• 作成日 : 2022年11月18日

労働基準監督署の調査について – 対応方法や罰則

厚生労働省の出先機関である労働基準監督署(労基署)は、企業が労働基準に関する法令に則った運営を行っているか調査を行います。労基立ち入り調査は抜き打ちで行われることがほとんどです。当記事では、労基署の調査の概要や調査内容、取るべき対応について紹介します。

労働基準監督署の調査とは?

労働基準監督署(以下、労基署)とは、労働条件の向上や労働者の安全と健康の確保を目的とする厚生労働省の第一線機関のことです。全国に321署配置されており、企業が労働基準法や労働安全衛生法に則った運営を行っているかを調査します。具体的には、監督指導や特定の機械の検査、労災保険の支給の調査などです。労基署が行う調査を「臨検監督(臨検)」と呼びます。

労基署は「方面(監督課)」「安全衛生課」」「労災課」「業務課」の4支署から構成されており、調査を実施するのが「方面(監督課)」です。「方面(監督課)」では、法定労働条件に関する相談や勤務先に行政指導を求める申告を受け付けています。計画的にあるいは労働者からの相談をきっかけとして立ち入り調査を行うことが一般的です。帳簿類を確認して従業員の労働条件について確認を行います。機械や設備についても検査されるため、日常的に適切な設置やメンテナンスを徹底しておきましょう。

調査の結果、法違反が認められた場合は事業主に対して指導が行われ、危険性の高い機械・設備はその場で使用停止となります。度重なる指導にもかかわらず改善が見られない場合は刑事事件として取り調べが行われるため、大ごとにならないようにするためにも指導があった場合は速やかに従いましょう。捜索や差押え、逮捕などの強制捜査となった場合、検察庁に送検されることになります。報道されることで、会社の名前がマイナスなイメージで世間に認知されてしまうため注意してください。
 
参考:労働局|厚生労働省
参考:労働基準監督官の仕事|厚生労働省 労働条件に関する総合情報サイト

労働基準監督署の調査はどういったケースで行われる?

労基署の調査が行われるケースとして以下の3つがあります。

  • 主体的かつ計画的に対象企業を選定して行うケース(定期監督)
  • 労働者から個別の相談や申告があったケース(申告監督)
  • 労働災害が発生したケース(災害時監督)

36協定に特別条項が付いている等、長時間労働やサービス残業の可能性がある企業や業種が調査の対象になりやすいようです。

定期監督とは、3つのケースのうち最も一般的な調査で、労基署が任意に調査対象を選択し、法令全般に渡って行う調査を指します。労働者から申告をされて行う調査ではないため、調査の内容や程度は監督官の裁量によるものと考えておきましょう。事業主の態度ひとつで調査を念入りに行われる可能性もあるため、誠実に対応することが大切です。

申告監督とは、労働者が労基署に申告したことで事実を確認するために行う調査を言います。とはいえ、個別の労働者の権利救済はあくまで裁判所の役目です。労基署は調査や指導を行う治安機関のため、労働者の申告に対応するかは担当官の判断によります。労働者は不当解雇や残業の未払いなど特定の部分について申告するため、定期監督と比較して調査や対応が厳しくなるでしょう。

災害時監督とは、死亡事故の発生など重大な労働災害が発生した際に行われる調査のことです。労働災害により労働者が死亡した場合や、同時に複数人の被害者が発生した重大事故の場合に実施されます。労働者が1人でも重篤な傷害を負った際に行われる調査として認識しておきましょう。

災害調査の場合、労働基準監督官だけでなく、産業安全専門官や労働衛生専門官、その他必要に応じて専門官が現場に訪れます。調査内容は、災害発生現場の普段の状態や、災害が起きたときの状況、災害の原因、労働安全衛生法等の法違反の有無などです。なお、重大な災害が発生して労働者が重症を負った場合、企業は所轄の労基署に速やかに連絡をしなければなりません。災害内容によっては、事故報告書の提出が求められます。

参考:労基署ってどんなところ?定期監督って?|厚生労働省 山梨労働局

労働基準監督署の調査の流れ

臨検は前述したいずれのケースの場合も、まずは企業に訪問します。定期監督は文書や電話にて通知を行う場合がほとんどです。申告監督の場合は、実態を把握するために予告なく立ち入り調査が実施されます。企業に事情聴取や帳簿の確認などの立ち入り調査を実施し、法違反が認められなければ臨検はここで終了です。法違反が認められた場合は是正勧告・改善指導・使用停止命令などの文書指導が行われるため従いましょう。しかし、重大・悪質な事案があった場合はこの時点で送検となるため注意しなければなりません。

法違反や重大な事案がなければ、文書指導のあとに企業が是正・改善報告を行うか、再度の立ち入り調査が行われます。いずれかを終え、是正・改善が確認されれば指導は終了です。再度の立ち入り調査で重大・悪質な事案があった場合は送検となるため、文書指導が行われた時点で改善を図りましょう。なお、これはあくまでも一般的な流れであり、事案によって異なる場合があります。

参考:労働基準監督署の役割|厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署

労働基準監督署の調査の対応方法

労基著がいつ抜き打ちで調査に来ても問題ないように、日ごろから適切な労働関係帳簿・書類等を準備しておきましょう。特に「就業規則」は整備しておかなければなりません。労基署に就業規則の届出を済ませてあるか、内容は最新の法律に則っているか、パートやアルバイトにも適用できる規則を整備しているかなども確認しておいてください。勤怠データや賃金台帳を改ざんしたり、従業員に調査に関して問答を強いたりした場合は厳しい罰則が科されます。

準備しておきたい書類は以下のとおりです。

  • 就業規則
  • 雇用契約書
  • 1年分の賃金台帳
  • 協定届(36協定や変形労働時間関係届)
  • 勤務記録票
  • 給与明細書
  • 労働者名簿
  • 組織図
  • 年次有給休暇の管理簿
  • 定期健康診断個人票
  • 安全衛生委員会の議事録
  • 産業医の選任がわかるもの

スムーズに調査を進められるように必要書類を説明できる状態で整備しておきましょう。立ち合い中に書類の不備が見つかった場合は監察官が求めることに素直に答えてください。不備があったとしても誠実な対応をすれば大きな問題にはなりません。絶対にしてはならないのが虚偽報告です。虚偽報告が明らかになった場合は強制捜査や検察庁への送検に発展してしまう可能性が高まります。

労働基準監督署の調査を断ると罰則はある

調査を行う労働基準監督官は以下の権限を有しています。

  • 適切な調査を行うために対象企業に昼夜いつでも自由にかつ予告なしに立ち入り調査できる
  • 労働関係帳簿類の確認をしたり、使用者や従業員に尋問したりできる
  • 立ち入り調査を拒んだり妨害したりした者に対して労働基準法に則って処罰する場合がある

調査に協力しない場合は30万円以下の罰金に処されます。質問に適切に答えなかったり、書類の提出をしなかったりした場合は罰則の対象となる可能性があるため注意しましょう。忘れてはならないのが、監督官は労働基準関係法令の違反に関する罪において司法警察と同様に強制捜査を行う権限が認められていることです。監督官が予告なしにやってきて担当者が不在の場合は再来訪をお願いしてください。複数回にわたって日程変更を依頼すると何らかの事情により調査を拒否していると判断される可能性があるため注意が必要です。

参考:労働基準監督官の仕事|厚生労働省 労働条件に関する総合情報サイト

労働基準監督署の調査に対応できるように日ごろから準備しておきましょう

ここまで労基署が行う調査について解説しました。労働者から労基署へ相談が合った場合、調査は抜き打ちで行われます。調査にスムーズに対応できるように日ごろから就業規則や雇用契約書、賃金台帳など労働関係帳簿・書類等を準備しておくことが大切です。最近では労働者からの告訴や告発が増えているため、今一度、労働環境や労働条件が適切か見直しておきましょう。

よくある質問

労働基準監督署の調査とはなんですか?

企業が労働基準法や労働安全衛生法に則った運営を行っているか確認するものです。詳しくはこちらをご覧ください。

労働基準監督署の調査について、企業はどう対応すればよいですか?

労働関係帳簿・書類等の提出を行い、必要に応じて事情聴取を受けます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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