- 作成日 : 2022年11月18日
社会保険における等級とは?標準報酬月額とあわせて解説
社会保険の保険料は、4月から6月までの平均報酬から算出される標準報酬月額によって決まります。標準報酬月額は金額ごとに等級が分かれており、健康保険は全50等級、厚生年金は全32等級です。健康保険の保険料率は毎年改定され全国健康保険協会等から料率表として提示されます。この記事では社会保険の等級について解説していきましょう。
社会保険における等級とは?
社会保険の保険料は、報酬の金額に応じて決まります。保険料を計算しやすいよう、報酬額を一定の範囲に区切ったものが社会保険の「等級」です。
健康保険は第1等級から第50等級の全50等級、厚生年金保険は第1等級から第32等級の全32等級に分かれており、毎月の給与から天引きされる社会保険料はこの等級に応じて決まります。等級が改定されると、それに合わせて社会保険料も変動するため気を付けましょう。
なお、等級を算出する際の報酬には月割りの通勤手当や役職手当、残業手当などの各種手当も含まれます。一方、祝い金や見舞金、出張旅費など一時的に支給されるものは対象外です。また、社会保険の等級は所得税と住民税を控除する前の総報酬額を基に算出されます。
等級ごとに規定された報酬額は「標準報酬月額」と呼ばれ、これに保険料率を乗じた金額が毎月の給与から天引きされる社会保険料です。賞与から引かれる社会保険料は、税引前の総支給額から千円未満の端数を差し引いた「標準賞与額」に保険料率を乗じた金額となります。標準報酬月額と標準賞与額について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
改めて、社会保険の算出方法を紹介すると下記の通りです。
▼健康保険料の算出方法
▼厚生年金保険の算出方法
社会保険料の負担割合は労使折半で、会社と労働者で半額ずつの負担となります。上記計算式で算出される保険料の半額が、給与や賞与から天引きされる保険料です。さらに、会社負担分には児童手当に係る「子ども・子育て拠出金」が加算されます。
▼労働者が負担する社会保険料の算出方法
▼子ども・子育て拠出金の算出方法
▼会社が負担する社会保険料の算出方法
参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構
参考:標準報酬月額・標準賞与額とは?|こんな時に健保|全国健康保険協会
標準報酬月額と等級の関わり
社会保険の保険料は、報酬額に応じて算出される等級によって決まります。等級ごとに標準報酬月額が規定されており、健康保険は1等級(58,000円)~50等級(1,390,000円)、厚生年金保険は1等級(88,000円)~32等級(650,000円)です。
なお、健康保険と厚生年金保険の等級は必ずしも一致しないので気を付けましょう。ここでは、協会けんぽから提示されている、令和4年度における東京都の保険料額表を紹介します。
引用:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)|協会けんぽ|全国健康保険協会
上記料率表を基に、実際の社会保険料を計算してみましょう。東京都に所在する会社に勤めている、介護保険第2号被保険者に該当しない方の社会保険料となります。
月給10万円の場合
報酬月額も10万円だったと仮定すると、標準報酬月額は98,000円で、健康保険が第5等級、厚生年金保険が第2等級となります。
- 健康保険料
98,000円(標準報酬月額:第5等級)×(9.81%÷100)(健康保険料率)=9,613.8円 - 厚生年金保険料
98,000円(標準報酬月額:第2等級)×(18.3%÷100)(厚生年金保険料率)=17,934.0円 - 労働者負担分
9,613.8円(健康保険料)+17,934.0円(厚生年金保険料)÷2(労使折半)=13,773.9円 - 子ども・子育て拠出金
98,000円(標準報酬月額)×(0.36%÷100)(拠出金率)=352.8円 - 会社負担分
13,773.9円+352.8円(子ども・子育て拠出金)=14,126.7円
月給20万円の場合
報酬月額も20万円だったと仮定すると、標準報酬月額は200,000円で、健康保険が第17等級、厚生年金保険が第14等級となります。
- 健康保険料
200,000円(標準報酬月額:第17等級)×(9.81%÷100)(健康保険料率)=19,620.0円 - 厚生年金保険料
200,000円(標準報酬月額:第14等級)×(18.3%÷100)(厚生年金保険料率)=36,600.0円 - 労働者負担分
19,620.0円(健康保険料)+36,600.0円(厚生年金保険料)÷2(労使折半)=28,110.0円 - 子ども・子育て拠出金
200,000円(標準報酬月額)×(0.36%÷100)(拠出金率)=720.0円 - 会社負担分
28,110.0円+720.0円(子ども・子育て拠出金)=28,830.0円
月給30万円の場合
報酬月額も30万円だったと仮定すると、標準報酬月額は300,000円で、健康保険が第22等級、厚生年金保険が第19等級となります。
- 健康保険料
300,000円(標準報酬月額:第22等級)×(9.81%÷100)(健康保険料率)=35,316.0円 - 厚生年金保険料
300,000円(標準報酬月額:第19等級)×(18.3%÷100)(厚生年金保険料率)=65,880.0円 - 労働者負担分
35,316.0円(健康保険料)+65,880.0円(厚生年金保険料)÷2(労使折半)=50,598.0円 - 子ども・子育て拠出金
300,000円(標準報酬月額)×(0.36%÷100)(拠出金率)=1080.0円 - 会社負担分
50,598.0円+1080.0円(子ども・子育て拠出金)=51,678.0円
社会保険料が決まるタイミング
毎月の給与から天引きされる社会保険料は、標準報酬月額が算定基礎です。標準報酬月額の等級は、4月から6月までの平均給与である標準月額に基づき年に1回見直されます。年1回標準報酬月額の等級を決める手続きが「定時決定」です。定時決定は毎年7月頃、日本年金機構に「被保険者報酬月額算定基礎届」を提出することで実施されます。定時決定で決まった等級は9月から翌年8月までの1年間有効です。等級が変わらない限り保険料も変わらないため、毎月の給与から天引きされる社会保険料は1年間一定となります。
ただし、等級が2等級以上変動するような大幅な給与の増減があった場合は、その都度見直しが必要です。この手続きを「随時改定」といいます。随時改定を行うには、日本年金機構に「被保険者報酬月額変更届」を提出しなければなりません。
定時決定・随時改定に加え、資格取得時と育児休業・産前産後休業などの終了時にも社会保険料が見直されます。社会保険料が決まるタイミングと届出書類をまとめると下記の通りです。
社会保険料が決まるタイミング | 届出書類 |
---|---|
資格取得時 | 被保険者資格取得届 |
定時決定 | 被保険者報酬月額算定基礎届 |
随時改定 | 被保険者報酬月額変更届 |
育児休業・産前産後休業などの終了時 | 育児休業等終了時報酬月額変更届 |
※育児休業終了後の場合は1等級の変動でも月額変更の対象となります。
参考:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構
参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
社会保険の等級を確認し保険料を把握しよう
社会保険の等級について解説しました。毎月の給与から天引きされる社会保険料は標準報酬月額によって決まり、金額に応じて等級が分けられています。健康保険が全50等級、厚生年金保険が全32等級です。標準報酬月額の等級は、年に1度の定時決定や給与増減時の随時改定によって決まります。等級が変わらなければ、給与から天引きされる保険料は一定です。社会保険料の等級を確認し、毎月の給与からいくら社会保険料が天引きされるのかを把握しましょう。
よくある質問
社会保険における等級とは何ですか?
社会保険料の算定基礎である標準報酬月額を区切りの良い金額で区分したものが等級です。標準報酬月額の等級は毎年4月から6月の平均給与である報酬月額に基づき決まります。詳しくはこちらをご覧ください。
等級と標準報酬月額の関係性について教えてください。
標準報酬月額は金額に応じて等級が分けられており、等級に基づいて社会保険料が決定されます。社会保険の等級は毎年1回の定時決定や給与増減時の随時改定などで決まります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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