- 更新日 : 2021年11月29日
社会保険の加入要件
社会保険は、国や地方公共団体などによって運営がなされており、国民皆保険体制のもと、一定要件を満たした会社や個人は加入する義務があります。
社会保険の加入要件には、例外的なものまで含めるとじつにさまざまな種類があります。
国民年金の加入要件
国民年金はすべての国民、つまり、自営業者や専業主婦はもちろんのこと、会社員も加入対象となっている基礎年金のことです。国民年金と社会保険を別個のものと考える方もおられますが、それには少しややこしい理由があります。
というのも、現在「社会保険」という言葉は二通りの意味で用いられており、よく用いられているのは「会社員が加入する保険・年金」という意味合いでの「社会保険」で、この意味で言うと国民年金は別個のものということになります。
もううひとつは「広く公的な保険・年金全般」を表す「社会保険」です。このページで「社会保険」と言う場合はこちらの意味で用いることとします。このような意味で捉えると、国民年金も社会保険の一種ということになるのです。国民年金の被保険者は「強制加入被保険者」と「任意加入被保険者」に区分されます。
強制加入被保険者
1.第一号被保険者(例:自営業者、無職者)
第一号被保険者は、以下の要件のいずれにも該当していなければなりません。
・居住地が日本国内であること
・20歳以上60歳未満であること
・老齢給付等を受ける資格をもたないこと
・第2号被保険者・第3号被保険者ではないこと
2.第2号被保険者(例:会社員や公務員)
以下の要件をすべて満たす場合は第2号被保険者に該当します。
・被用者年金各法(厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法の4法律)の被保険者、組合員又は加入者であること
・65歳以上の場合には、老齢年金の受給権をもたないこと
3.第3号被保険者(例:会社員、公務員の配偶者)
第3号被保険者は、以下の要件のいずれにも該当していなければなりません。
・20歳以上60歳未満であること
・第2号被保険者の配偶者であって、主として第2号被保険者の収入により生計を維持されていること
任意加入被保険者
強制加入被保険者に該当しない場合でも以下のいずれかに該当し、本人が希望した場合は、任意加入することができます。
・20歳以上60歳未満で、老齢給付等を受ける資格を有することにより国民年金の第1号被保険者から除外される場合(年金額を増やすために任意加入することができる)
・60歳以上65歳未満で、年金の払込期間が足りていないため受給資格のない者や、受給資格はあるものの、上乗せした年金額を受け取りたい者
・20歳以上65歳未満で、海外に居住地を置く日本人(将来は日本で年金受給を希望する場合に任意加入する)
厚生年金保険の加入要件
国民年金がすべての国民が対象であるのに対し、厚生年金保険は会社員が加入する「保険」です。保険の加入者である会社員本人や、その家族の老齢、障害、死亡が発生した場合に保険金が給付されます。
厚生年金保険の加入の時期は、原則として健康保険の加入時です。この時、給与から天引きされる保険料の基礎となる等級の設定手続きも同時に行われます。
当然被保険者
厚生年金保険の適用事業所に使用される70歳未満の人は、本人の意思に関係なく強制的に厚生年金の被保険者となります。
なお、厚生年金の適用事業所に使用されるようになると、国民年金の被保険者としては、第1号被保険者から第2号被保険者に変わることになります。
適用除外
次のいずれかに該当する場合は、厚生年金保険の被保険者には該当しません。また、所在地が一定しない事業所に雇われる労働者は、たとえ雇用期間が長かったとしても、「当然被保険者」扱いにはなりません。
1.共済組合の組合員・私立学校教職員共済制度の加入者
2.日雇い労働者
ただし1ヶ月を超えて継続雇用されることが決まった場合は、1ヶ月を超えた日から「当然被保険者」となります。
3.2ヶ月以内の期間で雇われる労働者
ただし所定の期間を超えて継続雇用されることが決まった場合は、所定の期間を超えた日から「当然被保険者」扱いとなります。
4.4ヶ月以内の期間限定で働く季節的業務の労働者
ただし雇用初日から換算して4ヶ月を超えて継続雇用される予定の労働者は、雇用初日から「当然被保険者」扱いとなります。
5.臨時的事業(博覧会、展覧会など)の事業所に6月以内の期間に限って雇われる労働者
ただし、雇用初日から換算して6ヶ月を超えて継続雇用される予定の労働者は、雇用初日から「当然被保険者」扱いとなります。
70歳以上被用者
当然被保険者は、通常70歳になると資格を喪失します。しかし、以下のいずれにも当てはまる「70歳以上被用者」には、引き続き被保険者としての扱いが適用されます。
1.70歳以上の者
2.当然被保険者の該当要件を満たしている者
3.以前に厚生年金保険の被保険者であった者
任意単独被保険者
厚生年金保険の適用事業所ではない職場で働く者であっても、希望するなら任意単独被保険者となることができます。ただし、事業主の同意が必要で、年齢も70歳未満と決められています。
高齢任意加入被保険者
当然被保険者が70歳となり、保険資格を失ったにもかかわらず、保険の受給資格期間が不足していたため老齢年金を受給できない場合には、「高齢任意加入被保険者」として足りない受給資格期間分だけ保険加入することができます。
健康保険の加入要件
健康保険の加入は厚生年金保険とセットで行われるため、加入要件の内容も厚生年金保険と類似している点があります。適用除外については厚生年金保険と要件は同じです。
一般被保険者
健康保険の適用事業所に雇用される社長や役員、従業員に加え、パート・アルバイトなどの短時間就労者も一定の条件を満たせば該当します。
任意継続被保険者
適用事業所を退職した後も、以下の要件いずれにも該当する場合には、本人が希望すれば被保険者になることができます。
1.適用事業所を退職し、あるいは適用除外者となり、保険資格を失った者であること
2.中断のない2か月間の保険加入の後、資格を喪失したこと
3.船員保険、あるいは後期高齢者医療保険に加入していないこと
4.資格を失ってから20日以内に被保険者の継続希望を申し出たこと
5.初回の保険料納付が期日内に終了したこと
まとめ
社会保険の加入要件は非常に幅広く、その内容も多岐にわたります。適用事業所以外の職場で働く人や受給資格期間を満たさない場合にも、特例として加入できる制度が設けられているなど、手厚い配慮がなされていることに気づくでしょう。
これは、国民皆保険を前提に、すべての国民の生活を保障するという国の方針によるものです。社会保険の加入に関することを個人で判断することは難しく、経営者であれば、社会保険労務士へ相談することも良いでしょう。
社会保険料削減についてのコンサルティング費用が発生するかもしれませんが、社会保険の加入を逃れていると、強制加入をさせられます。社会保険の強制加入をさせられると、過去2年間に遡って社会保険料を支払う必要性が出てきます。そうならないためにも、社会保険の加入条件をよく知り、早めに対応しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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