• 作成日 : 2022年5月27日

年末調整は自分でできる?できない?

年末調整は基本的に会社が実施してくれるため、意識されない方も多いのではないでしょうか。確定申告とは異なり、会社員が年末調整で行わなければならないケースは多くはありません。では、年末調整は確定申告のように、自分で行うことはできるのでしょうか。この記事では、年末調整を行うタイミングや起こりがちなミスなどをご紹介します。

年末調整は自分ではできない

年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収で納めた所得税と、実際の税額との差額を年末に清算する手続きです。12月末日時点で雇用されている、年間の総所得が2,000万円以下の全従業員が対象です。

年末調整は所得税法で雇用主の義務と定められており、特段の事情が無く義務を怠った場合は罰則を課せられます。そのため、従業員を1名でも雇用している場合は必ず年末調整を行う必要があります。

このように、年末調整は「会社の義務」であるため、一個人で実施することはできません。自営業者や個人事業主など、個人で所得税を納税する場合は年末調整ではなく、確定申告を行う必要があります。

年末調整が「先払い」した所得税を清算する手続きなのに対し、確定申告は年間の総所得を申告して所得税を「後払い」する仕組みです。次の章でご説明するように、申請時期も異なるため注意しましょう。

参考:法第190条《年末調整》関係|国税庁

年末調整の時期はいつ?

年末調整は、「その年の最後の給与を支払った時」に実施するものと定められています。

そのため、多くの企業では12月下旬に実施されます。12月の年末調整に先立ち、11月中に従業員に必要書類を提出を求めなければなりません。また、年明け1月に関連書類を税務署に提出し、所得税を納付します。大まかな流れは下記の通りです。

  1. 11月初旬:従業員に各種証明書類の準備を依頼
  2. 11月下旬:従業員に各種申請書の記載を依頼
  3. 12月下旬:証明書・申請書を回収し所得税を計算
  4. 翌1月10日:税務署への所得税の納付
  5. 翌1月下旬:従業員への源泉徴収票の交付
  6. 翌1月31日:税務署への年末調整関連書類の提出

年末調整は11月にスタートし、翌1月末日で完了するスケジュールで実施されます。年末調整の期限や、年末以外に実施されるケースについては、下記の記事で詳しく紹介しています。

ちなみに、確定申告については毎年2月16日~3月15日までの期間で行われます。

年末調整とは異なるスケジュールなので注意しましょう。

年末調整に向けて会社員が準備すること

年末調整で各種控除を受けるためには、複数の証明書や申請書を用意する必要があります。従業員が用意または記載する必要のある書類は下記の通りです。

証明書

  1. 生命保険、介護医療保険、個人年金保険、地震保険
  2. 保険料控除証明書
  3. 国民年金保険
  4. 社会保険料控除証明書
  5. 小規模企業共済
  6. 小規模企業共済等掛金払込証明書
  7. 住宅ローン控除申請
  8. 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  9. 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書

申請書

  1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書
  3. 給与所得者の保険料控除申告書
  4. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借⼊⾦等当別控除申告書(該当者のみ)
  5. 前職の源泉徴収票(該当者のみ)

証明書類は10月下旬から11月にかけて保険会社等から郵送されてくるため、忘れずに会社に提出するようにしましょう。申請書については、会社から受け取り、証明書などをもとに記載し、提出します。必要書類の添付が漏れていると控除が受けられないため、書類を紛失しないように注意しましょう。

年末調整でよくあるミス

年末調整には様々な書類が必要です。会社側で用意する書類だけでなく、従業員に用意してもらう証明書や、記載してもらう申請書もあるためミスが起こりがちです。

よくあるミスとしては、扶養関係の間違いや控除に関する間違いがあります。扶養家族の年間所得によっては扶養に含めることができなかったり、共働き家庭で夫婦共に子どもを扶養に入れてしまったりするケースなどが考えられます。

控除に関しては、証明書類を紛失してしまう従業員も出てくるでしょう。年末調整では同時期に大量の処理を行わなければならないため、ミスが起こらないよう細心の注意を払いましょう。

また、年末調整に当たっては 源泉徴収票の確認も大切です。源泉徴収票には甲・乙・丙といった区分があり、乙欄にチェックが入っているとそもそも年末調整を受けることができません。詳しく確認していきましょう。

源泉徴収票の「乙欄」にチェックが入っている

冒頭で「乙欄にチェックが入っていると年末調整が受けられない」とお伝えしましたが、そもそも源泉徴収票の甲・乙・丙といった区分は何を表しているのでしょうか。これらの区分は国税庁が提示している「給与所得の源泉徴収税額表」に対応しており、源泉所得税を決定する際に利用されます。

区分内容
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人が対象です。1社からのみ主たる給与を受け取っている場合はこちらに該当します。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人が対象です。2社以上から給与を受け取っており、従たる給与に該当する場合はこちらチェックが入ります。
日雇労働者や短期のパート・アルバイト従業員が対象です。

給与を1社からのみ受け取っている方は、それが「主たる給与」となるため、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していれば年末調整を受けることが可能です。

2社以上から給与を受け取っている方は、その給与が「主たる給与」か「従たる給与」かを判断する必要があります。年末調整は1人1社でしか受けられないため、「主たる給与」を受け取っている会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、年末調整を受けることになります。

たとえ1社でしか働いていない場合でも、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合は「従たる給与」と判断され、源泉徴収票の「乙欄」にチェックが入ります。こうなると年末調整は受けられず自身で確定申告をしなければならないので注意しましょう。

参考:令和4年分 源泉徴収税額表|国税庁

自分で控除を受ける場合は確定申告を行う

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合は、年末調整が受けられません。では、年末調整を受けずに各種控除を受ける方法はあるのでしょうか。それは、「確定申告」を行うことです。

年末調整は「会社の義務」であるため、個人で行うことはできませんが、代わりに各種控除を受けるための制度として確定申告が用意されています。扶養控除等申告書を提出していない方だけでなく、給与を2社以上から受け取っている方や年間の総所得が2,000万円を超える方は、必ず確定申告が必要です。忘れずに実施するようにしましょう。確定申告の手順については下記の記事で詳しく解説しています。

年末調整を忘れたもしくはミスした場合も確定申告を行う

必要書類を紛失したり、期限に間に合わずに年末調整を受けられなかった場合は、確定申告を行いましょう。年末調整は個人で行うことはできませんが、確定申告は実施可能です。また、スケジュールについても、確定申告は年末調整の後に実施されるため、年末調整でミスした場合は確定申告で取り戻すことが可能です。

ちなみに、年末調整と確定申告は両方実施しても問題ありません。重複した場合は確定申告の情報が優先されるルールになっています。確定申告は年末調整でのミスを取り戻す意味でも非常に重要です。一般的な会社員は年末調整のみで税務関係が完了するため、あまり意識されないかもしれませんが、確定申告に関する知識を深めることも大切です。

「乙欄」のチェックが入っており年末調整をミスした場合も、確定申告で控除を受けられる

年末調整でミスがあったら確定申告を行うようにお伝えしましたが、源泉徴収票の乙欄にチェックが入っていた場合も同様です。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していないと、源泉徴収票の乙欄にチェックが入り、年末調整が受けられません。確定申告を行えば各種控除を受けられるので、必ず実施しましょう。

必要な手続きを理解しミスなく年末調整しよう

今回は年末調整についてご紹介しました。年末調整は基本的に会社が行ってくれるため、あまり意識してこなかったかもしれません。しかし、必要書類の収集や申請書の記載は従業員が行う必要があります。また、源泉徴収票の乙欄にチェックが入っているか否かなど、特定の条件下では年末調整を受けることができないため、自ら確定申告を行う必要があります。年末調整を忘れた場合でも確定申告で取り戻すことができるため、年末調整・確定申告の正しい知識を身につけておきましょう。

よくある質問

年末調整は自分でもできますか?

年末調整は「会社の義務」なので個人で行うことはできません。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整の時期はいつですか?

年末調整は「その年の最後の給与を支払った時」に実施される手続きなので、多くの会社が12月に行います。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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