• 更新日 : 2025年1月31日

賞与・ボーナスの所得税・社会保険料が高いと感じるのはなぜ?税金の計算方法を解説

賞与・ボーナスの所得税の源泉徴収額は、【賞与から社会保険料等を差し引いた金額 × 源泉徴収税額の算出率】で計算されます。

賞与・ボーナスから控除される所得税は、給与とは異なる方法で計算されます。ここでは、賞与から控除される所得税の計算方法を、計算例もあわせて解説します。

賞与・ボーナスは給与よりも支給金額が高いので、所得税が正しく計算されているかどうか気になるものです。賞与・ボーナスの所得税の計算方法を知っておくと、賞与・ボーナスの明細を見ながら自分でチェックすることができます。

賞与・ボーナスで天引きされているものは?

賞与(ボーナス)は、源泉所得税と、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料など)が天引きされています。

具体的には、賞与が支払われる際、会社からの支給金額からこれらの税金や保険料が差し引かれた後の金額が従業員に支払われます。

そのため、賞与の手取りを確認したい場合は、源泉所得税と社会保険料の控除(天引き)金額を確認する必要があります。

所得税

(源泉)所得税とは、給与や賞与などが発生したタイミングであらかじめ企業が徴収して国に納める税金のことです。

所得税の税額は給与や賞与だけでなく、それ以外の所得も含む総所得によって決まります。そのため、給与や賞与の支払い時点で源泉徴収する税額は概算です。確定した納税額との差分は、年末調整確定申告で精算します。

社会保険料

ボーナスにかかる社会保険料としては、次の4種類の社会保険料があります。

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

<健康保険料>

健康保険は医療費負担を軽減するための、公的医療保険制度です。健康保険料は勤務先と折半します。保険料率は加入する健康保険組合や勤務地(全国健康保険協会の場合)によって異なるため、注意しましょう。

<介護保険料>

介護保険は、65歳以上の高齢者や40~64歳までの特定疾病による要介護者の介護負担を軽減するための公的保険制度です。40~64歳までの従業員から天引きされます。

<厚生年金保険料>

厚生年金保険は、国民年金に上乗せして年金を受け取れる公的年金制度です。会社員や公務員などが加入します。厚生年金保険料は、70歳未満の従業員から天引きされます。

<雇用保険料>

雇用保険は、育児休業給付や失業した際の手当、求職者支援などを支える公的保険制度です。雇用保険料は他の社会保険料と違い、標準賞与額ではなく実際の賞与・ボーナス支給額で計算されるのが特徴です。

また、事業によって被保険者の負担と企業負担の割合が定められています。

参考:令和6年度の雇用保険料率について|厚生労働省

1.賞与・ボーナスから天引きされる所得税の計算

所得税の計算上、賞与とは、毎月の給与とは別に支払われるものを指します。

たとえば、ボーナス、賞与、夏期手当、年末手当、期末手当などの名目で支払われるものが当てはまります。

源泉徴収額 = 賞与から社会保険料等を差し引いた金額 × 源泉徴収税額の算出率

賞与・ボーナスに対する所得税等の金額は、賞与支給月の前月の給与をもとに、次の手順で計算されます。

①社会保険料等の金額を差し引く
まず、賞与・ボーナスを支給する月の前月の給与額から、社会保険料等の金額を控除して、計算の基準にする金額を求めます。
②源泉徴収税額の算出
次に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用意します。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に、上記①で求めた基準となる金額と扶養親族等の数を当てはめ、賞与に乗ずる算出率を求めます。

※「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出している従業員については「甲欄」を、そうでない従業員については「乙欄」を使って所得税等の金額を求めます。

賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表 令和6年

賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表2 令和6年

引用:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)|国税庁

③源泉徴収される税額を求める
税額は、所得税と復興特別所得税をあわせたものです。次の算式で、源泉徴収される税額を求めます。

源泉徴収額=(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記②で求めた算出率

給与や賞与・ボーナスから社会保険料等を差し引いた金額は、給与明細で「課税対象額」として記載されている場合があります。もし、明細に課税対象額の欄がなければ、自分で計算します。

賞与・ボーナス計算のシミュレーション例

より簡単に理解してもらえるように、具体例をもとに賞与の所得税の計算方法を説明します。

【例】Aさんの12月の賞与と前月(11月)の給与が次のとおりであった場合、12月の賞与から源泉徴収される税額を求めます。
  • 12月の賞与・ボーナス(社会保険料等を差し引いた金額):80万円
  • 11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額):30万円
  • 扶養家族等の人数:3人
  • Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しています。

11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額)30万円と、扶養親族等の人数3人を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて、賞与・ボーナスの金額にかける算出率を求めます。

Aさんは「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出しているため、甲欄を参照します。
表を参照すると、賞与にかける算出率は4.084%であることが読み取れます。

12月の賞与(社会保険料等を差し引いた金額)80万円に算出率の4.084%をかけた、32,672円が賞与から源泉徴収する所得税の額となります。

(計算式)800,000円×4.084%=32,672円

前月の給与がなかった場合

賞与・ボーナス支給月の前月に給与の支払いがなかった場合には、賞与・ボーナスから源泉徴収する所得税の計算は次のように行います。

  1. (賞与・ボーナスから社会保険料等を差し引いた金額)÷6 の金額を、「給与等の月額」とみなして、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめ賞与額にかかる税額を求めます。
  2. 1の税額を6倍した金額が、賞与・ボーナスから源泉徴収する所得税になります。

賞与・ボーナスの対象期間が6ヶ月を超える期間の場合は、上記の計算方法1の「÷6」のところを「÷12」に、計算方法2の「6倍」のところを「12倍」に、それぞれ置き換えて計算します。

賞与・ボーナスが前月の給与の10倍を超える場合

前月の給与が極端に少ないなどの理由で、賞与の額が前月の給与の10倍を超える場合、賞与から源泉徴収される所得税の計算は次のように行います。なお、10倍を超えるかどうかは、前月の給与と賞与のどちらも社会保険料等を差し引いた後の金額で判定します。

  1. (賞与・ボーナスから社会保険料等を差し引いた金額)÷6 +(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)で求めた金額を、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて税額を求めます。
  2. 1の税額-(前月の給与から源泉徴収された税額)で求めた金額を6倍した額が、賞与・ボーナスから源泉徴収する所得税の額になります。

賞与・ボーナスの計算期間が6ヶ月を超える場合は、上記の計算方法1の「6」を「12」で、続く計算方法2の「6倍」を「12倍」で、それぞれ計算します。

2.賞与・ボーナスから天引きされる社会保険料の計算

賞与から控除される健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の金額も、通常の給料と異なる計算方法で行われます。

健康保険料の計算方法

賞与・ボーナスから控除される健康保険料は、標準賞与額と健康保険料率(従業員負担は1/2)を用いて求めます。

標準賞与額は、賞与支給額を1,000円単位にした金額です。所得税(源泉徴収税)を控除する前の賞与・ボーナス支給額の1,000円未満を切り捨てた金額が標準賞与額になります。

賞与・ボーナスから控除される健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率×1/2

健康保険料率は、賞与も給料と同じ料率で、全国健康保険協会の場合は都道府県別に定められている率が用いられます。健康保険料を計算する際に使用する標準賞与額には上限金額が定められていて、4月1日から3月31日までの年間累計額573万円が上限とされます。

介護保険料の計算方法

40~64歳までの従業員には、介護保険料の負担義務があります。賞与・ボーナスにも給料と同じように介護保険料がかかります。料率は健康保険組合によって異なりますが、全国健康保険協会は全国一律の16/1000(令和6年度)を用いて計算します。

賞与・ボーナスから控除される介護保険料(全国健康保険協会)= 標準賞与額 × 介護保険料率(16/1000)× 1/2

介護保険料は健康保険料と一緒に計算するため、上限金額についても同じ取扱いになります。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料率は183/1000で、賞与・ボーナスから控除される厚生年金保険料は、標準賞与額に厚生年金保険料率をかけて求めます。

賞与・ボーナスから控除される厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率(183/1000)× 1/2

厚生年金保険料を計算する際に使用する賞与・ボーナス額の上限金額は、1ヶ月あたり150万円です。

雇用保険料の計算方法

賞与・ボーナスから控除される雇用保険料は、賞与・ボーナス総支給額に雇用保険料率をかけた金額です。

賞与・ボーナスから控除される雇用保険料 = 賞与支給額 × 雇用保険料率(従業員負担分)

令和6年度の雇用保険料率は、令和5年度と同じで、以下の表の通りです。

雇用保険料率
従業員負担分会社負担分
一般の事業15.5/1000
6/10009.5/1000
農林水産・清酒製造の事業17.5/1000
7/100010.5/1000
建設の事業18.5/1000
7/100011.5/1000

出典:雇用保険料率について|厚生労働省

1円未満の端数については以下のように処理します。

  • 50銭以下:切り捨て
  • 50銭1厘以上:切り上げ

賞与・ボーナスの税金や社会保険料はいくら?手取りを計算

実際に賞与・ボーナスから引かれる税金や社会保険料を見ていきましょう。ここでは、以下の条件で計算します。

手取りを計算モデル例
  • 会社は東京都にある
  • 11月の給与(社会保険料等を差し引いた金額):30万円
  • 扶養親族等の人数:3人
  • 「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出している

賞与・ボーナス支給額が30万円の場合

賞与・ボーナス支給額が30万円の場合の税金や社会保険料は、次のとおりです。

所得税金額
所得税10,348円
社会保険料金額
健康保険料14,970円
介護保険料2,400円
厚生年金保険料27,450円
雇用保険料1,800円
合計46,620円

手取り:300000 – 10,348 – 46,620 = 243,032円

賞与・ボーナス支給額が60万円の場合

賞与・ボーナス支給額が60万円の場合の税金や社会保険料は、次のとおりです。

所得税金額
所得税20,696円
社会保険料金額
健康保険料29,940円
介護保険料4,800円
厚生年金保険料54,900円
雇用保険料3,600円
合計93,240円

手取り:600000 – 20,696 – 93,240 = 486,064円

賞与・ボーナス支給額が120万円の場合

賞与・ボーナス支給額が120万円の場合の税金や社会保険料は、次のとおりです。

所得税金額
所得税41,392円
社会保険料金額
健康保険料59,880円
介護保険料9,600円
厚生年金保険料109,800円
雇用保険料7,200円
合計186,480円

手取り:1200000 – 41,392 – 186,480 = 972,128円

「賞与・ボーナスの所得税が高い」と感じる理由

賞与やボーナスの所得税が高い(=手取り額が予想よりも少なく感じられる)主な理由は、賞与・ボーナスが通常の給与よりも高額であり、源泉徴収される税金や社会保険料もそれに伴い大きくなるためです。

賞与・ボーナスの所得税は額面の賞与・ボーナスから社会保険料を差し引いた金額に対して、所得税率を適用して計算されます。この税率は、前月の給与額と社会保険料を差し引いた金額に基づいて、国税庁の定める表により決定され、税率は所得の多さによって変動します。

つまり所得が多ければ多いほど(前月の給料が高いほど)、また扶養家族が少なければ少ないほど税率は高くなります。

賞与の所得税が通常の倍になることはある?

賞与・ボーナスの源泉所得税が「倍になる」という状況は、対比する期間にもよりますが、人によってはあり得るでしょう。

昨年比で「賞与・ボーナスの所得税が高くなっていないか?」と思った場合のよくあるケースとしては、前月の残業時間が増えており、それに伴って前月の給料が(比較対象月と比較して)高くなっているケースが挙げられます。

これは、賞与・ボーナスの所得税が、前月の社会保険料控除の金額と扶養控除の人数で決まるためです。

ただし、最終的に所得税の金額は年収で決まるため、年末調整をすれば還付されるケースも多いです。

賞与・ボーナスの税金が戻ることがある?

賞与・ボーナスも年末調整に含まれるため、所得税額に過不足がある場合は還付されるケースもあります。

賞与・ボーナスの額によって、所得税の還付金が増える/減る場合としては、次のようなケースが考えられます。

  • 還付金が増える場合:賞与・ボーナス支給月の前月給与が普段よりも多い場合
  • 還付金が減る場合:賞与・ボーナスの割合が給与の総額に対して割合が大きい場合

前述したように、賞与・ボーナスの税率は賞与・ボーナス支給月の前月の給与で決定します。残業を多くしたり各種手当が付いたりして、前月の給与が普段よりも多い状況では、賞与・ボーナスの税率が高くなるため、年末調整で超過分を還付することになります。

令和6年分所得税の定額減税は賞与・ボーナスも対象

定額減税 月次減税事務 令和6年

引用:給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた|国税庁

令和6年6月1日実施の所得税の定額減税制度では、給与や賞与・ボーナスなどに関連する源泉徴収税額から一定の減税額が控除されます。

控除は、原則6月以降に最初に支払う給与などに対する源泉徴収税額から行われ、完全に控除しきれなかった場合は、年内に続く給与支払いで順次控除されます。

また、年末調整を受ける給与所得者に対しては、年末調整において計算される所得税額から年調減税額を控除します。この控除後の金額に基づいて、最終的な年間の税額が計算されます。

制度の詳細や注意点などは、国税庁のサイトをご確認ください。

参考:給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた、令和6年分所得税の定額減税Q&A

賞与・ボーナスの源泉徴収税額の求め方を理解し正しい計算を

賞与・ボーナスから源泉徴収される所得税は、前月の給与を基準にした算出率を用いて計算するなど、給与の場合とは異なる方法で計算されます。

多くの場合、賞与・ボーナスから源泉徴収される所得税の額は正しく計算されていることでしょう。しかし、賞与・ボーナスは金額が大きいだけに、間違えると誤差も大きくなってしまいます。

もし、賞与・ボーナスの所得税の額が間違っているのではないかと心配になった場合は、ここでご紹介した計算方法をもとに、自分でチェックしてみてはいかがでしょうか。

なお、給与等支給時に徴収される源泉所得税額(復興特別所得税を含む)と実際の所得税額との過不足は年末調整にて精算(還付又は追徴)されます。

よくある質問

給与と賞与の源泉徴収税額の求め方は同じですか?

いいえ、給与と賞与の源泉徴収税額の求め方は異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与の源泉徴収税額は、どのように求めますか?

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて算出します。詳しくはこちらをご覧ください。

賞与によって源泉徴収税額の求め方が違うことはありますか?

前月の給与がなかった場合や賞与が前月の給与の10倍を超える場合などは、計算方法が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


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