• 更新日 : 2023年9月29日

赴任とは?意味や転勤との違い、単身赴任・海外赴任の現状を解説

赴任とは?意味や転勤との違い、単身赴任・海外赴任の現状を解説

赴任は、現状と違う勤務地に向かうときに使う言葉です。向かうという動きを指し、特定の場所の勤務地へ行くことを示しています。赴任する・赴任地・海外赴任・単身赴任などと、別の言葉をつけてもよく使われます。着任や転勤、出向といった言葉は類義語ですが、異なる部分もあるため使い方には注意しなければなりません。

赴任(ふにん)とは?

これまでとは違う勤務地で就労することを会社から命じられた従業員が、辞令に従って新しく勤務することになった場所に出向くことを赴任(ふにん)といいます。赴任の「赴」の「赴く(おもむく)」は、現在いる場所から他の場所へ向かうことを意味します。「行く」と使う場合には特別に目的や動機がない場合の移動にも用いられますが、「赴く」は明確にその方向に出向く理由がある場合に用います。また「赴く」には「従う」や「同意する」という意味があり、他からの指示によって出向くというニュアンスも含まれています。

赴任に似た言葉には着任や転勤、出向などがありますが、これらの言葉と赴任にはどのような違いがあるのでしょうか?赴任に似た言葉を紹介し、赴任との使い方の違いを説明します。

赴任と着任との違い

赴任は「これまでとは違う勤務場所に出向く」ことを意味し、着任は「新しい勤務場所で与えられた仕事に就く」ことを意味しています。赴任は「出向く」という一時的な行動を指しているため時間が限定されますが、着任は「仕事に就く」ことを指すため赴任よりも時間が限定されません。

赴任と転勤との違い

赴任と転勤はどちらもこれまでとは違う勤務場所で働くことを意味し、赴任はこれまでと同じ部署から他の勤務場所へ行く場合に用いられるのに対し、転勤は人事異動によって所属部署が変わった上で勤務場所も変わる場合に用います。所属部署の変動がともなうため転勤は赴任よりも長期的なものだと認識されやすいです。また、家族が帯同する場合は一般的に赴任ではなく転勤が用いられます。

赴任と出向との違い

赴任は違う場所での勤務となり、その場所へ向かうことを意味する言葉であるのに対し、出向は子会社や孫会社、関連会社での勤務となる場合に用いられる言葉です。出向先からの要望や従業員のスキルアップを目的に出向は行われ、期間は限定的であることがほとんどです。数ヶ月から5年以内とされることが一般的で、多くの場合は期間が終了すると以前所属していた会社の同じ部署や関連部署に戻ることができます。

赴任の例文や使い方

赴任という言葉は、どのように使われるのでしょうか?よく目にする使い方や例文をもとに、赴任の正しい使い方を理解しましょう。

赴任する

赴任の後に「~する」をつけると、「赴任する」という動詞として使えます。

例文

  • 本店から名古屋支店へ異動になり、週明けに赴任する。
  • 福岡支店に赴任するため、事前にマンションを借りる契約をした。

赴任地

赴任の後に「~地」をつけると、赴任する場所を示す言葉になります。

例文

  • 鈴木君の次の赴任地には、札幌か仙台が候補に挙がっている。
  • 次の赴任地である熊谷は、夏に日本一気温が高くなる土地として有名だ。

海外赴任

赴任の前に「海外」をつけると、国外へ赴任することを意味する言葉になります。

例文

  • 来年は東南アジアのどこかに海外赴任しなければならなくなる。
  • 海外赴任の希望を出していた佐藤さんは、来月にいよいよヨーロッパに行くらしい。

単身赴任

赴任の前に「単身」をつけると、家族と離れて自分一人で赴任することを示す言葉になります。

例文

  • 地方への異動だが、子供が受験なので単身赴任しなければならない。
  • 単身赴任中は月に一度帰省するための手当が支給される。

日本は単身赴任が多い?

当たり前のことと捉えられることの多い日本企業の転勤について、背景や特徴を知っておきましょう。

日本の転勤制度

日本で一般的なものと考えられている転勤制度は、海外企業にはあまり見られない、珍しい制度です。日本は学生の卒業に合わせて一斉に採用を行い、国内外の支社や支店などに配属していろいろな仕事を経験させることで教育を行ってきたことから、転勤制度が普通のこととして受け入れられてきました。社員として転勤はキャリア形成の一環だと捉えられています。

日本での単身赴任率

厚生労働省は企業における労働者の就労条件の現状を明らかにする目的で、毎年、労働時間制度や賃金制度などについての調査を行っています。有配偶単身赴任者対策として単身赴任率を調査した2004年就労条件総合調査結果によると2004年1月1日現在の有配偶単身赴任者総数は31万7,000人で、前回調査(1998年)より2,900人増加しました。単身赴任率は19.6%です。

会社からの転勤命令は従う必要がある?

従業員は就業規則を守って会社に労働力を提供する必要があります。そのため、就業規則で「会社は従業員に対して転勤を命じる場合があり、従業員は転勤命令に従う必要がある」という規定が設けられている場合、従業員は転勤命令に従わなければなりません。しかし、会社には従業員の事情を考慮して転勤命令を下す必要があり、合理的な理由のない転勤を従業員にさせることは認められません。具体的には介護が必要な家族がいる者に対する転居を要する転勤、内部通報を行ったことによる報復人事的な転勤がこれに該当します。

海外赴任の現状

日本企業の海外赴任の現状は、どうなっているのでしょうか?必要な準備についても知っておきましょう。

2017年に日系企業の世界進出は過去最高を記録

外務省の海外在留邦人数調査によると、2017年10月1日付けの集計で135万1,970人(男性64万6,787人、女性は70万5,183人)と過去最高を記録しました。性別の割合では男性48%に対して女性52%となり、女性が男性を上回るという比率は1968年の調査開始以降、変わっていません。前年(2016年)に対しては男性が4,723人(約0.7%)、女性が8,770人(約1.3%)増加しています。

海外赴任が決まったときに行う準備は?

社員を海外に赴任させることが決まったら、労災保険や給与額を変更する準備を行わなければなりません。健康保険や厚生年金保険雇用保険は海外赴任となっても雇用関係は継続するため変更する必要はありませんが、労災保険は特別加入者として別の取扱いになるため手続きを行わなければなりません。給与額についても海外赴任させるにあたっては変更し、生活を保障する必要があります。家族の帯同の有無や赴任地の物価などを勘案して、社員には相当の負担となる海外赴任に相応する給与の支払いが求められます。また、海外赴任が1年以上となる場合は所得税のかからない非居住者となるため、居住者としての最後の給与支払いで年末調整を行う準備もしなければなりません。

その他、ビザ申請や住居の手配、予防接種などのさまざまなことで、海外赴任者をサポートする必要があります。

赴任の類義語

赴任の類義語には帰任や就任、駐在といった言葉が挙げられます。意味や使い方を、例文を交えてご紹介します。

帰任

帰任は、もといた勤務地に戻ることを指します。自分自身の経験蓄積やスキルアップ、欠員があった職場への穴埋めなどのために行われた転勤や出向を終え、以前の職場に復帰するときに使います。

例文

  • 産休社員の代替要員として地方に行っていたが、来月から営業本部への帰任が決定した。
  • 小林さんは3ヶ月前に急に異動になったが、今月中に帰任するらしい。

就任

何かの職に就くことを就任といいます。現在よりも地位が上がる場合に用い、一般的には役職に就くときに使います。

例文

  • 榎本部長は今度の人事異動で、本部長に就任する。
  • 山田さんが専務に就任したため、今日はお祝いの花がたくさん届けられた。

駐在

駐在は勤務や任務遂行のために、その地に一定期間にわたってとどまることを指します。

例文

  • 森田氏が来月からこの島に駐在して、プロジェクトを見守る。
  • 多分、この問題が解決するまで本社の誰かがここに駐在することになるだろう。

配属

仕事の割当を配属といいます。一般的には新入社員の最初の部署決定の意味で用いられます。

例文

  • 新入社員の配属について、人事との話し合いが行われる。
  • 入社前に希望として伝えていた部署への配属が決まってうれしい。

転属

転属とは所属が変わることを指します。一般的に昇格や降格のように身分の変更をともなわない異動の場合に、転属が用いられます。

例文

  • 佐々木さんは営業本部から大阪に異動になるが、転属なので身分は主任のままだそうだ。
  • 今度の異動で転属が決定した田口さんの名刺、肩書きはそのままで発注してください。

従業員を単身赴任や海外赴任させる際は必要な支援をきちんとしよう

赴任は勤務地が変わる場合に、その場所に向かうという行動を指します。赴任と他の言葉を組み合わせてできた言葉、似た言葉、類義語など赴任に関係のある言葉は多いため、使い方には十分な注意が必要です。間違った使い方をしないよう、十分に気をつけなければなりません。赴任や関係する言葉を正しく使えるよう、きちんと学習しましょう。

従業員を単身赴任させる場合が多いことは、日本企業の特徴とされます。単身赴任や海外赴任は、従業員には大きな負担となることを企業や人事担当者は十分に理解しておかなければなりません。必要な支援をきちんと行って従業員の負担軽減を図り、赴任が良い結果に結びつくように努めましょう。


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