- 更新日 : 2025年1月28日
育休手当の雇用保険の加入期間は?2人目、3人目はどうなる?
育児休業(育休)を取得している期間は、基本的に雇用保険料が免除されます。
育休は、労働者であればだれもが取得できる権利ですが、育休中は働いていないため無給です。雇用保険料は、働いた分の給与にかかる保険料のため、育休中は雇用保険料が発生しません。
また、育休中は雇用保険の算定基礎期間から除かれます。
目次
育休手当(育児休業給付金)は雇用保険から支払われる
育休手当(育児休業給付金)は、育休を取得した労働者が、無給でも生活費や養育費に対する不安や負担を軽減するために受け取れる給付金です。
労働者が加入している雇用保険にもとづいて支給され、原則として1歳未満の子どもを養育する必要がある労働者へ支給されます。
そのため、下記の労働者は育休手当が受け取れません。
- 雇用保険に加入していない
- 育休を取得する前に十分な就業月数を満たしていない
- 育休中に就業している日数が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超えている
十分な就業月数は、具体的には育休取得日以前の2年間で、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることを指します。
また有期雇用労働者で、育休明けに労働契約が終了することがわかっている場合も、育休手当が受け取れません。
育休手当がもらえる雇用保険の加入期間は?
育休手当を受け取るには、一定期間以上、雇用保険の被保険者である必要があります。
具体的には、育児休業を開始する日以前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上必要です。
たとえば、2年間、1月から12月までの12か月間のうち賃金支払基礎日数が下記であったとしましょう。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
12日 | 11日 | 15日 | 10日 | 12日 | 11日 | 13日 | 14日 | 11日 | 11日 | 12日 | 10日 |
上記の場合、4月と12月以外の10か月が11日以上であり、2年間続けた場合は受給資格を満たすことになります。
雇用保険で2人目の育休手当は受け取れる?
雇用保険にもとづいて受け取れる育休手当は、2人目の子どもに対しても受け取ることが可能です。支給のための条件は1人目のときと同様ですが、病気やケガなどやむを得ない事情があれば、期間が最大2年延長され、育休開始前4年で判定されることになります。そのため、原則となる条件を満たさなくても、以下の条件を満たせば育休手当が支給されます。
- 1歳未満の子どもを養育するために育休を取得していること
- 育休取得日以前の4年間で、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること
1人目の育休中にすでに育休手当を受け取っていたとしても、雇用保険の加入期間が育休取得前から4年前までさかのぼってカウントできます。
育休中に2人目を妊娠し、1人目の育休が明けて引き続き育休に入る場合でも、育休取得前の4年間のうち、被保険者期間が12か月以上あれば育休手当が受け取れます。
2人目の育休手当がもらえない場合
1人目の育休中に育休手当が受け取れたとしても、下記の条件に当てはまる場合は、2人目の育休手当が受け取れない場合があります。
- 育休中に働いた日が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超えた場合
- 有期雇用労働者で、2人目の育休明けに労働契約が終了することがわかっている場合
- 2人目の育休明けに、職場へ復帰せず退職することがわかっている場合
- 2人目の育休取得前の4年間において、雇用保険の加入期間が12か月未満の場合
- 1人目の育休が明けていない場合
原則、子ども2人分の育休手当を同時期には受け取れません。
1人目の育休中に受け取れたとしても、2人目も変わらず受け取れるとは限らないため、注意が必要です。
雇用保険で3人目の育休手当は受け取れる?
雇用保険からの育児休業給付金は、3人目の育休を取得する際も、1人目と2人目と同様に下記の条件を満たせば受け取れます。
- 1歳未満の子どもを養育するために育休を取得していること
- 育休取得日以前の4年間で、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること
- 育休明けに職場復帰すること
やむを得ない事情があれば、育休開始前4年間で12月以上の被保険者期間を確認することで、育休手当が支給されます。しかし、3人目になれば、仮に4年前までさかのぼったとしても、加入月数が不足する可能性が高いです。そこで、2人目の育休明けに職場へ復帰し、賃金が支払われる日数を11日以上ある月を12か月以上にしましょう。
雇用保険の加入月数を増やしたうえで、ふたたび3人目の育休を取得すれば、3人目の育休手当が受け取れます。
3人目の育休手当がもらえない場合
1人目と2人目の育休中に育休手当が受け取れたとしても、下記の条件に当てはまる場合は、3人目の育休手当が受け取れない可能性があります。
- 育休中に働いた日が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超えた場合
- 有期雇用労働者で、3人目の育休明けに労働契約が終了することがわかっている場合
- 3人目の育休明けに、職場へ復帰せず退職することが事前にわかっている場合
- 3人目の育休取得前の4年間において、雇用保険の加入期間が12か月未満の場合
- 2人目の育休が明けていない場合
1人目または2人目の育休後に、職場へ復帰せず連続して育休を取得した場合、雇用保険の加入月数が足りないため、育休手当が受け取れないことがあります。
3人目の育休手当を受け取るには、雇用保険の加入状況や過去の育休取得状況に注意が必要です。
失業手当(失業給付金)後に育休手当はもらえる?
すでに失業手当を受け取った場合でも、育休手当は受け取れます。ただし、育休を取得する前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上あることが条件です。
失業手当を受け取った場合、雇用保険の被保険者期間がリセットされるため、前職での被保険者期間は、育休手当受給に必要な期間に含まれません。
このため、失業手当を受け取ったあとに育児休業を取得する場合、育休手当を受け取るためには再度雇用保険に加入し、必要な被保険者期間を満たす必要があります。
つまり、失業手当を受け取ったあとに育休手当を受け取るには、失業手当の受給後、さらに次の職場で賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上になるよう勤務する必要があります。
雇用保険からの育休手当はいくら受け取れる?
育児休業手当は、育休取得前の賃金の67%または50%が育休期間中に支給されます。
手当が受け取れるとはいえ、育休取得前の賃金よりも収入が下がります。受け取れる育児休業手当の金額を把握して、計画的に貯金したり支出を把握したりする必要があるでしょう。
労働条件により、賃金や取得する育休期間によって支給率が異なるため、実際に受け取れる育児休業手当の金額を事前に把握しておきましょう。
育休開始から6か月目まで
育児休業給付金は、育休開始から180日間(6か月間)は、下記の計算式で算出されます。
休業開始時賃金日額は、育休が開始される直近6か月間に支払われた給与の総額を180で割った金額です。算出された休業開始時賃金日額にもとづいて、支給日数に67%を掛けた金額が、実際に受け取れる育児休業給付金です。
たとえば、休業開始時賃金日額が10,000円の場合、180日間の育児休業給付金は以下のようになります。
休業開始時賃金日額 | 10,000円 |
---|---|
支給日数 | 180日 |
支給額 | 10,000円 × 180日 × 67% = 1,206,000円 |
2025年の4月から施行される改正育児・介護休業法により、育休開始から180日間(6か月目)は、出生後休業支援給付もあわせて受け取れるため、育児休業給付金の支給率が67%から80%になります。4月1日から最大で28日間は、80%で計算する必要があるでしょう。
育休開始から6か月を超えたら
育児休業給付金は原則、育休開始から181日目(6か月間)以降も、子どもが1歳になるまで支給されます。育休開始から181日〜子どもが1歳になるまでの支給率は、休業開始時賃金日額の50%になります。
育児休業を取得している間の収入は、最初の6か月間は67%と比較的高い水準で維持されますが、その後は減少します。
たとえば、育休開始時賃金日額が10,000円の場合、181日〜子どもが1歳になるまでの育児休業給付金は次のように計算されます。
休業開始時賃金日額 | 10,000円 |
---|---|
支給日数 | 185日 ※365日 – 180日 |
支給額 | 10,000円 × 185日 × 50% = 925,000円 |
※育休取得開始から365日後に、子どもが1歳になるとします。
育児休業給付金は、子どもが1歳の誕生日をむかえる前日までが支給対象です。
産後パパ育休の場合
産後パパ育休における育休手当は、通常の育休取得と同様に、67%または50%の支給率で受け取れます。
具体的には、育休の最初の180日間は67%の支給が行われ、そのあとは50%に減少する仕組みです。
たとえば、月収が30万円の場合、最初の180日間は約20万円が手当として支給され、そのあとは約15万円となります。
また、2025年4月からは新たに出生後休業支援給付金が創設され、育児休業給付金の給付率があわせて80%に引き上げられる予定です。
2025年4月から、最大28日間は80%の支給率で育児休業手当が算出できます。
【2025年4月~】育休手当が実質10割?出生後休業支援給付金とは?
2025年の4月から改正雇用保険法が施行され、新しく出生後休業支援給付が始まります。
出生後休業支援給付は、子どもの出生直後に両親そろっての育休取得を推進するために設けられます。
出生後休業支援給付を受け取るには、夫婦がそれぞれ14日以上の育児休業を取得することが条件です。また支給額は、育休取得前の給与の13%相当額で、育児休業給付金に上乗せされる形で最大28日分が支給されます。
そのため、2025年の4月から施行される改正育児・介護休業法では、出生後休業支援給付とあわせて育児休業給付金が64%から80%に引き上げられる形になります。社会保険料の免除等とあわせれば、実質手取りの10割が受け取れることになるのです。
産休・育休に関わる申請書類のテンプレート
産休・育休を取得するには、はじめに職場へ取得する旨を伝えたうえで、産休申請書または育児休業申請書の提出が必要です。
多くの職場では、企業が指定した形式および用紙に必要事項を記載して提出します。
とくに指定がない場合は、Money Forward クラウド給与の公式サイトで公開しているテンプレートに必要事項を記載して、ダウンロード・印刷する方法がおすすめです。
産休申請書テンプレート
産休を取得するためには、職場へ産休申請書を提出します。産休申請書には下記の事項を記載します。
- 所属部署名
- 社員番号
- 氏名
- 出産予定日
- 産休の開始予定日
- 産休の終了予定日
職場によっては、医師または助産師による妊娠証明書の添付が求められることもあるでしょう。
職場に指定の産休申請書がなければ、下記からテンプレートをダウンロードして印刷し、必要事項を記載したうえで職場へ提出しましょう。
育児休業申請書テンプレート
育休を取得するためには、職場へ育児休業申請書を提出します。育児休業申請書には下記の事項を記載します。
- 所属部署名
- 社員番号
- 氏名
- 子の氏名
- 子の生年月日
- 申請書本人と子の続柄
- 育休の開始予定日
- 育休の終了予定日
- 育休中の連絡先
職場に指定の育児休業申請書がなければ、下記からテンプレートをダウンロードして印刷し、必要事項を記載したうえで職場へ提出しましょう。
育休手当を受け取るには雇用保険へある程度加入していなければならない
育休手当は、労働者が加入している雇用保険にもとづいて支払われます。
そのため育休手当を受け取るには、育休を取得するまでの2年間のうち、雇用保険への加入月数が12か月以上あることが条件です。
さらに、2人目と3人目の子どもの育休は、育休の取得日からさらにさかのぼって4年間のうち、雇用保険への加入月数が12か月以上ある必要があります。
育休手当を受け取る際は、雇用保険へ加入している月数と育休を取得するタイミングに注意が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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