• 作成日 : 2022年8月19日

扶養に入った場合の厚生年金はどうなる?

扶養に入った場合の厚生年金はどうなる?

厚生年金における扶養とは、厚生年金加入者の配偶者で、20歳以上60歳未満の第3号被保険者のことです。そして、第3号被保険者になれるのは配偶者に限られ、年収が130万円未満と定められています。収入の少ない主婦などは第3号被保険者として扶養加入している場合が多いでしょう。この記事では、厚生年金における扶養の概要をご紹介します。

扶養に入っている場合の年金はどうなる?

厚生年金保険や共済組合に加入し保険料を納付している人は「第2号被保険者」といいます。日本の公的年金は「2階建て」になっており、厚生年金に加入している人は、同時に国民年金の第2号被保険者です。

厚生年金には扶養制度があり、第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人は国民年金の「第3号被保険者」として扱われます。被扶養者として認定されるには年収制限もあり、130万円未満もしくは障害厚生年金の受給に資する障害者の場合は180万円未満です。

なお、厚生年金と合わせて社会保険に分類される健康保険では、一定の条件を満たした保険加入者と、同一生計の親族等も扶養加入が可能です。しかし、第3号被保険者になれる人は配偶者に限られるため注意しましょう。

保険料は扶養者が加入している厚生年金が一括負担するので、個別に納める必要はありません。一方、国民年金には扶養制度はないので、それぞれの被保険者が保険料を負担する必要があります。

被保険者の種別第1号被保険者第2号被保険者第3号被保険者
職業例
  • 自営業
  • 学生
  • 無職
など
  • 会社員
  • 公務員
など
  • 専業主婦
  • 専業主夫
など
加入する保険制度
国民年金
厚生年金と国民年金
国民年金

扶養認定され第3号被保険者となるための条件をまとめます。

  • 年齢条件
    20歳以上、60歳未満(60歳以上65歳未満の人は任意で国民年金に加入可能)
  • 年収条件
    130万円未満(障害厚生年金の受給に資する障害者の場合は180万円未満)

    • 同居の場合、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
    • 別居の場合、収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

社会保険における扶養については下記の記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

第3号被保険者は、被扶養者が60歳になると資格を喪失します。将来の年金受給額を増やしたい場合、60歳以上65歳未満の人は国民年金に任意加入が可能です。

さらに、扶養者である第2号被保険者が65歳になり老齢基礎・厚生年金の受給資格を満たした場合も、第3号被保険者の資格を失うため注意しましょう。

一般的に、第2号被保険者は60歳を超えて厚生年金適用事業所で働き続ける場合、70歳になるまで厚生年金に加入することが可能です。しかし、第2号被保険者の要件は「65歳未満の人」もしくは「65歳以上70歳未満で老齢基礎・厚生年金の受給資格を満たしていない人」と定められています。

そのため、65歳時点で老齢基礎・厚生年金の受給資格を満たしていると、第2号被保険者の資格を失います。それに伴い、被扶養者である第3号被保険者もその資格を失ってしまうのです。

例えば、歳の差が8歳ある夫婦の扶養者が65歳になり、老齢基礎・厚生年金の受給資格を満たした場合、被扶養者は57歳でも第3号被保険者ではなくなります。57歳から60歳までの間は国民年金に加入する必要があるため注意しましょう。

参考:日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省
参考:た行 第1号被保険者|日本年金機構
参考:た行 第2号被保険者|日本年金機構
参考:た行 第3号被保険者|日本年金機構
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構

扶養控除とは

社会保険だけでなく、所得税においても扶養という考え方があります。民法上の配偶者で、納税者と同一生計かつ所得が一定額以下の場合は「配偶者控除」を受けることが可能です。

実は、社会保険における扶養は内縁関係者も含まれるのですが、所得税における扶養は民法の規定による配偶者のみが該当するため注意しましょう。

配偶者以外の、一定の条件を満たした親族は扶養親族として「扶養控除」の対象です。これらの所得控除は、年末調整確定申告の際に所定の手続きを行うことで受けることができます。所得税法上の扶養については下記の記事で詳しく解説しています。

参考:No.1191 配偶者控除|国税庁
参考:No.1180 扶養控除|国税庁

第3号被保険者の年金の保険料

第3号被保険者は、扶養者である第2号被保険者が加入する厚生年金が一括して費用負担するため、保険料の納付は不要です。

しかし、国民年金には扶養制度はないため、何らかの事由で扶養から外れ第1号被保険者となった場合は、保険料を負担しなければなりません。

なお、被扶養者が第3号被保険者の資格を喪失したからといって、第2号被保険者の保険料は変わらないので注意しましょう。保険料は給与に基づく「標準報酬月額」を算定基礎に算出されるため、給与に変動がなければ保険料も変わりません。

参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構

第3号被保険者の手続き

扶養認定され第3号被保険者となるには、扶養者が働く事業所を経由し、所定の手続きを行わなければなりません。ここでは、第3号被保険者の条件を満たした際と、第3号被保険者の資格を喪失した際の手続きについてご紹介します。

第3号被保険者になる際

厚生年金に加入している配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先で「国民年金第3号被保険者関係届」を提出してください。

関係届には第3号被保険者に「該当」するか「非該当(変更)」かを選択する欄があるので、「該当」を選択しましょう。

関係届は事業所を経由して所管の年金事務所に提出され、受理されると第1号被保険者の資格は自動的に喪失し第3号被保険者となります。

第3号被保険者関係届
引用:国民年金第3号被保険者関係届|日本年金機構
参考:国民年金に加入するための手続き|日本年金機構
参考:厚生年金保険に加入している配偶者の扶養に入るとき|江東区

第3号被保険者でなくなる場合

何らかの事由により第3号被保険者の資格を喪失した場合は、種別変更手続きが必要です。第3号被保険者の資格を喪失する条件は下記の通りです。

  1. 第2号被保険者である配偶者が下記の理由でその資格を喪失したとき
    • 退職したとき
    • 自営業になったとき
    • 65歳を超え老齢基礎・厚生年金の受給条件を満たしたとき
    • 死亡したとき
  2. 第2号被保険者である配偶者と離婚したとき
  3. 第3号被保険者の年収が基準額を超えたとき
  4. 日本国外に転居し海外特例に該当しないとき

日本では年金制度への加入が法律で義務付けられているので、第3号被保険者の資格を喪失した場合は、直ちに第1号被保険者への種別変更を行ってください。

配偶者の勤務先に、「非該当(変更)」を選択した「国民年金第3号被保険者関係届」を提出し、扶養削除を行います。その上で、下記の書類と共に市区町村の担当窓口に出向いて、種別変更手続きを行いましょう。

  • 扶養削除された日のわかる証明書
    資格喪失証明書など
  • 基礎年金番号のわかるもの
    年金手帳・基礎年金番号通知書など
  • マイナンバーのわかるもの
    マイナンバーカード・個人番号通知書(通知カード)・マイナンバーが記載された住民票の写しなど
  • 本人確認のできるもの
    マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど

なお、年金制度への加入は国民の義務であるため、第3号被保険者の資格喪失日から14日以内の移行手続きが求められます。資格を喪失したらなるべく早く種別変更手続きを行いましょう。

参考:会社員などの配偶者に扶養されている方、扶養されていた方(主婦・主夫)へ 知っておきたい「年金」の手続 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

扶養から外れる場合

就労などによって年収が増加し配偶者の扶養から外れた場合は、自身が勤める事業所の厚生年金に加入しましょう。たとえパートやアルバイトであっても、下記の条件を満たす人は社会保険への加入が義務付けられます。

  • 1週間の所定労働時間が一般社員の4分の3以上
  • 1ヶ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上

また、これらが4分の3未満であっても、下記の要件を全て満たす場合は被保険者となります。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること

なお、年金制度改正法の施行に伴い、2022年10月より「2. 雇用期間が1年以上見込まれること」は要件から除外されます。

扶養削除日と同月内に厚生年金に加入する場合は「国民年金第3号被保険者関係届」を提出する必要はありません。自身の勤務先に年金手帳、もしくは基礎年金番号通知書を添えて「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出してください。事業所を経由し所管の年金事務所に受理された段階で、第2号被保険者となります。

参考:私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。|日本年金機構
参考:配偶者の扶養から外れたとき|江東区

扶養に入れば保険料の負担なく年金に加入可能

今回は厚生年金における扶養制度をご紹介しました。年齢や年収など、一定の条件を満たして配偶者の扶養になることで、保険料の負担なく年金に加入することが可能です。

扶養認定を受けて第3号被保険者となるには、いわゆる「130万円の壁」といわれる年収制限があるため注意しましょう。年収の増加や配偶者の退職などで扶養から外れた場合は、速やかに第1号被保険者、もしくは第2号被保険者への切り替えが必要です。

年金制度への加入は法律で義務付けられているため、14日以内の切り替え手続きが求められます。当記事を参考に、厚生年金における扶養を正しく理解しましょう。

よくある質問

第3号被保険者とはなんですか?

厚生年金に加入している第2号被保険者の扶養配偶者が第3号被保険者です。詳しくはこちらをご覧ください。

第3号被保険者の保険料はどうなりますか?

配偶者が加入している厚生年金が一括負担するため、第3号被保険者は保険料を負担する必要はありません。詳しくはこちらをご覧ください。


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