- 更新日 : 2025年3月12日
学習性無力感とは?原因や予防、克服方法を解説!
努力しても報われない場合には「何の意味があるのだろう」と、無力感を覚えることもあるでしょう。無力感を抱いたままでは、モチベーションも上がらず仕事にも悪影響が出てしまいます。
本記事では、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼす「学習性無力感」について解説を行っています。予防法も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
学習性無力感とは?
「学習性無力感」とは、米国の心理学者であるセリグマンが1967年に提唱した概念で、回避できないストレスに長期間さらされると、抵抗さえしなくなるというものです。
ストレスが与えられる状況であれば、回避しようと努力することが通常ではないでしょうか。しかし、学習性無力感となった状態では、回避する努力すら放棄してしまいます。自分が無力であると学習し「抵抗や努力をしても何の意味もない」と判断しがちです。この状態では自発的に行動することが困難となり、さまざまな悪影響が生じます。
学習性無力感とうつ病の違いは?
学習性無力感と近しい性質を持つものとして、うつ病が挙げられます。両者には、無力感に苛まれるといった共通点もありますが、似て非なるものです。
学習性無力感は、回避が困難となる特定のストレスから発生します。うつ病もストレスが原因となることが多いですが、必ずしも特定のストレスから発症するわけではありません。また、学習性無力感が特定の状況に対する無力感であるのに対して、うつ病は仕事や私生活全般に対して無力感にさいなまれる点にも違いがあります。両者を混同することのないように注意しましょう。
大人が学習性無力感に陥る原因は?
大人が学習性無力感に陥る原因はさまざまですが、自己肯定感の低い方や完璧主義の方が学習性無力感に陥りやすいといえるでしょう。自己肯定感が低い方や、常に完璧な結果を求める方は、どうしても自己評価は低下します。その結果「このまま続けても無駄ではないのか」と疑問を抱き、学習性無力感に陥ってしまいます。
仮に自己肯定感に問題がなく、完璧主義者でなくても、周囲に結果を否定され続けたり、思うような成果が出なかったりする状態が続けば、学習性無力感に陥ってしまう場合もあります。なかなか結果が出ない場合や、出たとしても否定され続けられれば、挑戦自体に嫌悪を感じ、無力感を抱くことになるでしょう。
学習性無力感が職場に与える影響は?
学習性無力感に陥った状態の社員は、モチベーションが著しく低下していることが通常です。モチベーションが低い状態では、生産性も上がらず、所属部署のみならず企業全体の収益性も低下させてしまうでしょう。また、挑戦することに嫌悪感を覚えているため、新しい発想も生まれなくなり、社員の成長も望めなくなります。
学習性無力感は、避け得ないストレスを原因として発生するため、そのまま放置すればメンタル不調につながります。メンタル不調は休職や離職を誘発するため、企業は労働力を喪失する事態に見舞われかねません。少子高齢化の進展により、労働力人口の減少傾向が続く日本において、メンタル不調による休職や離職は避けるべき事態です。
学習性無力感は、本人だけでなく、周囲にも伝播する可能性があります。周囲へ伝播すれば、負の影響はより大きくなってしまうでしょう。そのため、適切な予防策を講じることで、事前にその発生を防ぐことが重要です。
学習性無力感を予防するには?
さまざまな負の影響をもたらす学習性無力感は、百害あって一利なしといえる状態です。そのため、学習性無力感に陥る前に予防しなくてはなりません。以下のような方法を取ることが有効な予防策となるでしょう。
風土を変える
学習性無力感を予防するには、まず企業や職場の風土を変えることが必要です。新しい挑戦を否定せず、失敗を許容する風土を形成すれば、学習性無力感も生まれにくくなるでしょう。
意見を述べやすい環境構築
予防には、意見を述べやすい環境づくりも重要です。意見を述べられない、または述べても却下され続けるような状態では、どうしても自分に無力感を覚えてしまうでしょう。
声掛けを行う
積極的に声掛けを行うことも予防策として有効です。上司が部下に対して積極的に声を掛けていれば、悩みも相談しやすく、原因となるストレスを軽減できます。
行動に対する結果の反映
学習性無力感の予防では、自分の行動を無駄と思わせないことが重要です。そのため、自分の行動は意味があり、自分次第で周囲にも影響を与えられると認識させなければなりません。
学習性無力感の克服方法は?
十分な予防策を講じたとしても、学習性無力感に陥ってしまう場合もあり得ます。そのような場合には、以下のような方法を取ることで、学習性無力感の克服を図りましょう。
小さな成功体験
大きな成果ではなく、小さな成功を積み重ねることで学習性無力感を克服できる場合があります。小さな目標を立てて、着実に成果を積み重ねていけば、自身の行動に肯定的な評価を下せるようになるでしょう。
安易に励まさない
学習性無力感に陥った社員を前にすると、どうしても叱咤激励してしまいがちです。しかし、本人の状況がわからないまま、励ましてしまえば逆効果となる場合もあります。時には見守ることが克服にもつながります。
環境を変えてみる
学習性無力感はストレスを原因として発生しますが、そのストレス原因が環境にある場合も珍しくありません。そのため、配置転換などを行うことで、心機一転し、新しい挑戦を始めるポジティブさを取り戻せる場合もあります。
適切な運動と休息
過度ではない適切な運動は、健康状態を改善し、精神にも良い影響を与えます。そのため、適切な運動を行うことで、ストレスが軽減され学習性無力感の克服につながる場合もあります。また、休息を取って心身をリフレッシュさせることも、状態の改善につながる有効な対策となるでしょう。
学習性無力感の発生を予防し離職を防ごう
学習性無力感は、生産性を減少させるだけでなく、休職や離職にもつながりかねないものです。少子高齢化の進展により、労働力人口の減少傾向が続く日本では、採用競争も激化の一途をたどっています。そのような状態において、学習性無力感に端を発する離職は、どの企業においても避けたい事態となるでしょう。
本記事では、学習性無力感の概要や予防策、克服方法などについて解説を行ってきました。学習性無力感でお悩みであれば、ぜひ参考として克服につなげてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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