- 更新日 : 2026年8月4日
社会保険料の等級とは?標準報酬月額の区分・計算方法・決まるタイミングを解説
社会保険料の等級は報酬月額を区分した「標準報酬月額」で決まり、健康保険は50等級・厚生年金保険は32等級に分類されます。
- 等級×保険料率で毎月の天引き額を算出
- 見直しは年1回の定時決定(9月適用)が基本
- 2026年度から子ども・子育て支援金が追加徴収
Q. 随時改定はどんな場合に行われる?
A. 固定的賃金が変動し、変動後3か月の平均報酬と現等級の差が2等級以上になった場合に実施します。
社会保険料の金額は、報酬額を一定の幅で区切った「標準報酬月額」と呼ばれる等級区分によって決まります。健康保険は全50等級、厚生年金保険は全32等級に分類され、各等級に対応する標準報酬月額に保険料率を掛けることで毎月の天引き額が算出されます。本記事では、社会保険料の等級の仕組みから具体的な計算例、保険料が見直されるタイミングまで、バックオフィス担当者が押さえておくべき内容を体系的に解説します。
社会保険料の等級とはどのような仕組みか?
社会保険の等級とは、保険料の計算を簡略化するために報酬額を一定の範囲に区切った区分のことです。健康保険は第1等級から第50等級、厚生年金保険は第1等級から第32等級に分かれており、毎月の給与から天引きされる社会保険料はこの等級ごとに定められた標準報酬月額をもとに算出されます。
等級を算出する際の報酬には、基本給だけでなく月割りの通勤手当・役職手当・残業手当といった各種手当も含まれます。一方、祝い金や見舞金、出張旅費など一時的に支給されるものは対象外です。また、社会保険の等級は所得税・住民税を控除する前の総報酬額を基に算出される点も重要です。
等級ごとに規定された報酬区分の代表値が「標準報酬月額」で、これに保険料率を掛けた金額が毎月の天引き額となります。賞与から引かれる社会保険料は、税引前の総支給額から千円未満の端数を差し引いた「標準賞与額」に保険料率を掛けた金額です。
2026年度における社会保険料の算出式は以下のとおりです。
健康保険料の算出方法
給与に課される健康保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率(健康保険料率+介護保険料率)
賞与に課される健康保険料 = 標準賞与額(年間累計573万円が上限) × 保険料率(健康保険料率+介護保険料率)
厚生年金保険料の算出方法
給与に課される厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.3%(厚生年金保険料率)
賞与に課される厚生年金保険料 = 標準賞与額(支給1回あたり150万円が上限) × 18.3%(厚生年金保険料率)
社会保険料の負担割合は労使折半で、会社と労働者が半額ずつ負担します。上記の算出額の半額が、給与や賞与から天引きされる労働者負担分です。
子ども・子育て関連の負担(2026年度)
2026年4月からは健康保険料に上乗せする形で「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。これは労使折半で負担します。また、会社負担分には児童手当に係る「子ども・子育て拠出金」も加算されます。
子ども・子育て拠出金(全額会社負担) = 標準報酬月額または標準賞与額 × 0.36%(2026年度)
子ども・子育て支援金(労使折半) = 標準報酬月額 × 0.23%(協会けんぽ・2026年度)
会社が負担する社会保険料の合計 =(健康保険料+厚生年金保険料)÷ 2 + 子ども・子育て拠出金 + 子ども・子育て支援金 ÷ 2
なお、子ども・子育て支援金は段階的に引き上げられる予定で、協会けんぽでは2026年度0.23%から2027年度以降さらに引き上げられ、2028年度に満額となる見込みです。
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※記事の内容は、この後のセクションでも続きますので併せてご覧ください。
昇給後の社会保険料、等級が変わるか把握できていますか?
昇給しても等級が変わらなければ保険料は据え置き、変われば月数千円の増額になります。
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全50等級の社会保険料、一覧で確認できていますか?
「この報酬月額は何等級?」「保険料はいくら?」をすぐ確認したい場面は多くあります。
健康保険50等級・厚生年金32等級の全等級について、標準報酬月額・報酬月額の範囲・本人負担額を1枚に集約。令和8年度の協会けんぽ全国平均(健保9.90%+支援金0.23%)で算出済みで、人事労務ご担当者が手元に置いておける早見表です。
標準報酬月額の等級区分はどのように設定されている?
標準報酬月額の等級区分は、健康保険と厚生年金保険で異なります。健康保険は第1等級(58,000円)から第50等級(1,390,000円)、厚生年金保険は第1等級(88,000円)から第32等級(650,000円)です。健康保険と厚生年金保険の等級番号は必ずしも一致しないため、計算の際は各制度の等級表を個別に参照する必要があります。
また、2025年6月に成立した年金制度改正法により、厚生年金保険の標準報酬月額の上限は2027年9月以降に段階的に引き上げられます。2027年9月に68万円(第33等級)、2028年9月に71万円(第34等級)、2029年9月に75万円(第35等級)と順次拡大される予定です。この改正は厚生年金保険の等級のみに適用され、現時点では健康保険の等級(50等級)への影響はありません。
保険料額表は、協会けんぽから都道府県別に毎年公表されています。健康保険料率は都道府県によって異なるため、自社の所在地に対応した最新の料率表を確認することが重要です。
参考:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ|全国健康保険協会
参考:厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて|厚生労働省
社会保険の等級・保険料額は月給別でいくらになる?
以下の計算例は、東京都に所在する会社に勤め、介護保険第2号被保険者に該当しない方(40歳未満)を前提としています。2026年度(令和8年度)の東京都の健康保険料率は9.85%、厚生年金保険料率は18.3%で計算します。
月給10万円の場合
報酬月額が10万円の場合、標準報酬月額は98,000円となり、健康保険が第5等級、厚生年金保険が第2等級に該当します。
健康保険料(総額)
98,000円(標準報酬月額:第5等級)× 9.85% = 9,653円
厚生年金保険料(総額)
98,000円(標準報酬月額:第2等級)× 18.3% = 17,934円
労働者負担分(健康保険料+厚生年金保険料の労使折半)
(9,653円+17,934円)÷ 2 = 13,793円(50銭以下切り捨て、50銭越え切り上げ)
子ども・子育て支援金(労働者負担分)
98,000円 × 0.115%(0.23%の折半分)= 113円
労働者負担の合計
13,793円 + 113円 = 13,906円
子ども・子育て拠出金(全額会社負担)
98,000円 × 0.36% = 352円
会社負担の合計
13,793円(健保+厚年の折半分)+ 352円(拠出金)+ 113円(支援金の折半分)= 14,258円
月給20万円の場合
報酬月額が20万円の場合、標準報酬月額は200,000円となり、健康保険が第17等級、厚生年金保険が第14等級に該当します。
健康保険料(総額)
200,000円(標準報酬月額:第17等級)× 9.85% = 19,700円
厚生年金保険料(総額)
200,000円(標準報酬月額:第14等級)× 18.3% = 36,600円
労働者負担分(健康保険料+厚生年金保険料の労使折半)
(19,700円+36,600円)÷ 2 = 28,150円
子ども・子育て支援金(労働者負担分)
200,000円 × 0.115% = 230円
労働者負担の合計
28,150円 + 230円 = 28,380円
子ども・子育て拠出金(全額会社負担)
200,000円 × 0.36% = 720円
会社負担の合計
28,150円 + 720円 + 230円 = 29,100円
月給30万円の場合
報酬月額が30万円の場合、標準報酬月額は300,000円となり、健康保険が第22等級、厚生年金保険が第19等級に該当します。
健康保険料(総額)
300,000円(標準報酬月額:第22等級)× 9.85% = 29,550円
厚生年金保険料(総額)
300,000円(標準報酬月額:第19等級)× 18.3% = 54,900円
労働者負担分(健康保険料+厚生年金保険料の労使折半)
(29,550円+54,900円)÷ 2 = 42,225円
子ども・子育て支援金(労働者負担分)
300,000円 × 0.115% = 345円
労働者負担の合計
42,225円 + 345円 = 42,570円
子ども・子育て拠出金(全額会社負担)
300,000円 × 0.36% = 1,080円
会社負担の合計
42,225円 + 1,080円 + 345円 = 43,650円
※40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者に該当する方は、上記に加えて介護保険料率1.62%(2026年3月分〜、労使折半)が健康保険料に上乗せされます。また、健康保険料率は都道府県によって異なりますので、協会けんぽ各都道府県の最新の保険料額表を必ずご確認ください。
社会保険料の等級はいつ・どのように見直される?
社会保険料の等級(標準報酬月額)が見直されるタイミングは主に4つあります。定時決定・随時改定・資格取得時・休業終了時です。それぞれの手続き内容と届出書類は以下のとおりです。
| 見直しのタイミング | 内容 | 提出書類 | 適用開始 |
|---|---|---|---|
| 定時決定 | 年1回、4〜6月の平均報酬で等級を更新 | 被保険者報酬月額算定基礎届 | 9月 |
| 随時改定 | 固定的賃金の変動で2等級以上変動した場合 | 被保険者報酬月額変更届 | 変動月から4か月後 |
| 資格取得時 | 新規加入時に報酬月額を届け出 | 被保険者資格取得届 | 資格取得月 |
| 育児・産前産後休業終了時 | 休業終了後の報酬変動(1等級以上の変動でも対象) | 育児休業等終了時報酬月額変更届 | 終了日の翌日が属する月から4か月後 |
定時決定とは何か?
定時決定とは、毎年7月に日本年金機構へ「被保険者報酬月額算定基礎届」を提出し、4〜6月の平均報酬をもとに標準報酬月額の等級を年1回見直す手続きです。定時決定で決定した等級は9月から翌年8月まで1年間有効となり、等級が変わらない限り毎月の社会保険料も一定に保たれます。
随時改定とは何か?
随時改定とは、基本給や役職手当などの固定的賃金に変動があり、かつ変動後3か月間の平均報酬と現在の等級との差が2等級以上となった場合に、その都度等級を見直す手続きです。日本年金機構に「被保険者報酬月額変更届」を提出することで対応します。なお、育児休業終了後の随時改定は1等級の変動でも対象となる点が通常の随時改定と異なります。
社会保険の等級表・保険料額表はどこで確認できる?
協会けんぽ(全国健康保険協会)が都道府県別の保険料額表を毎年公式サイトで公開しています。健康保険の保険料率は都道府県ごとに異なるため、自社の所在地に対応した最新の料率表を参照することが正確な給与計算の前提となります。厚生年金保険の料率については日本年金機構の公式サイトで確認できます。
なお、保険料額表は年度ごとに更新されます。特に定時決定後の9月は等級が切り替わるタイミングでもあるため、給与計算担当者は毎年改定内容を確認する習慣をつけておくことが重要です。
社会保険の等級管理と手続きにおける担当者の負担実態
社会保険の等級や標準報酬月額の正確な把握は、日々の給与計算だけでなく、産休や育休といった休業に伴う手続きを円滑に進めるためにも不可欠です。
マネーフォワードが従業員の産休・育休に関する実務についての調査を実施したところ、多くの担当者が社会保険関連の手続きや従業員への個別対応に負担を感じている実態が分かりました。
産休や育休に伴う社会保険料免除手続きと説明の工数
育児休業に関する一連の手続きにおいて、特に工数がかかる、または判断が難しい業務として最も多かったのは、育児休業給付金の申請書類作成と提出で43.2%、次いで社会保険料免除に関する手続きが42.3%でした。また、育休中の社会保険料や給付金の予想額の試算や説明と回答した割合は29.8%に上っています。
このように、休業期間中の社会保険料の免除手続きや、それに伴う従業員からの個別の問い合わせに対して、正確な等級や標準報酬月額を基にスムーズに対応できる体制を整えることが重要です。
社会保険料の等級を正しく把握して給与計算に活かすには
社会保険料の等級は、標準報酬月額の区分として健康保険50等級・厚生年金保険32等級に整理されており、報酬月額をもとに等級が決まり、等級に保険料率を掛けた額が毎月の天引き額となります。等級の見直しは年1回の定時決定を基本とし、大幅な給与変動時には随時改定が必要です。2026年度からは子ども・子育て支援金の徴収が始まり、2027年9月以降は厚生年金保険の上限等級も段階的に拡大予定です。法改正の動向を定期的に確認しながら、自社の保険料負担と従業員への説明を正確に行いましょう。
よくある質問
社会保険における等級とは何ですか?
社会保険料の算定基礎である標準報酬月額を区切りの良い金額で区分したものが等級です。標準報酬月額の等級は毎年4月から6月の平均給与である報酬月額に基づき決まります。詳しくはこちらをご覧ください。
等級と標準報酬月額の関係性について教えてください。
標準報酬月額は金額に応じて等級が分けられており、等級に基づいて社会保険料が決定されます。社会保険の等級は毎年1回の定時決定や給与増減時の随時改定などで決まります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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