- 更新日 : 2026年6月2日
扶養控除の廃止はいつから?高校生の子どもを持つ親の扶養控除の縮小案とは?
高校生の扶養控除縮小は、令和8年度税制改正大綱(2025年12月)に盛り込まれず、現時点で廃止・縮小の実施時期は未定です。
- 令和8年度大綱で縮小は見送り、現行38万円を維持
- 扶養親族の所得要件は123万円以下→136万円以下に拡大
- 縮小案は将来の改正で再び議論となる可能性あり
ただし今後の税制改正で再び検討される可能性があります。
2024年10月からの児童手当拡充に伴い、長らく議論が続いていた「高校生(16歳〜18歳)の扶養控除の縮小・廃止」。2025年12月26日に公表された令和8年度税制改正大綱では、高校生の特定扶養控除の縮小は盛り込まれませんでした。
一方で、扶養親族・配偶者の合計所得金額要件の引き上げ(58万円以下→62万円以下、給与収入のみの場合:123万円以下→136万円以下)など、年末調整や給与計算実務に直結する改正が含まれています。
本記事では、高校生の扶養控除縮小をめぐる議論の経緯と、令和8年度税制改正大綱で実際に決定した関連改正の内容、および企業が備えるべきポイントをわかりやすく解説します。
※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正大綱をもとにしています。税制改正大綱は自民党が毎年12月頃に発表する改正のドラフトであり、国会での審議を経て翌年春頃に法律として制定されます。最終的に制定された法律の内容と異なる場合があります。
目次
扶養控除の廃止・縮小はいつから?
令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日公表)において、高校生年代(16〜18歳)の特定扶養控除の縮小は盛り込まれませんでした。当初は2026年(令和8年)からの縮小が検討されていましたが、政治的な経緯もあり今回の大綱では見送られた形です。現時点では縮小の実施時期は未定です。
以下では、その経緯を整理します。
「縮減の指示していない」との見方
2025年12月6日、高市早苗首相は、政府・与党が2026年度税制改正で高校生の扶養控除を縮小する方向で検討に入ったとの一部報道を明確に否定しました。
「私が縮減に関する指示を出したことはない。与党税制調査会で本件について決定した事実もない」
この発言に加え、日本維新の会や国民民主党などの野党側も「明確に反対」「高校無償化の財源として控除を縮小したら意味がない」と強く反発しており、当初想定されていたスケジュール通りに縮小が進むかは不透明な状況となっています。
参照:高校生の扶養控除、高市首相「縮減、指示していない」|日本経済新聞
当初検討されていた「2026年開始」のスケジュール
高市首相の発言以前に、財務省や税制調査会で議論されていた当初のスケジュール案は以下のようなものでした。
これは、2024年10月に開始された「高校生年代への児童手当支給」が1年を通して行われるようになるタイミングを見計らい、税制面での調整を行おうとするものです。
- 2024年〜2025年: 与党税制改正大綱にて縮小の方針を決定
- 2026年(令和8年)1月〜: 所得税の扶養控除縮小を開始
- 2027年(令和9年)6月〜: 住民税の扶養控除縮小を開始
このスケジュールは、児童手当という「給付」の拡大と、扶養控除という「減税」の縮小をセットで行うことで、国の財政負担をコントロールしようとする意図に基づいたものでした。
税制改正は通常、政府の方針と与党(自民党・公明党)の税制調査会の議論を経て決定されます。内閣のトップである首相が「指示していない」と公言したことは、官僚主導で進められてきた既定路線に対し、ブレーキをかけたことを意味します。
また、日本維新の会や国民民主党といった野党勢力も「高校無償化の財源として扶養控除を縮小しては本末転倒である」として強く反対し、結果として、2025年12月26日に公表された令和8年度税制改正大綱には高校生の特定扶養控除の縮小は含まれませんでした。
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なぜ高校生の扶養控除の縮小が検討されているのか?
なぜ長年にわたり「高校生の扶養控除の廃止や縮小」が議論されているのでしょうか。その背景には、子育て支援策を拡充する際に必ず直面する「政策を実行するための安定した財源をどのように確保するか」ということにあります。
「控除から給付へ」という政策転換の考え方
政府が扶養控除の見直しを進めようとする最大の理由は、2024年10月から児童手当の支給対象が「18歳到達後の最初の年度末まで(高校生年代)」に延長されたことにあります。
これまで、日本の税制と社会保障制度では、以下のような役割分担がなされていました。
- 中学生まで: 児童手当(現金給付)を支給する代わりに、年少扶養控除(税金の優遇)は廃止する。
- 高校生年代: 児童手当は支給しない代わりに、特定扶養控除(税金の優遇)を手厚く設ける。
今回、高校生にも児童手当を支給することになったため、政府内には「中学生までと同じ扱いにするべきだ」という考え方が生じました。つまり、「手当という現金を給付するのだから、その代わりとして税金の優遇措置である控除は縮小してもよいのではないか」という理屈です。
これは、「控除から給付へ」という、民主党政権時代から続く子育て支援政策の大きな流れの中に位置づけられます。
「支援の重複」と財源確保の論理
また、財務省などが懸念しているのが、いわゆる「支援の重複」の問題です。
現状のまま児童手当だけを拡充すると、高校生年代の子を持つ家庭は「月額1万円以上の現金給付」と「38万円の所得控除による減税メリット」の両方を満額受け取ることになります。
これを政府側は「二重の支援を受けている状態」と捉え、他の年齢層や子を持たない世帯との公平性の観点から調整が必要だと主張しています。
また、高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族控除の上乗せ部分(国税25万円・地方税12万円)の復元により、高校生の児童手当と合わせて子育て世帯への実質的な支援を拡充し、所得階層間の支援の平準化を図る狙いもあります。
さらに、 少子化対策のために児童手当を拡充するには、毎年巨額の予算が必要です。その財源を赤字国債(借金)のみに頼ることは財政規律上難しいため、「扶養控除を縮小することで増える税収」を、児童手当の財源の一部に充てたいという狙いがあります。
(参考)扶養が縮小された場合の影響やシミュレーション
高校生の特定扶養控除の縮小は令和8年度大綱には含まれませんでしたが、今後の議論に備えて、かつて検討されていた案の内容を参考として整理します。
検討されていた縮小案の内容
現状の有力な縮小案は、所得税の控除額を現在の38万円から「25万円」程度まで引き下げるというものです。
| 税金の種類 | 現行の控除額 (2025年まで) |
かつて検討されていた 変更案 |
変更による影響 |
|---|---|---|---|
| 所得税の控除 | 38万円 | 25万円 (または12万円等の案も) |
課税所得が13万円増え、 その分所得税が増加 |
| 住民税の控除 | 33万円 | 12万円 程度への 縮小を検討 |
課税所得が21万円増え、 その分住民税が増加 |
これまで高校生がいる家庭は、親の所得から38万円を差し引いて税金を計算できましたが、この幅が小さくなることで、課税対象となる所得が増え、結果として税額が上がることになります。
なぜ所得税控除は38万円→25万円なのか
所得税の控除25万円や住民税の控除12万円は、過去に「15歳以下の年少扶養控除(38万円)」が廃止された際、実は住民税の非課税限度額の算定などに必要な「基礎的な控除」として、名目上の計算枠組みが残されました。
今回の改正案でも、児童手当とのバランスを計算し、「手当の支給額(年12万円)に見合う分だけ控除を減らす」という計算式に基づいて算出された数字と考えられます。
手取り額はどう変化するのか
「児童手当でもらえる現金」と「控除縮小で増える税金」を差し引きすると、世帯の手取りはどうなるのでしょうか。
年収600万円〜800万円世帯の場合:手取り増
児童手当の支給額(月1万円×12カ月=12万円)の方が、増える税金よりも多いため、トータルでは「プラス(手取り増)」になる計算です。
- 増える収入: 児童手当 12万円
- 増える税金: 数万円程度(所得税率10%〜23% + 住民税10%)
- 結果: 差し引きで6.8万円~8.6万円程度のプラス
年収1000万円超の世帯の場合:手取り減のリスク
年収が1000万円を超える世帯ではメリットが少なくなります。日本の所得税は「累進課税」であり、所得が高いほど税率が高くなる仕組みだからです。
- 増える収入: 児童手当 12万円(所得制限撤廃により支給)
- 増える税金: 6万円〜8万円程度(所得税率33%〜 + 住民税10%)
- 結果: 所得が増えるにしたがって、メリットが減少(3.9万円~5.5万円程度)
特に年収1200万円を超えるような層では、税率が高いため、その結果、児童手当をもらっても相殺され、メリットが少なくなります。
企業の給与計算・年末調整担当者が押さえるべきポイント
扶養控除の行方が不透明な中で、企業の給与計算や年末調整を担当する方は、具体的にどのような準備をしておくべきでしょうか。
1. 決定事項と検討事項を区別して情報収集する
もっとも重要なのは、「決定事項」と「検討事項」を混同しないことです。
- 決定事項: 扶養親族・配偶者の所得要件を62万円以下(給与収入のみ:136万円以下)へ引き上げ(所得税:令和8年分以後、住民税:令和9年度分以後)
- 未定事項: 高校生(16〜18歳)の特定扶養控除の縮小・廃止の実施時期・内容
「2026年から廃止されるらしい」といった不確定な情報で従業員にアナウンスを行うと、混乱を招きます。「現時点では政府内で議論中であり、決定ではない」というスタンスを保ちましょう。
2. 「扶養控除等(異動)申告書」のチェック体制
令和8年度税制改正大綱で確定した「所得要件の引き上げ」が、実務でもっとも影響を受けるのは「年末調整」です。
年末調整で従業員から提出される「扶養控除等(異動)申告書」の「控除対象扶養親族」の区分や記載ルールについて、所得要件の変更(給与収入換算で123万円以下→136万円以下)が反映された最新の様式・記入例を確認しておきましょう。
国税庁から新しい様式が発表された際には、速やかに社内のマニュアルを更新し、従業員向けの記入例を作成するなどの準備が必要になります。
3. 給与計算システムのアップデート確認
多くの企業が導入している給与計算ソフトは、税制改正に合わせて自動でアップデートされるケースが一般的です。 しかし、自社独自のExcelで計算している場合や、オンプレミス型(インストール型)の古いソフトを使っている場合は、手動での計算式変更や更新プログラムの適用が必要になります。改正が決定した段階で、自社のシステムがいつ、どのように対応するのかをベンダーに確認しておきましょう。
4. 従業員からの問い合わせ対応
年末調整の時期になると、ニュースを見た従業員から「うちの手取りは減るのか?」「申告書の書き方は変わるのか?」といった質問が寄せられる可能性があります。
高校生の扶養控除の縮小については「令和8年度大綱には含まれておらず、現時点では未定」と案内しましょう。一方、扶養親族の所得要件(収入換算:136万円以下へ引き上げ)については決定事項として正確に伝えることが重要です。
令和8年度税制改正大綱の結果と今後の見通し
2025年12月26日に公表された令和8年度税制改正大綱において、高校生(16〜18歳)の特定扶養控除の縮小・廃止は盛り込まれませんでした。児童手当との重複解消や財源確保という議論は続いており、今後の税制改正大綱で再び俎上に上がる可能性は残っています。
一方、確定した改正として、扶養親族・配偶者の合計所得金額要件が62万円以下(給与収入のみ:136万円以下)へ引き上げられます。企業担当者は所得要件の変更を年末調整・給与計算システムに反映する準備を進めてください。
個人の方は、扶養に入るかどうかの収入基準が変わる点を踏まえ、扶養関係や手取り額の見直しを行うことをおすすめします。今後の制度改正の動向についても引き続き注視してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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