• 更新日 : 2022年11月29日

企業年金は3種類!厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金の違いと特徴を解説

企業年金は3種類!厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金の違いと特徴を解説!

退職時または60歳以降に受け取ることができる給付に企業年金があります。企業年金は、3階建ての年金の3階部分(1階部分の「基礎年金」、2階部分の「被用者年金」)を担っている年金制度で、3種類の制度が存在します。

今回は、企業年金の種類とそれぞれの内容についてわかりやすく解説します。また、公的年金との違いや、企業年金の受け取り方、いくらもらえるのかについても見ていきます。

企業年金とは?

企業年金とは、会社が従業員の退職後の生活をより豊かにするために、会社や個人の負担により、公的年金に上乗せする形で年金を支給する仕組みのことで、私的年金となります。

国民年金や厚生年金は公的年金と言われていますが、ここでは、企業年金と国民年金との違い、公的年金との違いについて見ていきます。

国民年金、厚生年金との違い

国民年金や厚生年金は公的年金と言います。国民年金は日本に在住している20歳以上60歳未満の国民全員に加入が義務付けられている年金です。また、厚生年金は会社員や公務員が国民年金と合わせて加入する年金です。それに対して、企業年金は会社や個人が公的年金に上乗せして任意で加入する私的年金です。

公的年金との違い

公的年金は、加入要件を満たした場合に加入することが義務付けられている年金です。企業年金との違いは、企業年金は会社や個人が公的年金に上乗せして任意で加入する私的年金であるというところです。

広告
広告

企業年金の種類

企業年金には「厚生年金基金」「確定給付企業年金(DB)」「確定拠出年金(DC)」の3種類の制度が存在します。順番に見ていきましょう。

厚生年金基金

厚生年金基金とは、厚生労働大臣の認可により企業が設立することができる法人です。国の年金給付のうち老齢厚生年金の一部を代行し、厚生年金基金独自の上乗せ(プラスアルファ)をして年金給付が行われるという特徴があります。プラスアルファがあることからもわかるように、加入者の年金額の増加を図るのが主な趣旨です。

しかし昨今では、運用環境の悪化により大幅な運用赤字にあえぐ基金が増えているのが現実です。そのため、財政が悪化した厚生年金基金は後述する確定給付企業年金に移行するために代行部分を国に返上したり解散したりするなどしています。法改正により2014年4月以降は新規設立ができなくなったため、厚生年金基金の歴史的な役割は終わりを告げたと言ってよいでしょう。

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金は、企業が加入者とあらかじめ給付する内容を約束しておき、退職後にその内容に基づいた給付を受けられる制度です。

確定給付企業年金は、運営形態により、「基金型」と「規約型」の2つに分けられます。

「基金型」は、労使合意の年金規約を制定し、企業が厚生労働大臣の認可を受けて企業とは別の法人格のある企業年金基金を設立して実施します。ただし、基金の設立には常時300名以上の加入者が見込まれる必要があります。基金型は、上記の厚生年金基金の移行先として利用されますが代行部分はありません。

一方「規約型」は、労使合意による規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けて事業主が実施するものとなっています。厚生年金基金制度での反省を踏まえ、代行を行わず、労使の合意によって柔軟に設計可能な企業年金制度として導入されました。

基金型にせよ規約型にせよ確定給付企業年金は給付額が確定しています。そのため、年金資産の積立不足が発生した場合には、企業には掛金を追加拠出する積立義務が課せられています。これを加入者の側から見れば、仮に年金資産の運用が悪化したとしても、約束された金額の給付を受けることができるため、安心できる制度だと言えるでしょう。

主な税務上の特典

確定給付企業年金(DB)の税制上の優遇措置としては、以下の点が挙げられます。

  • 事業主が拠出した掛金は、全額損金算入可能
  • 従業員が拠出した掛金は、生命保険料控除
  • 運用中は年金資産に対し毎年特別法人税課税されるが、現在は凍結中であり、実質非課税
  • 給付を年金として受給した場合には公的年金等控除
  • 給付を一時金として受給した場合には、退職所得控除

一方、確定給付企業年金における従業員のデメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 自分の年金資産額がいくらなのか不明確
  • 運用先を自分で選べない
  • 転職時に、転職先の確定給付企業年金へ移転するには、転職先に確定給付企業年金制度が存在し、かつポータビリティ制度を導入している必要があるなど、移転に制限がある
  • 資産運用に失敗し、積立不足となった場合には、企業は一定期間内に不足を解消しなければならない

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金は大きく「企業型(企業型DC)」と「個人型(iDeCo)」に分けられます。

「企業型」は、その名の通り企業が運営するものであり、加入者は企業の従業員です。掛金は原則として企業が拠出しますが、規約に定めがあれば加入者も上乗せして掛金を拠出することができます。

もう一つの「個人型」は国民年金基金連合会により運営され、掛金は加入者個人が拠出することになります。以前の個人型は、自営業者や企業年金制度のない厚生年金の被保険者の方が加入できるものでした。しかし改正により平成29年1月からは、公務員や企業年金制度に加入している会社員、専業主婦(国民年金第3号被保険者)なども加入できるようになりました。

給付額が変動すると言うと、リスクが高いように思うかもしれませんが、その代わり多くの税務上の特典が用意されています。

主な税務上の特典

確定拠出年金(DC)の税制上の優遇措置としては、以下の点が挙げられます。

  • 事業主の拠出した掛金は、全額損金算入可能
  • 従業員の拠出した掛金は、小規模企業共済等掛金控除
  • 運用で得た配当金、売却益等は全額非課税
  • 運用中は年金資産に対し毎年特別法人税課税されるが、現在は凍結中であり、実質非課税
  • 給付を年金として受給した場合には公的年金等控除
  • 給付を一時金として受給した場合には、退職所得控除

従業員拠出の掛金は、確定給付企業年金の生命保険料控除より優遇された、小規模企業共済等掛金控除が利用できるため有利になっています。また、個人別に年金資産を管理しているため、自分の年金資産額がいくらかを把握でき、転職時の年金資産の移転も容易に行えます。

デメリットとしては、前述の給付額が変動するという点のほか、60歳までは引き出せないという点にも注意が必要です。

広告
広告

企業年金の受け取り方

企業年金の受け取り方には、「年金」として分割で受け取る方法と「一時金」として一度に全額を受け取る方法の2種類があります。会社によっては、一部を年金で、一部を一時金で受け取ることもできるようです。

企業年金の受け取り方については、会社や企業年金基金などで定められたルールにより決まっています。自分がどのような受け取り方ができるかについては、規約などで確認してみましょう。

ここからは、企業年金とその他の年金が両方受けられるか、また、企業年金はどのくらいもらえるのかを見ていきます。

企業年金と厚生年金は両方もらえる?

最初に説明しました通り、厚生年金は被用者年金制度ですので、3階建ての年金制度の2階部分にあたります。同様に企業年金はその3階部分にあたります。

そのため、年金保険料の納付を両方の制度で行っていれば、企業年金と厚生年金の両方から年金を受け取ることができます。

企業年金はいくらもらえる?

では、実際に企業年金はいくらもらえるのでしょうか?とても興味深いところです。

厚生労働省の調査「平成30年就労条件総合調査 4_退職給付(一時金・年金)の支給実態」によると、勤続が20年以上で年齢が45歳以上の退職者に支給した平均退職給付額は以下の通りでした。

【定年の場合】

  • 大学・大学院卒(事務・管理系) 1,983万円
  • 高卒(事務・管理系) 1,618万円

企業年金の制度や給付額については、会社や企業年金基金の制度ごとにその内容が異なるため、詳細の金額はそれぞれの規程を見ながら計算するしかありません。

会社によっては、退職金のモデル額を社内で公開していたり、給与明細に印字したりすることもあるようです。これらの情報公開がない場合は、会社の方に問い合わせてみましょう。

広告

企業年金がない会社もある?

ここまで、企業年金について説明してきました。ただ、企業年金は勤務している会社に必ずある制度ではありません。

上記厚生労働省の調査「平成30年就労条件総合調査 3_退職給付(一時金・年金)制度」によると、20%弱の企業には企業年金のような退職給付制度はないという調査結果が出ています。

制度がないと回答している会社の中でも、中小企業のように企業規模が小さくなるほど制度を設けていない会社の割合が多くなっているようです。

勤務先に企業年金制度があるかどうかがわからない人は、早めに会社に確認しておきましょう。

広告

企業年金のそれぞれの制度の特徴を理解しましょう

今回は、企業年金とはどのようなものか、企業年金には3種類の制度があること、年金の受け取り方や公的年金との両方を受け取ることができるのか、などについて見てきました。

企業年金は、制度がある会社もあればない会社もあります。勤務先の企業年金制度の有無を確かめておきましょう。

企業制度がある場合は、内容や将来受け取れる年金額について確認して高齢期の生活を考えることが大切です。制度がない場合には、高齢期の生活のために必要な手段について検討しましょう。

よくある質問

企業年金とはなんですか?

会社が従業員の退職後の生活をより豊かにするために、会社や個人が公的年金に上乗せする形で支給する年金のことです。企業年金には、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、厚生年金基金があります。詳しくはこちらをご覧ください。

企業年金と公的年金との違いについて教えてください。

企業年金は会社や個人が公的年金に上乗せして任意で加入する私的年金です。公的年金には、国民年金、厚生年金がありますが、要件を満たした場合には加入が義務付けられる年金であるところが違います。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)

山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)
やまもと社会保険労務士事務所所長
大学卒業後、システム開発技術者、上場企業情報システム部&人事部を経て2016年に開業。
独立後も労働局の総合労働相談員として200件以上のあっせん事案に関与。労働相談は民間委託事業の電話相談も含めて1,000件以上の実績あり。
労務相談、就業規則、給与計算を中心に、各種手続きや労使問題対応など、外部人事部員として活動。システムのことも分かる社会保険労務士です。

関連記事