- 作成日 : 2022年1月19日
アルバイトの給与計算はどうする?確認事項と注意点
アルバイトの給与計算は、就業規則・給与規程・タイムカードなどの勤務管理書類を確認しながら進めます。時間外労働や休日労働、深夜労働をさせた際は、アルバイトに対しても社員と同じように割増賃金を支払う必要があります。また労働時間は1分単位としなければならず、10分単位や15分単位などでアルバイト給与計算を行うことはできません。今回は、アルバイトの給与計算について、確認すべきことや注意事項を解説します。
目次
アルバイト給与計算時の必須確認事項
多くのアルバイトの給与は、時給で計算されます。働いた時間に時給をかけるだけで簡単に計算できると考えられがちですが、実際は必要事項を確認しながらの計算となります。アルバイトの給与を計算する際に確認しなければならない書類は、次の3点です。
確認事項(1)就業規則
従業員が10人以上の会社は就業規則を作成して、始業時刻や終業時刻、休憩時間、休日など一定の事項を定めたうえ、労働基準監督署に届け出ることが労働基準法で義務づけられています。賃金も絶対的記載内容(必ず定めておかなくてはならない内容)であり、給与計算も就業規則にしたがって行う必要があります。
アルバイトの給与計算をする際には、特に下記点を重点的に確認しておくことが求められます。
- 労働時間や休日の取り扱いといった、働き方に関する規程
- 賃金の取り扱いに関する規程
- 減給をする場合などの、賞罰に関する規程
確認事項(2)給与規程
賃金についてのルールが膨大になった場合に、就業規則本体から切り離して作成したものが賃金規程であり、これも就業規則の一部ということになります。賃金は従業員にとっても会社にとっても非常に重要で詳細な規程が必要であることから、多くの会社が就業規則本体と切り離して、給料計算の基準・方法、割増賃金、差し引かれる金額などについて賃金規程を作成しています。
給与規程がある場合は、就業規則同様に、アルバイト給与計算時には必ず確認することが大切です。
確認事項(3)勤怠管理の各種書類(タイムカードなど)
アルバイトの勤務状況がわからなければ給与計算はできません。タイムカードや勤務実績表・シフト表といった、出勤日・勤務時間を記した書類が必要になります。もちろん紙だけでなく、パソコンの記録も含まれます。
また、源泉所得税の徴収で家族状況を把握しておく必要があり、扶養家族に関する書類の確認も怠らずに行わなくてはなりません。
アルバイトの給与計算に要注意な割増賃金
社員に残業させた場合、休日に出勤させた場合、深夜に及んで労働させた場合には、その分だけ多く給与を払わなくてはなりません。労働基準法に定められているためで、アルバイトに対しても以下の割増賃金を支払う必要があります。
時間外労働の割増賃金
1日につき8時間、1週間につき40時間を超えて労働させた時間に対しては、割増賃金を支払う必要があります。労働基準法で1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間を40時間と定めていることによるもので、これらを超えて労働させた時間が割増賃金の対象となります。したがって、1日の労働時間を7時間としている場合に1時間の残業をさせた場合は、割増賃金を支払う必要はありません。
時間外労働に対する割増賃金の割増率は2割5分で、「通常の賃金×1.25」で計算します。
休日労働(法定休日)の割増賃金
休日に労働させた場合は通常の賃金ではなく、割増した賃金を支払う必要があります。労働基準法には、使用者は労働者に対して1週間に1日以上、4週間に4日以上の休日を与えることが定められています。この休日に労働させると休日労働になり、割増賃金を支払わなくてはなりません。
休日労働に対する割増賃金の割増率は3割5分で、「通常の賃金×1.35」で計算します。
深夜労働の割増賃金
22時(午後10時)から5時(午前5時)までは深夜とされ、この時間帯の労働に対して支払う賃金には割増が必要です。
深夜労働に対する割増賃金の割増率は2割5分で、「通常の賃金×1.25」で計算します。
深夜に時間外労働をさせた場合の給料は、時間外労働の割増賃金と深夜労働の割増賃金、どちらもの割増賃金を適用して計算する必要があります。時間外労働の割増賃金2割5分+深夜労働の割増賃金2割5分=5割で、「通常の賃金×1.5」で計算した給料を支払わなければなりません。
また、休日に深夜にまで労働をさせた場合の給料も、休日労働の割増賃金と深夜労働の割増賃金、どちらもの割増賃金を適用して計算する必要があります。休日労働の割増賃金3割5分+深夜労働の割増賃金2割5分=6割で、「通常の賃金×1.6」で計算した給料を支払わなければなりません。
アルバイトの給与計算方法
アルバイトの給与計算は、以下の流れで行います。
1.勤務時間を集計する
給与計算期間内の労働時間を、次の3つの労働時間ごとに集計します。
- 通常労働
- 時間外労働
- 休日労働
- 深夜労働
2.支給額を決定する
まず集計した労働時間に時給・割増賃金率をかけて、それぞれの支給額を求めます。
計算例:
「時給1,200円・通常労働70時間・時間外労働10時間の場合」
通常労働の支給額 1,200(円)×70(時間)=84,000(円)
時間外労働の支給額 1,200(円)×1.25×10(時間)=15,000(円)
「時給1,200円・通常労働70時間・休日労働10時間の場合」
通常労働の支給額 1,200(円)×70(時間)=84,000(円)
休日労働の支給額 1,200(円)×1.35×10(時間)=16,200(円)
「時給1,200円・通常労働70時間・時間外労働10時間(うち深夜労働5時間)の場合」
通常労働の支給額 1,200(円)×70(時間)=84,000(円)
時間外労働の支給額 1,200(円)×1.25×5(時間)=7,500(円)
深夜時間外労働の支給額 1,200(円)×1.5×5(時間)=9,000(円)
合計して支給額を決定します。
3.控除を行う
アルバイトであっても勤務実態によっては雇用保険や社会保険への加入義務があります。その場合には雇用保険料や社会保険料の控除が必要です。
控除項目 | 内容 | 控除する金額 |
---|---|---|
雇用保険料 | 失業した労働者に対する給付などを行う雇用保険の保険料 | 一般の事業は賃金×0.3% 農林水産・清酒製造および建設の事業は賃金×0.4% |
健康保険料 | 病気やケガで医療機関にかかる際の費用負担軽減などを行う健康保険の保険料 | 標準報酬月額×保険料率×1/2(残りの1/2は会社が負担) |
厚生年金保険料 | 老齢になった際の給付などを行う厚生年金の保険料 | 標準報酬月額×保険料率×1/2(残りの1/2は会社が負担) |
介護保険料 | 介護保険サービスが軽減された負担で利用できる介護保険の保険料 | 標準報酬月額×保険料率×1/2(残りの1/2は会社が負担)※40歳以上65歳未満の場合のみ負担 |
源泉所得税 | 給与所得に対して課せられる所得税 | 源泉所得税額表によって定められている金額 |
住民税 | 給与所得に対して課せられる住民税 | 会社に届く納付書に記載されている金額 |
参考:令和3年度の雇用保険料率について|厚生労働省
参考:令和3年分源泉徴収税額表|国税庁
アルバイトの給与計算は何分から?
アルバイトの給与計算に用いる労働時間は、1分が基本単位です。その日その日に何時間を働いたかは1分単位で記録し、給与計算に反映させる必要があります。10分単位や15分単位として満たない分数を切り捨てることは認められていません。
例:8時から12時5分まで働いた場合の労働時間
(正)4時間5分
(誤)4時間
アルバイトの給与計算を正しく理解しておこう!
給与計算はアルバイトだからといって軽く考えることはせず、正社員などのほかの労働者と同じように間違えないように行わなくてはなりません。就業規則や給与規程、勤怠管理の各種書類(タイムカードなど)を確認しながら、正確に給与を計算する必要があります。
時給×勤務時間がアルバイト給与計算では基本となりますが、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合には、割増賃金の支払いが必要です。労働時間を15分単位や30分単位とし、単位に満たない部分を切り捨てることも認められていません。こういった点に注意して、しっかりとアルバイトの給与計算にあたりましょう。
よくある質問
アルバイトの給与計算方法について教えてください。
時間外労働や休日労働、深夜労働には割増賃金を支払わなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
アルバイトの給与計算は分単位の計算ですか?
はい、15分単位や30分単位で計算してはいけません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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