• 更新日 : 2024年1月26日

コアコンピタンスとは?意味や目的、5つの評価指標を解説!

コアコンピタンスとは?意味や目的、5つの評価指標を解説!

コアコンピタンスは、企業の中核的な力を意味し、具体的には他社が真似できない自社ならではのスキルや能力のことをいいます。1990年に提唱された概念であり、経営戦略の場面で使用されてきました。本記事では、コアコンピタンスとケイパビリティの違いや3つの要件、5つの評価指標、導入手順などについて解説します。

コアコンピタンスとは?

コアコンピタンスとは、英語で「Core Competence(直訳:中心となる能力)」と書き、ビジネスの場では「他社に真似できない企業の中核的な力」という意味を持ちます。コアコンピタンスの概念は、G.ハメルとC.K.プラハラードによって1990年に提唱され、1995年に発売された『コア・コンピタンス経営 大競争時代を勝ち抜く戦略』によって日本にも広まりました。

同著で紹介されているコアコンピタンスの3要件とコアコンピタンスの目的について解説します。

コアコンピタンスにおける3つの要件

コアコンピタンスであるためには次の3つの条件を満たさなければなりません。

  • 顧客に利益と価値を提供できるか
    • コアコンピタンスは顧客に利益と価値を提供できるものでなければなりません。「〇〇といったらあの企業しかないね」と想起されるものはその顧客にとって利益と価値を提供できているといえます。
  • 競合他社との違いはあるか
    • 業界のどこにでもあるような能力は、簡単に競合他社に真似される可能性があるのでコアコンピタンスとするべきではありません。
  • 新分野に展開する企業力はあるか
    • ここでいう企業力とは、コアコンピタンスを新製品や新サービスに展開する力のことです。企業内に独自のスキルがあったとしても、それを新製品や新サービスにできる力がなければコアコンピタンスとはいえません。

自社の経営戦略にコアコンピタンスを取り入れる際もこの3要件について検討することとなります。

コアコンピタンスの意味・目的

コアコンピタンスは、企業の中核的な力という意味を持ち、経営戦略を考える際に使われます。コアコンピタンスの提唱者であるG.ハメルとC.K.プラハラードは、企業や産業を発展させるのは人員整理といったリストラクチャリングではなく、業務プロセスを顧客満足度の観点から見直すリエンジニアリングだとしています。

リエンジニアリングの過程で、見出した企業独自のスキルや能力がコアコンピタンスとなります。つまり、コアコンピタンスの目的は、独自のスキルや能力によって企業・産業を発展させることにあります。

コアコンピタンスとケイパビリティの違い

ケイパビリティとは、英語で「Capability(直訳:能力)」と書き、ビジネスの場では「事業全体を通して組織の強み」という意味を持ちます。コアコンピタンスが企業のなかにある特定のスキルや能力であるのに対して、ケイパビリティは企業がおこなう事業全体を通しての強みという違いがあります。

  • コアコンピタンス:企業にある特定のスキルや能力
  • ケイパビリティ:事業全体を通して組織の強み

例えば、飲食店街のなかでひときわ集客があり味が評価されているお店は調理技術がコアコンピタンスとなり得ます。一方で、予約時から食後まで完璧なおもてなしを行うレストランは接客がケイパビリティといえるでしょう。

コアコンピタンスに関わる経営理論

コアコンピタンスは、インサイド・アウトの経営理論として紹介されることもあります。インサイド・アウト理論と対を成すアウトサイド・イン理論について解説します。

アウトサイド・インとインサイド・アウトの理論

有名な経営分析の1つにSWOT分析があります。これは内部環境として「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」、外部環境として「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を整理し分析する手法です。

アウトサイド・インの理論ではSWOT分析でいうところの機会と脅威の外部要因に着目し、外部からの問題解決を図ります。対してインサイド・アウトの理論では、自社の強みと弱みの内部要因に着目し、内部からの問題解決を図ることとなります。

コアコンピタンスの概念は自社のなかに他にない強みを確保し維持するという点で、インサイド・アウト理論に近い経営戦略の考え方といえます。

コアコンピタンスを評価する5つの視点

コアコンピタンスは先述の3要件のほか、次に紹介する5つの視点でも評価されます。

模倣可能性(Imitability)

競合他社が模倣できないスキルや能力かという点を評価します。もしくは、他社が模倣するのに多大な時間とコストがかかり模倣が実質不可かどうかを見ます。

移行可能性(Transferability)

新製品や新サービスに展開できるスキルや能力かという点を評価します。先述したコアコンピタンスの3つの要件の「新分野に展開する企業力はあるか」と同様に、他分野の製品やサービスに展開できるものであることが求められます。

代替可能性(Subsitutability)

他の製品やサービスでは代替できない価値や利益という点を評価します。代替できるものがある場合は、製品・サービス化したとしても資金力やネームバリューのある他社が市場を獲得していく可能性が高いです。

希少性(Scarcity)

まだ市場にない技術、もしくは市場が発掘されていない分野であるかを見ます。希少性のあるコアコンピタンスであるか否かを見極めるには、過去の成功例を見るより産業や業界の展望を想像します。

耐久性(Durability)

コアコンピタンスの耐久性は、競争のなかで優位性を保ち続けることです。コアコンピタンスは、資金不足や経営判断など様々な形で失われることがあります。耐久性を確保するには、コアコンピタンスに対して経営層が理解と責任感を持ち企業力を高めることが必要です。

常に移行可能性について考え、実践していくメンバーやチームを配置することでもコアコンピタンスの優位性の維持が期待できます。

コアコンピタンスを導入する手順

コアコンピタンスを経営戦略に導入する手順を3ステップで紹介します。

① 強みを洗いだす

複数のチームを作成し、自社の強みを洗いだすことから始めましょう。特定の部署や役職者が洗いだすと、認識に偏りが生じることがあり、最終的なコアコンピタンスの共通理解が難しくなるおそれがあります。また、顧客が認識している自社の製品やサービスの価値をリサーチするのも1つの方法です。

➁ 強みを評価する

先ほど紹介した5つの視点で強みを評価します。

  • 模倣可能性
  • 移行可能性
  • 代替可能性
  • 希少性
  • 耐久性

これら5つ全てを満たしている必要があるわけではなく、それぞれの視点から評価を行います。この評価についても、意見が偏らないよう、部署や役職をまたいだチームで行ったほうがよいでしょう。

③ 洗いだした強みを絞り込む

次に、コアコンピタンスの3つの要件から評価します。

  1. 顧客に利益と価値を提供できるか
  2. 競合他社との違いはあるか
  3. 新分野に展開する企業力はあるか

2.については②強みを評価するステップで検討されていることでしょう。3.については、比喩や類似分野を探して相乗効果を考えてみたり、顧客のニーズに感情移入したりすることで新分野に展開するアイディアにつなげていきます。

コアコンピタンスの企業事例

コアコンピタンスの企業事例として、2社のコアコンピタンスとその優位性や経緯について紹介します。

マイクロソフト(コアコンピタンス:オペレーティングシステム)

マイクロソフト社は、アメリカに本社を置くソフトウェア開発の企業で、WindowsやDOSといったオペレーティングシステムの標準規格を獲得しています。標準規格の獲得や特許の取得は、模倣可能性の点において他社より圧倒的優位に立つことができます。また、マイクロソフトは各パソコンメーカーが自社オペレーティングシステムを搭載したパソコンを出荷するたびに報酬を受け取ることができ、それを新たな技術開発に投じることができます。

スウォッチグループ(コアコンピタンス:スイス産時計の製造プロセス)

スウォッチグループは、スイスに本社を置く時計製造のグループです。1980年代、スイスの時計産業は高級時計のシェアを占めているものの、高級時計市場は小さく成長が望めない状態でした。創始者のニコラス・ハイエクは「スイスの腕時計産業を再建しよう」という願いから低価格、高品質、デザインに優れた「スウォッチ」を発売しました。スウォッチの製造プロセスは革新的でコストを大幅削減に成功し、スイスの時計産業の復活に寄与しています。

顧客価値・他社との違い・新分野展開力の3要件を念頭にコアコンピタンスを獲得しよう

自社にコアコンピタンスを見出すことができれば、企業間競争において優位に立てる可能性が高くなります。コアコンピタンスは企業独自のスキルや能力ですが、獲得するには業界や産業に対して長期的な視点を持つ必要があります。

自社の強みを洗いだす際には、既存の市場や製品サービスにとらわれず、コアコンピタンスの3要件を念頭に広い範囲から意見を集めるようにしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事