- 更新日 : 2021年11月29日
介護保険の要介護認定

介護保険のサービスを受けるには「要介護認定」を受け「要介護」又は「要支援」の判定をもらう必要があります。
要介護認定とは、介護保険サービスの利用希望者に対して「どのような介護が、どの程度必要か」を判定するためのものです。要介護認定の判定は、コンピュータによって一次判定が行われ、その後介護認定審査会による二次判定が行われ、市町村から要介護認定がおります。
本稿では、介護保険における要介護認定の判定方法と要介護認定の内容について解説します。
要介護認定の方法
コンピュータによる一次判定
一次判定は、申請書を受け取った市町村が認定調査員を派遣し心身の状況調査を行います(これを認定調査といいます)そして認定調査と主治医意見書に基づき、コンピュータで、どの程度の介護保険サービスが妥当かを公平に判定します。
具体的には、既に介護施設に入所している心身状態が最も近い高齢者が48時間のうちに受けた介護時間を基に、「要介護認定等基準時間」という介護の手間を示す指標を算出します。
*「要介護認定等基準時間」を算出するため既に介護施設に入所している約3,500人の高齢者が48時間のうちに受けた介護サービスや介護時間についての調査結果がコンピュータに入力されています(この調査結果を「1分間タイムスタディ・データ」といいます)。
一次判定では、算出された要介護認定等基準時間を基に以下の7つの要介護状態(どのくらいの介護が必要なのかの指標)に区分します。
要介護状態 | 要介護認定等基準時間 |
---|---|
要介護 5 | 110 分以上 |
要介護 4 | 90 分以上 110 分未満 |
要介護 3 | 70 分以上 90 分未満 |
要介護 2 | 50 分以上 70 分未満 |
要介護 1 または要支援 2 | 32 分以上 50 分未満 |
要支援 1 | 25 分以上 32 分未満 |
非該当 | 25 分未満 |
*この判定は1分間タイムスタディ・データに基づいた単なる指標であり、実際に受けられる介護保険サービスの提供時間や実際に家庭で行われている介護時間とは異なります。
介護認定審査会による二次判定
介護認定審査会は、一次判定の結果に対して、以下の順序で二次判定を行います。なお、介護認定審査会は保健や医療、福祉に関する学識経験者5名ほどによって組織されています。
1.一次判定の結果を踏まえ、コンピュータでは評価できない部分について、主治医意見書の内容や特記事項をもとに専門性や経験に基づいて審査します(「介護の手間に係る審査」といいます)。
2.ここまでの判定では「要介護1および要支援2」を1つの区分として扱ってきました。
「介護の手間に係る審査」の終了後、これを「要介護1」と「要支援2」の2つに区分する審査を行います(「状態の維持・改善可能性に係る審査」といいます)。
「要介護1」と「要支援2」を区分する「状態の維持・改善可能性に係る審査」は、以下の基準で審査します。以下のいずれかに該当する場合は「要介護1」とし、いずれにも該当しない場合は「要支援2」とします。
・十分な説明を行っても、認知機能や感情、思考などの障害があるために予防給付(「要支援」向けの給付)の利用について理解することが難しい場合
・約6カ月以内に心身状態が悪化し介護の手間が増大することにより、要介護区分の見直しが必要と思われる場合
要介護状態の区分と内容
二次判定を行った結果、最終的な要介護状態は「要介護1~5」、「要支援1~2」に区分され、介護保険サービスの提供範囲が決定します。
それぞれの区分の身体状態はおおむね以下の通りとなります。
要介護状態 | 身体状態の具体例 |
---|---|
要介護 5 | ・歩行や立つこと、意思伝達のほとんどができない |
・食事や排せつなどが一人ではできない | |
・日常生活を営む能力が著しく低下している | |
要介護 4 | ・立ち上がることや両足で立ったままの状態の維持が一人ではほとんどできない |
・ 排せつや入浴時などの衣服の脱ぎ着全般について介助が必要 | |
・ 食事時にときどき介助が必要 | |
・全般的な理解の低下や多くの問題行動が見られることがある | |
要介護 3 | ・立ち上がることや片足で立ったままの状態の維持が一人ではできない |
・入浴や着替えに関しては全面的な介助が必要 | |
・食事時や排せつ時には一部介助が必要 | |
・理解力の低下やいくつかの問題行動が現れることがある | |
要介護 2 | ・歩行や立ち上がること、片足で立ったままの状態の維持に支えが必要 |
・食事時や排せつ時に何らかの介助を必要とすることがある | |
要介護 1 | ・ 歩行する時や立ち上がるときに不安定な状態が見られることが多い |
・食事時や排せつ時にときどき介助を必要とすることがある | |
・理解力の低下や問題行動が現れることがある | |
要支援 2 | ・「要介護相当」とされた者のうち適切な介護予防給付(要介護度の軽い方の状況が悪化して介護が必要な状況になることを防ぐためのサービス)により、状態の維持や改善が期待できる状態 |
・食事や排せつはほとんど自分でできるが、ときどき介助が必要なことがある | |
要支援 1 | ・ 立ち上がるときや片足で立ったままの状態の維持に支えを必要とすることがあり要介護状態となる恐れがある |
・ 要介護状態ほどではないが、6ヶ月に渡り継続して日常生活の一部に介助や見守りが必要で日常生活を営む支障があると見込まれる |
まとめ
介護保険のサービスを受けるためには要介護認定を受ける必要があり、その判定にはコンピュータによる一次判定と介護認定審査会による二次判定があります。
一次判定では、心身の状態が最も近い高齢者のデータに基づき要介護認定等基準時間(介護保険サービスの提供時間ではない)を推計します。これにより、介護保険サービスをどの程度利用できるか、あるいはできないかがおおまかに判断されます。
二次判定では、一次判定の結果と主治医意見書の内容や特記事項を踏まえて判定し、「要介護1または要支援2」を区分する審査も行います。
いずれにせよ介護保険のサービスを受けるためには申請することが必要ですので、介護サービスを受けることができる状態かどうか不明な場合は、一度市区町村へ相談に行かれてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。