- 更新日 : 2023年6月30日
レジリエンスとは?なぜビジネスで重要か?意味や使い方、高めるコツを解説
レジリエンスとはストレスを受けた際の精神的回復力を意味する言葉です。職場のレジリエンスを高められれば、社員のストレスが軽減されるだけでなく生産性アップも期待できます。この記事ではレジリエンスの概要や注目されている背景、レジリエンスを高めることで得られる効果などについて解説します。
目次
レジリエンスとは?
レジリエンスとはどういったものでしょうか。レジリエンスの概要や使い方、身近な例などを解説します。
レジリエンスの意味
レジリエンスとは英語やフランス語のResilienceに由来する心理学の用語で、ストレスを受けた際の精神的回復力を意味する言葉です。ストレスに対する復元力や耐久力、再起力などとも言い換えられます。同じストレスを受けても、人によって受け止め方はさまざまです。深いダメージを負ってしまう方もいれば、気持ちを切り替えてすぐに立ち直れる方もいます。レジリエンスの違いによって、困難な状況に置かれた際の適応力が変わってくるのです。
レジリエンスの使い方
レジリエンスの使い方としては、心理学では困難や逆境に適応する能力として使用されます。ビジネスにおいては企業の耐久力や逆境に対する忍耐力を表す言葉として使われることが一般的です。
なお、レジリエンスには後述するメンタルヘルスやストレス耐性、ハーディネスなどの類語があります。それぞれの意味合いの違いを理解して、正しくレジリエンスという言葉を使いましょう。
身近なレジリエンスの例
身近なレジリエンスの例として、PTSDを考えてみましょう。 PTSDとは心的外傷がきっかけとなったストレス症状群のことで、心的外傷後ストレス障害と訳される言葉です。場合によっては専門家による看護が必要なPTSDですが、心理的外傷を経験したすべての方が発症するわけでありません。レジリエンスが高い方は自らの力で、精神的ダメージから回復することができるのです。
各分野でのレジリエンスの意味
レジリエンスは心理学やビジネス以外でも幅広い分野で使用されており、代表的な例をいくつか解説します。
- 組織レジリエンス
組織レジリエンスとは企業や組織において、社会や投資などの市場環境の変化で発生するリスクや困難に適応する力を表します。
- 災害レジリエンス
災害レジリエンスとは災害による被害や損害から復興する力を示します。
- 環境レジリエンス
環境レジリエンスとは環境変化に対する復元力や、自然生態系に関する適応能力を示す言葉です。
- サイバーレジリエンス
サイバーレジリエンスとは組織におけるサイバー攻撃に対する耐久力や回復力を示す言葉です。
レジリエンスが高い人、低い人の特徴
次に、レジリエンスが高い人や低い人の特徴について解説します。
レジリエンスが高い人の特徴
レジリエントな方は思考に柔軟性があって、自分の感情をコントロールできます。ストレスのある出来事があって失敗したとしても、挑戦することを諦めません。一歩一歩着実に成長できるという思考を持てるので、ネガティブな状況に置かれてもポジティブな側面を見つけ出せるのです。また、職場などで周囲の方と信頼関係を築くことも得意としています。
レジリエンスが低い人の特徴
一方、レジリエンスが低い方の特徴としては、ストレスを溜め込みやすく目の前の状況に一喜一憂しやすい傾向があります。目の前の失敗にとらわれてしまうので、落ち込みやすい方が少なくありません。自己肯定感も低い場合が多いので、失敗から立ち直るために時間がかかります。
なぜビジネスでレジリエンスが注目されているか
続いて、なぜビジネスでレジリエンスが注目され、関連した取り組みが評価されているのでしょうか。いくつかの社会的な背景について解説します。
メンタルヘルスに関する対策が必要とされている
メンタルに問題を抱える社員が顕在化する企業が増えており、対策が必要とされています。社員にメンタルヘルス不調が生じると、仕事に対するモチベーションが低下するだけでなくミスの増加といったリスクも軽視できません。状況によっては働くこと自体が厳しくなるケースもあり、企業としては早急に対処する必要があるのです。そうした企業の職場環境を改善するために、レジリエンスの向上が注目されています。
労働力不足が深刻化している
少子高齢化の影響もあり、労働力不足が深刻化しています。対策としてITツールの使い方を工夫するなど、人手不足を解消するための施策を導入している企業も多いのではないでしょうか。同時に社員により高いパフォーマンスで働いてもらうことを目指し、レジリエンスに注目するケースも増えているのです。仕事で課題にぶつかっても前に進んでいける人材を、レジリエンスを高めることで育成しようとする取り組みが広がっています。
企業のレジリエンス向上でどんな効果をもたらすか
それでは、レジリエンスが向上すると、企業にはどういった効果があるでしょうか。代表的な3つの効果について、それぞれ解説します。
社員のストレスが軽減される
レジリエンスが向上すると、社員のストレスが軽減されます。複数の業務を同時に抱えている方や、多くの人材をマネジメントしなければならない管理職など、企業で働く方へのストレスは多様です。レジリエンスを高めて適応力を強化すれば、ストレスへ柔軟な対応ができるようになるのです。
目的達成のためのスキルが向上する
目的達成のためのスキル向上にも、レジリエンスは効果があります。企業における目標を達成するためには、障害や問題を解決しなければならないケースが少なくありません。なかなか思いどおりには進まずに、大きなストレスと向き合わなければならない場面も想定されます。そうした際にレジリエンスを高めておくことで、失敗したとしても前進できる力をアップできるのです。
環境や状況の変化に強くなる
レジリエンスが高まれば、さまざまな変化にも強くなります。企業で働いていると転勤や出向、昇格など、誰もが環境の変化に向き合わなければなりません。昨今では新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワークへの対応も広がりました。こうした環境や状況の変化は負担が大きい出来事ですが、レジリエンスが高いと発生するストレスに柔軟に適応できます。
組織のレジリエンスを高める方法、ポイント
組織のレジリエンスを高めるにはどうすれば良いでしょうか。具体的な方法や実施する際のポイントについて解説します。
ビジョンやミッションを浸透させる
企業のビジョンやミッションを社員に伝えて浸透させましょう。ビジョンには企業が中長期的に達成したい目標、ミッションは企業の存在意義が定義されます。ビジョンやミッションを浸透させられれば、社員の意識が高まるだけでなく目指すべき方向を一致させられるのです。
サポート体制を構築する
企業のサポート体制を構築しましょう。仕事で発生する問題やストレスに対応するには、時には自分の力だけでは難しい場面も珍しくありません。そうした際には上司や職場の仲間に相談できる環境が求められます。加えて、総務・人事・産業医などが対応できる体制があれば、社員はレジリエンスを高めて働くことが可能です。
1on1を実施する
上司と部下が1対1で面談を行う、1on1を実施してみましょう。1on1の目的は部下の成長を促進させて企業の組織力を強化することであり、上司は部下の話に耳を傾ける姿勢が重要です。相手の価値観や意見を尊重して、じっくりと部下の話を聞く意識を大切にしてください。感情的になって反論してしまうのではなく、上司には適切なフィードバックスキルが求められます。1on1が成功すれば上司は部下から尊敬を得られるだけでなく、組織全体の信頼関係強化にもつながるのです。
レジリエンスが高い職場の特徴
レジリエンスが高い職場の特徴について解説します。
心理的安全性が高い
レジリエンスの高い職場は心理的安全性が高い特徴があります。職場における心理的安全性とは、働いている誰もが安心して発言や行動できる環境を指す言葉です。レジリエンスが高い組織では、メンバー間の信頼関係が強い傾向にあります。一緒に働く相手のことを信頼しているからこそ、心理的安全性も高くなるのです。
生産性が高い
レジリエンスに優れるメンバーが増えれば、職場の生産性向上が可能です。レジリエンスが高いと職場での対話が増え、さまざまなアイディアが多く集まります。さらに、社員一人ひとりが自然体で働けるため、自身の強みを業務に生かしやすくなるのです。個々の強みが発揮されれば、職場全体の生産性向上にもつながります。
レジリエンスの類義語、類似する言葉
レジリエンスに類似する言葉についても意味を整理しておきましょう。
メンタルヘルスとの違い
メンタルヘルスとは体の健康ではなく心の健康状態を意味する言葉です。仕事や生活での心理的な負担の軽減や精神疾患にならないように予防する取り組みも含まれます。一方、レジリエンスは起きた出来事に対しての適応や回復力を示す言葉です。
ストレス耐性との違い
ストレス耐性とはストレスに対する抵抗力を表す言葉です。ストレスとなる出来事に対しての感じ方や対処する力がストレス耐性に影響します。このストレス耐性はレジリエンスを構成する要素の1つです。
参考:ストレス耐性|厚生労働省
ハーディネスとの違い
ハーディネスとはストレスが発生した際の頑強さや傷つきにくさを表し、メンタルの防御力を指す言葉です。一方、レジリエンスはストレスでダメージを受けても回復できるという特性を表します。
参考:ハーディネスを媒介して自己内省が抑うつに与える影響|科学技術振興機構
職場のレジリエンスを高めよう
仕事をしているとさまざまなストレスがあり、従業員の適応力を高めようとする企業が増加中す。対策の一つとしてレジリエンスという言葉が注目されており、ストレスを受けた際の精神的回復力を高める取り組みが広がっています。レジリエンスを高めると社員のストレスを軽減できるだけでなく、ビジネスの環境や状況の変化に強い組織を構築することが可能です。職場のレジリエンスを高めて、ストレスに強い組織を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
コアコンピタンスとは?意味や目的、5つの評価指標を解説!
コアコンピタンスは、企業の中核的な力を意味し、具体的には他社が真似できない自社ならではのスキルや能力のことをいいます。1990年に提唱された概念であり、経営戦略の場面で使用されてきました。本記事では、コアコンピタンスとケイパビリティの違いや…
詳しくみる社外取締役とは?役割や社内取締役との違いを解説
取締役は、会社の業務執行における意思決定のために設置される機関です。会社が事業を継続し、成長するためには優秀な取締役が必要となるでしょう。 通常取締役と言えば、社内取締役を指します。しかし、それとは別に社外取締役と呼ばれる役員が選任される場…
詳しくみる転籍とは?出向との違いやメリット・デメリットを解説!
新卒採用であれ中途採用であれ、退職などの特別な事情がなければ通常は採用先の企業で勤務を続けることになります。しかし、人事異動の一環として他企業に籍を移す場合もあるでしょう。 当記事では、転籍について解説を行っています。出向との違いや転籍のポ…
詳しくみるキャリアとは?意味や開発方法を紹介
日本では、学歴が重視される傾向があります。しかし、人生においては、学歴以上に重要なものとしてキャリアがあります。この記事では、キャリアの意味など基本的な事項と、その必要性の他、キャリア開発について詳しく解説していきます。 キャリアとは? キ…
詳しくみるEQとは?高い人の特徴や改善方法を解説!
EQとは心の知能指数とも呼ばれ、自分の感情の状態を把握し制御した上で、他者の感情を理解し活かす能力のことです。職場の人間関係構築だけではなく、部下の育成やチームビルディングなど、ビジネスシーンでも重要となる指数として注目を集めています。 こ…
詳しくみるアンダーマイニング効果とは?定義や防ぐ方法を例を用いて解説
仕事やスポーツで目的を達成するためには、モチベーションの維持が重要です。しかし、はじめた当初と同じモチベーションを維持することは容易ではありません。 当記事では、モチベーション低下につながる「アンダーマイニング効果」について、具体例を挙げて…
詳しくみる