• 更新日 : 2026年9月11日

ポジティブアクションとは?企業が推進するにはどうすればいい?メリット・手順を解説

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Pointポジティブアクションとは何か?

ポジティブアクションとは、職場の男女格差を是正するために企業が自主的に行う積極的な取り組みです。

  • 採用・育成・職場環境の3分野が主な対象
  • 女性優遇ではなく「格差の是正」が目的
  • 2026年4月から情報公表義務が拡大

Q. ポジティブアクションは男性への逆差別にならないのか?

A. 男女雇用機会均等法第8条で「格差是正のための措置は違反しない」と明確に定められており、逆差別には該当しません。

ポジティブアクションとは、職場における男女の格差を解消するため、個々の企業が自主的に行う積極的な取り組みのことです。社会的・構造的な差別による不利益をなくし、誰もが活躍できる機会の提供や多様性の確保を目指します。本記事では、ポジティブアクションの概要や注目される背景、推進によるメリット、実施のプロセスまでをわかりやすく解説します。

ポジティブアクションとは?

ポジティブアクションとは、男女間の「事実上の格差」を解消するための、企業の自主的な取り組みのことです。

固定的な男女の役割分担意識や過去の慣行によって生じている不平等を是正し、実質的な機会の公正(エクイティ)を実現することを目的としています。単に女性の採用数を増やすことだけを指すのではなく、以下のような幅広い取り組みが含まれます。

  • 女性が少ない職域への配置
  • 管理職への積極的な登用
  • キャリア継続を支援する環境整備

重要なのは、能力や実績を無視して女性を優遇するのではなく、構造的に生じているスタートラインの不平等を是正するための施策であるという点です。

参考:ポジティブ・アクション(女性社員の活躍推進)に取り組まれる企業の方へ|厚生労働省

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ポジティブアクションとアファーマティブアクション、DEIの違いは?

ポジティブアクションとアファーマティブアクション、DEIは、対象範囲や役割が異なる概念です。それぞれの位置づけを整理します。

アファーマティブアクションとの違い

ポジティブアクションとアファーマティブアクションは、対象とする範囲の広さが異なります。アファーマティブアクションは、人種や民族、障がい者、性的マイノリティなども含めた、より広い範囲の歴史的・構造的な差別に対する是正措置全般を指す包括的な概念です。一方、日本では特に厚生労働省や内閣府男女共同参画局などの行政が、男女間の雇用機会・待遇格差の是正に焦点を当てた取り組みを「ポジティブアクション」と呼んで推進しており、両者は上位・下位の関係にあるといえます。

DEIとの関係性

ポジティブアクションは、DEIという大きな目標を達成するための具体的な手段の一つです。DEIとは、多様性(Diversity)、公正性(Equity)、包摂(Inclusion)の頭文字を取った、多様な人材が活躍できる組織づくりの考え方であり、近年は経営戦略の一環として企業に浸透しています。

要素 内容
Diversity(多様性) 性別、年齢、国籍、価値観などが多様な人材が組織内に存在すること
Equity(公正性) 個々の状況や差を考慮し、誰もが同じスタートラインに立てるようリソースや機会を配分すること
Inclusion(包摂) 多様な人材が尊重され、能力を最大限に発揮できる状態

中でもポジティブアクションは、この「エクイティ(公正性)」を確保するための重要な手段と位置づけられており、DEI推進の初期段階でまず取り組むべき施策として企業に定着しつつあります。

ポジティブアクションが注目されている背景とは?

法律の整備によって男女の雇用機会は形式的に平等になりましたが、それだけでは埋まらない「事実上の格差」が依然として深刻な課題です。

法律による「機会の平等」とその限界

1986年に男女雇用機会均等法が施行され(その後1997年や2006年の改正で差別禁止範囲はさらに拡大)、募集・採用・昇進などにおける性別を理由とした差別が禁止され、女性の雇用機会は大きく拡大しました。これにより多くの企業で「機会の平等」は制度上、確保されるようになりました。しかし、法律だけでは長年社会に根付いてきた「管理職は男性」「アシスタントは女性」といった固定的な性別役割分担意識を完全に払拭するには至らず、機会はあってもキャリア形成の過程で格差が生じるという課題が残っています。

データで見る依然として大きい男女間の格差

法律施行から数十年が経過した現在も、日本の男女格差は国際的に見て大きいままです。世界経済フォーラムが2025年6月に公表した「Global Gender Gap Report 2025」によると、日本の総合順位は148カ国中118位で、G7諸国の中では最下位圏にとどまっています。また、女性管理職比率についても依然として低い水準です。厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」によると、管理職等に占める女性の割合は、部長相当職9.2 %、課長相当職13.2%、係長相当職20.9%となっており、全体としては前年度から緩やかに上昇したものの、政府目標の30%には遠く及びません。

役職 令和7年度 令和6年度
係長相当職 20.9 % 21.1%
課長相当職 13.2 % 12.3%
部長相当職 9.2 % 8.7%

参考:令和7年度雇用均等基本調査結果|厚生労働省

ポジティブアクションを推進するメリットは?

ポジティブアクションは、社会貢献だけでなく、企業の競争力強化に直結する多くのメリットをもたらします。

企業の成長とイノベーション促進

多様な視点が組織に加わることで、新たなアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。例えば、女性向けの商品・サービス開発に女性社員が携わることで、これまで見落とされていた顧客のニーズを的確に捉えたヒット商品が生まれる可能性もあるでしょう。性別に偏らない多様な人材の活躍は、変化の激しい市場環境において企業が持続的に成長していくための重要な原動力となります。

優秀な人材の確保と離職率の低下

ジェンダー平等を推進する企業という評判は、採用市場において大きな魅力となります。特に労働力不足が続く現代において、性別を問わず優秀な人材を確保するための強力なアピールポイントとなるでしょう。また、公正な評価やキャリアアップの機会がある職場は、社員のエンゲージメントを高め、意欲の高い社員の離職率低下にもつながります。

企業イメージとESG評価の向上

ポジティブアクションへの取り組みは、企業の社会的評価を大きく向上させます。SDGsへの貢献はもちろん、投資家が重視するESG(環境・社会・ガバナンス)評価においてもプラスに働くでしょう。良好な企業イメージは、顧客や取引先からの信頼獲得、採用競争力の向上、ひいては企業価値全体の向上に直結する重要な経営課題として位置づけられています。

参考:ESGの概要|内閣府

助成金の活用によるコスト負担の軽減

国は、女性活躍や仕事と家庭の両立を推進する企業を支援するため、助成金制度を用意しています。代表的なものに両立支援等助成金があり、行動計画の策定や職場環境の整備、両立支援制度の導入などに取り組む企業が対象となる場合があります。こうした制度をうまく活用することで、研修や制度導入にかかるコスト負担を軽減しながら取り組みを進めることが可能です。助成金の詳細は年度によって変わるため、必ず厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。

ポジティブアクションを推進する注意点は?

ポジティブアクションは効果的な取り組みですが、進め方を誤ると社内の混乱や形骸化を招く可能性があります。

採用・選考プロセスにおける法的リスク

女性の採用を促進する場合でも、求人広告で安易に「女性限定」とすることは原則として男女雇用機会均等法(第5条)違反のリスクがあります。「ポジティブ・アクション募集」と明記するには、対象となる雇用管理区分(職種や役職など)における女性の比率が4割を下回っているなど、客観的な根拠が必要です。また面接においても、交際状況や結婚・出産の予定、就業継続の意思など、応募者の適性や能力と関係のない質問は法の趣旨に反するおそれがあるため避けなければなりません。

取り組みが形骸化するリスク

「女性管理職比率〇%」といった数値目標の達成だけが目的化してしまうと、中身の伴わない形骸化した取り組みになりがちです。なぜその目標が必要なのか、達成することで組織がどう変わるのかという本質的な目的を、経営層から現場まで丁寧に共有することが欠かせません。管理職向けの意識改革研修などを実施し、単発の施策で終わらせず継続的な取り組みとしてセットで進めることが重要です。

ポジティブアクションで求められる法制度上の対応とは?

ポジティブアクションを推進するにあたり、企業は「男女雇用機会均等法」と「女性活躍推進法」を正しく理解する必要があります。

男女雇用機会均等法と「逆差別」への考え方・伝え方

格差是正を目的としたポジティブアクションは、男女雇用機会均等法に違反しません。同法は性別による差別を原則禁止しているため「女性への優遇措置は男性への逆差別になるのでは」という懸念が生じることがありますが、同法第8条(女性労働者に係る措置に関する特例)は、これまでの慣行などから生じている男女間の事実上の格差を解消するための特別な措置は「法に違反しない」と明確に定めています。社内では、施策の目的があくまで「格差の是正」であり、多様性の確保が企業全体の生産性向上につながるという視点を丁寧に共有することが求められます。

女性活躍推進法に基づく対応義務が2026年4月から拡大

2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上の企業を対象に、行動計画の策定・届出に加え、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の情報公表が新たに義務化されました。これまで男女間賃金差異の公表は301人以上の企業が対象でしたが、対象範囲が101人以上の企業へと拡大され、女性管理職比率も新たな必須公表項目として加わっています。あわせて、女性活躍推進法自体の有効期限も2036年3月31日まで10年間延長されました。行動計画やこうした情報公表は、各企業におけるポジティブアクションの具体的な設計図となります。取り組みの実施状況が優良であると認められると、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受けられる場合があり、企業イメージの向上にもつながります。

参考:解説「改正女性活躍推進法(令和8年4月施行)の概要・ポイント」|労働政策研究・研修機構(JILPT)

ポジティブアクションの具体的な取り組み例は?

ポジティブアクションの取り組みは、主に「採用」「育成・登用」「職場環境」の3分野で考えることができます。

採用|社員の女性比率を増やす

採用活動におけるポジティブアクションの目的は、単に応募者の母数を増やすだけでなく、これまで十分にアプローチできていなかった層にも自社の魅力を伝えることです。そのためには、情報発信の工夫と採用プロセス自体の公平性を見直すことが重要になります。具体的には、ウェブサイトやSNSで多様な働き方をする女性社員のキャリア事例を紹介して将来のロールモデルを提示するほか、女性求職者向けの会社説明会や座談会を企画し、求人票の性別による偏見表現をなくし、面接官にも多様な人材を配置するなど選考過程全体を見直す取り組みが有効です。

育成・登用|管理職に就く女性を増やす

女性管理職を増やすには、対象となる女性社員の意欲とスキルを高めるだけでなく、評価・登用する側の意識改革も同時に行う必要があります。公平な制度設計と、個々のキャリアに寄り添う支援の両輪で進めることが効果的です。具体的には、昇進・昇格の基準を明確に公開し評価者のアンコンシャス・バイアスを減らす研修を実施するほか、将来の管理職候補となる女性社員を選抜して経営層も関わる育成プログラムを提供し、ロールモデルとなる先輩社員が相談に乗るメンター制度を整備・活性化させることが挙げられます。

職場環境|誰もが働きやすく、活躍し続けられるために

女性の職域を広げ、ライフイベント後もキャリアを継続できる環境を整えることは、結果的に全社員の働きやすさに繋がります。リモートワークやフレックスタイム制度、時短勤務、時間単位の有給休暇などを導入・拡充し、育児や介護といった事情に関わらず誰もが働き続けやすい環境を整備することが基本です。あわせて、来客対応やお茶出し、清掃は女性社員が担当するといった固定観念や慣習を見直し、性別に関係なく全員が業務に集中できる公平な職場風土を醸成することも欠かせません。

ポジティブアクションを社内で成功させる手順は?

ポジティブアクションを社内で成功させるには、計画的にステップを踏むことが大切です。

ステップ 内容
ステップ1 準備と体制づくり 経営層・管理職への説明と、人事だけでなく現場部門も巻き込んだ推進チームづくり
ステップ2 現状の分析と課題の発見 部署ごとの男女比率、勤続年数の差、女性管理職の人数などを客観的データで可視化
ステップ3 目標設定と計画の作成 現実的で挑戦的な数値目標を設定し、担当・期限を明確化して全社で共有
ステップ4 施策の実行と社内への周知 計画に沿って施策を実行し、進捗や目的を定期的に全社員へ発信
ステップ5 振り返りと次の改善 定期的に進捗を確認し、うまくいった点を分析して成功事例を共有・称賛する

ポジティブアクションの実践事例は?

厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト」の企業事例集から、先進的な取り組み事例を紹介します。

参考:女性の活躍推進や両立支援に積極的に取り組む企業の事例|女性の活躍・両立支援総合サイト(厚生労働省)

事例1. イオンモール株式会社(小売業)

小売業界をリードするイオンモールは「2025年度までに女性管理職比率30%」という明確な目標を掲げ、人材育成と両立支援を一体的に推進しています。女性社員向けのキャリア形成支援研修やリーダー候補向けメンター制度を設置し、出産・育児期もキャリアを継続できるよう短時間勤務と在宅勤務を柔軟に併用できる制度を整備しました。評価・昇進の基準も透明化し、男女差のない昇格要件を明示した結果、女性管理職比率は2023年度末時点で22.6%まで上昇しています。

参考:イオンモール株式会社|女性の活躍・両立支援総合サイト(厚生労働省)

事例2. 富士ソフト株式会社(情報通信業)

IT業界の富士ソフトは、女性活躍推進法に基づく「えるぼし(3段階目)」や「プラチナくるみんプラス」認定企業です。「ゆとりとやりがい」を基本方針に、コアタイムなしのフレックス制度と30分単位で有休を取得できる制度を組み合わせた独自の勤務制度を導入し、休暇制度を再編して不妊治療休暇や従業員の健康管理のためのヘルスケア休暇を新設しました。育児のための短時間勤務制度や在宅勤務制度など柔軟な働き方の整備を通じ、法定以上の手厚い両立支援体制を実現しています。

参考:富士ソフト株式会社|女性の活躍・両立支援総合サイト(厚生労働省)

事例3. 大成建設株式会社(建設業)

男性中心のイメージが強い建設業界において、10年以上にわたり継続的なポジティブアクションを実践してきたのが大成建設です。技術職や営業職など従来は女性が少なかった職域への拡大を推進し、女性が快適に働けるよう建設現場の設備を改善するとともに、女性のキャリア支援研修や男性上司向けの意識改革研修も実施しています。法定以上の育児休業・短時間勤務制度に加え、男性の育児休業取得も奨励した結果、女性技術職は2006年の10数名から約190名まで増加し、目標であった比率10%にほぼ到達しています。

参考:大成建設株式会社|女性の活躍・両立支援総合サイト(厚生労働省)

ポジティブアクションで働きやすい職場を実現しよう

ポジティブアクションは、法制度だけでは埋められない男女間の格差を是正し、多様な人材が活躍できる組織をつくるための重要な施策です。2026年4月の女性活躍推進法改正により情報公表の義務も拡大されたいま、自社の現状分析から着手し、実質的な公正性(エクイティ)の実現に向けた一歩を踏み出しましょう。

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