- 更新日 : 2026年8月4日
社会保険料の変更手続きはどうする?随時改定・月額変更届の条件と流れを解説
社会保険料の変更手続きは、毎年7月の「定時決定」と固定的賃金変動時の「随時改定」の2種類です。
- 変更反映は毎年9月、天引きは10月給与から
- 随時改定は3条件すべて満たす場合のみ対象
- 適用拡大で加入対象者の定期見直しが必要
Q. 随時改定が必要になる条件は?
A. 固定的賃金の変動があり、変動後3か月の支払基礎日数が各17日以上、かつ標準報酬月額が2等級以上変動した場合です。
社会保険料の変更手続きには、主に毎年7月に行う「定時決定」と、固定的賃金の変動時に行う「随時改定」の2種類があります。いずれも標準報酬月額をもとに保険料を見直す仕組みですが、対象者や届出のタイミングが異なります。この記事では、社会保険料が変わる時期から月額変更届の提出手順、見落としがちな加入条件の改正まで、担当者が押さえるべき実務ポイントを網羅的に解説します。
社会保険料が変わるタイミングはいつ?
社会保険料の変更時期は毎年9月です。変更の手続き自体は、毎年7月に行います。
社会保険料は、毎月の給与額ではなく「標準報酬月額」をもとに算出されます。標準報酬月額とは、給与そのものではなく、従業員が受け取る報酬を一定の等級に区分したものです。毎年7月に、この標準報酬月額を確定するための「算定基礎届」を年金事務所に提出し、算出された平均額をもとに新たな標準報酬月額が決定されます。その結果が9月からの社会保険料に反映されます。
実務上の注意点として、給与から天引きする社会保険料は「支払った月の前月分」という仕組みになっています。たとえば9月分の社会保険料は10月支払いの給与から控除します。つまり、標準報酬月額の見直しが9月に適用されたとしても、実際に変更後の金額を天引きするのは10月分の給与からです。この時差を理解しておくと、給与計算の処理ミスを防げます。
算定基礎届の対象は、原則として社会保険に加入しているすべての従業員です。この年1回の定例手続きを「定時決定」と呼びます。ただし、昇給や降格などにより標準報酬月額が2等級以上変動した場合には、定時決定を待たずに随時で保険料を見直す「随時改定」という手続きが必要になります。
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社会保険料の変更に関わる随時改定とは?
随時改定とは、固定的賃金の変動を起因として、定時決定の時期を待たずに標準報酬月額を改定する手続きです。その際に提出する書類を月額変更届といいます。
随時改定の対象となるのは、以下の3つの条件をすべて満たす場合です。
- 基本給・家族手当・通勤手当など、支給率や支給額が固定されている「固定的賃金」に変動がある
- 変動月から起算した3か月間の支払基礎日数がいずれも17日以上ある
- 変動後3か月の報酬平均に対応する標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額との間に2等級以上の差がある
なお、賞与の支給が年3回以下の場合は、標準報酬月額とは別に「標準賞与額」として毎月の保険料とは区別して計算・納付します。一方、年4回以上支給される賞与は標準報酬月額の算定対象に含まれるため注意が必要です。
随時改定と定時決定の違い
随時改定と定時決定は、目的・対象・タイミングのすべてが異なる手続きです。
| 比較項目 | 定時決定 | 随時改定 |
|---|---|---|
| 目的 | 9月〜翌8月の1年間の社会保険料を決定する | 固定的賃金の変動に伴い、保険料をその都度改定する |
| 対象 | 7月1日において在籍する社会保険加入者全員 | 随時改定の3条件に該当する従業員 |
| タイミング | 毎年7月1日〜10日に算定基礎届を提出 | 条件該当後に月額変更届を速やかに提出 |
| 届出書類 | 算定基礎届 | 月額変更届(健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届 ) |
随時改定の対象となる従業員
随時改定の対象は、前述の3条件を全員満たしている従業員に限られます。条件の細部を正しく理解することが、対象者の漏れや誤りを防ぐ鍵となります。
固定的賃金の変動
随時改定の起点となる「固定的賃金の変動」とは、毎月一定額が支払われる賃金の増減を指します。固定的賃金の変動に含まれる主なケースは以下のとおりです。
- 昇給または降給(基本給の改定)
- 降格に伴う役職手当の変更
- 給与体系の変更(日給制から月給制への転換など)
- 時間給・歩合給の単価や歩合率の変更
- 住宅手当・役職手当・通勤手当など、毎月定額で支給される手当の新設・廃止・増減
一方、残業代や歩合の実績部分など、稼働状況によって金額が変わる「非固定的賃金」が増減しても、随時改定の対象にはなりません。たとえば基本給は変わらず残業代が増加して総支給額が上がったケースでは、固定的賃金の変動がないため随時改定は不要です。
テレワーク関連の手当については判断が分かれます。パソコン等の実費相当として支払われる在宅勤務手当は固定的賃金とみなされませんが、「月額1万円」のように定額で支払われるものは固定的賃金の変動に該当します。手当の実態に応じて個別に判断することが重要です。
参考:標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集|日本年金機構
支払基礎日数
支払基礎日数とは、給与計算の対象となった日数のことです。月給制・週給制の従業員は暦日数で、日給制・時給制の従業員は実際の出勤日数で計算します。
随時改定では、変動月から起算した3か月のうち、いずれかの月の支払基礎日数が17日未満の場合、随時改定は行いません。3か月全てで17日以上であることが必要です。
パートタイムなどの短時間労働者については、支払基礎日数の基準が異なります。以下の要件をすべて満たす特定適用事業所に勤務する短時間労働者は、支払基礎日数が11日以上であれば随時改定の判定対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金の月額が88,000円以上
- 学生でないこと
- 2か月を超える雇用が見込まれること(2022年10月以降の改正後の要件)
なお、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上となる短時間労働者は、特定適用事業所かどうかにかかわらず当然に社会保険の被保険者となります。この場合の支払基礎日数の基準は原則どおり17日以上です。
参考:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
8月・9月に随時改定が予定されている従業員の扱い
毎年7月の算定基礎届提出時点で、8月または9月に随時改定が予定されている従業員については、定時決定の対象から除外されます。月額変更届を提出する場合、算定基礎届は不要です。7月の算定基礎届の作業前に、随時改定予定者の有無を確認しておくと手続きが効率化されます。
参考:8月、9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出について|日本年金機構
随時改定の有効期間
随時改定で改定された標準報酬月額は、次の随時改定または定時決定で見直されない限り、改定月から当年8月まで適用されます。ただし、7月から12月に随時改定を行った場合は、翌年8月まで継続して適用されます。
随時改定をしなかった場合
随時改定を行わないと、正しい保険料額を納めない状態が続き、過払いまたは不足分の精算が必要になります。不足分については延滞金が課されるリスクがあります。さらに、虚偽の随時改定を申告した場合は、健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条に基づき、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。適切なタイミングでの届出が、企業としてのコンプライアンス上も重要です。
社会保険料の変更手続き(月額変更届)の流れは?
社会保険料の随時改定は、固定的賃金の変動が確認された後、条件を満たすことが確定した時点で速やかに月額変更届を提出します。原則として添付書類は不要です。
STEP1:固定的賃金の変動を確認する
毎月の給与計算時に、基本給・各種手当など固定的賃金に変動がないかを確認します。昇給・降格のほか、通勤手当の改定や在宅勤務手当の新設・廃止なども対象です。変動があった月を起点に、随時改定の要否を判定します。
STEP2:変動後3か月間の標準報酬月額を確認する
固定的賃金が変動した月から3か月分の報酬の平均額を算出し、対応する標準報酬月額の等級を確認します。変動前の等級との差が2等級以上あれば、随時改定の手続きを進めます。2等級に満たない場合は、随時改定は不要です。
STEP3:月額変更届に必要事項を記入する
日本年金機構のウェブサイトから月額変更届の様式(健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届)をダウンロードし、必要事項を記入します。届出には、対象となる3か月分の支給総額を記入しますが、基本給だけでなく通勤手当や残業手当も含めた総支給額(固定的賃金・非固定的賃金の合計)を記載します。
STEP4:管轄の年金事務所に届出を提出する
作成した月額変更届は、郵送・窓口への持参・電子申請(e-Gov)のいずれかの方法で、管轄の年金事務所または事務センターに提出します。電子申請を活用することで、担当者の移動や郵送にかかる手間を削減できます。
STEP5:年金事務所からの通知書で新等級を確認する
届出後、年金事務所から「被保険者標準報酬改定通知書」が事業主宛に届きます。通知書に記載された標準報酬月額をもとに、新たな控除額を計算します。健康保険料は都道府県によって異なるため、協会けんぽ(全国健康保険協会)の保険料額表で確認しましょう。健康保険組合や厚生年金基金に加入している場合は、各組合・基金に確認します。
STEP6:新しい社会保険料を給与計算に反映し、従業員に通知する
改定後の社会保険料を給与計算に適用したうえで、等級変更の事実を従業員に通知します。給与明細書の備考欄に「標準報酬月額が変更になりました」と記載するなど、従業員が確認しやすい形で案内するとトラブルを防げます。
社会保険の適用拡大への対応も忘れずに
2022年10月および2024年10月の段階的な法改正により、社会保険の適用義務の対象範囲が拡大されました。
| 施行時期 | 特定適用事業所の基準 |
|---|---|
| 〜2022年9月 | 厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上 |
| 2022年10月〜 | 常時101人以上 |
| 2024年10月〜 | 常時51人以上 |
あわせて、短時間労働者の加入条件も変更されており、2022年10月以降は「継続して1年以上雇用されること」という要件が廃止され、「2か月を超える雇用の見込み」に緩和されています。自社の規模や雇用形態に応じて、加入対象者の見直しが済んでいるかを改めて確認することをお勧めします。特定適用事業所に新たに該当した場合、対象となった短時間労働者の支払基礎日数の基準も11日以上に切り替わるため、随時改定の判定にも影響します。
また、2026年10月には賃金要件が撤廃される予定であり、2027年10月からは常時36人以上にまで特定適用事業所の基準が緩和される予定です。
産休や育休に伴う社会保険料の手続きにおける実務課題
社会保険料の変更手続きは、昇給や降給時の随時改定だけではありません。従業員が産前産後休業や育児休業を取得する際にも、社会保険料の免除手続きという重要な処理が発生します。
担当者が負担を感じる免除手続きと個別説明
マネーフォワードでは、産休・育休の実務に関与する担当者を対象に、手続きの負担に関する調査を実施しました。
育休手続きの中で特に工数がかかる、または判断が難しいと感じる業務を質問したところ、最も多かったのは育児休業給付金の申請書類作成と提出で、43.2%でした。それに次いで多かったのは社会保険料免除に関する手続きで、42.3%でした。
また、育休中の社会保険料や給付金の見込額の試算・説明は29.8%で、従業員への個別周知および休業意向の確認は29.1%でした。
このように、社会保険料の免除手続きや従業員への個別説明は、多くの実務担当者にとって大きな負担となっていることが分かります。
社会保険料の変更手続きを正確かつ迅速に進めるために
社会保険料の変更手続きには、主に毎年7月の定時決定と、固定的賃金が変動した際の随時改定(月額変更届)の2つがあります。随時改定は対象条件の見極めが複雑なため、毎月の給与確定時に固定的賃金の変動を確認し、改定後の標準報酬月額を速やかに判定する運用を仕組み化することが重要です。また、社会保険の適用拡大により加入対象者が広がっているため、届出漏れや保険料の過不足が生じないよう、定期的な対象者リストの見直しも欠かせません。
よくある質問
社会保険料が変わるタイミングはいつですか?
毎月7月の定時決定に必要な算定基礎届を提出することで、その年の9月から翌8月までの社会保険料が決定されます。固定的賃金の変動があった場合には、月額変更届を提出し、随時改定により変更されます。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険料の変更に関わる随時改定とは何ですか?
固定的賃金の変動があった場合に標準報酬月額を変更するための届出です。月額変更届を提出することで、新たな標準報酬月額が決定されます。標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合に対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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