• 更新日 : 2022年5月20日

賞与の計算方法について徹底解説!社会保険料の算出など

給与とは別に一時金として支払われる賞与(ボーナス)の支払いには、法律による規定はなく、企業が独自に支給額や支給基準、支払回数、支払時期を決めることができます。

今回は、賞与から控除する社会保険料、所得税の算出方法や計算時の端数の扱い、賞与に関するよくある疑問点などについて見ていきます。

賞与(ボーナス)とは?

賞与(ボーナス)とは、会社で規定されているか、または臨時に、基本的に労働者の成績に応じて支給され、支給額が予め確定していないものをいいます。定期的に支給され、支給額が確定しているものは、賞与とはみなしません。

支給される賞与額は、厚生労働省が実施した「毎月勤労統計調査 令和3年9月分結果速報」によると、事業所規模5人以上の平均支給割合は0.99カ月分(労働者一人平均賞与額は380,268円)でした。

参考:毎月勤労統計調査 令和3年9月分結果速報等|厚生労働省

賞与には、通常の賞与以外に、業績賞与や決算賞与など、特定の時期や条件の意味合いで支給されるものがあります。

ここでは、決算賞与と通常の賞与は何が異なるのかについて解説していきます。

決算賞与と通常の賞与の違い

通常の賞与は、会社で規定されているか、または臨時に、基本的に労働者の成績等に応じて支給される給与であり、決算賞与は、その会社の事業年度の業績に応じて支給される給与です。

通常の賞与も決算賞与もどちらも給与とは違い、支給が必ず約束されているものではありません。しかし、通常の賞与が労働者の勤務成績等に連動することに対して、決算賞与は会社の業績に連動するところにも違いがあります。

賞与(ボーナス)の計算方法

次に、賞与(ボーナス)の計算方法について確認していきましょう。

支給項目には基本賞与が、控除項目には社会保険料(健康保険料、介護保険料厚生年金保険料、雇用保険料)と税金(所得税)があります

この控除項目のそれぞれの金額の算出方法について見ていきましょう。

健康保険料の算出方法について

賞与における健康保険料の金額は、以下の計算式で算出します。

支給する賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額(これを標準賞与額といいます)×健康保険料率

求められた健康保険料は、事業主と被保険者が労使折半で負担します。

(計算例)
東京都にある会社(全国健康保険協会に加入)で、令和3年12月に従業員であるXさん(50歳、扶養家族1名)に賞与30万円を支払う場合

Xさんの健康保険料=30万円×9.84%×1/2=14,760円

ただし、健康保険料については、標準賞与額の年度の上限額が573万円と決められており、年度の途中で573万円を超える場合は、573万円が標準賞与額になります。

厚生年金保険料の算出方法について

賞与における厚生年金保険料の金額は、以下の計算式で算出します。

支給する賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額(これを標準賞与額といいます)×厚生年金保険料率

求められた厚生年金保険料は、事業主と被保険者が労使折半で負担します。

(計算例)
東京都にある会社(全国健康保険協会に加入)で、令和3年12月に従業員であるXさん(50歳、扶養家族1名)に賞与30万円を支払う場合

Xさんの厚生年金保険料=30万円×18.3%×1/2=27,450円

ただし、1回の賞与額が150万円を超える場合は、150万円が標準賞与額となります。

雇用保険料の算出方法について

賞与にかかる雇用保険料は、月額給与の雇用保険料の計算式と同様に以下の計算式で算出します。

支給する賞与額×雇用保険料率

雇用保険料率は、事業主、労働者ともに事業の種類により異なります。

※令和3年度の雇用保険料率


労働者負担

事業主負担
①+②
雇用保険労率
一般の事業3/10006/10009/1000
農林水産・
清酒製造の事業
4/10007/100011/1000
建設の事業4/10008/100012/1000

参考:令和3年度の雇用保険料率について|厚生労働省

(計算例)
東京都にある会社(全国健康保険協会に加入)で、令和3年12月に従業員であるXさん(50歳、扶養家族1名)に賞与30万円を支払う場合

Xさんの雇用保険料
=30万円×3/1000(一般の事業の場合)=900円

会社が負担する雇用保険料
=30万円×9/1000(一般の事業の場合)-30万円×3/1000=1,800円

介護保険料の算出方法について

賞与における介護保険料の金額は、以下の計算式で算出します。

支給する賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てた金額(これを標準賞与額といいます)×介護保険料

求められた介護保険料は、事業主と被保険者が労使折半で負担します。

(計算例)
東京都にある会社(全国健康保険協会に加入)で、令和3年12月に従業員であるXさん(50歳、扶養家族1名)に賞与30万円を支払う場合

Xさんの介護保険料=30万円×1.80%×1/2=2,700円

所得税の算出方法について

賞与の所得税については、下記の手順で所得税額の算出します。

1)前月の給与額と扶養人数から賞与の税率を求めます。

前月の給与(総支給額)から、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料[40歳から64歳の方]、雇用保険料)を差し引いて所得税率の基準額を算出します。

(計算例)
東京都にある会社(全国健康保険協会に加入)で、令和3年12月に従業員であるXさん(50歳、扶養家族1名)に賞与30万円を支払う場合

前月の給与額が25万円、社会保険料が39,672円とすると、

所得税率の基準額=前月給与額-前月社会保険料=25万円-39,672円=210,328円

になります。

この所得税率の基準額と扶養人数から賞与にかかる所得税率を確認します。

(確認例)
 所得税の基準額は上記の計算例により 210,328円で扶養家族の人数は1名ですので、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)」の甲欄の94千円以上243千円未満の欄と扶養人数1人の欄から、賞与の金額に乗ずべき率を2.042%と求めることができます。

引用: 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)

2)賞与から社会保険料を差し引いて課税対象額を求めます。

これまでの計算例で、Xさんの賞与は30万円、社会保険料が45,810円ですので、課税対象額は次の金額になります。

(計算例)

課税対象額=賞与額-社会保険料額
=30万円-45,810円
=254,190円 

3)課税対象額に賞与の税率を掛け算して賞与の所得税を算出します。

賞与の所得税額=課税対象額(2で求めた金額)×賞与税率(1で求めた率)

賞与の所得税=254,190円×2.042%=5,190.5598円

所得税の小数点以下は切り捨てですので、所得税は5,190円になります。

なお、扶養控除等申告書の提出がない従業員の場合は、1)で使用する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」は「乙欄」を利用して算出してください。

また、前月の給与の支払がない場合や扶養親族に障害者などが含まれている場合には計算方法が異なります。

その場合には「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の備考欄を参照して計算するようにして下さい。

最後に、これまでの計算方法について表にまとめます。

種 類計算方法
健康保険料・
厚生年金保険料
の計算方法
①1,000円未満切り捨て

 賞与総額 - 1,000円未満 = 標準賞与額
                (千円単位)
②保険料率を掛け算する

 ・標準賞与額 × 健康保険料率 = 健康保険料
  (千円単位)

 ・標準賞与額 × 厚生年金保険料率 = 厚生年金保険料
  (千円単位)
雇用保険料の
計算方法
保険料率をかける

 賞与総額 × 雇用保険料率 = 雇用保険料
所得税の計算方法①前月の給与額と扶養人数から賞与の税率を求める。
②賞与から社会保険料を差し引いて課税対象額を求める。
③課税対象額に賞与の税率を掛け算して賞与の所得税を
 算出する。

賞与(ボーナス)に関してよくある疑問点

ここからは、賞与(ボーナス)に関して、民間企業と公務員の賞与(ボーナス)の違い、税金(所得税)の計算を行った際の端数はどうなるか?などの疑問について見ていきましょう。

公務員と民間企業の賞与(ボーナス)の違いは?

公務員と民間企業の賞与(ボーナス)の違いについて見ていきましょう。

公務員の賞与が景気の変動にあまり左右されることなく支給されるのに対して、民間企業の賞与は会社ごと、従業員の雇用形態ごとに支給する、支給しないを決めることができるので必ず支給されるわけではありません。

また、賞与の額についても、公務員の賞与が人事院勧告により決まるのに対して、民間企業の賞与は会社毎に算出方法が異なり、景気、業績の影響や従業員の考課により支給額も異なるため、景気や業績によっては賞与が出ないことがある点に違いがあります。

所得税の計算において端数はどう処理する?

賞与の所得税は、賞与額から社会保険料等を差し引いた金額に所得税率を掛け算して求めましたが、算出した所得税に小数点以下の端数が出た場合、1円未満の端数は切り捨てることになっています。

所得税計算で端数が出た場合には注意しましょう。

賞与(ボーナス)における額面と手取りの違いは?

賞与(ボーナス)には、「額面の支給額」と「手取り額」があります。

賞与計算の場合も、給与計算と同様に支給額から社会保険料や所得税が控除され、控除後の金額が手取り額になります

具体的には次のような式になります。

賞与(ボーナス)の手取り額
=賞与(ボーナス)支給額-(厚生年金保険料+健康保険料(+介護保険料)+雇用保険料+所得税)

退職予定者の賞与(ボーナス)にかかる控除どうなる?

退職予定者に支払われる賞与(ボーナス)に関わる社会保険料の控除については、退職する月によって扱いが異なりますので注意が必要です。

具体的な例をあげてみます。

例えば、12月10日に賞与の支給を受け、12月31日付で退職する社員について考えてみましょう。

社会保険の「資格喪失日」は退職日の翌日であるため、退職日が12月31日であれば、資格喪失日は1月1日になります。

上記の場合、ボーナス支給月は12月ですので、当該社員の厚生年金保険等の資格喪失月も12月であれば、賞与支給月が資格を喪失した月とイコールになります。

「資格喪失日」が1月1日ということは、「資格喪失月」は1月です。そのため、賞与は「資格喪失月の前月」までに支払われていますので、社会保険料徴収の対象になります。

よって、12月31日に退職した本ケースでは、12月10日に支給した賞与からは「社会保険料を徴収する」のが正しい事務処理となるわけです。

もう一つ例を見ていきましょう。今度は、12月10日に賞与の支給を受け、12月25日付で退職する社員の場合です。

上記で述べたとおり資格喪失日は退職日の翌日ですので、退職日が12月25日の本ケースでは、資格喪失日は翌日の12月26日となります。

資格喪失日が12月26日ということは、資格喪失月は12月です。そのため、賞与は資格喪失月の前月に支払われていませんので、12月25日に退職した本ケースでは、「社会保険料を徴収しない」という事務処理となります。

以上のように、賞与支給月に退職した場合には、賞与支給月が社会保険の資格喪失月に該当するケースと該当しないケースが存在します。この違いは、退職日が月末であるか、月末以外かに起因して発生します。

賞与支給月の末日で退職した場合には、賞与支給月は資格喪失月の前月になり、社会保険料の徴収が必要となります。

これに対して、月の末日以外の日で退職した場合には、賞与支給月が資格喪失月に該当するため、社会保険料の徴収が不要となるという点を覚えておきましょう。

各種控除に注意して賞与の計算は正確に行おう!

賞与も給与と同様に、支給額があり、その支給額から社会保険料や所得税を控除して手取り額が決まります。

控除額の計算を行う際の社会保険料の中の「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」は、給与のように標準報酬月額を基に各保険料率を乗じて求めました。

しかし、賞与の場合は総支給額を1,000円単位にした「標準賞与額」に各保険料率を乗じて算出するというところに違いがあります。

また、所得税についても課税所得金額に掛け算する所得税率(賞与税率)が、給与計算の時とは異なります。

具体的には、前月の給与と扶養人数を賞与税額表に当てはめて賞与税率を求めます。

これらの控除計算に注意しながら正しく賞与計算するようにしましょう。

よくある質問

賞与の計算方法について教えてください

賞与の額面金額(総支給額)から社会保険料(健康保険料、(40歳以上65歳未満の場合)介護保険料、厚生年金保険料)、雇用保険料、所得税を控除した金額が手取り額になります。 詳しくはこちらをご覧ください。

計算において端数が出た場合の処理方法について教えてください

健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、50銭以下の端数は切り捨て、50銭を超える端数は切り上げます。所得税は、1円未満の端数は切り捨てになります。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事