• 更新日 : 2024年4月19日

給料ファクタリングとは?仕組みや安全性、違法な事例・選び方を解説

給料ファクタリングとは、労働者がまだ受け取っていない給与を「給与債権」として売却し、給与支給日よりも前に現金化するサービスです。給料ファクタリングを騙る違法業者も多く、金融庁では注意を喚起しています。どのようなケースが違法とされるのか、具体的な事例や選び方について紹介します。

給料ファクタリングとは?

給料ファクタリングとは、労働者が勤務先から受け取る給与を「給与債権」として売却し、給与支給日よりも前に現金化する個人向けのサービスです。手数料が高く、年率で換算すると数百%にもなる悪質な業者もあるため、利用するときには注意が必要です。

給料ファクタリングの仕組み

給料ファクタリングは、次の手順に沿って手続きをする仕組みです。

  1. 利用者(労働者)が給料ファクタリング会社に給与債権を譲渡する
  2. 給料ファクタリング会社は利用者に給与額から手数料を差し引いて現金を渡す
  3. 給与支給日に利用者の勤務先から給与が支給される
  4. 支給された給与を給料ファクタリング会社に振り込む

なお、給与は債権ではありませんが、給料ファクタリングでは債権とみなして現金化をします。

給与前払いサービスとの違い

労働基準法第25条では、労働者に病気や災害などの特別な事情がある場合は、給与支給日前であってもすでに労働した対価に対しては支払いを請求できます。これを「給与前払いサービス」と呼ぶことがあります。

たとえば、月末締めで翌月25日に給与を支給する事業者に勤務している場合について考えてみましょう。ある月の20日に給与前払いサービスを利用するなら、当月1日~20日までに働いた分の給与を、本来の給与支給日に先駆けて受け取ることが可能です。

給与前払いサービスは労働基準法に定められた労働者の正当な権利のため、利用したとしても手数料は発生しません。しかし、給料ファクタリングは労働者が任意で利用するサービスのため、利用したときには手数料が発生します。

参考:厚生労働省|労働基準法に関するQ&A

給料ファクタリングが普及している理由

給料ファクタリングは手数料が高く、利用することで、実際に受け取れるはずの給与よりも少ない金額しか手にできなくなります。しかし、給料ファクタリングを利用する方は多く、関連するトラブルも後を絶ちません。

給料ファクタリングが普及している理由としては、次の点が挙げられます。

  • 現金化までのスピードが速い
  • 保証人なし・担保なしで利用できる
  • 勤務先に知られずに利用できる

それぞれの点について解説します。

現金化までのスピードが速い

給料ファクタリング会社によっては、短時間で審査が完了し、すぐに現金化できることもあります。申込んだ当日に現金を受け取れるケースもあり、今すぐお金が必要なときにも利用できます。

保証人なし・担保なしで利用できる

給料ファクタリングでは、給与支給日に支給される給与を債権に見立てて、お金を受け取ります。つまり、給与が担保としての役割を果たすため、別途、保証人を立てたり担保を設定したりする必要はありません。

勤務先に知られずに利用できる

給与前払いサービスは手数料がかからないサービスですが、利用するには勤務先に前払いをしてほしいと伝えなくてはいけません。お金が必要な事情も説明しなくてはいけないため、利用しにくいと感じる方も多いでしょう。

また、事情によっては前払いを却下される可能性があります。事情を話しても利用できないとなると、かなり大きなダメージを受けるかもしれません。

給料ファクタリングは安全なのか

そもそもファクタリングとは、債権を売却して現金化するサービスのことです。お金を借りるサービスではないため、利用者には返済の義務がなく、ファクタリング会社も貸金業者(業として貸金業を行う事業者)として登録する必要はありません。

しかし、給料ファクタリングでは、利用者自身が給与を受け取って給料ファクタリング会社に支払うため、貸金業に相当すると考えられます。そのため、貸金業登録をせずに給料ファクタリングを実施している事業者は、違法とみなされることがあります。

給料ファクタリングを利用するときは、貸金業登録をしているかどうか確認するようにしてください。また、登録している場合でも、手数料が高すぎないかチェックすることが大切です。

給料ファクタリングの問題点

給料ファクタリングでは、次の点が問題視されることがあります。

  • 違法な高金利が適用されることがある
  • かえって生活が厳しくなることがある

それぞれの問題点について解説します。

違法な高金利が適用されることがある

給料ファクタリングが貸金業に相当する場合、手数料は利息制限法に適ったものでなくてはいけません。利息制限法では、上限金利を以下のように定めています。

元金適用金利(年率)
10万円未満年20.0%以下
10万円以上100万円未満年18.0%以下
100万円以上年15.0%以下

上限金利を超える金利が適用されるときは違法です。契約前に手数料を計算し、基準を超える高金利が適用されるときは利用しないようにしてください。

参考:日本貸金業協会|上限金利について

かえって生活が厳しくなることがある

給料ファクタリングを利用すると、本来受け取れる給与を下回る金額しか受け取れなくなってしまいます。また、手数料が高い場合には、生活が厳しくなり、別の場所からもお金を借りることになりかねません。

複数の金融機関から借りることを「多重債務」といいますが、返済管理が複雑になることから、借りる前よりも生活が苦しくなることが多い点が問題視されています。多重債務に陥らないためにも、手数料が割高なサービスを利用しないようにしてください。

給料ファクタリングの違法な事例

給料ファクタリングの違法な事例として多く摘発されているのが、高額手数料のケースです。ある給料ファクタリング会社では、4日後に受け取る給与7万円分を債権として、手数料3万円を請求しました。4日間で3万円の手数料を払って4万円を受け取るのは、年率に換算すると約6,844%(年365日で計算)となり、明らかに違法です。

また、あるファクタリング会社では、社会通念上、許容しがたい取り立てを実施しました。取り立て行為によっては、恐喝罪や脅迫罪などが成立することもあります。悪質なファクタリング会社を利用しないためにも、慎重に利用会社を見極めることが大切です。

中小企業・個人がファクタリング会社を選ぶポイント

債権を買取り、現金化するファクタリング自体は、合法的なサービスです。しかし、ファクタリングサービスを提供する事業者の中には、違法なサービスを提供していることや、貸金業であるにもかかわらず貸金業登録をしていない事業者もあるため注意が必要です。

トラブルに巻き込まれたり、利用したことでかえって資金繰りが悪化したりしないためにも、次のポイントに注目してファクタリング会社を選ぶようにしてください。

  • 手数料が明瞭かつ合法
  • 貸金業登録をしている

ファクタリングの種類のうち、ファクタリング会社と利用者の2者間でのみお金をやり取りする「2者間ファクタリング」は、貸金業に該当すると判断されることがあります。そのため、ファクタリングを利用する場合であっても、ファクタリング会社が貸金業登録をしているかどうか確認しておくと安心です。

以下の金融庁のホームページから、貸金業登録の確認が可能です。ファクタリングを利用する前に、チェックしてみてください。

参考:金融庁|登録貸金業者情報検索サービス

給料ファクタリングの利用は慎重に

悪質な事業者も多いことから、金融庁では給料ファクタリングを利用しないようにと呼びかけています。実際に違法な高金利や取り立てに悩まされるケースや、利用したことでかえって資金繰りが厳しくなったケースも多く、注意が必要です。

給料ファクタリングを利用する前に、給与前払いサービスの利用も検討してみてください。合法的に利用でき、なおかつ手数料が発生しないため、生活に影響がおよびにくい傾向にあります。


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