• 更新日 : 2024年6月14日

内定率とは?上昇しても抱える課題と、内定辞退の防止方法を解説

内定は、企業と求職者双方にとって非常に重要です。内定の時点で雇用契約は成立し、辞退などの事情がなければ、内定の出た企業で働くことになります。

当記事では、内定率について解説します。内定率の概要や就職率との違い、計算方法などを解説するとともに、内定辞退を防ぐ方策についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

内定率とは?

内定率とは、就職希望者のうち、実際に企業から内定を得た人数の率を表す数値です。内定率については、文部科学省や厚生労働省が公的に調査を行っています。また、その他にも大学や高等学校などの教育機関、民間企業などが独自の調査を行っている場合もあります。

内定率と就職率との違い

就職内定率には、内定率と就職率が含まれます。内定率は内定を得た人数の割合ですが、就職率は、最終的に就職した人数の割合を示す数値です。両者は、内定を得た人数と最終的に就職した人数という計算の基礎となる人数が異なります。

具体的な就職率は、調査時点における就職者数を就職希望者の数で除した数値となります。また、就職率における就職者とは、正社員や正規の職員として雇用された者を指す言葉です。なお、就職者には原則非正規雇用は含まれませんが、1年以上にわたって非正規の職員として雇用された者は含まれます。

就職率における就職希望者は「卒業年度中に就職活動を行い、大学等卒業後速やかに就職することを希望する者」を指します。

引用:文部科学省における大学等卒業者の「就職率」の取扱いについて(通知)|文部科学省

そのため、就職を希望しているとしても、公務員浪人などは含まれないことになります。就職率の計算式は、以下の通りです。

就職者数÷就職希望者数=就職率

内定率の計算方法

内定率は、就職を希望する者のうち、実際に企業の内定を得た人数の割合を示す数値であり、以下の計算式で表されます。

内定者数(内定を得た人数)÷就職希望者×100=内定率

内定の前段階として内々定を就職希望者に対して、通知する企業も多くなっています。内々定率は、上記内定率の式における内定者数を内々定者数に置き換えることで計算可能です。

内定率の推移:過去最高に上昇

25年卒の大学生を対象とした調査によると、内定率は過去最高を記録しています。内定率の推移とともに傾向を見ていきましょう。

大学の就職内定率

25年卒の大学生の内定率は、選考解禁が6月となった2017年以降、最高を記録しています。株式会社リクルートの研究機関「就職みらい研究所」の調査によれば、2024年6月1日時点における内定率は82.4%です。同時期における24年卒の調査よりも2.8%、23年卒よりも9.3%増となる結果です。

文部科学省の調査を見ても、コロナ禍の影響により落ち込んでいた21年卒の就職内定率が、22年卒、23年卒、24年卒で右肩上がりに上昇しています。具体的な数字としては、10月調査において21年卒69.8%、22年卒71.2%、23年卒74.1%、24年卒では74.8%となっています。

内定率の上昇は、業種を問わない人手不足が背景に存在します。人手不足に危機感を抱く企業間で発生する人材獲得競争の激化が、内定率を押し上げる結果につながっています。また、就職活動の早期化も上昇の要因のひとつです。リクルートの調査結果は、これらの傾向を色濃く反映したものといえるでしょう。

参考:
就職プロセス調査(2025年卒) 「2024年6月1日時点 内定状況」|株式会社リクルート
令和5年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査結果(12月1日現在)|文部科学省

高等学校の就職内定率

文部科学省の調査によれば、21年卒の就職内定率はコロナ禍の影響を受けて前年度の80.4%から75.1%と大きな減少が見られました。しかし、22年卒が76.1%、23年卒が77.2%と順調な回復傾向が見られます。

また、香川県では2024年春に県内の公立高等学校を卒業した就職希望者の就職内定率が、99.8%と前年比0.2%増となり、過去最高を記録しています。このことから、高等学校における就職内定率も大学と同様の傾向があるといえるでしょう。急速な少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少は、学歴を問わない企業間の人材獲得競争の激化につながっています。

参考:
令和6年3月高等学校卒業予定者の就職内定状況(令和5年10月末現在)に関する調査について|文部科学省
今春卒業の公立高校生の就職内定率99.8%で過去最高に|NHK

海外から見る日本の内定率

日本の新卒一括採用は、世界的に見れば異端な採用方法です。たとえば、アメリカやドイツ、フランスなどの欧米諸国では、インターンを経験するのが一般的であり、直接学生に企業がオファーをする場合もあります。フランスでは、経験を積んで正社員となることが多く、新卒者のうち、約7割が有期雇用や派遣といった非正規雇用です。そのため、日本のような内定率の計算方法では、実情は反映できないでしょう。

日本と同じアジアに目を向けても、日本より遥かに多い新卒者を抱える中国では当然内定率も低くなります。韓国では兵役という日本にはない特有の事情から、数年遅れであっても新卒扱いとなります。また、企業規模による待遇差の大きい韓国では就職浪人の数も多く、若年就業率は日本よりも低い数字です。このような新卒者を取り巻く環境の違いにより、海外から見ると、日本の内定率は非常に特殊なものとして映っています。

参考:世界の就活事情|日本労働組合総連合会

内定率の上昇が抱える課題

内定率の上昇は、経済成長や経済回復の兆しと見ることが可能です。内定率の上昇は、企業によって新卒者が活発に採用されていることを示すため、基本的にはポジティブに受け止められます。しかし、問題点も存在するため、学生側と企業側に分けて解説を行います。

学生側

内定率の上昇は、人手不足による人材への需要の高まりを示しています。そのため、学生側にとっては選択肢となる企業が増えるだけでなく、好待遇も期待できるポジティブな要素です。初任給の引き上げや福利厚生の充実などは、その最たるものでしょう。

内定率が上昇すれば、内定を得やすくなり、就職も容易となります。そのため、一見すると問題はないように思えるかも知れません。しかし、容易に就職できることは、安易な就職先の決定にもつながりかねません。安易に就職先を選べば企業とのミスマッチも起こりやすくなってしまいます。内定の獲得が容易であることから、安易に就職先を選んでしまいがちになることは、内定率上昇の問題といえます。

内定率が上昇している状況では、選択肢の幅が広がり学生は企業を選ぶことが可能です。しかし、全ての企業を選べるわけではありません。従業員数の多い、いわゆる大企業であれば内定率が上昇している状況であっても、内定を得ることは容易ではありません。内定を得やすいからと大企業に固執してしまう学生が出ることも問題となります。

企業側

企業側にとって内定率の上昇は、ただでさえ厳しい人材獲得競争がより激化することを意味します。少子高齢化の進展によって、業種や規模を問わず人手不足の解消が喫緊の課題となっています。このような状況下で、より厳しい人材獲得競争に晒されることは、企業にとって望ましいことはありません。規模の小さな企業であれば、好待遇で採用することも難しく、新卒採用は非常に困難となります。

また、大企業であっても望む人材を獲得できる可能性が低くなってしまうため、内定率の上昇は企業規模を問わない大きな影響を与えています。

内定辞退を防止するための取り組み

内定辞退は、より志望度の高い企業から内定を得たことを理由として行われることが多くなっています。他にも介護や病気といった家庭の事情や、資格取得、大学院進学などが辞退の理由として挙げられます。

内定辞退される企業には、次のような特徴が存在します。

  • 給与をはじめとした待遇が悪い
  • 内定者とのコミュニケーションが取れていない
  • キャリアアップにつながらない
  • 柔軟な働き方ができない
  • 企業理念に共感できない

内定辞退には、企業側の努力で防ぎようのない理由も多いです。しかし、企業側で対処可能な理由も存在します。待遇面の改善を図るとともに、以下で紹介するような取り組みを実施することで、内定辞退を防いでください。

コミュニケーションを強化する

内定者とのコミュニケーションを取ることで、内定辞退を防止可能です。内定者と密なコミュニケーションを取ることで、企業がいかに内定者に期待しているか伝えることができます。悩んでいるようであれば、メンターなどが積極的に相談に乗るのも効果的です。

内定を出した後は、一切コミュニケーションを取らないような企業に対しては、内定者も就業意欲が薄れてしまいます。内定者に「自分は期待されていないのではないか」と不安を感じさせる企業にならないよう注意してください。

コミュニケーションの一環として、選考過程における体験入社などの機会を設けることも内定辞退を防ぐために効果的です。このような機会を設ければ、入社後のミスマッチの発生を防止する効果も期待できます。

自己成長できる機会を設ける

「この企業で働いても自分のキャリアアップにつながらない」と、内定者が感じれば内定辞退される可能性も高まってしまいます。そのため、キャリアップに関する相談窓口を設置したり、研修内容を充実させたりすることで、「この企業であればキャリアップできる」と、感じさせることが重要です。自己成長の場を設けてくれる企業であれば、入社後のモチベーションも高まり、生産性の向上も期待できます。

労働条件に柔軟性をもたせる

政府が進める働き方改革を受けて、時短勤務や時差出勤、リモートワークなどの多様な働き方が広まっています。家庭と仕事の両立を図れるかどうかは、現代の企業選びにおいて非常に重要な要素のひとつです。

介護を行う関係で地元から離れられず、やむを得ず内定辞退に至る場合もあります。しかし、リモートワークであれば勤務可能な場合もあります。そのような場合に、柔軟な働き方を提示すれば、内定辞退を防ぐことも可能です。また、ワークライフバランスの実現が重要視される昨今にあって、柔軟な働き方の提示は企業の魅力を高めることにもつながります。入社後も、育児や介護といった自身のライフステージに合わせた働き方が可能となるため、従業員満足度も高くなるでしょう。

採用した理由を伝える

内定者は、内定先の企業で自分の力を発揮したいと考えています。しかし、なぜ自分が採用されたのか理由がわからなければ、自己の強みも見出せず、働くことに不安を覚えてしまいかねません。なぜ採用に至ったのかを丁寧に説明することで、企業側の期待を伝えるだけでなく、内定者自身も自己の強みを認識できるようになります。内定者の不安解消や、入社後の人材活用のためにも、しっかりと採用理由を伝えることが重要です。

企業文化への理解を促す

有名な企業に就職したいと考える学生は多くなっています。そのため、より志望度の高い大企業から内定を得られれば、既に内定を得ている企業へ辞退を伝えることも珍しくありません。

このような場合には、「相手の方が大企業だから」と諦めることも多くなっています。確かに企業規模や知名度の差は、一朝一夕で埋められるものではなく、短期間で対処することは困難です。しかし、自社の魅力を伝え企業文化への理解を促すことで、内定者を翻意させることも不可能ではありません。企業文化を理解し、理念に共感できるのであれば、その企業は内定者にとって、どんな大企業よりも魅力的に映ります。

内定率上昇への対策が急務

内定率の上昇は、学生側にとっては選択肢が豊富となり、好待遇が期待できるなど恩恵面が大きくなります。しかし、企業側にとっては、人材獲得が困難になるという側面をもっています。
また、内定率の高まりを受けた厳しい人材獲得競争を勝ち抜いて、貴重な人材を獲得できたとしても、内定を辞退されては元も子もありません。そのような事態に陥らないようにするためには、内定辞退を防ぐ取り組みを実施することが大切です。当記事を参考にして、内定辞退を防ぐ取り組みを実施しましょう。


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