• 更新日 : 2024年6月14日

休憩時間が取れなかった場合どうすればよい?対処法や違法性について解説!

休憩時間は、労働基準法に定められた事業主が労働者に与えなければならない義務です。しかし、仕事の事情などで、労働者が休憩時間を取得できないケースもあるでしょう。本記事では、休憩時間が取れなかった場合の対処法や違法性について解説します。

そもそも休憩時間とは?

休憩時間は、労働者の肉体的や精神的な疲労を取るために必要な時間です。そのため、労働基準法第34条には、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定められています。

参考:労働基準法 第34条|e-Gov法令検索

休憩時間における3つの原則

労働基準法第34条では、休憩時間の付与について3つの原則を定めています。

①途中付与の原則
労働基準法では、休憩時間は労働時間の途中に与えなければならないと定められています。休憩とは、労働者の疲労を回復させて、健康を維持するためのものです。そのため、就業前や終業後に休憩を与えることは、認められません。

②一斉付与の原則
労働基準法では、休憩時間は一斉に付与しなければならないと定められています。この原則は、同じ事業所に勤務する労働者は、一斉に休憩を取らなければならないということです。

ただし、労使協定を締結している場合は、休憩時間を一斉付与でなく労働者個別に付与しても問題ありません。また、休憩時間の一斉付与が難しい一定の業種については、一斉付与の原則が適用対象外です。

③自由利用の原則
労働基準法では、休憩時間は自由に利用させなければならないと定められています。休憩時間は、労働者が労働から開放されて自由に使える時間でなければなりません。

ただし、警察官、消防吏員、常勤の消防団員などの一定の業種の職員については、自由利用の原則は適用されません。

参考:労働基準法 第34条|e-Gov法令検索

休憩時間の長さは?早上がりの時はどうなる?

労働者の労働時間が6時間超から8時間以下の場合は、少なくとも45分の休憩時間を付与しなければならないと労働基準法に定められています。また、労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定めています。そのため、労働時間が6時間以下の場合は、休憩時間を労働者に与える義務はありません。

また、例えば忙しくて休憩時間が取れなかった労働者が、その休憩時間分を早上がりしたいという希望があったとします。

休憩には途中付与の原則があるため、休憩時間分早上がりすることは労働基準法違反になります。そのため、休憩時間の分だけ早上がりすることはできません。

休憩時間の取り方・休憩時間とみなされる条件

休憩時間は、労働から完全に離れた状態で取得する必要があります。休憩時間に来客対応や電話対応などの労働をした場合には、休憩時間にはなりません。また、待機している時間などの手待ち時間も労働時間であり、休憩時間には含まないため注意が必要です。

他にも、ランチミーティングは、強制参加の場合や参加しなければ労働者が評価や業務において不利益を被る場合は、労働時間になります。一方、ランチミーティングが自由参加形式であり、参加しなくても労働者が評価や業務において不利益を被らなければ、休憩時間とみなされる可能性が高いでしょう。

休憩時間の付与に雇用形態は関係ある?パートやアルバイトも対象?

休憩時間は、雇用形態に関係なく労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間付与しなければならないとされています。そのため、休憩時間を正社員だけに与えて、パートやアルバイトなどの非正規社員には与えないことは認められません。

休憩時間の取扱における注意点-違法な手続き

休憩時間の付与は労働基準法第34条に定められていて、遵守しなければ基本的には労働基準法違反になります。本項では、休憩時間の取扱において、違法になるため注意しなければならない点について解説します。

休憩時間を買い上げること

休憩時間は、時間を満たした場合は労働基準法で必ず付与しなければならないと定められているため、賃金を支払うことで休憩時間を買い上げることはできません。

休憩が取れなかった場合は労働時間内に別途休憩を付与しなければならず、取れなかった休憩時間分の労働時間を短縮したり、賃金と代替したりすることは違法になるため注意が必要です。

休憩時間の付与義務を怠った場合

労働基準法で定められた休憩時間を労働者に与えなかった場合には、労働基準法違反になります。忙しくて休憩時間が取れなかった場合であっても、例外ではありません。

この場合は、労働基準法第119条第1項により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるため注意が必要です。

参考:労働基準法 第119条|e-Gov法令検索

休憩時間を取らなくても違法にならないケース

休憩時間の付与をしなかった場合は基本的に労働基準法違反になりますが、違法にならないケースもあります。本項では、休憩時間を取らなくても違法にならないケースについて解説します。

労働者が自主的に休憩を返上した場合

労働者が仕事を早く終わらせたいなどの理由により、自主的に休憩を返上した場合は違法にはなりません。ただし、あくまでも労働者が自主的に休憩を返上することが必要です。事業主は、休憩を適切に取得するように指示や指導をする必要があります。

【事業主向け】従業員が休憩時間を取れなかった場合にはどう対処すればよい?

事業主は、労働者に対して労働基準法で定められた休憩時間を付与しなければなりません。しかし、忙しいなどの理由で、労働者が休憩時間を取れないケースもあるでしょう。本項では、労働者が休憩時間を取れなかった場合に、事業主はどう対処すればよいかについて解説します。

労働時間中の別の時間に休憩時間を付与する

業務が忙しいなどの理由で休憩が取れなかった場合には、時間をずらして別の時間に休憩時間を付与することが可能です。ただし、ずらした休憩時間は、労働時間の途中で取る必要があります。労働時間外に休憩時間をずらすことは、途中付与の原則に違反するため認められません。

休憩時間の分割付与を検討する

業務が忙しいなどの理由で一括で休憩時間を取得することが難しい場合は、休憩時間を分割で付与することを検討します。労働基準法では、休憩時間の分割付与については制限していないため、分割での付与も可能です。

ただし、分割した休憩時間の合計が、労働基準法に定められた休憩時間以上になる必要があるため注意してください。

どうしても休憩時間を取れない場合は?

業務が忙しいため、休憩時間をずらして付与することも、分割して付与することもできないケースがあります。このようにどうしても休憩時間を取れない場合は、法定労働時間内では通常賃金を支払うことで対応します。

また、休憩時間を取れなかったことにより時間外労働が発生した場合は、割増賃金の支払いが必要です。ただし、いくら賃金を支払っても休憩時間を付与しないことは、労働基準法違反になり罰則の対象になる可能性があります。

【従業員向け】休憩時間を取らせてもらえない場合にはどう対処すればよい?

事業主は労働者に対して労働基準法に定められた休憩時間を付与しなければなりませんが、場合によっては休憩時間を取らせてもらえないケースもあります。本項では、休憩時間を取らせてもらえない場合の対処方法について解説します。

上司に相談する

休憩時間を取らせてもらえないような状況である事実や、休憩時間を付与しなければならないことについて、事業主側が把握していない可能性があります。まずは、休憩時間が取れないことを上司に相談をして、問題に気付いてもらうことが大切です。

上司に相談することで、休憩時間を取らせてもらえないような状況が改善される可能性があります。

労働組合に相談する

司に相談しても改善されないような場合には、会社に労働組合があれば労働組合に、なければ合同労働組合(ユニオン)に相談する方法もあります。

労働組合に相談する場合は、事実関係を証明するために、タイムカードや休憩時間内の仕事のメール履歴などの資料を持参するとよいでしょう。

行政機関に相談する

休憩時間を付与しなければ労働基準法違反になるため、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、労働局などの行政機関に相談することも可能です。

労働基準監督署の場合は、労働基準法違反の可能性が高いと判断すれば、事業主に対して労働基準法を遵守するように指導や勧告をしてくれる可能性があります。ただし、行政機関は中立な立場のため、労働者の代理として権利を行使してくれるわけではありません。

行政機関への相談は電話でも可能ですが、事実関係を証明できるタイムカードや休憩時間内の仕事のメール履歴などの資料を持参して窓口に相談しに行くとよいでしょう。

弁護士に相談する

休憩時間を取らせてもらえないような状況であるだけでなく、その時間の賃金の支払いがない場合には弁護士に相談するのがよいでしょう。

弁護士に相談することにより、休憩時間が取れるようになるだけでなく、未払いの賃金の支払いも請求することができます。

休憩時間を与えられない状況には早めの対処が必要

休憩時間は、労働者の肉体的、精神的な疲労が蓄積されないために必要な時間です。休憩時間は労働者に与えられた権利であり、付与することは事業主の義務でもあります。そのため、休憩時間を与えられていなく違法状態になっている場合には、労働者の健康のためにも、事業主が罰則の対象にならないためにも早めの対処が必要です。


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