• 更新日 : 2024年6月21日

ポジティブアクションとは?推進のメリットや実施手順を紹介

ポジティブアクションとは、職場における男女の格差を解消するため、個々の企業が積極的に行う取り組みのことです。社会的・構造的な差別による不利益をなくし、誰でも活躍できる機会の提供や多様性の確保を目指します。

本記事では、ポジティブアクションの概要や注目される背景、推進によるメリット、実施のプロセスなどを解説します。

ポジティブアクションとは

ポジティブアクションとは、社会的・構造的な差別による不利益を是正する取り組みのことです。固定的な男女の役割分担意識から「管理職は男性が大半を占める」「営業職に女性はほとんどいない」といった男女間の差異が存在する場合、 これを解消するために企業が行う自主的な取り組みを指します。

ポジティブアクションの推進は内閣府男女共同参画局が中心となり、企業による主体的な女性活躍推進を促すために実施されています。

アファーマティブ・アクションとの違い

ポジティブアクションと似た言葉にアファーマティブ・アクション(Affirmative Action)があります。アファーマティブ・アクションとは、過去の社会的・構造的な差別の影響により不利益を受けている集団に対し、実質的な平等をもたらす機会を提供する取り組みです。

不利益を受けている集団には女性をはじめ、有色人種や少数民族、障害者などが含まれます。

アファーマティブ・アクションはポジティブアクションと同義で使われることもありますが、日本ではポジティブアクションを特に「女性労働者」に向けた改善措置として押し出しています。アファーマティブ・アクションは、より包括的な意味で捉える言葉といえるでしょう。

ポジティブアクションは均等法違反になる?

男女雇用機会均等法では、性別を理由とした差別的取扱いを原則禁止しています。そのため、ポジティブアクションで女性に対する優遇措置を設けることは、男性に対する逆差別として均等法違反になるのではないかと思われるかもしれません。

しかし、男女雇用機会均等法第8条では、過去の女性労働者に対する取り扱いによって生じている男女間の格差を解消するために行う取り組みは、法に違反しないことが明記されています。

そもそも、男女雇用機会均等法はあくまでも「雇用」における機会を平等に確保する目的で定められたもので、部署間や役職における格差までは解消できていません。均等法では是正できなかったこれらの格差をなくすために実施されているのが、ポジティブアクションの取り組みです。

ポジティブアクションが注目されている背景・歴史

ポジティブアクションが注目されている背景には、日本における女性の社会進出が低い水準にとどまっているという現状があります。

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、数回の改正を経てさまざまな差別の禁止措置がとられるなど、雇用における男女平等が推進されてきました。これにより女性の参画は徐々に増えてはいるものの、他の先進諸国と比較して未だ低い水準にあり、その差は拡大している傾向にあります。

社内制度で男女間の差別をなくしても、固定的な男女の役割分担意識は残り、特定の職種に女性がいない・管理職の大半を男性が占めているという企業は少なくありません。

未だに多く残る男女間の格差を解消し、実質的な機会の平等と多様性を確保するために、内閣府男女共同参画局の主導のもとにポジティブアクションが推進されています。

ポジティブアクションを推進するメリット

ポジティブアクションを推進することは、女性社員の長期就労に繋がるなど、企業にとってさまざまなメリットがあります。詳しくみていきましょう。

女性社員のキャリア意識の向上・長期就労に繋がる

ポジティブアクションによって活躍の場が広がれば、女性社員のキャリア意識が向上します。仕事に対して主体的に取り組めるようになり、モチベーションも高まるでしょう。

また、仕事と家庭の両立を支援する取り組みを行い、継続してキャリア形成できる仕組みを整えれば、将来のキャリアを描きやすくなります。長期就労も期待できるでしょう。

働きやすい職場の実現

ポジティブアクションは、企業の意識・体制の改革を伴うため、男女ともに働きやすい環境を実現します。多様な働き方の採用や業務効率化を図ることも可能です。

女性社員の活躍の場が増えることは、企業の成長にも繋がります。商品開発やプロジェクトで女性の意見が取り入れられる機会が増え、新たな商品・サービスの開発など、事業が成長する可能性も広がるでしょう。

採用面で有利になる

男女格差のない働きやすい環境は求職者にも魅力的であり、採用面でも有利に働きます。

近年は人手不足に悩む企業が多く、人材を確保するためには女性も積極的に採用していかなければなりません。

ポジティブアクションに取り組む会社は女性にとって働きやすく、応募者が増えることが期待できます。人材確保や採用コストの削減も図れるでしょう。

多様性の尊重に繋がる

ポジティブアクションは、女性をはじめとする多様な人材が参画する機会を確保するため、多様性の尊重に繋がります。多様な人材の発想や能力を活用することで、組織の活性化や競争力の強化を図れるでしょう。

性別や世代が偏ったチームでは考え方が固定化し、イノベーションを起こしにくいという問題があります。ポジティブアクションの推進で多様性を確保すれば、さまざまな異なる視点の意見が集まり、革新的なアイデアも出やすくなるでしょう。その結果、世間のニーズによりマッチした画期的な商品・サービスの創造に繋がります。

企業イメージの向上

ポジティブアクションで女性が活躍する職場になれば、企業イメージが向上します。国連総会で採択された世界共通の目標・SDGsの「ジェンダー平等を実現しよう」の取り組みにも繋がり、対外的に「社員を大切にしている企業」というイメージを与えるでしょう。

BtoC企業であれば消費者へのアピールになり、直接的な売上に貢献します。企業イメージの向上は株主からの投資にも繋がり、取引先や転職市場などへのアピールにもなるでしょう。

ポジティブアクションを行わないことで生じる問題

ポジティブアクションに取り組むことでさまざまなメリットがありますが、反対に取り組まない場合、人材確保が難しくなるなどの問題が発生しやすくなります。

ポジティブアクションを行わないことでどのような問題が起こるのか、詳しくみていきましょう。

人材獲得が困難になる

ポジティブアクションを行わないと、人材確保が難しくなるというリスクがあります。

近年は少子高齢化により、多くの企業が人手不足に悩まされています。また、働き方が多様化していることで、求職者にとっては、ライフワークバランスのとれた働きやすい職場であることも応募先を選ぶときの判断基準となっています。

性別を問わず働きやすい環境が整っていない会社は、女性の求職者から敬遠される傾向にあるといえるでしょう。

優秀な人材の流出

ポジティブアクションを行わないと、優秀な人材が流出するリスクもあります。活況にある転職市場において、従業員はより働きやすい環境を求めて転職活動を行う傾向にあります。

ポジティブアクションに取り組まず、環境整備や制度改革を行わない企業は、キャリア形成への意欲も失われるでしょう。

長く働き続けたいと思わせる魅力がない職場は、優秀な人材の離職を止められません。

社員のモチベーション低下

ポジティブアクションに取り組まないことで、社員のモチベーションも低下します。旧体制を維持して変革をしようとしない体質では、社員も成長への意欲を失うでしょう。

モチベーションの低下は業務の遂行にも影響し、組織全体の生産性を下げることにもなります。変化の激しいビジネスシーンでは、市場競争から取り残される可能性があるでしょう。

ポジティブアクションの具体例・施策例

ポジティブアクションの具体的な取り組みには、一例として次のような内容があげられます。

  • 社員の女性比率を増やす
  • マネジメント・指導的地位に就く女性の割合を増やす
  • 女性の職域を拡大する
  • 女性の就労継続(産休・育休後)の支援

詳しくみていきましょう。

社員の女性比率を増やす

ポジティブアクションの代表的な取り組みが、「女性比率の向上」です。男女の比率をできるだけ「5:5」に近づけるため、女性の採用枠を増やして応募を促す取り組みが求められます。

応募を促す取り組みとしては、次のようなアクションが考えられます。

  • 会社案内で女性社員が活躍している様子を紹介する
  • 求人先に女性の多い学校・学科を含める
  • 女性求職者を対象とする会社説明会・職場見学会を開催する

また、採用の際は職場ごとに目標とする女性比率の数値を設定し、達成に向けて採用活動を進めるとよいでしょう。

マネジメント・指導的地位に就く女性の割合を増やす

マネジメント・指導的地位など管理職に就く女性の割合を増やす取り組みも必要です。女性の管理職を増やすためには、次のような取り組みが求められます。

  • 昇進・昇格規定の見直し
  • 人事評価の明確化
  • 昇進・昇格試験の受験を奨励
  • 各種研修への女性の参加を奨励
  • 上司や経営層の意識改革
  • ロールモデルとなる管理職候補の女性の育成
  • メンター制度の導入

女性社員の目標にもなる女性の管理職を増やすことで、さらにマネジメント・指導的地位に就く女性の割合を増やせるでしょう。

女性の職域を拡大する

女性の職域を拡大し、これまで女性が少なかった職種や職務に女性を配置するのもポジティブアクションの具体例です。

職域の拡大には、受け入れる職場の環境整備も求められます。

具体的な取り組みとしては、次の内容があげられます。

  • 男女ともに使いやすい設備・機器を導入する
  • 業務内容やマニュアルを見直し、性別を問わず作業しやすい環境にする
  • 配置する女性の教育訓練を行う

これらソフト・ハード両面の環境整備により、これまでは男性の割合が高かった営業職や専門技術職などの職種に就く女性を増やすことが可能です。

女性の就労継続(産休・育休後)の支援

出産や育児などライフスタイルの変化により、就労の継続が難しくなる女性は少なくありません。働き方を変えれば就労を継続できる女性に向けて、ワークライフバランスの実現・支援を行うこともポジティブアクションのひとつです。

取り組みとして、次の内容があげられます。

  • 産前産後休暇・育児休業の期間延長
  • 短時間勤務制度の期間延長、利用条件の緩和
  • 有給休暇の時間単位での取得

これらの制度を取得・活用しやすい環境づくりも必要です。社内全体に制度を周知し、取得への理解を深める取り組みが求められます。

ポジティブアクションを行うプロセス

ポジティブアクションの取り組みは企業ごとに異なりますが、基本的にはこのあとに紹介する流れに沿って行います。

ここでは、ポジティブアクションを行う5つのプロセスを解説します。

① 現状分析・問題点の発見

まず、女性社員が現在どのように活躍しているか現状を分析し、問題点を発見します。「女性の採用数が少ない」「女性管理職の比率が低い」「女性社員がいない職場がある」など、女性社員が置かれている状況に問題がある場合、その原因を分析して改善すべき課題を見極めることが必要です。

現状分析の方法として、個別アンケートやヒアリング、グループディスカッションなどがあげられます。

② 目標設定・計画の作成

発見された問題点を解決するため、ポジティブアクションの目標設定と、「誰が」「いつまでに」「何に取り組むか」について、計画の作成を行います。

ポジティブアクションの目標を設定する場合は、客観的に評価できるよう、「社内における女性の比率を〇%上げる」「女性の管理職を〇人増やす」など、具体的な数値で設定しましょう。その上で、その目標を達成するための具体的な施策を検討してください。

③ 施策具体案の作成

ポジティブアクションの計画に沿って、具体的な施策を作成します。例えば、「女性の採用比率を30%上げる」という目標を設定した場合、具体的施策としては、採用面接に女性面接官を配置したり女子学生向けの説明会を開いたりする内容があげられます。

また、「出産・育児に伴う女性社員の離職率を40%低下させる」という目標には、テレワークやフレックスタイム制を導入するなどの取り組みが考えられるでしょう。

④ 施策の実施

施策の実施にあたっては、障害に直面することもあります。その際は、問題がなぜ起きるのかを検討し、改善策を考えましょう。

計画通りに進まないときは無理に進めようとせず、一度計画をストップして現状を確認することも必要です。どこがうまくいかないのかを考え、進捗状況に応じて柔軟に計画を修正していきましょう。

⑤ 施策の振り返り・目標達成度の評価

施策を開始したら、一定期間ごとに振り返りを実施し、目標達成度の評価を行いましょう。成果は社内に公表することで、ポジティブアクションへの理解を深め、協力を促す効果に繋がります。

効果検証で十分な成果が出ていない場合は、原因を究明し、改善策を考えます。必要に応じて、計画の見直しを検討することも大切です。

ポジティブアクションで働きやすい職場を実現しよう

ポジティブアクションは、女性が職場で活躍できる環境を整える企業の取り組みです。推進により、離職率の低下やモチベーションアップ、企業イメージの向上などさまざまなメリットがあります。

実際にポジティブアクションを進めるためには、現状分析や問題点の洗い出し、目標の設定、計画・施策の作成といったプロセスが必要です。

まずは自社の現状を把握し、適切な施策を作成・実施していきましょう。


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