- 更新日 : 2024年9月6日
アカハラとは?アカデミックハラスメントの具体例や対策、大学での事例
アカハラはアカデミックハラスメントで、大学などの教育機関、研究機関で起きるハラスメントのことをいいます。パワハラの一種で、立場の違いから権力が強い人が弱い人に対して、嫌がらせなどの不快にさせる行為です。具体的には学習や研究を妨害したり、卒業や進級を妨げたりする、研究成果やアイデアを盗用したりするなどの行為が、アカハラに該当します。
目次
アカハラとは?
アカハラとはアカデミックハラスメントの略で、大学などの教育の場で行われるハラスメントをいいます。力関係がある間柄で発生するハラスメントであるパワハラの一種で、指導・監督する立場の者が、逆の立場の者に対して行う嫌がらせ行為などがアカハラに該当します。大学・大学院で教員が学生に対してや、研究施設で指導者が研究員に対して行われることを指しますが、学生同士や教員同士、研究員同士で行われる場合もあります。
アカハラに該当する具体的な行為には、加害者が被害者に対して差別的な態度や言動をしたり、不公平な評価をしたりすることが挙げられます。
アカハラ被害を受けると被害者は学習や研究活動が妨害され、思うような成果が出せなくなる、意欲を失う、進路変更を余儀なくされるといった悪影響を及ぼします。アカハラが起きた場所では、教育環境・研究環境が悪化することが懸念されます。
アカハラは違法?
アカハラは被害者の人権を侵害し、心理的な苦痛やストレスを引き起こすことがあり、違法行為にあたる可能性があります。アカハラと明言して禁止する法律は今のところはまだありませんが、パワハラ防止法(正式には労働施策総合推進法)においてアカハラはパワハラの一種として防止策を講じなければならないことが規定されています。
パワハラとの違い
アカハラとは教育の場で起こるハラスメントであるのに対し、パワハラは職場で起こるハラスメントをいいます。どちらも力関係があることで生じるハラスメントで、立場の強い者が力関係で弱い者に対して、いじめや嫌がらせを行うことを指します。
その他のハラスメント
ハラスメントにはアカハラやパワハラ以外に、次のような種類があります。
セクハラ(セクシャルハラスメント)
性に関する言動で、相手を不快にさせたり嫌がらせをしたりするハラスメントです。プライベートについて執拗に質問したり、体に触れたりする行為がセクハラに該当します。
マタハラ(マタニティハラスメント)
妊婦や育児中の女性に対するハラスメントです。解雇や降格、減給といった処分を行ったり、雑用などを押し付けたりすることもマタハラに含まれます。
モラハラ(モラルハラスメント)
モラルに反した言動や態度により、相手を傷付けるといった精神的苦痛を与えるハラスメントです。物理的な暴力行為ではないため、より陰湿だといえます。
アカハラの具体例、なりうる行動
アカハラが起こる場所は、主に大学・大学院です。主に教授が学生に対して行う次のような行為が、アカハラになります。
学習や研究活動の妨害
アカハラには被害者の学習や研究活動を妨害する行為が挙げられます。学習に必要な書籍や資料の貸し出しをしなかったり、研究のための時間に雑用を頼んだりする行為がこれに該当します。その他、授業を受けさせない、学習を邪魔する、希望していない研究を押し付ける、必要な指導を行わないといった行為が、学習や研究活動の妨害としてアカハラになる可能性があります。
卒業や進級の妨害
被害者の卒業や進級を妨害する行為も、アカハラになる可能性があります。単位を与えなかったり卒論の提出を受け付けなかったりすることが、これに該当します。その他、留年を強要したり、卒論に対して正当に評価しなかったりすることもアカハラになる可能性があります。
進学や就職の妨害
被害者が希望していない進学や就職を強制的にさせる行為もアカハラになり得ます。理系志望者に対して文系を進路とするように指導したり、望んでいない就職先をあっせんしたりする行為は、アカハラと認定される可能性があります。
権力の濫用
権力を濫用して経済的負担を強要したり、プライバシーを侵害したりすることもアカハラに該当する可能性があります。具体的には実験に失敗したからといって費用を負担するように求めたり、教えないと不利益な取扱いをすると脅してプライベートなことを聞き出したりすることがアカハラになり得ます。
暴力や誹謗中傷
アカハラは教育の場において立場の強い人が立場の弱い人に対して行う嫌がらせ・いじめを指します。立場の違いを悪用して暴力を振るったり誹謗中傷をしたり、暴言を吐いたり罵倒を行ったりすれば、権力を濫用したとしてアカハラになる可能性があります。
研究成果やアイデアの盗用
他人の研究成果やアイデアを盗み、自分のものとすることもアカハラです。指導の目的で他人の論文などを目にすることのできる人が書かれた内容を自分の研究成果やアイデアとすることが該当します。盗用だけでなく論文の著者に自分の名前を入れるように強要することもアカハラになり得ます。
プライバシーの侵害
学習・教育に関係のないことを質問したり、自由な時間に身柄を拘束したりすることもアカハラになり得る行為です。緊急の用事でないにもかかわらず深夜や休日に連絡したり、食事などに付き合わせたりしても、アカハラと認定される場合があります。
アカハラが起こる理由
大学や研究施設といった教育・研究の場は、一般企業とは異なる、特殊な環境です。そのため次のような理由で、アカハラが起こります。その理由には、次の点が挙げられます。
環境が閉鎖的
アカハラが起きる理由の一つには、環境が閉鎖的であることが挙げられます。大学・大学院、研究所などの高度な学問が行われる場所は、一般的に閉鎖的です。研究内容が盗まれないようにしなければならないために、外部の人の出入りが制限されている場合もあるからです。モルモットやマウスといった研究用小動物の管理や実験の秘密保持など、特定の要因により環境が閉鎖的になり、アカハラが起こりやすいとされます。
力関係がはっきりしている
アカハラが起こる理由には、力関係がはっきりしている点も挙げられます。教授と学生、上級生と下級生、指導者と指導される者といったアカハラの加害者・被害者の間には、はっきりとした力関係があります。力の弱い者が強いものに対して意見を言ったり反抗的な態度を取ったりすることには、指導を受ける際の障壁となる恐れがあり、立場の弱い者はなにかあっても、訴え出ることができない場合が多いでしょう。ハラスメント行為があっても表面化せず、気づかれない点がアカハラの発生する原因とされます。
被害が露呈しにくい
被害が露呈しにくい点も、アカハラが起こりやすい理由に挙げられます。アカハラが発生するのは主に大学のような教育機関、研究所などの特殊な環境です。民間企業は労働基準監督署によるチェックが行われてハラスメント発生が明らかになりやすいのに対し、教育機関等には公的機関による介入は行われません。そのため、アカハラ被害が露呈しにくく、発生しやすくなっていると考えられます。
アカハラの防止策
アカハラが起きるのは大学などの教育現場に限りません。研究所などでも起こる可能性はあるため、教育や研究を行う施設を有している企業は、次のような防止策を講じる必要があります。
アカハラについて正しく理解する
アカハラを防止するには、まずアカハラについて正しく理解させることが大切です。ガイドラインの作成及び徹底により、周知が図れます。アカハラの概要や該当する行為に加えて詳細な具体例を掲載することで、よりアカハラについての正しい理解を促すことができます。アカハラ被害を受けた場合の相談窓口の設置とその周知、解決までのプロセスについて説明することも重要です。
相談窓口を設置する
相談窓口の設置も、アカハラの防止に大きく役立ちます。可能であれば臨床心理士や公認心理師のような有資格者を配置すると、カウンセリングといった手法でより深く相談者をケアすることができます。外部機関との連携による専門的な支援も大切です。
アカハラ防止研修を実施する
アカハラ防止には、研修の実施も効果的です。アカハラ防止研修は文字通り、アカハラ防止を目的に行う研修です。受講者にアカハラとなり得る行為などを説明し、アカハラの発生を防ぎます。
アカハラの被害にあったら?対処法は?
アカハラを受けて我慢をしてしまうと、被害をエスカレートさせる可能性が十分にあります。泣き寝入りなどしないために、適切な対応をしなければなりません。アカハラの被害にあった場合は、次のような対処をしましょう。
アカハラの証拠を集める
アカハラの被害をなくすためには、何よりもアカハラがあったことを証明しなければなりません。そのためにはまず、証拠集めが必要です。アカハラ被害を受けた時間・場所・内容について証拠となるもの探し、取っておくことが大切です。通話記録やメールも残しておくようにします。
相談窓口や外部の機関に相談する
アカハラの被害を受けた場合はメンタル不調を起こさないように、精神的な負担を軽くすることも必要です。誰かに話を聞いてもらうことが大切で、相談先としては相談窓口や外部機関が適しています。専門的なアドバイスが受けられ、被害の拡大が防げたり解決策が見いだせたりすることが期待できます。
アカハラに関する大学の裁判例、事例
アカハラは行為の認定が難しいことから、裁判で争われる場合もあります。ここではアカハラに関する裁判事例を紹介します。
アカハラ加害者への処分が認められた事例
まず紹介するのは学生に不適切なメールを送った大学准教授に対する大学の処分は有効であるとの判決が下された裁判例です。処分は不当だとする大学准教授に対して、裁判所は「メールには誹謗中傷する内容や暴言、威嚇的で脅迫めいた言葉遣いが含まれ、アカデミックハラスメントに該当する」とアカハラがあったとして大学が行った減給処分を有効とする判決を下しました。
アカハラによる処分が不適切だとされた事例
次に紹介するのは処分が重すぎるとの判決が下された裁判例です。アカハラにより懲戒処分を受けた大学教授が取り消しを訴えた裁判で、裁判所は学生に対するハラスメントは懲戒事由には該当しないとの判決を下しました。アカハラに該当する行為・該当しない行為を判断し、処分の重さが適正でないとする判決です。
アカハラ防止に向けた対策を講じ、教育・研究への悪影響を防ごう
アカハラは教育・研究の場で起こるハラスメントです。大学・大学院で教授が学生に対して嫌がらせなどをするとアカハラになります。力関係によって生じるハラスメントで、教授・学生間以外でも、学生同士や教員同士で起こる場合があります。被害者だけに資料を提供しなかったり、授業を受けさせなかったりして学習を妨害する行為がアカハラに該当します。その他にも進路で不利益を被らせたり、権力を濫用して経済的負担を強要したり、プライベートな時間を奪ったり、プライバシーを侵害したり、研究成果やアイデアを盗んだりすることなどがアカハラになります。
アカハラを防ぐには正しい理解を促すことや相談窓口を設置すること、研修を実施することといった対策が効果的です。アカハラ発生の可能性のある企業は早急に取り組みを開始し、健全な教育や研究の場の確保に努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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