• 更新日 : 2024年3月27日

モラルハラスメントとは?意味や定義、企業にとってのリスクを解説

モラルハラスメントとは?意味や定義、企業にとってのリスクを解説

モラハラは倫理に反する言動で相手を精神的に苦しめることを指します。侮辱する発言をしたり執拗に叱責を繰り返したり、プライベートに立ち入ったりすることが挙げられます。企業に責任が問われる場合があり、防止や被害対応のための取り組みが求められます。被害があった場合の対応フローを準備することも大切です。

目次

モラルハラスメント(モラハラ)とは?

モラハラとは「モラルハラスメント」を略した言葉です。モラルは倫理、ハラスメントは嫌がらせを意味し、モラハラは「倫理に反する言動で相手を不快にすること」を指します。相手を侮辱したり嫌がらせしたりすることがモラハラに該当し、例としては以下の行為がモラハラに該当します。

  • 能力や容姿をバカにした言葉を口にする
  • 存在を無視する
  • 叱責を繰り返す
  • 大声や乱暴な行動で萎縮させる

セクハラとの違い

セクハラは「セクシャルハラスメント」の略で、性的な言動により相手に不快感を与えることを指します。不適切な言葉遣いやジェスチャーをしたり体を触ったり、相手が拒否しているにも関わらずに性的な対象とすることなどがセクハラに該当します。モラハラとセクハラはどちらも相手を不快にさせる行為を指しますが、倫理に反する言動で相手を侮辱する行動がモラハラであるのに対し、セクハラは性的な要素を含む言動である点が異なります。

パワハラとの違い

パワハラは「パワーハラスメント」の略で、権力を利用して相手に不利益を被らせる行為を指します。暴言を吐いたり執拗な叱責したり、不相応な仕事をさせたりすることがパワハラに該当します。モラハラとパワハラの大きな違いは、パワハラは力関係がある場合にのみ起こるハラスメントであるのに対し、モラハラは力関係の有無に関わらず起こる点です。パワハラは上司と部下のように上下の立場にある関係で生じますが、モラハラは同僚や仲間同士のような立場に違いのない関係でも生じます。

さらにモラハラとパワハラは暴力が含まれるか否か、気づかれやすいかどうかという点でも異なっています。パワハラには殴る・蹴るという身体的に危害を与える行為も含まれますが、モラハラには暴力行為は含まれません。またパワハラは公然と行われる場合も多く比較的に露呈しやすいのに対し、モラハラは陰で目立たないように行われることがほとんどで第三者に気づかれにくいという特徴があります。

家庭内と企業におけるモラハラの違い

モラハラの多くは企業で起こりますが、家庭内で生じる場合もあります。夫婦間などで相手に対して乱暴したり屈辱に感じさせるような言動をしたり、強制的に家事をさせたり、萎縮させたりすることが、家庭内でのモラハラに該当します。起こる場所の違いが家庭内であるか企業であるかの差ですが、家庭内でのモラハラも人に気づかれにくく、問題がなかなか表面化しない点に気をつける必要があります。

モラルハラスメント(モラハラ)の具体例

モラハラにあたる事例には、さまざまなことがあります。多く発生するものや代表的なものを具体例として紹介します。

あからさまに無視をする

モラハラの具体例として代表的なものに、あからさまな無視が挙げられます。無視することは相手の存在を否定し、深く傷つける行為になります。行われやすいモラハラで、周囲から孤立させることにもつながります。

理由なく不機嫌な態度を取る

理由がないにも関わらず不機嫌な態度を取ることも、モラハラ行為に該当します。相手を威圧して自分が優位に立とうとするための行動で、怒った表情をする、舌打ちをする、大きなため息をつくなどが、具体的な行動に該当します。

過剰な暴言を浴びせる

過剰な暴言も、発生頻度の高いモラハラ行為の1つです。暴力でないからと軽く考えられがちですが、暴言は暴力よりも人を傷つけることもあります。過剰な暴言は立派なモラハラ行為であるため、注意しなければなりません。

プライベートに対して不必要に介入する

必要がないのにも関わらずプライベートに介入することもモラハラ行為に該当します。やむを得ない事情がある場合を除いて勤務外の時間帯に連絡をしたり、休日に過ごし方を尋ねたり、恋人やパートナーの有無を聞き出そうとする行為はモラハラとみなされます。

業務妨害を行う

業務妨害もモラハラの具体例です。業務に必要な連絡をしない、あいまいな指示をする、教育をしない、周囲の労働者に協力しないよう指図をする、などの被害者の業務遂行を邪魔する行動はモラハラに該当します。また雑用を押しつける、能力に見合っていない業務を担当させる、不要な業務を命令する行為も、被害従業員の業務妨害をしたとしてモラハラになります。

モラルハラスメント(モラハラ)をしてしまう人の特徴・原因

モラハラの加害者は共通する性質を有していることが少なくありません。モラハラをしてしまう人の多くは以下の特徴・原因を有しています。

自尊心が低い

モラハラをしてしまう人の特徴には、まず自尊心が低い点が挙げられます。自尊心が低い人は自分自身に自信がないため、他者を攻撃したり貶めたりすることで自分を守ろうとするからです。他人と思うようなコミュニケーションがとれない点やストレスを抱えやすい点も、モラハラをしてしまう原因になると考えられます。

他人を支配したいという欲望がある

他人を支配したいという欲望も、モラハラをしてしまう原因になります。支配欲が強い人は自己中心的で他者の意見や感情を無視し、自分の意見や欲求を押しつける傾向にあるためです。他人を尊重できず、仲間と協力し合えないという特徴を持つ人が、モラハラをしてしまう恐れがあります。

かつてモラハラを受けた経験がある

かつてモラハラを受けたことがあるという経験が、自分自身がモラハラを行う原因となることもあります。被害者が自分と同じような行動を取ることで、自分を守ろうとするからです。こうしたモラハラの予防には、被害者へのサポートや心理的なケアが重要です。また組織内での教育や意識向上活動も行うことで、モラハラの連鎖を断ち切れます。

モラルハラスメント(モラハラ)を受けてしまう人の特徴・原因

モラハラ加害者と同じように、モラハラ被害者の多くも共通する性質を有しています。モラハラを受けてしまう人には、おおむね以下の特徴・原因が見られます。

真面目・謙虚・自己主張が少ない

モラハラを受けてしまう人には、真面目である・謙虚である・自己主張が少ないことが挙げられます。真面目な性格の人は、他者からの攻撃を受けても自分を守れず、被害を受ける傾向があります。また、謙虚な人は自己主張が少なく、他者の意見に従いがちなため、モラハラを受けやすいと言えます。

周りにあわせてしまう

周りにあわせてしまう人もモラハラを受けてしまう傾向にあります。周りにあわせてしまう人は、自己主張が苦手で他者の意見や要求に柔軟に応じる傾向があるためです。相手の攻撃的な態度や嫌がらせに対しても抵抗できず、モラハラを受けてしまう可能性が高くなります。

モラルハラスメント(モラハラ)がもたらす悪い影響

モラハラは被害者を苦しめるだけでなく、周囲にも以下に説明するような悪影響を及ぼします。

離職が増える

モラハラがもたらす悪い影響には、まず離職が増える点が挙げられます。被害者はモラハラによって職場の環境や人間関係に対して不安やストレスを感じるため、退職を選ぶことがあります。また生産性の低下や労働意欲の低下もモラハラの影響で起こり得る問題です。

職場の空気が悪くなる・生産性の低下

職場の空気が悪くなったり生産性の低下が起こったりする点も、モラハラによってもたらされる好ましくない影響です。モラハラがある職場内の雰囲気は悪くなり、コミュニケーション不足や働きやすさの欠如が生じます。従業員のモチベーション低下やミスが引き起こされ、生産性の低下につながります。

従業員の精神状況・体調の悪化

従業員の精神状態に異常をきたしたり、体調の悪化を招いたりする点も、モラハラによって引き起こされる可能性のある悪影響です。

モラハラによって従業員の精神状態が悪化し、うつ病や不眠症などの心身の健康問題が発生することがあります。さらにモラハラが継続すると、従業員の自尊心や自信が低下し、仕事へのモチベーションやパフォーマンスにも影響を与える可能性があります。

企業イメージが悪くなる

モラハラによって起こる可能性がある悪影響には、企業イメージの悪化も考えられます。モラハラによって従業員に不満が生じて離職率が上昇すると、企業の評判やイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。顧客やパートナー企業からの信頼を失うことで、企業の成長や競争力にも影響を与えることが考えられます。

企業に法的責任が生じるケースも

モラハラによっては企業に法的責任が生じる可能性もあります。企業には従業員が安全に労働できるように安全配慮義務があります(労働契約法5条)。モラハラ被害にあった労働者が精神的苦痛により健康を損ねたり自殺に追い込まれたりした場合、従業員がモラハラにより同僚にうつ病などの精神障害を発症させた場合には、使用者は被害者である労働者に対し、民法上の不法行為の損害賠償責任(使用者責任)を負うことになります(民法715条)。このような法的責任を負わなければいけないケースもあるため、モラハラ発生を確認した場合は企業としての対応が求められます。

モラルハラスメント(モラハラ)に対して企業ができる対策

被害者を苦しめ、企業にさまざまな悪影響を及ぼす恐れがあるモラハラは、防止する必要があります。そのために、企業には以下の対策が求められます。

ハラスメント研修を行う

モラハラ防止のために企業がすべきことの1つ目に、ハラスメント研修の実施が挙げられます。ハラスメント研修でモラハラの概念や行為の具体例を教育することで、従業員は必要な知識を身につけることができます。被害に対するサポート体制も説明すると、当事者になった場合の安心につながります。

社内報・社内ポータルサイト等での周知徹底

研修と同じように知識を身につけさせる効果が期待できるのが、社内報・社内ポータルサイト等での周知徹底です。研修とは違って社内報・社内ポータルサイトの利用は、場所や講師を準備しなくても実施でき、費用もかかりません。すぐに取り組め、また繰り返して行える点で効果的です。

相談窓口を設ける

相談窓口の設置も企業がモラハラ対策として行う重要な対策です。被害者が相談できる窓口を設けておくことは従業員に安心感を与えます。また積極的に取り組む姿勢を示すことは抑止の効果も期待できるでしょう。匿名での相談はもちろん、外部に委託するなどして秘密保持できるようにすることが大切です。また相談によって解雇や降格のような不利益な取り扱いを受けることのないように体制をきちんと整備したり、十分なフォローが行われたりすることも重要です。

罰則を設ける

モラハラに対して企業ができる対策として、罰則の設置も効果的です。モラハラを行った従業員には厳正な処分を行うことで「モラハラを許さない」という企業姿勢が伝わり、従業員に対する警戒感を高めることができます。罰則が軽微であると効果が不十分であるばかりかマイナスになることに注意が必要です。

モラルハラスメント チェックシートの無料テンプレート・ひな形

モラルハラスメント(モラハラ)チェックシートとは、家庭や職場などでモラハラが発生しているかどうかを判断するためのヒアリングシートです。
チェックシートには、モラハラの可能性がある行動や態度についての項目が含まれています。

以下より、モラルハラスメント(モラハラ)チェックシートのテンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。

モラハラが万が一起きてしまったときの対応フロー

しっかり対策していても、モラハラの起こる可能性をなくすことはできません。モラハラ対策としては、万が一起きてしまったときの対応フローを準備しておくことも必要です。

加害者・被害者へのヒアリング、事実確認

企業でモラハラがあった場合には、まず加害者・被害者へのヒアリングを行い、事実を確認しましょう。被害者からモラハラ被害の報告を受けた後に加害者へ事情を聞く流れになりますが、双方の話は先入観を持たずに、しっかりと聞くことが大切です。公平なヒアリングを行い、モラハラ発生の状況を確認しましょう。

加害者への処分検討

モラハラの事実があった場合は、加害者に対して処分を行う必要があります。被害状況に応じた適切な処分が、その後のモラハラ抑止にもつながります。不公平感のないようにするためには、客観的な処分検討が欠かせません。また規定をあらかじめ設けておくことも重要です。

被害者にケアを行う

モラハラ被害者に対するケアも企業は責任を持って行う必要があります。ハラスメントによる精神的苦痛から被害者が立ち直るには、その心情をよく理解したうえで必要な支援を行います。加害者との接点をなくす、周囲にモラハラを思い出すような行動を取らないようにしてもらうといった配慮を行うとともに、被害者に寄り添い、必要に応じて専門家による支援を受けましょう。

モラハラ対策をしっかりと講じて企業の責務を果たそう

ハラスメントのうち、言葉や態度で相手の尊厳を傷つけることがモラハラに該当します。具体的には、侮辱することを発言したり大声で威圧したり、繰り返し叱りつけることがモラハラになります。無視したり不機嫌な態度を取ったり、孤立させたりすることもモラハラです。パワハラとは違い、暴行はモラハラに含まれません。身体的に攻撃するのではなく、精神的な苦痛を与える行為がモラハラと認定されます。

企業は従業員の就業環境を適切なものに維持する責任があり、モラハラにより被害従業員の健康や生命を損ねるようなことがあると企業に安全配慮義務や不法行為の使用者責任が問われる可能性があります。訴訟への発展や損害賠償請求といった大事につながる恐れもあるため、きちんと対策を講じておかなければなりません。対応フローを準備するほか、防止に向けた取り組みを行い、モラハラ抑止に努めましょう。


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