整において還付・徴収が起きるケースとその意味について考えてみて、一旦シミュレーションをしてみると、還付になるか徴収になるかを予想できるようになります。
実際には年末調整では「還付が起きればお得」「徴収が起きれば損」ということではなく、正しくその年の所得税を計算し直した調整結果である、ということは覚えておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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