• 更新日 : 2023年6月2日

賞与の所得税は自分でもチェックできる?

賞与の所得税は自分でもチェックできる?

賞与から控除される所得税は、給与とは異なる方法で計算されます。ここでは、賞与から控除される所得税の計算方法を、計算例もあわせて解説します。

賞与は給与よりも支給金額が高いので、所得税が正しく計算されているかどうか気になるものです。賞与の所得税の計算方法を知っておくと、賞与の明細を見ながら自分でチェックすることができます。

賞与の所得税の計算には前月の給与を使う

所得税の計算上、賞与とは、毎月の給与とは別に支払われるものを指します。
たとえば、ボーナス、賞与、夏期手当、年末手当、期末手当などの名目で支払われるものが当てはまります。

賞与に対する所得税等の金額は、賞与支給月の前月の給与をもとに、次の手順で計算されます。

  1. まず最初に、賞与を支給する月の前月の給与額から社会保険料等の金額を控除して、計算の基準にする金額を求めます。
  2. 次に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用意します。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に、上記1で求めた基準となる金額と扶養親族等の数を当てはめ、賞与に乗ずる税率を算出します。
  3. 給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出している従業員については「甲欄」を、そうでない従業員については「乙欄」を使って所得税等の金額を求めます。
  4.  

    賞与に対する所得税等の金額

    引用:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)|国税庁

  5. 税率は、所得税復興特別所得税をあわせたものです。
    次の算式で、源泉徴収される税額を求めます。
(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記2で求めた税率

給与や賞与から社会保険料等を差し引いた金額は、給与明細で「課税対象額」として記載されている場合があります。もし、明細に課税対象額の欄がなければ、自分で計算します。

より簡単に理解してもらえるように、具体例をもとに賞与の所得税の計算方法を説明します。

【例】Aさんの12月の賞与と前月(11月)の給与が次のとおりであった場合、12月の賞与から源泉徴収される税額を求めます。
12月の賞与(社会保険料等を差し引いた金額):80万円
11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額):30万円
扶養家族等の人数:3人
Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しています。

11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額)30万円と、扶養親族等の人数3人を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて、賞与の金額にかける税率を求めます。

Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しているので、甲欄を参照します。
表を参照すると、賞与にかける税率は4.084%であることが読み取れます。

12月の賞与(社会保険料等を差し引いた金額)80万円に税率の4.084%をかけた、32,672円が賞与から源泉徴収する所得税の額となります。

(計算式)800,000円×4.084%=32,672円

前月の給与がなかった場合

賞与支給月の前月に給与の支払いがなかった場合には、賞与から源泉徴収する所得税の計算は次のように行います。

  1. (賞与から社会保険料等をマイナスした金額)÷6 の金額を、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」と照合して賞与額にかかる税額を求めます。
  2. 1の税額を6倍した金額が、賞与から源泉徴収する所得税になります。

賞与の対象期間が6カ月を超える期間の場合は、上記の計算方法1の「÷6」のところを「÷12」に、計算方法2の「6倍」のところを「12倍」に、それぞれ置き換えて計算します。

賞与が前月の給与の10倍を超える場合

前月の給与が極端に少ないなどの理由で、賞与の額が前月の給与の10倍を超える場合、賞与から源泉徴収される所得税の計算は次のように行います。なお、10倍を超えるかどうかは、前月の給与と賞与のどちらも社会保険料等を差し引いた後の金額で判定します。

  1. (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6 +(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)で求めた金額を、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて税額を求めます。
  2. 1の税額-(前月の給与から源泉徴収された税額)で求めた金額を6倍した額が、賞与から源泉徴収する所得税の額になります。

賞与の計算期間が6カ月を超える場合は、上記の計算方法1の「6」を「12」で、続く計算方法2の「6倍」を「12倍」で、それぞれ計算します。

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賞与の源泉徴収税額の求め方を理解し正しい計算を

賞与から源泉徴収される所得税は、前月の給与を基準にして税率が決まるなど、給与の場合とは異なる方法で計算されます。

多くの場合、賞与から源泉徴収される所得税の額は正しく計算されていることでしょう。しかし、賞与は金額が大きいだけに、間違えると誤差も大きくなってしまいます。

もし、賞与の所得税の額が間違っているのではないかと心配になった場合は、ここでご紹介した計算方法をもとに、自分でチェックしてみてはいかがでしょうか。
なお、給与等支給時に徴収される源泉所得税額(復興特別所得税を含む)と年税額との過不足は年末調整にて精算(還付又は追徴)されます。

よくある質問

給与と賞与の源泉徴収税額の求め方は同じですか?

いいえ、給与と賞与の源泉徴収税額の求め方は異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与の源泉徴収税額は、どのように求めますか?

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて算出します。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与によって源泉徴収税額の求め方が違うことはありますか?

前月の給与がなかった場合や賞与が前月の給与の10倍を超える場合などは、計算方法が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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