• 更新日 : 2023年10月27日

役職定年(やくてい)とは?実態や事例をもとに解説

役職定年(やくてい)とは?実態や事例をもとに解説

役職定年(やくてい)とは、あらかじめ定めた年齢に達した社員が部長・課長などの役職から退く制度のことです。大企業で多く採用されており、組織を活性化させるというメリットがあります。

本記事では、役職定年のメリット・デメリットや上手に活用する方法、導入事例などを解説します。

役職定年(やくてい)とは?

役職定年(やくてい)とは、一定の年齢に達した社員が役職から退く制度のことです。導入の背景には、定年制の延長で人件費が増え、若手社員の活躍の機会が少なくなるといった事情があります。

役職定年について、さらに詳しくみてみましょう。

役職定年の年齢は決まっている?

役職定年は、部長・課長などの役職ごとに定年を設ける制度です。定年の年齢は企業ごとに異なり、一般的に50代後半から60歳に設定されています。

ただし、役職定年が導入されたのは60歳定年の時代であり、定年の年齢が引き上げられている状況で、同じく役職定年の年齢も引き上げられている傾向にあります。

役職定年制度がある理由・背景

役職定年制度が導入されるようになった背景には、定年制の延長があげられます。1994年には60歳未満の定年が禁止され、2025年からは65歳までの雇用確保が義務化されます。一度役職に就けば原則として降格しない決まりとなっている企業も多く、勤続年数で昇給を行う企業では雇用期間が延長されることで人件費の負担が増えることになるでしょう。

定年の延長は、組織の世代交代を妨げる要因にもなります。定年が延長され、さらに役職が継続すると、下の世代はその役職につけないことにもなります。そのために若手のモチベーションが下がり、成長の機会が奪われるかもしれません。

そのような状況の中で、人件費を抑え、組織の若返りを図るために役職定年制を導入する企業が増えてきました。

ポストオフ制度との違い

役職定年制度は、ポストオフ制度とは異なります。ポストオフ制度とは、人事制度においてポスト交代の判断をする際、年齢をひとつの判断材料とすることです。

あらかじめ設定した年齢に達したとき役職から退任する点で役職定年と同じですが、ポストオフの候補者を評価や役職任期、年齢を総合的に判断して役職定年者を決める点が異なります。主にジョブ型雇用(職務内容を限定して採用する手法)を採用する企業で導入されています。

役職定年の実態・データ

役職定年制度を導入している企業割合は23.8%で、大企業ほど採用している企業が多いという調査結果があります。500人以上の企業では、約4割の企業が導入しているそうです。

制度を採用している企業のうち、部長クラスを対象に行っているのは83.7%で、 課長クラスは88.3%です。どちらも対象とする企業は81.3%にのぼります。

役職定年の年齢は部長クラス、課長クラスともに55歳とする企業の割合が高く、次に57歳が多いという結果になっています。

また、役職を降りたあとの主な仕事・役割は、部長クラス・課長クラスとも「後進への技術・技能の伝承」が高く、次いで「通常業務の遂行」が続いています。

参考:人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」
参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「8 役職定年制度の導入状況とその仕組み」

役職定年制度のメリット

役職定年制度の導入により、次のようなメリットがあります。

  • 会社の新陳代謝を促進する
  • シニア人材のキャリア変更を促進する
  • 人件費の削減につながる

それぞれ、詳しくみていきましょう。

① 会社の新陳代謝を促進する

役職定年制度により、同じ社員が長期間にわたり役職に就いているという状況がなくなります。若手にも役職に昇進する機会が増え、組織の新陳代謝が促されます。組織の活性化につながるでしょう。

昇進の可能性が高まることで若手社員のモチベーションが向上し、優秀な人材の離職を防ぐ効果も期待できます。

➁ シニア人材のキャリア変更を促進する

労働人口の減少で人材不足に悩む企業は増え、シニア人材の活用が注目されています。人生100年時代といわれ、人々の働く年数も延びていきました。2021年からは70歳までの就業確保が企業の努力義務となり、社員は定年後のキャリア設計を考える必要があります。

役職定年制度で役職を終えるタイミングがわかっていれば、企業はより長期的な視点で従業員の採用計画を立てられます。社員自身も責任の重い役職から退き、定年後のキャリアプランを設計しやすくなるでしょう。長く働けることへの見通しができ、安心感を得ることで仕事への意欲も高まります。

③ 人件費の削減につながる

役職定年制度により人件費を削減できるのもメリットです。65歳までの雇用確保が義務化されることになり、企業はより多くの年数を雇用しなければならなくなります。

役職のまま定年まで雇用すると、基本給に加えて役職手当を支払わなければなりません。その一方で、加齢により役職と能力が見合わなくなるケースもあります。

役職定年を導入して役職を外し、役職手当の支給がなくなることで、人件費を抑えながらシニア人材の雇用を継続できる点がメリットです。

役職定年制度のデメリット

役職定年制度は、デメリットも存在します。一定の年齢に設定することで、重要な人材の役職を外さなければならない点です。また、役職定年が近づくと、役職者のモチベーション低下にもつながるでしょう。

役職定年制度のデメリットを解説します。

① 重要な人材もポストを外さなければならない

役職定年制度では、会社や業務の状況にかかわらず、一定の年齢に達したら役職が入れ替わります。そのため、重要な人材であってもポストを外れなければならないという点がデメリットです。

高いノウハウを持ち、チームを先導していた人材がポストを離れることは、チームに少なからず影響を与えます。引き継ぎがスムーズにできないと、生産性や業績を下げることにもなりかねません。

​​また、役職定年後の仕事内容に魅力がなく、閑職に回される印象がある場合、若手社員は将来への不安を感じます。いずれは自分たちもそのような境遇になると考えると、モチベーションを失うでしょう。

➁ 役職定年が近づいた人のモチベーションダウンにつながる

役職に就いている社員は、どれだけ活躍しても決められた年齢になれば役職を退かなければなりません。そのため、役職定年の年齢が近づくと業務へのモチベーションを下げることにもなります。

他社で重要なポストに迎えられることになれば、役職定年をきっかけに優秀な人材が離職することにもなるでしょう。

役職定年後も企業や部署のアドバイザーになるなど重要な役割を用意しておくことで、役職定年後も自身の存在意義を感じ、モチベーションを保てるでしょう。役職定年後のポストは、若手社員にも安心感を与えます。

役職定年制度を上手く活用するには?

役職定年制度はデメリットな側面もあり、上手く活用するためには工夫が必要です。

ここでは、制度を運用していく上で注意したい点を解説します。

役職者が変わる際にサポートを行う

役職の変更時期には、サポートが必要です。役職定年後の業務や働き方の変化について事前に説明し、ギャップを感じることのないようにサポートしましょう。モチベーションの低下を防ぐため、キャリアデザイン研修の実施も効果的です。今後のキャリアを考えやすくなるでしょう。

新しく役職に就く後任者は、基本的に役職定年者より年下です。年下上司が年上の部下に気を遣うこともあるでしょう。上手くコミュニケーションをとれないと、職場の雰囲気が悪くなる可能性もあります。役職に就く前に管理職研修を実施し、マネジメントやコミュニケーションについて学ぶことも必要です。

役職定年者専用の職務を設置する

役職定年者のための職務を設置することも大切です。役職定年後は補助的な業務を担当するだけになると、モチベーションを下げることにもなるでしょう。これまで培った専門知識を活かせる業務や部下の育成、アドバイザーなど、いくつかの選択肢を用意すれば、役職定年後も意欲をもって働けるでしょう。

また、役職定年後の新たな肩書きを用意することも必要です。役職を退いて何の肩書きもない状態になると、存在感が失われたように感じてしまいます。新しい肩書きを用意することで、業務が変わっても働く意欲を保ちやすくなるでしょう。

役職定年者の働き方を柔軟にする

働き方を柔軟にすることも、役職定年後のモチベーションを維持するポイントです。管理職のころより勤務時間や労働日数を減らせば、役職定年によって減少する年収とのバランスがとれます。

自由な時間や休暇が増えることでプライベートに使う時間が増えれば、仕事にゆとりができ、働きやすくなるでしょう。

他社との兼業・副業を促す道もあります。管理職として培った経験や知識はニーズがあり、兼業・副業によって新たなやりがいをみつけることもできるでしょう。

導入や活用についての詳細を従業員に説明する

役職定年を導入する際は、導入と活用について従業員によく説明することが求められます。

役職定年は職位・等級の降格と報酬の低下を伴い、対象の役職者にとって不利益が生じる可能性はあります。会社側で一方的に決めるのではなく、制度を設ける目的についてよく説明し、意見にも耳を傾けることが必要です。

反対意見が多い場合には制度内容を見直して調整を図るなど、導入によって社員のモチベーションを下げないよう対処しましょう。

役職定年制度の事例・具体例

実際に役職定年制度を実施している企業の事例を紹介します。導入を検討する際の参考にしてください。

役職定年後も定年前と同じ枠組みで処遇

A社では役職定年後も、定年前と同じ枠組みで処遇するという運用をしています。役職定年前以上に、昇級・降級も含めた評価ができる制度を設けているのが特徴です。

役職定年直後は外れた役職に応じて降級になりますが、役職定年後にプレーヤーとしての専門性を発揮して高い成果を上げれば、役職定年前より給与が上がる可能性があります。

役割を分けて役職定年後も活躍

D社では、役職定年後の社員の役割を次の3つに分け、役割を明確にしています。]

  • 理事に就任する
  • メンターになる
  • プレイヤーに戻る

理事に就任するコースは、部長や支店長などの職を担っていた人が引き続き同じ役割を担います。年収も役職定年前と同じ水準が維持されます。

メンターになるコースは、部長や支店長などの経験者が指導者となり、知識や経験を引き継ぐという内容です。メンター手当が支給され、理事に昇格することも可能です。

プレイヤーに戻り、再び一線で活躍する道もあります。成果などの手当は現役社員と同様に支給されます。

役職定年は組織の活性化につながる

役職定年は一定の年齢に達したら役職を退く制度です。会社の新陳代謝を促進して活性化を図り、若手社員のモチベーションを高める効果があります。人件費を削減できるのもメリットです。

しかし、役職定年に近づいた社員のモチベーションを下げる可能性があり、重要な人材のポストを外すことでデメリットが生じる場合もあります。

デメリットな側面も把握し、導入する際は社員の意見も聞きながら慎重に進めましょう。


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