- 更新日 : 2024年10月11日
年末調整の障害者控除を受けるには?いくら戻るか、書類の書き方も解説!
本人、配偶者、親や家族が障害者である場合、「障害者控除」の対象となります。年末調整で申告することで、課税金額を低く抑えて所得税負担を軽減することができます。控除を受けるには年末調整の書類に記入することが必要ですが、障害者が本人か、配偶者、親や家族なのかで、書き方は異なります。この記事では、障害者控除について、その概要から受けるために必要な書類の書き方まで詳しく解説します。
目次
年末調整の障害者控除とは?
年末調整は1年間の所得税額を計算し、毎月の給料から差し引かれていた金額の合計額との差額を精算する手続きです。所得税は、課税給与所得金額に定められた税率を乗じて計算します。ただし、一定の金額は所得税を計算する際に除外されます。基礎控除や配偶者控除、社会保険料控除などが課税給与所得金額から差し引かれますが、障害者控除もこういった控除のひとつとなります。
本人や生計を同一とする配偶者、親や家族が一定の障害の状態であれば対象となり、所得税の負担が軽減されます。
障害者控除についてはこちらの記事でも説明していますので、参考にしてください。
年末調整における障害者控除の範囲は?
障害者控除の対象となるのは、以下のような人です。
- 障害者控除の対象者は、精神上の障害により物事の善悪の理解や、適切な行動ができない人
- 児童相談所・知的障害者更生相談所・精神障害者保健福祉センター・精神保健指定医から知的障害者と判定された人
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
- 身体障害者手帳に、身体上の障害がある者として記載されている人
- 戦傷病者手帳の交付を受けている人
- 原子爆弾被爆者として厚生労働大臣の認定を受けている人
- 常に就床を要し、複雑な介護が必要な人
- 精神または身体に障害のある年齢65歳以上の人で、その障害の程度が上記の①②④に該当する人と同程度である人として市町村、特別区の区長や福祉事務所長の認定を受けている人
障害者手帳がなくても障害者控除は受けられる?
障害者控除の対象となる程度の障害があることが明らかである場合には、年末調整時に身体障害者手帳などがなくても障害者控除を受けることができます。
手帳の交付を申請中である場合や医師の診断書の交付を受けている場合がこれに該当します。このような場合は、手帳の申請に使用した診断書のコピーなどを添付し、障害の程度を証明することが求められます。
反対に手帳があっても障害者控除を受けられない場合もあります。身体障害者手帳は、6級以上の重い程度の障害がある身体障害者に交付されるため、7級以下の軽い障害の身体障害者は、障害者控除を受けることはできません。
年末調整の障害者控除でいくら金額が戻ってくるのか
年末調整の障害者控除で課税金額から差し引かれる金額は、控除対象障害者の障害の程度や、障害が重い障害者と同居しているかどうかで、以下の3つの金額のいずれかになります。
障害者控除の金額
障害者の区分 | 控除額 |
---|---|
一般の障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
「特別障害者」は上記、障害者控除の対象となる障害者のうち、次のような人です。
(1)のすべての人
(2)のうち重度の知的障害者と判定された人
(3)のうち障害等級が1級の人
(4)のうち障害の程度が1級か2級の人
(5)のうち障害の程度が恩給法別表第1号表ノ2の特別項症から第3項症までの人
(6)のすべての人
(7)のうち(1)(2)(4)と同程度の人
(8)のうち特別障害者に準ずるものとして市町村長、特別区区長や福祉事務所長の認定を受けている人
また「同居特別障害者」は、次のような同居している特別障害者です。
- 本人と同居
- 生計を一つにしている配偶者や親族と同居
年末調整の障害者控除の書き方は?
年末調整で障害者控除を受けるには、書類に必要事項を記入して申告する必要があります。以下のように障害者控除を申告するための記入欄は、「給与所得者の扶養控除等申告書」にあります。
出典:令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁
本人が控除対象障害者である場合
控除対象障害者が、本人である場合の記入方法は、以下の通りです。
本人が一般の障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「本人・一般障害者」欄にチェックします。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
本人が特別障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「本人・特別障害者」欄にチェックします。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
配偶者が控除対象障害者である場合
控除対象障害者が配偶者である場合の記入方法は、以下の通りです。
配偶者が一般の障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「同一生計配偶者・一般障害者」欄にチェックします。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
配偶者が特別障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「同一生計配偶者・特別障害者」欄にチェックします。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
配偶者が同居特別障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「同一生計配偶者・同居特別障害者」欄にチェックします。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
親や家族が控除対象障害者である場合
控除対象障害者が親や家族である場合の記入方法は、以下の通りです。
親や家族が一般の障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「扶養親族・一般障害者」欄にチェックし、人数を記入します。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
親や家族が特別障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「扶養親族・特別障害者」欄にチェックし、人数を記入します。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
親や家族が同居特別障害者である場合
- 障害者控除のチェックボックスにチェックします。
- 表の「扶養親族・同居特別障害者」欄にチェックし、人数を記入します。
- 内容記入欄に「障害者控除対象者氏名・等級・障害者手帳交付年月日」を記入します。
年末調整の障害者控除を受けるのを忘れたときは?
年末調整で障害者控除の申告を忘れた場合には、確定申告で申告を修正することができます。改めて正しい内容での申告を行うことで障害者控除を受けることができ、払い過ぎとなった所得税が還付されます。確定申告は、毎年2月16日から3月15日までですが、還付を申告する場合は2月16日より前でも受け付けられます。
ただし、年末調整の書類に記入し忘れたとしても、会社によって修正が行われている場合もあります。前年の年末調整データをもとに、障害者控除も変更がないものとして年末調整を行っているケースです。源泉徴収票を見て障害者控除の有無を確認し、記載があれば会社に問い合わせることをおすすめします。
障害者控除が受けられる場合は年末調整で申告しよう
一定の障害者は、所得税計算において障害者控除の対象となり、税負担を軽くすることができます。障害者控除の金額は、一般障害者は27万円、特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円です。年末調整で障害者控除を受けるには、書類に記入して提出することが必要です。障害者控除記入欄は、扶養控除等申告書にあります。
障害者控除記入欄には、対象となる障害者控除の種類にチェックを入れたり、内容を記入したりして申告します。障害者控除対象者が一般障害者と特別障害者のどちらに該当するか、本人・配偶者・親や家族のいずれであるかを正確に申告するため、間違えずに正しい場所にチェックすることが大切です。
よくある質問
年末調整の障害者控除とは?
本人や配偶者、親などの家族が一定の障害者の場合に受けることができる、所得税が軽減される制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
障害者控除で控除される金額は?
障害の程度や同居・非同居によって異なり、一般の障害者は27万円、特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
障害者雇用の関連記事
新着記事
退職金制度のメリット・デメリットは?前払い退職金制度についても解説
退職金制度は、従業員にとって退職後の生活を支える大切な仕組みです。企業にとっても優秀な人材確保や勤続意欲向上につながる制度です。 一方で、導入や運用にコストがかかるといった課題もあります。近年では、制度の見直しや廃止を検討する動きが広がって…
詳しくみる退職金共済と退職金制度の違いは?中退共の仕組みや退職金制度の選び方を解説
退職金制度は、従業員の将来の安心を支える大切な仕組みです。制度には「退職金共済」と呼ばれる制度もあります。 とくに中小企業向けの「中小企業退職金共済(中退共)」は、国の助成を活用しながら簡単に導入できる制度として注目されているのが特徴です。…
詳しくみる退職金規定がない場合は退職金をもらえない?支払われるケースや税務の注意点を解説
退職金は退職後の生活を支える重要な制度ですが、すべての企業が退職金規定を設けているわけではありません。規定がない会社では、支払われるのかどうか不安になることもあるでしょう。しかし、規定がなくても退職金がもらえるケースがあります。 本記事では…
詳しくみるシフト管理をペーパーレス化するには?電子化の進め方や成功事例を解説
シフト制を採用すれば、従業員は自分の生活スタイルに合わせて、希望する日時に働くことが可能となります。しかし、シフト制を採用した場合には、通常の勤務体制よりも複雑な勤怠管理が必要です。紙の管理では、管理ミスも発生しやすいでしょう。当記事を参考…
詳しくみる住宅手当は社会保険料に含まれる?社宅と比べてどちらが安いか解説
住宅手当は、従業員が支払う家賃等を補助する制度です。手当は社会保険料を計算する際に含まれる場合と含まれない場合があります。また、住宅手当と似た制度に社宅がありますが、両者はどのように異なるのでしょうか。当記事では、住宅手当について、社会保険…
詳しくみる健康保険の年齢は何歳まで?70歳以上を雇用する場合の手続きを解説
健康保険は、労働者が医療機関を受診する際に必要となる制度です。年齢によって扱いが変わるため、労働者を雇用する際には注意しなければなりません。手続きに誤りがあれば、一旦治療費を全額自己負担しなければならない場合もあります。今回は70歳以上の健…
詳しくみる