- 更新日 : 2022年10月11日
年末調整の勤労学生控除とは?メリット・デメリットや手続きを解説!

勤労学生控除とは、学生がアルバイト等で給与を得ている場合、納付する税金額が軽減される制度をいいます。年末調整の際に申告を行うことで、所得税額や住民税額の算出において所得控除が発生し、その結果、納める税金額を減らすことが可能です。この記事では、勤労学生控除の概要やメリット、申請に必要な書類の記入方法について解説します。
目次
年末調整における勤労学生控除とは?
勤労学生控除とは、学生が一定の条件を満たした場合に、所得控除を受けられる制度のことです。年末調整の際に申告することで、所得税が軽減されるメリットが得られます。
年末調整の勤労学生控除の対象となる学生の条件は?
勤労学生控除の対象となるのは、①給与所得などの勤労による所得があり、②1月1日から12月31日までの1年間における合計所得金額が75万円以下、かつ、勤労による所得以外の所得が10万円以下の学生です。
給与所得などの勤労による所得がある
給与所得は、勤務先から支払われる給与・賃金・賞与などを指します。たとえば、週3日勤務するアルバイトや、夏季休業などの長期休暇の際に行う単発バイトの給与が、給与所得に該当します。
月々支払われる奨学金や親からの仕送りなどは、勤労による所得に該当しないため給与所得にはカウントされません。
合計所得金額が75万円以下で給与以外の所得が10万円以下である
勤労学生控除を受けるには、1年間の合計所得金額が75万円以下でなければいけません。
ここでいう所得金額とは、実際の収入額とは異なる点に注意が必要です。アルバイトなど給与所得を受けている場合は、1年間の収入(バイト先から支払われた給与の総支給額)が130万円以下が勤労学生控除のラインとなると覚えておきましょう。給与所得控除55万円が差し引かれ、所得金額が75万円となります。
もし給与所得以外の所得がある場合は、その所得金額の合計が10万円以下である必要があります。給与所得以外の所得とは、株取引や不動産収入、自営業者・フリーランスとして稼いだ収入を指します。10万円のカウントは、実際の収入から事業などの収入を得るためにかかった経費を差し引いた額で計算します。
特定の学校の学生または生徒である
勤労学生控除における「学生」とは、次のいずれかに通っている方のことを指します。
- 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
- 国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人、これらに準ずる一定の者により設置された専修学校または各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
- 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの
引用:勤労学生控除|国税庁
高校生や大学生だけでなく、一定の条件に該当する専門学校に通っていたり、職業訓練を受けていたりする方も、勤労学生控除の対象です。自分の通っている学校が勤労学生控除の条件を満たしているかどうかわからない場合には、学校の窓口に確認するとよいでしょう。
年末調整の勤労学生控除を受けるメリットは?
以降では、勤労学生控除を受けることで得られるメリットを3つご紹介します。
所得税が給与収入130万円まで非課税になる
所得税には本来、すべての給与所得者が給与の収入に応じて受けられる「給与所得控除」や条件に該当したときに適用される各種所得控除が設けられています。基礎控除は48万円、給与所得控除は55万円となっており、合計103万円を所得金額から控除することが可能です※。
つまり、通常の場合は1年間の給与収入が103万円以下であれば所得税は非課税になります。そして、ここに勤労学生控除分の27万円を加えると、勤労学生は給与収入130万円以内であれば所得税はかかりません。
※2020年分以降、基礎控除は合計所得金額が2,400万円以下で控除額48万円。また給与所得控除は所得によって控除額が変わり最低額は55万円。
年末調整で勤労学生控除を受けなかった場合より手取り額が増える
勤労学生控除によって課税対象となる所得金額が少なくなれば、所得税や住民税の税額も抑えられます。その結果、1年間で見た時の手取り額を増やすことが可能です。
所得税だけでなく住民税も軽減される
前述のとおり、勤労学生控除を受ければ、所得税だけでなく住民税の負担も減らすことができます。
所得税の基礎控除が最高48万円であるのに対して、住民税の基礎控除は最高43万円です。給与所得控除の額はどちらも最低額が55万円となっているため、合計控除金額は98万円となります。住民税の非課税枠は所得割と均等割で異なり、所得割の非課税枠の最下限は、給与所得者の場合は100万円です。均等割の場合は生活保護の等級によって異なり、給与所得控除と合わせると、1等級地(大都市)だと100万円以下、2等級地だと97万円以下、3等級地だと93万円以下になります。均等割りの非課税の最下限の金額は市区町村によって異なることがあるため、お住いの市区町村に問い合わせるとよいでしょう。
つまり、1年間の収入が103万円以下で所得税が課税されない場合でも、上記の基準を超える時には住民税がかかることになります。しかし、勤労学生控除を申告することで住民税を非課税にできるのです。なお、住民税の勤労学生控除は26万円となっており、所得税の27万円とは若干の差があります。
年末調整の勤労学生控除を受けるデメリットは?
給与年収130万円以下なら所得税がかからない勤労学生控除ですが、確定申告が必要となったり、親の納税額が増えたりするケースがあります。
複数のアルバイト先がある場合は、確定申告が必要
一つの勤務先でアルバイトをしている場合、通常は勤務先が年末調整を行います。その際に条件に合致していれば勤労学生控除が適用されます。しかし、アルバイト先が複数ある場合には、年末調整をしなかった給与収入と給与所得以外の所得金額の合計が20万円超となるケースなど、一定の条件に該当すれば自身で確定申告を行わなければなりません。
確定申告は、例年2月〜3月の間、決められた期日までに前年の所得を申告します。確定申告を怠った場合、勤労学生控除が受けられないばかりか、本来納めるべき所得税が未納となる可能性もあるため、アルバイトの掛け持ちをしている場合には注意しましょう。
親の税額負担が増える場合がある
学生の年収が103万円以下の場合、世帯主である親は扶養控除が受けられます。しかし、アルバイトをしている勤労学生の子の収入が103万円を超えると、その親は扶養控除を受けられなくなります。
【子が130万円ぎりぎりのアルバイトで収入を得た場合】
子の所得税:3つの所得控除により、所得税がかからない。
アルバイト収入130万円 | ||
---|---|---|
基礎控除48万円 | 給与所得控除55万円 | 勤労学生控除27万円 |
親の所得税:子の収入が103万円を超えたことで扶養控除がなくなった分、課税所得が増え、結果として所得税が増額となる。
給与所得 | ||
---|---|---|
各種所得控除 | 扶養控除 | (所得税が課税される所得分) |
扶養控除は、16歳以上の子や親を養う時に適用される所得控除で、38万円〜63万円の控除を受けられるものです。勤労学生控除を使用した場合、たしかに本人は130万円までは所得税がかかりませんが、逆に親の税負担が増えることになります。
こうしたことから、ご家庭の状況によっては、アルバイトで130万円ぎりぎりまで稼ぐか、103万円以内にとどめておくかを検討したほうがいいといえるでしょう。
年末調整の勤労学生控除を受ける際に必要な手続きは?
以下では、年末調整で勤労学生控除を受けるために必要となる手続きをご説明します。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を用意する
勤労学生控除の申請をする時には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を用意します。こちらは勤労学生控除のほか、扶養控除を受ける際にも必要となる書類です。必要事項を記入したうえで、年末調整の際に勤務先へと提出します。
引用:令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁
国税庁のホームページからテンプレートをダウンロードできるため、自分で申請書を用意する際にはこちらを印刷して使うと良いでしょう。
事業所情報を記入する
まずは申告書の上段左側に、事業者情報を記入していきます。なお、一般的には、アルバイト先の会社がこちらを記入した状態で申告書が渡されるケースも多くあります。
「所轄税務署長等」の欄には、年末調整を行う会社を管轄する税務署名、「市区町村長」には自分の住所の市区町村名を記入します。
続けて、「給与の支払者の名称(氏名)」の欄にアルバイト先の会社名、「給与の支払者の法人(個人)番号」の欄に法人(個人)番号、「給与の支払者の所在地(住所)」の欄にアルバイト先の所在地(住所)を記入します。
世帯主や配偶者情報などを記入する
申告書の上段右側には、世帯や配偶者に関する情報を記入します。「あなたの氏名」の欄に氏名とフリガナ、「あなたの個人番号」の欄にマイナンバー、「あなたの住所又は居所」の欄に住所、「あなたの生年月日」の欄に生年月日を記入します。
「世帯主の氏名」と「あなたの続柄」の欄には、実家に暮らしている場合は、実家の世帯主と続柄(父、母など)を記入します。一人暮らしの場合には、自分の氏名と、続柄に「本人」と記入します。
「配偶者の有無」の欄では、結婚している場合には「有」に、していない場合には「無」に丸を付けます。
勤労学生にチェックして所得の詳細などを記入する
申請書の中段にある「主たる給与から控除を受ける」の欄では、所得と、勤労学生に関する控除の内容を記入します。
まずは「勤労学生」にチェックを入れて、右隣にある「障害者又は勤労学生の内容」に所得の内容(「給与所得 ○○万円」など)と、通っている学校の名前と入学日を記入します。
学生のアルバイトでも年末調整が必要になる?
「年末調整」と聞くと、会社員をイメージし、学生アルバイトには必要ないと思ってしまうかもしれません。しかし、12月31日時点で勤務先で給与所得を得る見込みの場合、アルバイトや学生関係なく、企業が行う年末調整の対象となります。上述した年末調整の書類が配られた際は、期日までに必要事項を記入し提出しましょう。
また、1年の間にアルバイト先が変わった場合には、それぞれのアルバイト先で得た給与を合算して年末調整を行う必要がありますので、以前のアルバイト先から交付された源泉徴収票を忘れずに新しいアルバイト先に提出しましょう。
年末調整の勤労学生控除を利用して手取り額を増やそう
勤労学生控除をうまく活用すれば、所得税や住民税の税負担を軽くして、手取り額を増やすことができます。アルバイトをしている学生の方は、積極的に是非活用しましょう。
よくある質問
年末調整における勤労学生控除とは?
アルバイトなどで収入を得ている学生が利用できる所得控除の一種です。収入が給与だけの方であれば、年間の給与所得額が75万円以下(給与収入で130万円以下)の学生が申請できます。控除額は最大27万円です。詳しくはこちらをご覧ください。
勤労学生控除を受ける際に必要な手続きは?
勤務先で年末調整の書類が配られた際、勤労学生の欄にチェックをして必要事項を記載します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、勤労学生控除に関する情報を記入して勤務先に提出しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
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