- 更新日 : 2025年6月23日
年休は時間単位でとれる?日数の上限や給与計算方法、導入について解説
年次有給休暇(年休)は、労使協定を締結することで時間単位での取得が可能です。上限は年5日(所定労働時間×5日分)までです。
本制度は、通院や子どもの学校行事など、短時間の用事に対応できる柔軟な休暇取得を可能にしています。本記事では、年休の日数や給与計算方法などを解説します。
目次
年休は時間単位でとれる?
年次有給休暇は、原則として1日単位での取得が基本です。しかし、2010年4月施行の改正労働基準法により、時間単位での取得が可能になりました。
なお、導入には就業規則への記載と労使協定の締結が必要です。ここでは、年休が時間単位でとれるのか、詳しく解説します。
年休は半日単位でもとれる?
半日単位の年休取得は、時間単位年休とは別の制度として運用されています。半日単位の年休は、労使協定を必要とせず、就業規則に明示することで取得可能です。
また、半日年休は時間単位年休の年間上限5日には含まれず、別枠での運用となります。このため、両制度の併用で、より柔軟な休暇取得が可能です。
年休は30分単位でもとれる?
労働基準法では、時間単位年休は「1時間」を最小単位としています。よって、30分単位など1時間未満での取得は認められていません。
労使協定で2時間や3時間など、1時間以上の単位を定めることは可能です。なお、1日の所定労働時間と同じ、またはそれを超える時間数を取得単位とすることはできません。
時間単位でとれる年休の上限日数
時間単位年休の取得可能日数は、年間5日を上限と定められています。具体的な時間数は、1日の所定労働時間に5を乗じた時間数となります。
たとえば、1日の所定労働時間が8時間の場合は、年間で最大40時間(8時間×5日)までの取得が可能です。なお、所定労働時間に7時間30分のように端数がある場合は、時間単位に切り上げて計算します。
有休の日数に上限はあるか
時間単位年休とは別に、通常の年次有給休暇の付与日数には法定の上限があります。勤続年数に応じて最大20日まで付与されます。
ただし、2019年4月からの法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、年5日の確実な取得が義務付けられました。義務化された5日には、時間単位年休は含まれないことに注意が必要です。
時間単位の年休の給与計算方法
時間単位年休は、「以下3つの方法のいずれか÷その日の所定労働時間数」で1時間分の賃金額を計算します。
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 平均賃金(労働基準法12条)
- 標準報酬日額(労使協定が必要)
具体的な計算方法は就業規則に定めることが必要です。
時給制は時間単位での計算が容易です。しかし、月給制の場合は1時間あたりの賃金を算出しなければいけません。
時間単位と半日単位の年休は併用できるか
時間単位年休と半日単位の年休は、それぞれ別の制度として併用が可能です。半日単位の年休取得は時間単位年休の上限5日にはカウントされません。
たとえば、午前に半日年休を取得し、午後に時間単位年休を利用するといった柔軟な組み合わせができます。ただし、給与計算や勤怠管理が複雑になるため、適切な管理システムの導入をおすすめします。
時間単位の年休がない会社のデメリット
ここでは、時間単位の年休がない会社のデメリットを解説します。
また、どのようにすればいいのか対策も紹介するので、参考にしてみてください。
短時間の用事で休暇を取れない
通院や子どもの学校行事など、数時間で済む用事でも半日または1日単位の休暇取得を余儀なくされます。これにより休暇の非効率な消化が発生し、年休を取得すべき重要な機会での休暇確保が困難になります。
また、短時間の用事のために1日休むことへの心理的抵抗から、必要な私用でも休暇取得を躊躇する状況が生まれるでしょう。
この課題に対しては、フレックスタイム制度の導入が有効です。始業・終業時刻を従業員の裁量で決定できるようにし、用事がある日は勤務時間を調整することが可能になります。
また、半日年休の運用を柔軟にし、午前・午後の区分にとらわれず任意の4時間を半日として取得できる制度の導入も効果的です。さらに、時差出勤制度の活用で、短時間の用事にも対応しやすい環境を整備できます。
年休取得率が低下する
必要以上の休暇取得を強いられることで、従業員が休暇取得を控えるようになり、年休取得率の低下につながります。これは従業員の心身の健康維持を妨げるだけでなく、企業の労務管理や職場環境の評価にも悪影響を及ぼすでしょう。
また、休暇を取得しにくい職場という評価は、人材採用面でもマイナスとなります。
このようなデメリットには、計画的付与制度(計画年休)の導入が効果的です。年間の休暇取得計画を事前に策定し、繁忙期を避けた計画的な休暇取得を促進します。
会社全体または部署単位で休暇取得推奨日を設定し、取得しやすい雰囲気づくりを進めることも大切です。
時間単位の年休の導入方法
時間単位年休を導入するためには、就業規則の変更と労使協定の締結が必要です。以下で、詳しく解説します。
就業規則に記載する
就業規則に記載する方法では、以下の項目を明記する必要があります。
- 時間単位年休制度の導入
- 対象となる労働者の範囲
- 時間単位年休の取得可能日数(年5日以内)
- 1日の年休に相当する時間数
- 取得の最小単位(1時間以上)
- 賃金の計算方法
従業員に事前に周知することで、運用上のトラブルを防げます。
参考:厚生労働省|時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!
労使協定を締結する
時間単位年休の導入には、書面による労使協定の締結が必須です。労使協定では、以下の4点を必ず定める必要があります。
- 時間単位年休の対象者の範囲
- 取得可能日数(年5日以内)
- 1日の年休に相当する時間数
- 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数
この労使協定は、労働基準監督署へ届け出る必要はありません。
参考:厚生労働省|時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!
年次有給休暇申請書の無料テンプレート・ひな形
時間単位年休の運用には、適切な申請書類が必要です。「マネーフォワード クラウド給与」が提供する、年次有給休暇申請書はすぐに実務で使用できる仕様となっています。
ExcelやWord形式のテンプレートを利用すれば、記載内容を統一し、効率的な運用が可能です。
メールアドレス・事業者区分などをフォームに入力していただくと、メールアドレスにテンプレートのURLが届きます。ダウンロードは無料となっているため、気軽にご利用ください。
働きやすい職場づくりに向けて時間単位年休を活用しよう
時間単位で取得可能な有給休暇は、従業員のワークライフバランスを向上させる有効な手段です。一方で、導入には就業規則の変更や管理の手間が必要となります。
とくに勤怠管理システムの活用や、管理者向けの運用ガイドラインの整備をおすすめします。また、制度の効果を発揮するためには、職場全体での理解促進と、利用しやすい環境づくりが大切です。
時間単位年休の導入・運用を通じて、従業員の柔軟な働き方を支援し、生産性の向上とワークライフバランスの実現を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
タイムカード・給与計算を15分単位で管理すると違法?丸め処理や遅刻・早退の計算方法も解説
勤怠管理においては、タイムカード等を集計し、労働時間を把握しなければなりません。正確な労働時間を把握しなければ、正確な賃金支払いも不可能です。 当記事では、丸め処理の可否や、不正確な勤怠管理のリスク、正確にタイムカードの計算を行うための施策…
詳しくみる法定労働時間とは?月の労働時間の上限や36協定、残業代の計算方法を解説!
法定労働時間とは、法律で定められた労働時間の上限です。1日・1週間の法定労働時間を超える労働があった場合には、時間外労働として割増賃金が発生します。ここでは、法定労働時間や所定労働時間の違いを解説するとともに、基本の残業代の計算方法について…
詳しくみる1日4時間勤務でも有給休暇はもらえる?条件や日数、給与の計算方法を解説
「1日4時間しか働いていないけど、有給休暇はもらえるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。パートやアルバイトでも、一定の条件を満たせば有給休暇を取得する権利があります。しかし、企業側の対応や計算方法に不安を感じる方もいるかもしれません。本記事…
詳しくみる有給休暇はいつから?日数や付与タイミング、前倒しの場合、給与計算まとめ
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に付与される、「有給で休める(取得しても賃金が減額されない)休暇」のことです。付与のタイミングは労働基準法において定められていますが、労働者の不利益にならない範囲で前倒しでの付与も認められています。 …
詳しくみる時間外労働の上限規制に違反した場合の罰則は?36協定の原則と特別条項、回避策を解説
2019年4月から順次施行された働き方改革関連法に基づく労働基準法改正により、「時間外労働の上限規制」が導入されました。この上限規制を知らないうちに超えてしまうと、企業には懲役や罰金が科される可能性があります。 この記事では、企業の労務管理…
詳しくみる【2025年最新】勤怠管理の法律で守るべき義務・労働基準法の改正点まとめ
企業は従業員を雇用する際に、労働基準法にしたがって正確な勤怠管理を行う義務があります。 しかし、近年は働き方改革による法改正にともない、勤怠管理のあり方も変化しています。 そのため、企業としても従来の勤怠管理方法を見直し、法改正へ迅速に対応…
詳しくみる