- 更新日 : 2021年12月16日
源泉徴収が必要な報酬と注意事項を徹底解説!
事業を行っていると、個人事業主でも報酬を支払う機会があります。身近なところでは、税理士や社会保険労務士に報酬を支払っている方もいるでしょう。これらの報酬を支払う場合も、条件を充たせば源泉徴収をしなければなりません。では、源泉徴収が必要な報酬とは具体的にはどのようなものでしょうか。ここでは、源泉徴収が必要な報酬・料金の事例と源泉徴収を行う際の注意点について説明します。
源泉徴収が必要な報酬・料金
報酬を支払う相手は、個人である場合と、法人である場合があります。いくつか代表的なケースをご紹介します。
個人に報酬・料金を支払う場合
(1).作家や大学教授などに原稿や講演を依頼した場合の原稿料や講演料は、源泉徴収が必要な報酬・料金
原稿料や講演料などを報酬・料金として支払う場合、下記に注意が必要です。
(1)-a調査費、取材費、車代といった名目で支払っても、実態が原稿料や講演料と同じならば、源泉徴収の対象です。
(1)-b.旅費や宿泊費は報酬・料金に含みます。ただし、支払い者が直接ホテルや旅行会社へ支払い、その料金が通常の範囲内ならば、報酬・料金等に含めなくても大丈夫です。
(1)-c.懸賞小説・文学賞の応募作品の入選者への支払いや新聞、雑誌の投稿の謝礼金は、5万円以下であれば源泉徴収をする必要はありません。
(1)-d.試験問題の出題料や答案の採点料は、原稿料になりません。
(2).弁護士、税理士、司法書士など、特定の資格を持つ人への報酬・料金
(3).社会保険診療報酬支払基金が、個人経営の診療所などに支払う診療報酬
(4).プロ野球選手などのプロのスポーツ選手、モデル、保険外交員、集金人などに支払う報酬・料金
(5).個人で経営する芸能プロダクションや芸能人に支払う報酬・料金
(6).バーやキャバレーのホステス、パーティコンパニオンなどに支払う報酬・料金
(7).ホステスやコンパニオンに支払う報奨金、衣装代、深夜帰宅のタクシー代は、報酬・料金に含まれます。
(8).プロのスポーツ選手などと専属契約を結ぶ際に支払う契約金
(9).クイズ番組の獲得賞金など広告宣伝が目的の賞金や賞品、および個人の馬主に支払う賞金(広告宣伝を目的とした賞金等の額が50万円以下の場合、源泉徴収の対象になりません)
法人に報酬・料金を支払う場合
競馬で賞金を受ける馬主が法人の場合、その賞金は源泉徴収の対象となる報酬・料金です。
源泉徴収をする場合に注意する事項
前項を踏まえた上で、報酬・料金の源泉徴収について、間違えやすい注意すべきことを下記に列挙します。
1.実際の内容が報酬・料金であるものを、取材費、車代、謝礼の名目で支払ったとしても、それは源泉徴収の対象となります。ただし、報酬を支払う人が、直接交通機関やホテルなどに支払ったものは報酬・料金に含めなくても大丈夫です。この場合の交通費、ホテル代は、あくまでも常識の範囲の料金となります。
2.金銭の代わりに物品で支払っても、報酬・料金とみなされます。
3.報酬・料金に消費税が含まれている場合、請求書上で報酬・料金額と消費税額が明確ならば、その報酬・料金額のみを源泉徴収の対象とすることができます。報酬・料金額と消費税額が明確でない場合には、消費税を含めた金額が源泉徴収の対象となる報酬・料金となります。 顧問税理士に、源泉徴収後の手取り金額で月々の報酬を支払っている事業者も多いでしょう。手取り契約とは、報酬の支払額を税引き後の手取り額で契約をしている場合です。手取り契約の場合は、特別な計算方法で源泉徴収を行う必要があります。
4.手取り額が89万7,900円以下(支払報酬額100万円以下)の場合は、税率10.21%で計算 支払報酬金額の計算
手取り額÷0.8979となり、源泉徴収税額は、上記の支払報酬金額×10.21%です。
例:手取り額50万円の場合
支払報酬金額:500,000÷0.8979=55万6,854円
源泉徴収額:56,854円
5.手取り額が89万7,900円超(支払報酬額100万円超)の場合は、二段階税率を適用
手取り額が89万円7,900円(支払報酬額100万円)までは10.21%で計算し、100万円を超えた部分について20.42%で計算します。
源泉徴収税額は、(上記の支払い報酬金額 - 1,000,000)×20.42%+102,100です。
例:手取り額150万円の場合
支払報酬額 :(1,500,000-897,900)÷0.7958+897,900÷0.8979=756,597+1000,000=1,756,597円
源泉徴収額:256,597円
まとめ
源泉徴収の対象となる報酬・料金の範囲は多岐にわたっているため、なかなか把握しにくいものです。すべてを把握する必要はありませんが、自分の事業に関する支払い報酬・料金については、きちんと理解することが大切です。また、支払いの際には、報酬の内容が適切かどうか確認し、正しく計算しましょう。特に、手取り契約の場合は、源泉徴収金額の計算は注意が必要です。
参考:
国税局ホームページ「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
国税局ホームページ「原稿料や講演料等を支払ったとき」
国税局ホームページ「手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法」
源泉徴収の計算
源泉徴収票の見方を理解しよう!
よくある質問
源泉徴収が必要な報酬を支払う相手が法人である場合の代表的なケースは?
競馬で賞金を受ける馬主が法人の場合、その賞金は源泉徴収の対象となる報酬・料金です。詳しくはこちらをご覧ください。
源泉徴収をする場合に注意することは?
実際の内容が報酬・料金であるものを取材費、車代、謝礼の名目で支払ったとしてもそれは源泉徴収の対象となること、金銭の代わりに物品で支払っても報酬・料金とみなされること、などが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
手取りは「天引き後」の給与!どこから何が差し引かれているか知っておこう
「手取り」「年収」「額面」など、給与額を表現する言葉には様々なものがあります。しかし実はそれぞれの言葉がどんな数字を意味するのかを、よくわからない人も多いのではないでしょうか。 ここではそれぞれの言葉の意味を説明するとともに、手取りがどうや…
詳しくみる【2024年最新】定額減税とは?給付金・所得税・住民税についてわかりやすく解説!
2024年は所得税と個人住民税において、一律の金額が控除される定額減税が実施されます。減税額は1人あたり所得税3万円、住民税1万円の合計4万円です。会社は6月給与から減税処理を開始し、2024年中の給与支払いにおいて減税分を控除するまで処理…
詳しくみる6月以降に中途入社した従業員の定額減税はどうなる?
定額減税は、従業員の税負担を軽減するための重要な制度です。しかし、6月以降に中途入社した従業員に対しては、月次減税が適用されないため、特別な対応が必要となります。 本記事では、6月以降に中途入社した従業員に対する定額減税の対応方法について、…
詳しくみる定額減税には手続きが必要?従業員と担当者両方の観点から解説
令和6年度税制改正に基づき、6月以降に支払われる給与等で所得税や住民税の定額減税が行われます。定額減税にあたり、従業員においては手続きは不要ですが、労務(給与)担当者においては新たな手続きが必要になります。本記事では、定額減税の概要と企業側…
詳しくみるボーナス(賞与)とは?平均はいくら?計算方法についても解説
ボーナスは「賞与」とも呼ばれ、業績等に応じて支払われる定期または臨時の賃金です。毎月の給与と異なり法律上の支給義務はなく、支給日や支給時期、計算方法等は会社が任意に決定します。本記事では、ボーナスの定義や種類、平均額、公務員のボーナスとの違…
詳しくみる所得税の税率改定で何が変わる?
平成25年度の税制改正で、平成27年から適用される所得税の最も高い税率が40%から45%に引き上げられることになりました。今回は、所得税の税率改定で何が変わるかについて解説していきます。 所得税の計算方法 税率が変更されることで、何が変わる…
詳しくみる