• 作成日 : 2022年7月8日

早出出勤で残業代がもらえないのは違法?残業代計算方法も解説

早出出勤で残業代がもらえないのは違法?残業代計算方法も解説

早出出勤で仕事をした時間も労働時間と認められ、残業代の支払を受けることができます。ただし早出をして会社にいた時間のすべてが残業となるわけではありません。一定の条件を満たしている早出出勤に対してのみが、残業として認められます。早出出勤の残業代の計算方法はほかの残業と同じで、時間外労働の割増賃金がつきます。

早出残業とは?

早出とは、会社の始業時間より早く出勤することをいいます。始業時間より早く出勤して仕事を開始し、そのまま始業時間を迎えて通常の終業時間まで働くと、その日は早出出勤をしたぶんだけ長く働いたことになります。

例:
9:00始業の職場で8:00に出勤して仕事をすると、1時間長く働いたことになる
8:45始業の職場で6:15に出勤して仕事をすると、2時間30分長く働いたことになる

このように早出をすると労働時間がそのぶんだけ多くなり、所定労働時間を超えて働くことになります。

しかし早出をしたぶんだけ終業時間を早めた場合、労働時間は変わりません。

例:
9:00始業、17:00終業の職場で、8:00に早出出勤、16:00に仕事をあがった場合
8:45始業、17:15終業の職場で、6:15に早出出勤、14:45に仕事をあがった場合

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早出をすると残業代は出るのか?

始業時間より早く出勤して仕事をした場合、そのぶんだけ早く仕事をあがらなければ1日の所定労働時間を超えて働くことになります。所定労働時間を超える労働時間に対して、会社は残業代を支払う必要があります。早出出勤の残業についても就業時間後の残業と同じように、残業代の支払の対象になります。

早出出勤をすると、早く仕事をあがらない限りは通常より長く働くことになります。所定労働時間を超える労働時間については残業代が支払われます。残業代が支払われることは労働基準法に定められているため、会社が残業代を支給しないと違法になります。

具体的には、以下のような場合は早出出勤による時間外労働が発生したとして、残業代が支払われます。

  • 指示に従って早出出勤をする場合
  • 上司から早出出勤をするように指示され、これに従った場合です。

  • 朝礼や会議へ出席するために早出出勤する場合
  • 朝礼や会議への出席のためにやむを得ずに早出出勤する場合です。ただし出席が義務付けられている朝礼や会議に限り、自由出席である場合には別途、上司の命令・要請が求められます。

  • 業務上の必要があって早出出勤する場合
  • 引き継ぎ、点検、立ち会い確認といった、業務上必要な作業のために早出出勤しなければならないケースです。

  • 着替えのために早出出勤する場合

労働時間には作業服へ着替える時間も含まれます。始業時間には作業服への着替えが済んでいなければならない場合には、着替える時間は早出出勤による労働時間とみなされます。

早出出勤をしても残業代が発生しないケースもある

指示による早出出勤などについては残業代の支払いを受けることができる一方で、残業代の支給対象とならない早出出勤もあります。以下に説明するような早出出勤は始業開始時間より早く出勤したとしても残業代は発生しません。

遅刻を防ぐために自主的に早出出勤した場合

遅刻をしないようにと早めに出勤している場合は、早出出勤による残業代は発生しません。このケースの早出は労働者が自分の意思で行っている自主的な行為で、会社には関係ないからです。

残業代は、会社の指揮監督下にある労働時間のみを対象に支払われます。自主的に始業開始時間より前に出勤しても、その時間は会社の指揮監督を受けていません。そのため残業代は発生しません。

通勤するために始業時間前に家を出た場合

ラッシュや渋滞を避けるための早出出勤にも残業代は出ません。これも会社の指示ではなく、労働者の個人的な理由による行為だからです。

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早出残業が違法かどうかは36協定が締結されてるかで異なる

指示による早出出勤、朝礼や会議へ出席するための早出出勤、業務上の必要による早出出勤、着替えのために早出出勤などは、残業代の支払を受けることができます。

しかし、ここで注意しておくことがあります。これまで単純に残業代としてきましたが、法定労働時間を超えている場合は、割増賃金が付く残業代となります。

労働基準法では、1日8時間、1週間40時間を法定労働時間としており、これを超える場合、または変形労働時間を超えて労働させる場合には、法定外労働となり、労使で36協定を締結し、労働基準監督署に届けていなければ違法となります。

そのうえで時間外労働に対しては、所定の割増賃金の支払い義務があります。会社の就業規則で定める所定労働時間が1日7時間の場合、かりに1時間、早出残業しても、労働基準法で定める時間外労働とはならず、支払い義務が生じる残業代は割増ぶんなしの賃金です。

36協定とは、法定労働時間を超える時間外労働についての取り決めのことです。正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法で労働時間については第36条で定められていることから「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。

所定労働時間が法定労働時間と同じで、早出残業させた場合、36協定が締結されていなければ、そもそも早出残業自体が違法となります。しかし、時間外労働をしたことには変わりないため、早出残業分については割増を付けて支払うことが必要です。

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早出による残業で残業代が支払われないときの対処法

給与で早出出勤による残業代が支払われていない場合には、まず会社に確認してみましょう。ミスで支払われていないだけであれば、次月給与で受け取ることができます。確認しても支払われない場合の対処法は以下の通りです。

会社に残業代の支払いを請求する

早出出勤の残業代を受けるためのファーストアクションは、会社に残業代の支払請求をすることです。確認しただけでは支払ってもらえなくても、はっきりと請求すれば応じてもらえる場合があります。早出による残業代の未払いに関するトラブルで、もっとも平和的に解決にできる方法です。

早出出勤をした証拠を集めておく

請求をしたのにもかかわらず会社が早出出勤による残業代支払いに応じてくれない場合には、次のステップに向けて証拠集めをします。証拠として集めるのは、働いた時間や仕事のものです。具体的には以下のようなものが証拠となります。

  • タイムカード
  • 出社した時間が分かります。ほかにパソコンのログイン記録やメールの送信記録などが、仕事を開始した時間の証拠となります。

  • 業務報告書や日誌
  • 早出出勤で行った業務内容の記録です。また上司や同僚・部下などとのメール・LINEなども証拠になる場合があります。

会社が残業代の支払いに取り合ってくれない場合には訴訟を起こす

最終的な手段は訴訟ですが、司法に訴える前に、公的な第三者を介した話し合いによる解決の道もあります。個別労働紛争解決制度というものであり、次の機関を利用することができます。

  • 紛争調整委員会(都道府県労働局)
  • 社会保険労務士会労働紛争解決センター(全国の都道府県社会保険労務士会)

いずれも、簡易・迅速・少ない費用で解決を図ることができます。

それでも解決に至らない場合に訴訟という手段に頼ることになります。しかし、訴訟はそれなりに一大事で、労力もかかることに注意が必要です。証拠もしっかりしたものを相当な量、集める必要があります。

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早出出勤時の残業代の計算方法と注意点

早出出勤の残業代の計算方法は、通常の残業の計算方法と同じです。早出出勤をした時間が明らかに分かることが必要で、きちんとした記録があることが求められます。

残業代は所定の割増賃金率が加算された賃金で計算

前述のように、残業代は、法定労働時間を超えている場合は、時間外労働の割増賃金が付きます。時間外労働の割増賃金とは、労働基準法で定められた労働時間を超える時間は、割増で残業代が計算されるという仕組みです。時間外労働に対する割増賃金率は2割5分で、残業代は「賃金×1.25」で計算されます。

午後10時から午前5時までは、深夜労働に対する割増賃金も適用されます。深夜労働に対する割増賃金率は2割5分で、時間外労働に対する割増賃金率2割5分と合わせると5割になります。このため5時までの早出出勤の残業代は「賃金×1.5」で計算されることになります。

早出出勤による残業代を計算する際の注意点

早出出勤による残業代を計算する際は、記録が非常に重要になる点に注意しなければなりません。タイムカードなどで出勤時間がはっきりと分かることはもちろん、早出出勤が従業員の自発的な行為ではないことの証明も必要になります。また客観的であることも求められ、証拠が十分に揃えなければ早出出勤の残業代の支払いを受けることは難しくなります。早出出勤の残業代請求を考えるならば、証拠となるものをしっかりと残しておくようにしましょう。

早出出勤による残業代の未払いを事前に防止しよう

早出出勤をした場合にも、残って仕事をする通常の残業と同じように残業代の支払いを受けることができます。残業代の計算方法も同じで、時間外労働の割増賃金が付きます。時間外労働の割増賃金率は2割5分で、残業代は「賃金×1.25」で計算されます。午前5時までの早出出勤は深夜労働に対する割増賃金率も適用されます。ただし従業員の自主的な早出出勤には残業代は付きません。

早出出勤の残業代支払いを受けるためには、出勤時間が明らかに分かるもののほかに、従業員の自主的な早出出勤ではないことが客観的に証明できるものが必要になります。早出出勤の残業代が支払われていない場合は、まず会社に確認をしてみましょう。確認をすれば支払ってもらえる場合もあります。支払いが受けられない場合は請求をしたり訴訟を起こしたりすることになります。どちらの場合でも証拠が必要になるため、普段から記録は残しておくようにしましょう。

よくある質問

早出をした場合にも残業代はもらえる?

早出出勤でも残って仕事をする残業と同じように、残業代の支払いを受けることができます。 詳しくはこちらをご覧ください。

労働基準法の36協定とは?

残業や休日出勤といった時間外労働をするために必要な、会社と労働者の間で締結する協定です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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