- 更新日 : 2026年9月4日
年次有給休暇の計画的付与を導入するには?時季指定との違いや手続き・注意点を解説
計画的付与とは、5日を超える有給休暇について労使協定に基づき会社が取得日を指定できる任意制度です。
- 対象は付与日数から5日を引いた部分
- 導入には就業規則変更と労使協定が必須
- 取得分は時季指定義務の5日から差引可能
Q. 計画的付与と事業主の時季指定義務の違いは?
A. 計画的付与は労使協定が必要な任意制度で全従業員が対象。時季指定義務は年10日以上付与される従業員に年5日取得させる法的義務です。
年次有給休暇の計画的付与とは、有給休暇のうち5日を超える部分について、労使協定に基づき会社があらかじめ取得日を指定できる制度です。本記事では、計画年休とも呼ばれるこの仕組みと、事業主の時季指定義務との違い、導入方法や手続きの流れ、実務上の注意点までを解説します。
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年次有給休暇の計画的付与とは何か?
年次有給休暇の計画的付与とは、従業員に付与された年次有給休暇のうち5日を超える日数について、労使協定を結ぶことで会社が取得日をあらかじめ指定できる制度です。計画年休とも呼ばれます。
この根拠は労働基準法39条6項にあります。通常の有給休暇は従業員本人が取得日を指定しますが、計画的付与では労使協定によって取得日が定められるため、従業員が個別に取得日を選ぶことはできません。会社と従業員が事前に休暇の予定をすり合わせておくことで、周囲に気兼ねすることなく有給休暇を消化できる環境を整えることが、この制度の狙いです。
参考:年次有給休暇の計画的付与制度とは|働き方・休み方改善ポータルサイト
有給休暇の取得を促すための任意の制度
計画的付与は法律上の義務ではなく、有給休暇の取得を促すための任意の制度です。導入するかどうかは各企業の判断に委ねられています。
一方で、いったん労使協定を締結して計画的付与を実施すると、対象となる従業員は取得日の変更や取得の拒否を原則としてできません。これは、従業員個人の意思にかかわらず取得日を確定させることで、有給休暇の取得率を確実に引き上げる目的があるためです。厚生労働省の統計によれば、令和6年(2024年)分の年次有給休暇取得率は66.9%と、昭和59年以降で過去最高を記録しましたが、政府目標である70%にはまだ届いていません。こうした背景から、計画的付与のような仕組みの活用が引き続き注目されています。
参考:令和7(2025)年就労条件総合調査の概況|厚生労働省
計画的付与制度を導入している企業の割合
計画的付与制度を導入している企業の割合は40.8%(令和6年時点)です。年度ごとの増減はあるものの、半数弱の企業が制度を活用している状況です。
同時期の調査では、計画的付与日数のうち「5~6日」とする企業が71.6%と最も多く、多くの企業が5日を超える最低限の日数から運用を始めていることが分かります。
参考:令和7(2025)年就労条件総合調査の概況|厚生労働省
計画的付与の対象となる日数
計画的付与の対象になるのは、年次有給休暇のうち5日を超える部分です。付与日数から5日を差し引いた日数が対象となり、前年度からの繰越分がある場合はこれを含めて計算します。
| 有給休暇の付与日数(繰越分含む) | 計画的付与ができる日数 |
|---|---|
| 10日 | 5日 |
| 12日 | 7日 |
| 20日 | 15日 |
これは、従業員が私傷病や急な用事など個人的な事由で自由に使える日数を、最低5日は必ず残す必要があるためです。パートタイマーなど所定労働日数が少ない従業員も、比例付与された日数のうち5日を超える部分が対象になります。
参考:年次有給休暇の計画的付与制度とは|厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト
時間単位年休は計画的付与の対象外
時間単位年休は計画的付与の対象にできません。計画的付与は原則として1日単位で行う制度だからです。
時間単位の年次有給休暇は、労働者本人が請求した場合に限り取得を認める仕組みであり、会社側があらかじめ取得日(時間)を指定する計画的付与とは性質が異なります。半日単位の有給休暇については労使協定の内容次第で対象に含める運用も見られますが、いずれにしても時間単位の年休は対象外である点に注意が必要です。
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計画的付与と事業主の時季指定義務にはどのような違いがあるのか?
計画的付与と時季指定義務の主な違いは、労使協定の要否・対象者・対象日数・取得日の決め方の4点です。
| 比較項目 | 計画的付与 | 時季指定による付与 |
|---|---|---|
| 労使協定 | 必要(届出は不要) | 不要 |
| 対象者 | 全従業員 | 年10日以上の有給休暇が付与される従業員 |
| 対象とできる日数 | 繰越分を含む日数から5日を超える日数 | 年5日 |
| 従業員への取得希望日の聞き取り | 不要 | 必要 |
計画的付与は、会社が有給取得率を底上げするために任意で行う制度で、従業員一人ひとりの希望を個別に聞く必要はありません。これに対し時季指定による付与は、本来従業員自身が行うべき取得日の指定を、消化日数が不足している場合に会社が代わりに行う仕組みです。なお、計画的付与によって従業員が取得した日数は、事業主に課される年5日の時季指定義務からその分を差し引くことができます。
事業主の時季指定義務
事業主の時季指定義務とは、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については会社が時季を指定して取得させる義務です。2019年4月施行の働き方改革関連法による労働基準法改正(労働基準法39条7項)により定められました。
従業員からの自発的な取得が5日に満たない場合、会社は本人の意向を確認したうえで取得日を指定しなければなりません。この義務を履行しなかった場合、労働基準法120条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。
計画的付与を導入するメリット・デメリットは何か?
計画的付与には会社・従業員の双方にメリットとデメリットがあります。導入前にはこれらを比較検討することが欠かせません。
計画的付与のメリット
計画的付与の主なメリットは、業務計画の立てやすさと有給取得率の向上です。
会社側では、休暇取得の時季があらかじめ定まるため計画的な業務運営がしやすくなり、取得日数を個別に管理する手間も軽減されます。従業員側でも、休暇の予定が立てやすくなるほか、周囲の目を気にせず有給休暇を取得できるようになります。
- 会社:計画的な業務運営ができる、取得日数の管理負担が減る、有給取得率が上がる
- 従業員:休暇の予定を立てやすい、周囲に気兼ねなく取得できる
計画的付与のデメリット
計画的付与の主なデメリットは、労使協定締結の事務負担と、従業員が自由に使える有給休暇日数の減少です。
会社側は労使協定の締結や、付与日数が不足する従業員への個別対応が必要になります。従業員側では、会社が指定した日にしか休めない日数が増えるため、自由に使える有給休暇が相対的に減ることになります。
- 会社:労使協定締結の事務負担が増える、付与日数不足者への個別対応が必要
- 従業員:自由に使える有給休暇日数が減る
年次有給休暇の計画的付与にはどのような方法がある?
計画的付与には、一斉付与方式・交替制付与方式・個人別付与方式の3つの方法があります。事業の特性に応じて選択、または組み合わせて運用します。
| 方式 | 対象とタイミング | 向いている業種 |
|---|---|---|
| 一斉付与方式 | 全従業員に同日付与 | 製造業など一斉休業が可能な業種 |
| 交替制付与方式 | 班・グループごとに付与 | 流通・サービス業など定休日を増やしにくい業種 |
| 個人別付与方式 | 個人ごとに計画表などで付与 | 業種を問わず適用可能 |
一斉付与方式
一斉付与方式とは、事業所や会社全体の従業員に対して同一の日に有給休暇を付与する方法です。管理の手間が少なく、現場への周知もしやすいことが特徴です。
夏季休暇や年末年始休暇の前後に付与すれば連休日数を伸ばせるほか、平日を挟む祝日、いわゆる飛び石連休の間を埋める形で付与することで、実質的な大型連休をつくることもできます。入社直後で有給休暇の残日数が少ない従業員については、特別休暇の付与や休業手当の支払いといった対応が必要です。
交替制付与方式
交替制付与方式とは、班やグループを単位として交替で有給休暇を付与する方法です。事業を止めずに済むため、接客業やインフラ関連など営業の継続が求められる業種に向いています。
この方式を採用する場合は、労使協定にグループごとの付与日を明記しておく必要があります。
個人別付与方式
個人別付与方式とは、従業員ごとに作成した計画表などをもとに付与日を指定する方法です。個人の事情に合わせやすく、誕生日や結婚記念日など従業員ごとの記念日に合わせた運用にも活用できます。
反面、対象者ごとの計画表を作成・管理する手間が増えるため、勤怠管理システムなど運用を効率化するツールの併用が有効です。
計画的付与を導入する手続きの流れは?
計画的付与の導入には、就業規則の変更と労使協定の締結という2つの手続きが必須です。順を追って進める必要があります。
STEP1 就業規則を変更する
まず就業規則に、労使協定を締結した場合は5日を超える有給休暇について会社があらかじめ時季を指定して取得させることがある旨の規定を設けます。
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則を変更した場合、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。
STEP2 労使協定を締結する
労使協定は、従業員の過半数で組織する労働組合、または過半数を代表する者との書面による協定として締結します。年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定自体は、労働基準監督署への届出義務はありません。
STEP3 労使協定に必要な項目を定める
労使協定では、主に次の5項目を定めます。
- 計画的付与の対象者(原則として6日以上の有給休暇を持つ全従業員。育休・産休予定者や定年退職予定者は除外することが一般的)
- 計画的付与の対象となる日数(付与日数から5日を超える部分。繰越分を含む)
- 実施方式(一斉付与・交替制付与・個人別付与のいずれか、および具体的な付与日や計画表作成の手続き)
- 対象となる有給休暇を持たない従業員の扱い(特別休暇の付与、または労働基準法26条に基づく平均賃金の60%以上の休業手当の支払い)
- 計画的付与日を変更する場合の手続き
STEP4 付与日数が不足する従業員へ対応する
一斉付与方式などでは、入社間もない従業員に5日を超える有給休暇がないケースがあります。この場合、特別休暇の付与、または休業手当の支払いで対応します。
いずれの対応を取るかは労使協定であらかじめ定めておくことで、運用時のトラブルを防げます。
計画的付与を進める上での注意点は?
計画的付与の運用では、労使協定への合意状況や締結の有無によって法的な扱いが変わる点に注意が必要です。
従業員が労使協定の締結を拒否した場合
従業員の過半数が合意していれば、一部の従業員が反対しても労使協定は有効に成立します。
労使協定は過半数代表者または過半数労働組合との合意で締結されるため、個々の従業員の同意を全員から得る必要はありません。ただし、付与日数が5日以下の従業員は計画的付与の対象にできないため、別途の対応が必要になる点は変わりません。
労使協定を結ばずに計画的付与を行った場合
労使協定を締結せずに計画的付与を行った場合、その指定には効力が生じません。
効力が生じないため、事業主の時季指定義務における5日分の消化としてもカウントできなくなります。結果として年5日の取得義務を満たせなかった場合、労働基準法39条7項違反として、同法120条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。
年次有給休暇の計画的付与と管理実務の課題
マネーフォワードでは、従業員の有給休暇の管理業務に携わる担当者を対象に調査を実施しました。管理実務において特に工数がかかっている作業について尋ねたところ、最も工数がかかっているのは「半日単位や時間単位など、複雑な取得形態への対応」で、29.6%でした。次いで、「繰り越し分の有効期限(時効)の管理」が28.9%、「入社時期や労働条件に応じた付与日数の算出」が28.5%となっています。有給休暇の管理では、従業員ごとの条件によって変わる日数の計算や、変則的な取得形態への処理に多くの工数がかかっていることがわかります。
デジタルとアナログが混在する管理手法
有給休暇の管理に用いているツールについて尋ねたところ、最も割合が高かったのは「勤怠管理に特化したクラウドサービス・パッケージソフト」で、44.1%でした。一方で、「表計算ソフト(Excel、Googleスプレッドシート等)」が40.9%、「紙の台帳や書類」が25.2%となっており、手作業での台帳管理が大きな割合を占めている実態が明らかになりました。 年次有給休暇の計画的付与制度を導入することで、企業側は従業員の取得日数を管理する手間を減らすことができます。あわせて、勤怠管理システムなどのツールを効果的に活用し、複雑になりがちな有給管理の業務効率化を図ることも重要です。
年次有給休暇の計画的付与を正しく理解して活用しよう
年次有給休暇の計画的付与は、5日を超える有給休暇について労使協定に基づき取得日を指定できる制度で、事業主の時季指定義務とあわせて有給取得率の向上に役立ちます。導入には就業規則の変更と労使協定の締結が必須であり、対象者や日数、方式を丁寧に定めることがトラブル防止の鍵となります。計画年休の仕組みを正しく理解し、自社に合った方法で活用を検討しましょう。
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よくある質問
年次休暇の計画的付与とは何ですか?
年次有給休暇の日数のうち、5日を超える部分については労使協定によって付与時季に関する定めをしたときは、その時季に与えることができる制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
計画的付与と時季指定による付与の違いについて教えてください。
計画的付与は任意の制度ですが、事業主の時季指定による付与は労働基準法上の義務です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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