• 更新日 : 2024年1月26日

所定労働時間とは?法定労働時間との違いやフレックスの場合

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書などで定められた休憩時間を除く始業時刻から終業時刻までの時間のことです。労働基準法に定められた1日8時間、週40時間の法定労働時間の範囲内で、企業などが自由に設定できます。

本記事では、所定労働時間とはどのような労働時間なのかや、法定労働時間との違いなどについて解説していきます。

所定労働時間とは?

所定労働時間とは、法定労働時間の範囲内で企業ごとの就業規則に定められた「始業時間から終業時間までの労働時間から休憩時間を差し引いた時間」のことです。

本項では、所定労働時間と法定労働時間の違いや、その他労働時間との違いから所定労働時間とはどのような労働時間なのかについて解説していきます。

法定労働時間との違い

法定労働時間とは、労働基準法第32条に定められた1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない労働時間の上限のことです。

法定労働時間は労働基準法で定められた労働時間の上限のことであり、所定労働時間は企業などが自由に決められる労働時間になります。

参考:労働基準法第32条|e-GOV 法令検索

法定外労働時間との違い

法定外労働時間とは、1日に8時間、1週間に40時間の法定労働時間を越えた労働時間のことです。

労働基準法では、原則として法定労働時間を越えて従業員を労働させてはいけないことになっています。法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合には、36協定を締結して所轄労働基準監督署⻑へ届出をしなければいけません。

また、法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合は、通常の賃金の25%以上(月60時間超は50%以上)の割増賃金を支払う必要があります。

一方、所定外労働時間とは、所定労働時間を越えた労働時間のことです。たとえば、所定労働時間が1日7時間の会社に勤務する方が、所定労働時間を越えて1時間労働残業したとしても、法定労働時間の1日8時間を超えていないため、36協定の締結や割増賃金の支払いは必要ありません。

月平均所定労働時間との違い

月平均所定労働時間とは、所定労働時間の1年間の合計を12で割ることにより算出される1か月あたりの平均所定労働時間のことです。

月平均所定労働時間は、割増賃金の基礎となる1時間当たりの賃金額を算出するのに使用します。たとえば月給制の場合であれば、各種手当も含めた月給を月平均所定労働時間で割ることで、1時間当たりの賃金額を算出します。

実労働時間との違い

実労働時間とは、使用者の指揮命令のもとで実際に作業に従事している労働時間のことです。所定労働時間は法定労働時間内で企業ごとに定められた労働時間ですが、実労働時間は所定労働時間に時間外労働時間などを含めた実際に作業をしていた時間になります。

拘束時間との違い

拘束時間とは、始業から終業までの実労働時間と休憩時間を合わせた労働時間のことです。たとえば始業時間が9時、終業時間が17時、休憩時間が1時間である所定労働時間が7時間の企業に勤務している方が、18時まで勤務した場合の拘束時間は9時間になります。

所定就業時間との違い

所定就業時間とは、企業ごとに就業規則などに定められた始業時間から終業時間までの労働時間を指します。所定労働時間との違いは、所定労働時間に休憩時間も含まれている時間が所定就業時間になることです。

所定労働時間の計算方法

使用者は、従業員に法定時間外労働、深夜労働、法定休日労働をさせた場合は通常の賃金に上乗せした割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金は、以下の計算式で計算されます。

割増賃金額=1時間あたりの賃金額×法定時間外労働、深夜労働、法定休日労働の時関数×割増率

 

割増率は、法定時間外労働が25%以上(月60時間超は50%以上)、深夜労働は25%以上、法定休日労働は35%以上です。

たとえば月給制の場合は、1時間当たりの賃金額を算出するのに月平均所定労働時間を使用します。

・1時間当たりの賃金額=各種手当を含めた月給÷月平均所定労働時間

この場合の月平均所定労働時間算出のための計算式は、以下になります。

・月平均所定労働時間=(1年の暦日数-年間休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月

所定労働時間の上限

労働基準法第32条では、休憩時間を除いた1日8時間、週40時間を法定労働時間として、それ以上労働させてはいけない時間として定めています。

労働基準法は最低限度の基準を定義している法律のため、法定労働時間を超えるような労働時間を所定労働時間として就業規則などに定めてはいけません。

法定労働時間を所定労働時間が超える場合には36協定が必要

前項の通り、法定労働時間を越える所定労働時間を設定することはできません。法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合や法定休⽇に労働させる場合は、36協定の締結と所轄の労働基準監督署⻑への届出が必要です。

36協定とは労働基準法第36条にもとづく労使協定のことで、時間外労働を⾏う業務の種類や、時間外労働の上限などを決めなければなりません。

法定労働時間における例外について

法定労働時間は原則1日8時間、週40時間までで、法定労働時間を越える時間外労働をさせるには36協定の締結が必要です。しかし、36協定以外にも、法定労働時間における以下の例外が認められています。

  • 特例措置対象事業場

    特例措置対象事業場とは、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のことです。この事業場の法定労働時間は、1日8時間、週44時間です。

  • 変形労働時間制

    一定期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内であれば、特定の日または特定の週に法定労働時間を超えて労働させることができます。

  • フレックスタイム制

    労使協定で決められた清算期間(最長3か月間)内で、1週間の平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲内であれば、法定労働時間を超えて労働させることが可能です。

  • 繁閑の差が激しい一定の業種

    常時30人未満の労働者を使用する小売業、旅館、料理店、飲食店は、労使協定を締結することにより法定労働時間を1日10時間まで延長できます。

  • 裁量労働制

    労働基準法では、事業場外裁量労働制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の3種類の裁量労働制が認められていて、みなし労働時間が適用されます。そのため、実際の労働時間が法定労働時間を超えていたとしても、みなし労働時間だけ働いたことになるのです。

また、以下の労働者については、労働時間の規制が適用除外となるため、法定労働時間の規制が適用除外になります。

  • 農林、畜産、養蚕、水産の事業の労働者
  • 管理監督者
  • 機密の事務を取り扱う労働者
  • 監視または断続的労働に従事する労働者
  • 高度プロフェッショナル制度の対象労働者

参考:労働基準法第41条|e-GOV 法令検索

所定労働時間の明示方法

従業員を採用するときに、始業時刻、終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間などの所定労働時間に関係する事項は、従業員に明示しなければならない労働条件です。本項では、所定労働時間を労働条件通知書や雇用契約書に明示する方法について、解説していきます。

① 労働条件通知書に記載する

労働条件通知書とは、従業員の採用時に労働条件などを記載して従業員に交付する書類です。始業時刻、終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間などの所定労働時間と関係のある項目は、書面で明示しなければなりません。

そのため、労働条件通知書に記載することで、書面で明示したことになります。ただし、労働条件通知書はあくまでも通知する書類のため、後々トラブルになる可能性もあります。

➁ 雇用契約書に記載する

雇用契約書とは、企業と従業員間の雇用契約を証明する書類です。始業時刻、終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間などの所定労働時間と関連する項目は、書面にて明示しなければならない事項です。

雇用契約書にこれらを記載することで、書面にて明示し双方が内容を確認したことになります。

所定労働時間における注意点

所定労働時間は、勤務形態の違いによって注意しなければならないことが異なります。本項では、フレックスタイム制、裁量労働制、パート・アルバイト等の時短勤務の所定労働時間の注意点について解説していきます。

フレックスタイム制の場合での所定労働時間

フレックスタイム制とは、一定の期間(清算期間)における総労働時間の範囲内であれば、従業員が日ごとの始業時間、終業時刻、労働時間を自分で決定できる制度です。フレックスタイム制は、1日の所定労働時間が存在せず、総労働時間が所定労働時間になるため注意が必要です。

裁量労働制の場合での所定労働時間

裁量労働制とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ決められた時間を1日の労働時間としてみなす制度になります。そのため、あらかじめ決められた時間よりも多く働いても、少なく働いてもあらかじめ決められた時間を働いたとみなされるため注意が必要です。

パート・アルバイト等の時短勤務での所定労働時間

労働基準法ではパート・アルバイト等の時短勤務であっても、法定労働時間、休憩時間、割増賃金の扱いは正社員などの通常の労働者と同じ扱いになります。

短時間労働者とは、同一の事業所に勤務している正社員などの通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い労働者のことです。そのため、時短勤務のパート・アルバイト等であれば、短時間労働者であり1週間の所定労働時間が正社員よりも短くなります。

所定労働時間に関わる知識

人事労務担当者が所定労働時間について理解するためには、所定労働時間に関わる知識を知っておく必要があります。本項では、休憩時間、残業時間、有給休暇について解説していきます。

休憩時間

休憩時間は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間与えなければならないと労働基準法に定められています。

参考:労働基準法第34条|e-GOV 法令検索

残業時間

残業時間とは、法定労働時間を超えた労働のことです。法定労働時間を超えた時間外労働をさせるには、36協定の締結と所轄労働基準監督署⻑への届出が必要になります。

時間外労働をさせるには、通常の賃金の25%以上(月60時間超は50%以上)の割増賃金を支払わなければなりません。

参考:労働基準法第36条|e-GOV 法令検索

有給休暇

年次有給休暇とは、一定期間勤続した従業員に対して、有給で付与される休暇のことです。年次有給休暇が付与される要件は、以下の両方とも満たした場合になります。

  • 雇用された日から6か月経過していること
  • 対象期間の全労働日の8割以上出勤したこと

参考:労働基準法第39条|e-GOV 法令検索

所定労働時間を正しく理解することで、勤怠管理や給与計算ミスによるリスクが減る

所定労働時間を正しく理解して、法定労働時間やその他の労働時間との違いを認識しておくことは人事労務担当者にとって大事なことです。労働時間を正しく理解すれば勤怠管理や給与計算を間違えるリスクが減るため、大きなメリットになります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事