• 作成日 : 2022年5月27日

株で得た利益は年末調整が必要?

株で得た利益は年末調整が必要?

株取引で得た売却益には「所得税」と「住民税」が課税されます。通常、給与所得以外の所得を得た場合は確定申告が必要ですが、株の管理口座を「源泉徴収あり」の「特定口座」にすることで省略することが可能です。この記事では株式投資における年末調整、確定申告についてご紹介します。

株で得た収益は年末調整が必要?

株の売却や配当で得た収入は、所得税と住民税の課税対象です。給与所得者は、通常毎月の給与から天引きされ、所得税と住民税を納めています。源泉徴収された所得税と実際の税額との差額を清算する手続きが「年末調整」ですが、株取引で得た収益は年末調整が必要なのでしょうか。

実は、株で得た収益は年末調整に含めることはできません。何故なら、年末調整はあくまで「給与所得」を対象とした手続きだからです。株取引による収益に限らず、給与とは別に所得を得た方は「確定申告」を行う必要があります。次の章で詳しくご説明します。

株で得た収益については確定申告で対処する

前章でご説明した通り、株取引で得た収益や配当は年末調整に含めることができません。

なぜなら、年末調整は「給与所得」を対象とした手続きだからです。それでは、株取引で得た収益はどのように扱えばよいのでしょうか。投資収益や配当金だけでなく、給与以外に他の所得を得た場合は「確定申告」する必要があります。

投資収益には「譲渡益課税」が、配当金には「配当課税」が課され、税率は所得税および復興特別所得税と住民税を合わせて20.315%です。

【譲渡益課税・配当課税の税率】

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 住民税:5%
  • 計:20.315%

譲渡益課税は、株式取得にかかった取得費と売却手数料を差し引いた収益に、税率を掛け合わせて算出されます。

譲渡益=売却金額 – (取得費 + 売却手数料)
譲渡益課税額=譲渡益 × 税率

配当課税は配当金にかかる税金です。

配当課税額=配当金 × 税率

これらはの税金は確定申告によって納税する必要があります。投資収益や配当金を受け取った方は、忘れずに確定申告をしましょう。

参考:株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
参考:配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁

株の収益を確定申告する場合に知っておくべきこと

前章で、株の収益や配当金には譲渡益課税や配当課税などの税金が課税され、それらを納税するために確定申告が必要だとご説明しました。しかし、特定の条件を満たすことで確定申告を省略することができます。

課税方法は「申告分離課税」と「総合課税」の2種類です。株式の譲渡益については申告分離課税、配当金については申告分離課税と総合課税から選択することになります。

課税方式
株式等の譲渡益申告分離課税(選択不可)
配当申告分離課税または総合課税(選択)

また、株の管理口座の一種である「特定口座」には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があり、源泉徴収ありの特定口座を開設した場合は確定申告を省略できるのです。これらをまとめると下記のようになります。

特定口座の種類
源泉徴収あり源泉徴収なし
確定申告の要否不要必要
課税方式申告分離課税申告分離課税または総合課税(選択)

特定口座の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

申告分離課税

「申告分離課税」は、株の投資収益を他の所得と分けて計算する課税方式です。
株式の譲渡所得以外にも、下記の所得は申告分離課税の対象となります。

  1. 株式の譲渡所得等
  2. 不動産売却による譲渡所得
  3. 先物取引による雑所得
  4. 山林所得

申告分離課税の対象所得はそれぞれ分けて課税されます。特定の所得を分離して計算することで、給与所得等のその他の所得に高い税率がかからないようにするための制度です。

申告分離課税の対象である株式の譲渡所得は、基本的には確定申告して納税する必要があります。しかし、冒頭でもお伝えした通り、源泉徴収ありの特定口座を開設することで確定申告を省略することが可能です。

株式の配当所得については原則受け取る際に税金が源泉徴収されるため、確定申告は必要ありません。「源泉徴収なし」の特定口座を選択しても、配当金にかかる税金は源泉徴収されるルールとなっているため注意しましょう。

参考:申告分離課税制度|国税庁

総合課税

申告分離課税が他の所得と分けて税金を計算する課税方法であったのに対し、「総合課税」は会社員の給与所得や個人事業主事業所得など、他の所得と合算した「総所得金額」に課税する方式です。配当所得以外の総合課税対象所得は以下の項目になります。

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 譲渡所得
  7. 一時所得
  8. 雑所得

申告分離課税では所得税率が一意に決まっていましたが、総合課税は「累進課税方式」を採用しているため、配当所得を含めた総所得金額によって税率が決まります。住民税は一律10%ですが、所得税は所得に応じて5%から45%に段階的に引き上げられるのです。

総合課税を選択した場合は、年末調整で確定した給与所得等と合算して確定申告を行う必要があります。

参考:総合課税制度|国税庁

「申告分離課税」における「特定口座」と「源泉徴収」

株式の損益を管理する口座は「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3種類あります。

特定口座とは、証券会社が年間の損益を計算して「年間取引報告書」を作成してくれる口座です。上場株式などの特定の金融商品のみを扱うことができます。

特定口座(源泉徴収あり)は、上場株式の譲渡所得や配当金を受け取る際に税金が源泉徴収されます。源泉徴収によって税務関係が完了しているため確定申告は不要です。一般的に「申告不要制度」と呼ばれています。

特定口座(源泉徴収なし)は、税金が源泉徴収されないため確定申告を行う必要があります。確定申告時に「申告分離課税」と「総合課税」から選択することができます。申告分離課税は「損益通算」、総合課税は「配当控除」など税制上の優遇措置を受けることが可能です。一般口座は、非上場株式やストックオプション、FX取引など特定口座では扱えない取引も管理することができますが、損益計算は全て自身で行い確定申告しなければなりません。

管理口座課税方式確定申告
特定口座(源泉徴収あり)申告不要制度(分離課税に基づき源泉徴収)不要
特定口座(源泉徴収なし)申告分離課税必要
総合課税必要
一般口座申告分離課税必要
総合課税必要

総合課税と申告分離課税、どちらのほうが安い?

株式の配当金は、受け取る際に税金が源泉徴収されるため、一般的に確定申告は不要です。しかし、確定申告を行うことで税制優遇を受けられる可能性があります。
確定申告時に「総合課税」と「申告分離課税」から課税方式を選択することができ、それぞれ異なる税制優遇を受けることが可能です。

総合課税を選択した際は「配当控除」を受けられます。実は配当金には法人税が課税されており、受け取り時に所得税も控除されるため、2重課税の状態になっています。この2重課税分を還元するのが配当控除です。

申告分離課税を選択した場合は「損益通算」することが可能です。損益通算では、1年間の投資収益の利益と損失を相殺されます。利益から損失分を差し引くことで、税金を低く抑えることができるのです。

課税方式と税制優遇の関係をまとめると下記のようになります。

配当控除損益通算
総合課税受けられるできない
申告分離課税受けられないできる

所得税と住民税で異なる課税方式を選択することもできます。また、一般的には確定申告をする必要のない、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合でも、総合課税か申告分離課税を選択して確定申告することも可能です。

どちらがお得かは、投資収益以外の所得や配当の金額によって異なるため一概には言えません。しかし、総合課税は累進課税方式のため、所得が多い方は申告分離課税を選択した方が良いでしょう。

株の収益について確定申告をする必要がないケース

源泉徴収ありの特定口座を利用していない場合でも、一定の条件下では確定申告は不要です。年間の所得が2,000万円以下で、給与所得以外の株式投資や副業で得た収入が20万円以下の場合は確定申告の必要はありません。逆に、源泉徴収ありの特定口座を利用しており、利益が20万以下の場合は不要な税金が源泉徴収されています。確定申告をして、還付を受けると良いでしょう。

参考:給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

株と税金の関係を理解し正しく納税しよう

ここまで、株式投資による収益と税金の関係をご説明しました。一般的に、給与以外の所得がある場合には確定申告が必要ですが、源泉徴収ありの特定口座を選択し、申告不要制度を利用した場合は確定申告を省略することが可能です。株式等の譲渡益や配当所得は年末調整に含めることはできないため、申告不要制度を利用しない場合は必ず確定申告し、正しく納税しましょう。

よくある質問

株で得た収益に年末調整は必要ですか?

株式等の譲渡益や配当所得は年末調整に含めることはできません。詳しくはこちらをご覧ください。

株の収益について確定申告を行わなくてよいケースについて教えてください

源泉徴収ありの特定口座を選択し、申告不要制度を利用した場合は確定申告を省略することが可能です。また、収益が20万円以下の場合も確定申告不要です。詳しくはこちらをご覧ください。


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