- 更新日 : 2026年6月5日
【2026年】学生アルバイトも社会保険に入る必要がある?106万の壁と2つの控除を解説
学生は原則として健康保険・厚生年金などの社会保険の対象外ですが、働き方によっては例外があります。
- 月収8.8万円(年収約106万円)を超え、4つの条件をすべて満たすと加入義務が生じる
- 夜間部や通信制、卒業後も同じ職場で働く予定の学生は適用の対象となる
- 企業は給与総額の約15%にあたる保険料を従業員と折半し、人件費が増える
採用時に勤務時間の上限や扶養への影響を丁寧に伝えることで、学生・保護者とのトラブルを防げます。
実は、学生アルバイトでも働き方によっては社会保険の対象となる場合があり、その場合、企業側にも負担や手続きが発生します。
本記事では、「106万の壁」が学生や企業にどのように影響するのか、そして勤労学生控除・特定親族特別控除との違いも含めて、企業側が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正大綱をもとにしています。税制改正大綱は自民党が毎年12月頃に発表する改正のドラフトであり、国会での審議を経て翌年春頃に法律として制定されます。最終的に制定された法律の内容と異なる場合があります。
目次
そもそも「106万の壁」とは?
106万の壁とは、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入するかどうかを判断するための年収基準のことです。
年収が106万円を超えても条件をすべて満たした場合にのみ加入が必要となります。近年は制度の見直しが進んでおり、現行の基準と今後の変化の両方を把握しておくことが重要です。
社会保険に加入する4つの条件
年収が106万円を超えると、以下の4つの条件をすべて満たす場合に社会保険への加入が必要です。この基準に該当すると、扶養から外れ自分で保険料を負担する必要が生じます。
- 月額賃金8.8万円(年収換算で約106万円)
- 週20時間以上
- 雇用期間が2か月超(見込みも含む)
- 従業員数51人以上の企業で勤務している
特にパートやアルバイトの働き方に対して、106万の壁は大きな影響を与える制度として理解しておくことが大切です。
企業規模要件は段階的に廃止へ
2025年5月に成立した年金制度改正法により、「51人以上」という企業規模要件は段階的に廃止される方向です。今後は企業の規模を問わず、より広い範囲の短時間労働者が社会保険の適用対象となる見通しです。
具体的な廃止のスケジュールとしては、2027年10月に36人以上規模の事業所が対象となります。その後2029年10月に21人以上、2032年10月には11人以上が対象となり、2035年10月に規模要件は完全撤廃される予定です。
月額賃金8.8万円の要件については、2026年10月に撤廃される予定です。106万の壁そのものがすぐになくなるわけではありませんが、採用担当者や人事担当者は要件の変化を定期的に確認することをお勧めします。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
算定基礎届の手続き完全ガイド
算定基礎届(定時決定)の手続きは、社会保険に加入する全従業員が対象になるため作業量が多く、個別の計算や確認事項の多い業務です。
手続きの概要や間違えやすいポイントに加え、21の具体例を用いて記入方法を解説します。
社会保険・労働保険の実務完全ガイド
これ1冊でしっかり網羅!社会保険および労働保険は、従業員の生活上・労働上のリスクに備えるための公的保険制度です。
本資料では社会保険・労働保険で発生する各種手続き方法を、入社・退職時や妊娠・出産時などのシーン別にまとめました。
健康保険・厚生年金保険 実務ハンドブック
健康保険・厚生年金保険の基本ルールをはじめ、手続きの仕方やよくあるミスへの対処方法について解説した実用的なガイドです。
年間業務スケジュール一覧も掲載しているので、ぜひご活用ください。
社会保険の手続きでよくあるミス 対処方法と防止策10選
社会保険の手続きは、ひとたびミスが生じると適切な対処方法がわからず対応に苦慮するケースが多いものです。
本資料では社会保険手続きでよくあるミスをシーン別に取り上げ、対処方法をステップにわけて解説しています。
学生アルバイトも社会保険に入らなければならない?
学生は原則として社会保険の適用除外です。年収が106万円を超えても社会保険に加入する必要はないですが、働く学生全てが対象外というわけではありません。
企業側は学生の状況を採用時に確認し、加入の要否を慎重に判断することが重要です。
夜間・通信制の学生は加入対象になる場合がある
夜間部や通信制の課程に在籍する学生は、昼間部の学生とは異なり、社会保険の適用除外とならず、加入対象になるケースがあります。採用時に在学の種別を必ず確認し、加入要否を判断する体制を整えておきましょう。
卒業後も同職場で勤務予定の場合は要注意
卒業後に同じ職場での継続勤務が見込まれる場合も、加入対象として扱われることがあります。学生本人にとっても、自身の状況が加入対象に該当するかを理解しておくことが、安心して働くうえで重要です。
106万の壁が企業に与える影響
学生アルバイトの年収が106万円を超えると、企業側も社会保険料の半額を負担する必要があります。対象者が増えるほど人件費が上昇し、経営負担が大きくなります。勤務時間の変動が激しい学生アルバイトでは、企業と本人の双方が気づかないうちに基準を超えてしまうケースもあるため、適切な管理体制が不可欠です。
社会保険料の負担が増える
従業員が社会保険の対象となると、企業は保険料を従業員と折半して支払う必要があります。企業が負担する保険料は給与総額の約15%に及びます。
学生アルバイトが多い店舗や業種では年間を通じた支出として経営の利益率に影響するため、計画的な人件費管理が求められます。
また、加入手続きや事務対応の増加も見込まれるため、社会保険の仕組みを企業全体で把握し、対策を講じることが重要です。
給与計算や勤怠管理が複雑になる
学生アルバイトは週ごと・月ごとに勤務時間にばらつきがあり、年収の見込みを正確に算出するのが難しい傾向があります。106万円の壁がある状態では、毎月の給与をもとに基準を超えるかどうかを定期的に確認する必要があります。
しかし、従来の手作業による管理ではミスが発生しやすく、担当者の負担が大きくなります。担当者のミスや負担を軽減するためには、自動でアラートを出すことができる勤怠管理システムを導入するとよいでしょう。
従業員に対して勤務時間の目安を共有することもできるため、業務効率を大幅に向上させることができます。
学生や保護者とのトラブルが発生しやすくなる
学生の中には106万円の壁を理解していない人も多く、いつの間にか扶養から外れていた・手取りが減ったというトラブルが発生しやすくなります。
多くの場合、採用時や勤務開始時に制度の説明が不足していることが原因です。学生は社会保険制度への理解が乏しいため、自分がどの条件に該当するのか判断できず、不安を感じることもあります。
また、保護者から社会保険に関する問い合わせが入るケースもあり、企業にとっては説明対応の負担が増えることもあります。
このような問題を避けるためにも、企業側は面接や契約時に制度を丁寧に説明し、勤務時間の上限や注意点を明確に伝えることが重要です。
安心して働ける環境を整えることで、学生と企業の信頼関係が深まり、双方が納得して就業ができます。
106万の壁への対応として企業が取るべき4つの対応策
106万の壁への対応として、企業には制度理解と社内ルールの整備、給与計算・勤怠管理の仕組み化、学生への説明とフォロー体制の確立、そして基準を超えた場合の迅速な対応という4つの取り組みが求められます。
いずれも早めに体制を整えることが、リスク軽減と信頼関係の維持につながります。
①制度理解と社内ルールを整備する
106万円の壁に伴う混乱を避けるためには、まず企業側が制度を正しく理解し、そのうえで社内全体でルールを統一することが不可欠です。
特に人事や経理担当者は、社会保険加入の条件や扶養の条件などを正確に把握し、質問に対応できる状態を整えておく必要があります。
採用時に扶養状況や掛け持ちの有無を確認する書類(扶養確認書、勤務時間申告書など)を導入し、年収見込みを社内で共有できる仕組みを作ることが有効です。
②給与計算や勤怠管理を仕組み化する
学生アルバイトはシフトの変動が大きく、勤務時間が一定ではないため、手作業による管理ではミスが発生しやすい傾向にあります。
勤怠管理システムや給与計算システムを導入し、勤務時間と給与を自動で連携させることが重要です。
106万円に近づいた際に自動アラートが出る仕組みを活用することで、シフト調整がスムーズに行え、企業側のリスクを軽減できます。
③学生への説明とフォロー体制を整える
学生アルバイトは社会保険の制度や税金の仕組みへの理解が浅い場合が多いため、採用時に制度の概要や扶養への影響を丁寧に説明することが重要です。
学生本人と保護者向けの案内文や説明資料を用意しておくと、不安を解消し安心して働ける環境づくりにつながります。
契約更新時や年末など節目のタイミングにも制度の確認を促すことで、トラブルの予防になります。
④106万を超えた場合は速やかに対応する
106万円を超えた場合には、企業は速やかに社会保険加入の手続きと給与控除の案内を行う必要があります。
本人が負担する保険料の金額だけでなく、社会保険に加入することで得られる年金・医療保険などの給付についても合わせて説明することで、学生の不安を和らげ信頼関係を築けます。
加入後の働き方やシフト調整について相談に乗ることも、安心して働き続けられる環境づくりにつながります。
学生本人の所得税を抑える「勤労学生控除」とは?
勤労学生控除は、働きながら学ぶ学生本人の所得税を軽減するための制度です。
106万の壁(社会保険)とは別の話で、最大27万円の所得控除が受けられます。所得税がかからないケースも多く、学生が「扶養を外れると損をする」と誤解しやすいポイントを解消するうえでも、企業側が概要を案内しておくことが有効です。
最大27万円の控除で所得税の負担を抑えられる
勤労学生控除を利用すれば、所得税の負担を軽減でき、実質的な手取りを維持しやすくなります。106万円を超えて働く学生に対しても、この制度があることを伝えることで、扶養を外れることへの不安を軽減できます。
企業としても、制度の概要を説明しておくことで、学生が安心して働ける環境を提供でき、トラブル防止にもつながります。
給与収入163万円以下まで対象が広がる見通し
令和8年度税制改正大綱により、勤労学生控除の適用要件が以下のとおり緩和される見通しです。
| 項目 | 改正前 | 改正後(見通し) |
|---|---|---|
| 合計所得金額の上限 | 85万円以下 | 89万円以下 |
| 給与収入のみの場合の上限 | 150万円以下 | 163万円以下 |
所得税への適用は令和8年分以後、住民税への適用は令和9年度分以後の予定です。
これまで控除の対象外だった学生が新たに対象となる可能性があるため、採用時の説明資料への反映もあわせてご検討ください。
特定親族特別控除とは?
特定親族特別控除は、子(19歳以上23歳未満)の収入増加による親の所得税負担を緩和するための制度で、令和7年度税制改正で新設されました。従来は子の収入が扶養控除の上限を超えると親の控除がゼロになる「崖」がありましたが、この制度により控除が段階的に縮小する形に変わりました。
企業が学生に制度を案内する際は、保護者への影響もあわせて伝えることが望ましいです。
子の収入が増えても親の控除が段階的に減るしくみ
特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の親族を持つ親が対象です。子の収入が扶養控除の認定上限を超えても、一定の範囲内であれば控除額が段階的に縮小する形で適用されます。これにより、子が少し多く稼いだだけで親の税負担が急増するという状況が緩和されています。
控除額は、合計所得金額58万円(改正後62万円)超85万円以下であれば、満額となる63万円の控除が適用され、以降は段階的に控除額が減少し、123万円(改正後136万円)を超えると控除額がゼロとなる仕組みです。給与収入のみであれば、159万円以下で満額の控除が適用され、197万円を超えると控除額がゼロとなります。
令和8年度改正で扶養認定の収入ラインも引き上がる見通し
令和8年度税制改正大綱では、扶養親族の合計所得金額要件が引き上げられる見通しです(令和8年分以後の所得税に適用予定)。
| 項目 | 改正前 | 改正後(見通し) |
|---|---|---|
| 扶養親族の合計所得金額の上限 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 給与収入のみの場合の上限 | 123万円以下 | 136万円以下 |
学生への説明の際には「自分の収入が増えると親の控除にも影響する場合がある」という点も触れておくと、保護者を含めたトラブル防止につながります。
学生アルバイトと106万の壁、社会保険・勤労学生控除・特定親族特別控除を正しく理解して対応を
学生アルバイトと106万の壁にまつわる制度は、社会保険・所得税(本人)・所得税(保護者)の3つの層に分かれています。それぞれの制度を混同せず、正確に理解したうえで学生や保護者に案内することが、企業としての信頼性向上とトラブル防止につながります。
令和8年度税制改正大綱により、勤労学生控除の上限(給与収入163万円以下)や扶養親族の所得要件(給与収入136万円以下)が緩和されます。また、年金制度改正法により社会保険の適用基準も段階的に変わります。制度の変化を継続的に把握し、社内ルールや学生への説明資料を随時アップデートしていくことが、今後の対応において重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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