- 更新日 : 2026年9月11日
コーピングとは?意味や種類、ストレス対処法の実践方法と企業の支援策をどう理解すればよい?
コーピングとは、ストレスに意識的に対処する行動のことで、問題焦点型・情動焦点型・ストレス解消型の3種類を状況に応じて使い分けることが重要です。
- 3種類を状況に応じて使い分けることが重要
- コーピングリストを事前に作成しておく
- 組織的支援(1on1・ストレスチェック等)と併用
Q. コーピングの種類はどう使い分ければよい?
A. 原因を取り除ける場合は問題焦点型、感情を整理したい場合は情動焦点型、気分をリセットしたい場合はストレス解消型を選び、組み合わせて使うのが効果的です。
コーピングとは、ストレスへの対処行動を指す心理学用語で、ストレスコーピングとも呼ばれます。ストレスの原因そのものに働きかける方法や、感情の受け止め方を変える方法など複数の種類があり、状況に応じた使い分けが重要です。本記事では、コーピングの意味や種類、実践のやり方、企業の人事・労務担当者が取り組める支援策まで解説します。
コーピングとは?
コーピングとは、発生したストレスに対して意識的に行う対処行動を意味する心理学用語です。ストレスコーピングとも呼ばれ、ストレスの原因の解決や負担の軽減を目的とします。
厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、コーピングを特定のストレスフルな問題や状況への対処方法と定義し、問題解決型と情動焦点型に大別しています。つまりコーピングは、単なる気晴らしではなく、ストレスの原因や受け止め方に働きかける意図的な行動全般を指す言葉といえます。
参考:ストレスコーピング|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省
適応機制(防衛機制)とコーピングの違い
コーピングと適応機制はどちらもストレスから自分を守る働きですが、意識的に行うか無意識に行うかという点で異なります。
適応機制(防衛機制)とは、仕事や私生活がうまくいかないときや、自分に不利な状況を避けたいときに、緊張や不安を和らげて心の安定を保とうとする心の働きです。コーピングが本人の意思で選び取る対処行動であるのに対し、適応機制は無意識のうちに作動する点が大きな違いです。たとえば失敗を「たいしたことではない」と自分に言い聞かせる行為が無意識に生じていれば適応機制、意図的にそう考えようとしていれば情動焦点型コーピングに近いといえます。両者を区別して理解しておくと、社員の状態を見立てる際の解像度が高まります。
ラザルスのストレスモデル
コーピングは、アメリカの心理学者リチャード・S・ラザルスが提唱した心理的ストレスモデルに由来します。ストレッサー(ストレスの原因となる刺激)を人がどう受け止め、どう対処するかという二段階の認知評価が、コーピングの理論的な土台です。
ラザルスの理論では、まず出来事が自分にとって無関係か、無害か、ストレスフルかを判断する一次的評価が行われ、続いてその刺激にどう対処すべきかを判断する二次的評価が行われるとされます。同じ上司からの指摘であっても「ありがたい指導」と受け止める人もいれば「強いプレッシャー」と感じる人もいるように、一次的評価の段階から個人差が生じます。この二段階のプロセスを理解しておくと、部下や同僚の反応の違いにも納得しやすくなります。
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コーピングにはどのような種類がある?
コーピングは働きかける対象によって、主に問題焦点型・情動焦点型・ストレス解消型(気晴らし型)の3つに分類されます。ストレスの原因ごとに適した種類が異なるため、状況に合わせた選択が重要です。
問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングとは、ストレスの原因であるストレッサーそのものに直接働きかけ、根本的な解決を図る対処方法です。
職場の人間関係がストレスとなっている場合の異動や転職、業務量が多いことが原因であれば上司への相談や業務プロセスの見直しなどが具体例です。原因そのものを取り除けるため効果は大きい一方、実行のハードルが高く、対処自体が新たなストレスになる場合もある点には注意が必要です。周囲に助けを求めて解決を図る「社会的支援探索型」も、この問題焦点型に含まれる下位分類として整理されることがあります。
情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングとは、ストレッサー自体ではなく、それに対する感情や考え方を変化させることでストレスに対処する方法です。
仕事でミスをして落ち込んだときに「誰にでもあることだ」と考え方を切り替えたり、同僚に話を聞いてもらい感情を整理したりすることが具体例です。ストレスの原因は残ったままのため根本的な解決にはなりませんが、原因をすぐに取り除けない状況では有効な手段となります。瞑想や深呼吸で心身を落ち着かせる方法も、この情動焦点型コーピングの一種として位置づけられます。
ストレス解消型コーピング(気晴らし型コーピング)
ストレス解消型コーピングとは、ストレスを感じた後に気晴らしやリラックスにつながる行動を取り、心身の負担を発散させる対処方法です。
買い物や食事、旅行、軽い運動、趣味への没頭などが具体例に挙げられます。一時的にストレスから距離を置くことで気分をリセットできますが、原因そのものへの働きかけではないため、問題焦点型や情動焦点型と組み合わせて使うことが望まれます。日常的に取り入れやすい方法が多く、コーピングリストの中でも実践のハードルが低い分類といえます。
以下は3種類のコーピングを比較した表です。
| 種類 | 働きかける対象 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 問題焦点型コーピング | ストレッサーそのもの | 上司への相談、異動・転職、業務改善 | 根本解決につながるが実行難度が高い |
| 情動焦点型コーピング | ストレスへの受け止め方 | 考え方の転換、相談による感情整理 | 原因は残るが即効性がある |
| ストレス解消型コーピング | ストレス反応・気分 | 運動、趣味、旅行、休養 | 一時的な発散で根本解決にはならない |
参考:ストレスコーピング|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省
ストレスの原因(ストレッサー)にはどんな種類がある?
ストレッサーは大きく物理的・化学的・心理的社会的の3種類に分類されます。原因の種類を把握することで、より的確なコーピングの選択につながります。
物理的ストレッサー
物理的ストレッサーとは、暑さ・寒さ・騒音・光といった物理的な刺激によるストレス要因です。
オフィスの空調設定が適切でない場合や近隣で行われている工事の音、業務で使用するパソコンやスマートフォンの画面の明るさなども物理的ストレッサーに該当します。目に見えにくい要因ではありますが、体調不良や集中力低下の背景に潜んでいることも多く、オフィス環境を点検する際にはこうした物理的な刺激にも目を向けることが欠かせません。
化学的ストレッサー
化学的ストレッサーとは、化学物質やアルコール、タバコの煙などによるストレス要因です。
目や鼻などの粘膜への刺激は強いストレス反応につながりやすく、適切な分煙対策が施されていないオフィスでは化学的ストレッサーが従業員の集中力や体調に影響を及ぼすことがあります。清掃や消毒に使用する洗剤の匂いなど、日常業務の中で見落とされがちな要因も含まれるため、換気や分煙のルールを整備しておくことが対策として有効です。
心理的・社会的ストレッサー
心理的・社会的ストレッサーとは、職場の人間関係や仕事量、雇用の不安定さなど、対人関係や社会的な状況から生じるストレス要因です。
私たちが日常的に感じるストレスの多くは、この心理的・社会的ストレッサーに起因するといわれています。上司や同僚との関係のこじれ、過大な業務量、評価や雇用への不安などが代表例で、物理的・化学的ストレッサーに比べて解決までに時間がかかりやすい傾向があります。だからこそ、1on1やメンター制度といった組織的な仕組みでの継続的なフォローが重要になります。
コーピングを上手に実践するにはどうすればよい?
コーピングの効果を高めるには、あらかじめ複数の対処法を用意しておき、状況に応じて使い分けることが重要です。特定の方法に頼りきるのではなく、選択肢の幅を持たせることがポイントになります。
コーピングリストを作成する
コーピングリストとは、自分なりのストレス対処法をあらかじめ書き出し、一覧化しておくものです。ストレスを感じた瞬間に何をすべきか迷わず実践できる状態を作ることが目的です。
作成の手順は次のとおりです。
STEP1:ストレスを感じた場面と、そのとき役立ちそうな行動を思いつく限り書き出す STEP2:問題焦点型・情動焦点型・ストレス解消型など、種類ごとに整理する
STEP3:実際にストレスを感じた際にリストから選んで実践する
STEP4:実践後に効果を振り返り、合わなかった項目は理由とあわせて記録し、リストを更新する
深呼吸をする、短い休憩を取る、信頼できる同僚に話す、軽く体を動かすなど、日常のちょっとした行動もコーピングリストの項目として有効です。ストレスを感じているときは思考が偏りやすいため、心身が落ち着いているタイミングであらかじめ作成しておくことが望まれます。
人事・労務担当者が実践できるコーピング(ストレス対応)支援とは?
企業がコーピングを促す環境を整えることは、従業員のパフォーマンス低下や休職・離職の防止につながります。組織的な支援策には、対話の機会づくりから制度整備まで複数の切り口があります。
1on1制度を整備する
1on1制度とは、上司と部下が1対1の環境で定期的に話し合える機会を設ける仕組みです。
日常業務の中では話しにくい悩みや課題も、1対1という限られた場であれば部下が自ら打ち明けやすくなります。定期的に実施することで課題の共有が習慣化し、問題が深刻化する前に上司が気づいて対応できるようになる点が大きなメリットです。形骸化を防ぐため、雑談だけで終わらせず、状況や悩みを確認する時間を意識的に確保することが求められます。
メンター制度を整備する
メンター制度とは、直属の上司とは別に、気軽に相談できる相談相手(メンター)を配置する仕組みです。
評価に直接関わらない立場の相手であるため、業務上の悩みだけでなく人間関係やキャリアの不安なども話しやすくなります。相談できる相手が身近にいるという安心感自体がストレスの軽減につながり、深刻化する前の早期発見・早期解決の助けとなります。年齢や部署の異なる先輩社員を配置するなど、相談しやすい組み合わせを工夫することも効果を高めるポイントです。
心理カウンセリングやEAPを導入する
心理カウンセリングとは、外部の専門家によるメンタルヘルス支援のことです。
産業医や精神保健福祉士などが対応する外部相談窓口(EAP:従業員支援プログラム)を導入すれば、従業員は社内の人間関係を気にすることなく、プライバシーを守りながら専門的な助言を受けられます。社内では相談しにくいデリケートな悩みにも対応しやすくなるため、クリニックや医院と連携した窓口の整備は、企業のメンタルヘルス対策として有効な選択肢のひとつです。
eラーニングや研修を実施する
eラーニングや研修とは、従業員自身がストレスやコーピングについて学ぶ機会を指します。
コーピングの種類や実践方法を体系的に学ぶことで、従業員がそれまで気づけなかった自身のストレスやその原因に気づくきっかけになります。定期的な学習の場を業務時間内に確保することは、企業がメンタルヘルス対策に本気で取り組んでいる姿勢を示すことにもつながり、従業員が安心して相談できる土壌づくりにも役立ちます。
オフィス環境を整備する
オフィス環境の整備とは、採光や気温・湿度への配慮に加え、ハラスメントの起こらない職場づくりを含む取り組みです。
空調や照明、騒音対策などによって物理的・化学的ストレッサーを減らすと同時に、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントが起きない職場づくりを進めることで、心理的・社会的ストレッサーの軽減にもつながります。ハード面とソフト面の両方から環境を整えることが、従業員が安心して働ける職場づくりの基盤となります。
ストレスチェック制度を活用する
ストレスチェックとは、従業員が自身のストレス状態を客観的に把握するための検査制度で、現在は常時50人以上の事業場に実施が義務付けられています。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務にとどまっていた50人未満の事業場についても、2028年4月からストレスチェックの実施が義務化される方針が示されています。義務化から1年以内に最初のストレスチェックを完了する必要があるとされているため、小規模な事業場であっても早めに実施体制の準備を進めておくことが望まれます。
参考:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルを公表します|厚生労働省
適切なコーピングの実施に向けて押さえておきたいこと
コーピングとは、ストレスの原因や感情に働きかけて負担を軽減する対処行動であり、問題焦点型・情動焦点型・ストレス解消型といったストレスコーピングの種類を状況に応じて使い分けることが重要です。ストレスの放置は従業員のパフォーマンス低下や休職・離職につながりかねないため、個人でのコーピングリストの活用に加え、1on1やメンター制度、ストレスチェックといった組織的な支援を組み合わせ、早期の発見と対策につなげていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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