- 更新日 : 2024年12月24日
賞与支払届とは?記入例や手続きの流れをわかりやすく解説
賞与支払届は、従業員の保険料の計算や年金記録を作成するために必要な書類です。
そのため、賞与支給後、期限までに年金事務所へ提出しなければいけません。
そこで本記事では、賞与支払届の作成から提出まで、人事労務担当者がスムーズに手続きを進められるよう、記入例やよくある質問などを詳しく解説します。
悩みがちな細かい手続きや注意点もしっかりカバーしているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
賞与支払届とは
賞与支払届とは、企業が従業員に賞与を支払ったことを年金事務所に報告するための書類です。
従業員が支払った保険料の金額を正確に計算したり、年金記録を作成したりするために必要な手続きであり、法的義務としても定められています。
次項で、賞与支払届の記入対象者、対象となる賞与について詳しく解説します。
記入の対象者
賞与支払届の記入対象者は、社会保険に加入している従業員です。
ただし、従業員の年齢や雇用形態によっては例外があります。
たとえば、70歳以上の従業員は厚生年金の適用外ですが、健康保険料の計算のために賞与支払届が必要です。
また、中途入社した社員に賞与を支給した場合も、賞与支払届の記入が求められます。
対象となる賞与
賞与支払届の対象となる賞与は、従業員が労働の対償として受け取る一時的な報酬全てです。
ただし、一時的に受け取る報酬の内、年3回以下で支給されるものと定められています。
具体的には、下記のような一時金が賞与支払届の対象です。
- 夏期・冬期賞与
- 決算賞与
- 勤続年数表彰金
ただし、年3回以下の支給であっても、結婚祝金や出産祝金など、福利厚生の一環として支給される一時金については、賞与支払届の対象には該当しません。
賞与支払届の記入例
賞与支払届の記入例は、下記の通りです。
出典:日本年金機構|賞与を支給したとき、賞与支払予定月に賞与が不支給のとき
記入例を参考に、賞与支払額や備考欄など、必要項目を全て記載しましょう。
なお、賞与支払届に印字されている従業員に対して賞与の支給がなかった場合は、記入する必要はありません。
記載内容に訂正が必要な場合は、新しい用紙に書き直すか、余白に「訂正届」と赤字で記入し、誤った金額を赤、正しい金額を黒で記載しましょう。
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賞与支払届を提出して保険料を納付するまでの流れ
賞与支払届を提出して保険料を納付するまでの流れは、下記の通りです。
- 賞与支払届の準備
- 標準賞与額と保険料の算出
- 賞与支払届の作成
- 賞与支払届の提出
- 保険料の納付
次項で、それぞれのステップに分けて詳しく解説します。
賞与支払届の準備
賞与支払届は、日本年金機構または加入している健康保険組合に登録している場合、賞与支払い予定月の前月になると企業に送付されます。
賞与支払届が届いたら、下記の点を確認しましょう。
- 被保険者番号、氏名、生年月日などの印字内容に間違いがないか
- 賞与を支給した従業員が印字されていない場合は、手書きで追加する
なお、賞与支払届は、給与計算ソフトでも作成できます。
ただし、健康保険組合によっては、賞与支払届のフォーマットが指定されている場合があるため、事前に確認しておきましょう。
保険料の算出
賞与から控除する保険料には、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の3つが含まれます。
まず、健康保険料と厚生年金保険料の算出方法は、下記の通りです。
健康保険料・厚生年金保険料=標準賞与額×健康保険・厚生年金の保険料率
標準賞与額とは、賞与支給額の1,000円未満を切り捨てた金額を指します。
標準賞与額には制限があり、健康保険は年間累計573万円、厚生年金保険は月額150万円が上限です。
なお、40歳以上65歳未満の介護保険の第2号被保険者の場合は、健康保険料に介護保険料が上乗せされます。
健康保険料と厚生年金保険料に関しては、企業と従業員が折半で負担します。
次に、雇用保険料の算出方法は、下記の通りです。
雇用保険料は、下記のように企業と従業員または、事業の種類ごとに税率設定が異なります。
そのため、企業と従業員では負担する金額が異なるので注意しましょう。
賞与支払届の作成
賞与を支払った場合、全従業員分の賞与支払届を作成します。
一方、賞与を支給しなかった場合は賞与不支給報告書を作成します。
内容に不備があると、提出が遅れる原因となるため、記入漏れや誤りがないかを確認しましょう。
賞与支払届の提出
賞与支払届を作成後、賞与支給日より5日以内に管轄の年金事務所または事務センターに提出します。
ただし、提出期限の5日以内に土日祝日が含まれる場合は、提出期限は翌営業日に繰り越されます。
健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合と年金事務所の両方に提出が必要です。
提出方法としては、下記の通りです。
- 窓口へ持参
- 郵送
- 電子申請
- 電子媒体申請
従来は窓口へ持参したり郵送したりが一般的でしたが、近年はe-Govやマイナポータルなど、手間をかけずにいつでも申請可能な電子申請が主流になりつつあります。
保険料の納付
賞与支払届を提出すると、「保険料決定通知書」と「標準賞与額決定通知書」が送付されます。
届いた書類を基に、保険料を通知された月の末日までに納付しましょう。
また、賞与の保険料とともに、通常の標準報酬月額に基づいた保険料も納付しなければいけません。
賞与を支給していない場合はこれらの書類は送付されませんが、賞与不支給報告書の提出自体を怠らないように注意してください。
賞与支給届を作成する際に抑えておきたいポイント
賞与支払届の作成は、70歳以上の従業員や中途入社した従業員など、ケースごとに対応方法が異なります。
次項で、賞与支払届を作成する際に抑えておきたいポイントを、具体的な事例ごとに解説します。
70歳以上の従業員への対応について
70歳以上の従業員に賞与を支給する場合、賞与支払届の備考欄にある「70歳以上被用者」に◯をつける必要があります。
合わせて、マイナンバーまたは基礎年金番号を忘れず記載しましょう。
また、協会けんぽの健康保険に加入している場合は、被保険者氏名欄の余白に「高齢任意」と記載します。
これらの対応を怠ると、不備が発生する可能性があるため注意してください。
中途入社した従業員への対応について
中途入社の従業員については、同一年度内で被保険者資格の取得・喪失があった場合、保険者単位で標準賞与額を累計します。
同一保険者内での賞与支給額が対象となり、それ以外の期間の賞与は含まれません。
一方、同一年度内で複数の保険者期間がない場合、入社後に支払われた賞与のみが対象です。
退職した従業員への対応について
賞与支給月に社会保険資格を喪失した場合であっても、原則として賞与支払届の提出は必要です。ただし、資格喪失日と賞与支給日の関係によっては、賞与支払届の提出が不要となる場合があります。
退職後に保険料を徴収することはありませんが、標準賞与額は年度累計額に含まれます。
ただし、賞与支払い月の月末に退職した場合は注意が必要です。
この場合、資格喪失日は翌月1日となり、賞与支払い月は資格喪失の対象にはならず、保険料の算定対象になります。
退職した従業員の賞与支払届を作成する際は、退職時期に応じて保険料の計算が異なることを覚えておきましょう。
休業中の従業員への対応について
産前産後休業中や育児休業中の従業員がいる場合、保険料免除期間であっても賞与を支給した場合には標準賞与額として算定されます。
そのため、社会保険料が免除されていても、賞与支払届の提出は必要です。
賞与支払届は賞与の支払い前に提出できる?
賞与支払届は、原則として賞与の支払いが行われた後に作成・提出するものとされています。
これは、賞与額が確定してからでないと、標準賞与額や保険料の計算が正確に行えないためです。
ただし、支払い額が決まっており、支給日までに変更がない場合には、事前提出が認められるケースもあります。
とはいえ、管轄の年金事務所や事務センターによって対応は異なるため、賞与支給日から5日以内に提出するのが無難です。
賞与支払届の提出が期限より遅れた場合はどうなる?
賞与支払届の提出が期限より遅れた場合でも、賞与支給日から2年以内のものであれば遡って提出可能です。
とはいえ、提出期限が遅れると、事務手続きの遅延や社会保険料の算定・納付に影響が出る可能性があります。
そのため、提出期限までに間に合わないまたは、忘れていることがわかった時点で、速やかに対応しましょう。
そのまま放置していると、企業が行政指導を受けたり、多額の延滞税が発生したりする可能性があります。
賞与支払届の提出が不要なケース
賞与支払届の提出が不要なケースは、賞与が支給されないまたは、全従業員が支給対象外である場合です。
しかし、上記のような場合、賞与支払届の代わりに賞与不支給報告書を提出する必要があります。
もし賞与支払届または賞与不支給報告書の提出が必要かどうか迷った際は、管轄の年金事務所や健康保険組合に確認してみましょう。
賞与支払届の手続きポイントを総まとめ
賞与支払届を作成する際は、下記の点に注意しましょう。
- 提出期限
- 記載内容の正確性
- 従業員の状況に応じた適切な対応
賞与支給日から5日以内に提出しない場合、従業員の社会保険料の計算に不備が生じたり、行政指導を受けたりなどのリスクがあります。
また、被保険者番号や賞与額の誤りは、保険料計算のミスに繋がるため、事前確認が必須です。
さらに、70歳以上の従業員、中途入社の従業員、退職した従業員、休業中の従業員など、ケースに応じた対応方法も覚えておきましょう。
特に、資格喪失日や標準賞与額の計算には注意してください。
賞与支払届の手続きは一見複雑に見えますが、一つひとつ手順を追って行えば、問題なく進められます。
本記事の記入例や流れを参考にして、正しい賞与支払届を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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