• 更新日 : 2024年5月10日

勤務間インターバル制度とは?導入方法や助成金、夜勤・残業の場合を解説

勤務間インターバル制度とは、社員が睡眠時間や生活時間などの休息を十分に確保できるように、1日の業務の終了時間から翌日の始業時間までの間に、一定以上の休息時間を設ける制度のことです。

制度の内容や導入方法、導入する際のポイント、制度導入に利用できる助成金があるか、制度を導入しない場合に罰則があるかなどについて解説します。

勤務間インターバル制度とは?

勤務間インターバル制度とは、1日の業務の終了時間から、その翌日の始業時間までの間に一定の休息時間を設ける制度のことを言います。たとえば、通常、9時から18時(休憩1時間を含む)までの勤務体系の社員は、勤務の終了時間である18時から翌日の9時まで15時間の休息時間が取れます。

しかし、この社員が5時間の残業を行って23時に退社した場合、翌日の始業時間である9時までは10時間しか休息時間が取れません。

このような十分な休息時間が取れない状況が続いた場合には、社員の健康状態に悪い影響を与え、心身の健康を損なうリスクが高まる可能性があります。勤務間インターバル制度を導入することで、十分な休息時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスの向上を実現させることができます。

勤務間インターバル制度の導入目的や背景

日本では、長時間労働を原因としたメンタルヘルスの悪化や過労死が社会問題になりました。この問題も原因の一つとして、国が、労働者の健康を維持すること、ワーク・ライフ・バランスを確保できるようにすることなどを目的に、勤務間インターバル制度を設けました。

休息時間は何時間あければよい?

休息時間(インターバル時間)を決めるにあたっては、睡眠時間や生活時間、通勤時間等を考慮して検討する必要があります。インターバル時間数は会社ごとに決めることができるため、会社によって異なります。

国は、休息時間は9時間以上11時間未満、または11時間以上としたインターバル制度を導入し、定着させることを推奨しています。ただし、会社ごとの都合もありますので、できるだけ休息時間を確保できるように努力することが重要です。

2019年4月より努力義務化

勤務間インターバル制度は設けられましたが、制度を導入する会社の割合はそれほど多くはありませんでした。この制度を導入する会社を増やしていくには、多くの会社に周知し、導入を推進していく必要があります。

そこで国は、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を改正し、2019年4月から「勤務間インターバル制度」を会社の努力義務とすることが盛り込まれました。

勤務間インターバル制度が導入された背景

日本では、長時間労働を原因としてメンタルヘルスの悪化や過労死などが社会問題になりました。勤務間インターバル制度が導入された背景には、このような「働きすぎ」による離職者の増加があります。長時間労働の職場に耐えることができず、離職する労働者が多くいるのです。

それが原因で過労死する労働者や、過労死までにはならないまでもメンタルヘルスが悪化して長期休業を余儀なくされる労働者も多くいます。また、長時間労働によりワーク・ライフ・バランスの推進を保つことができないことも考えられます。

勤務間インターバル制度を導入する方法

会社が勤務間インターバル制度を導入する際の流れや、導入後はどうすればよいのかについて解説します。

従業員の労働時間や課題の洗い出し

最初に、現状の把握や課題の洗い出しを行います。従業員の実態としての労働時間や通勤時間がどのくらいなのかを確認し、十分なインターバル時間が取れているかどうかを把握します。

その際、労働時間に関しては、タイムカードの時間だけを確認するだけでは不十分です。あくまでも、労働時間の「実態」を把握する必要があります。場合によっては、社員本人や上司などに確認する必要があるため注意してください。

実態を把握したうえで、インターバル時間が十分には取れていない場合には、その理由と、どのくらいのインターバル時間が取れれば良いかを検討します。現状の確認と課題の洗い出しができたら、自社には勤務間インターバル制度が導入可能なのかを検討します。

インターバルの時間設定を検討する

勤務間インターバル制度の時間設定を何時間にするかを設定します。インターバル時間数は、労働時間の他に通勤時間、睡眠時間や生活時間等も考慮するため、前のステップで把握した労働時間等に関わる現状や課題を踏まえて、労使間の話し合いで決めていきます。

厚生労働省が設定している勤務間インターバル制度を導入する際の助成金の支給対象の取り組みとして、下記のように定められています。

「事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること。」

引用:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省

また、厚生労働省による調査では、勤務間インターバル制度を導入している会社の1社平均間隔時間は、10時間20分でした。

参考:令和5年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

EU加盟国では、「すべての労働者に、24時間ごとに、最低でも連続11時間のインターバル時間を確保するために必要な措置を設けること」とされています。

引用:労働時間等設定改善法 労働時間等見直しガイドラインについて|厚生労働省

ただし、会社ごとの事情もあるため、上記の時間数はあくまでも参考程度にとどめ、自社に適したインターバル時間を設定してください。

就業規則の改定など整備を行う

制度の設計が終わったら、制度を機能させるために運用方法などについて、就業規則に盛り込み整備します。運用方法については、法律で規制されている内容はないため、会社で運用しやすいルールで行っても問題はありません。

なお、厚生労働省のホームページには、勤務間インターバル制度に関する就業規則の規定例が掲載されています。参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考:就業規則規定例|厚生労働省

制度の内容を社内へ周知する

勤務間インターバル制度の円滑な運用を行うためには、社内の理解や協力が必要です。現場にいる管理職や社員に対して、勤務間インターバル制度を導入する意義、インターバル時間を確保するための留意点などについて事前に周知しましょう。

周知方法としては、説明会の開催、社長からの全社員へのメッセージや通知文書の発信、社内イントラネットや社内報などへの掲載などが考えられます。

顧客や取引先へ説明する

勤務間インターバル制度の円滑な運用を行うためには、社内の理解や協力だけでなく、顧客や取引先に制度の説明を行い、理解してもらうことも重要です。

顧客から納期の短い発注や突発的な依頼が続くことがあると、どうしてもインターバル時間を確保することが難しくなります。顧客や各取引先にも理解してもらうために、会社の責任ある部署の役職者が説明する、経営層の名義で文書を送付するなどの手段を用いて、配慮を求めるよう説明します。

効果検証と見直しを行う

勤務間インターバル制度を導入してから一定の期間が経過したら、導入した効果を検証する必要があります。具体的には、労働時間の管理方法やインターバル時間確保の状況、インターバル時間が始業時間にずれ込んだ際の対応や管理職の対応状況を確認します。

それ以外にも、当初想定していなかった事項や管理職・社員が実際に運用してみて感じた点などもヒアリングするなどして、運用状況の見直しにつなげていくようにします。

制度が最初から円滑に運用できるとは限らないので、PDCAサイクルを回していきながら徐々により良い制度になるように進めていきましょう。

夜勤、残業での勤務間インターバル制度の設定は?

勤務間インターバル制度を導入するにあたり、夜勤や残業がある職場の場合の運用方法の例について見ていきます。

夜勤での勤務間インターバル制度の運用方法の例

夜勤に関しては、病院の看護師の勤務間インターバル制度を例にあげてみます。

新潟県にある「新潟県厚生連 佐渡総合病院」では、シフトを組む際には、日本看護協会が出している「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」に掲げられている「勤務と勤務の間隔は11時間以上あける」を遵守しています。

勤務体制は3交代制勤務として取り組んでいますが、インターバル時間を11時間以上確保するには2交代制勤務の方が容易になることから、2交代制勤務も検討しています。

11時間のインターバル時間を確保するためには、時間外労働を削減して休息時間を確保することが必要です。そこで、業務の効率化に取り組むとともに、電子カルテなど、ICTの活用も行ってインターバル時間を確保できるよう環境を整えています。

参考:導入事例(新潟県厚生連 佐渡総合病院)|働き方・休み方改善ポータルサイト

残業での勤務間インターバル制度の運用方法の例

所定労働時間が1日8時間(9時から18時、うち休憩時間1時間)の会社で、インターバル時間を11時間以上とする勤務間インターバル制度を導入した場合の例で説明します。

例えば、ある日に23時まで残業した場合、インターバル時間が11時間だと、次の日の出社時間は10時以降になります。このように、出社時間が通常の始業時間である9時より遅くなる場合は、次の2通りの運用方法が考えられます。

運用方法例1:所定労働時間をずらす方法

次の日の始業時間が1時間遅くなる分、終業時間も1時間遅くして、その日の所定労働時間を10時から19時(休憩時間1時間)とします。

運用方法例2:出社時間と通常の始業時間の間の時間を勤務とみなす方法

次の日の始業時間が1時間遅くなった分は、勤務したものとみなして有給扱いとします。

運用方法の例をあげましたが、運用方法については会社ごとに労使で話し合いを行って決めることができます。

ただし、勤務間インターバル制度の導入により、社員ごとに始業時間がバラバラになってしまう可能性があります。毎朝、始業前に一斉朝礼などを行っている場合には、朝礼で大事な話があったときには、遅れて出社してくる社員をフォローする必要があるでしょう。

また、退社する時刻が遅くなり、翌日の始業時間に遅れてしまう場合には、ホワイトボードなどに記入してわかるようにしておくなど、職場内でルール化しておくことが重要です。

勤務間インターバルを導入する際のポイント

勤務間インターバル制度を導入することにより、社員に十分な休息時間を与え、身体の健康状態と心身の健康を確保することができます。ここでは、勤務間インターバル制度を導入する際のポイントについて見ていきます。

無理なインターバル時間を設定しない

最初のポイントとして「無理なインターバル時間を設定しない」ことがあります。社員の実態の労働時間を把握して、適切なインターバル時間を設定しましょう。

その際に、あまりに短すぎるインターバル時間を設定すると、疲労を回復させることができません。一方、インターバル時間が長過ぎると、今度は実現が難しくなり、制度の定着ができません。

厚生労働省は、少なくとも9時間以上のインターバル時間を設定するように推奨しています。これに合わせて、最初はインターバル時間を9時間に設定して制度を導入し、その後の効果検証と見直しを踏まえて、インターバル時間の見直しを行っていくとよいでしょう。

残業が続く場合は仕事量を調整する

勤務間インターバル制度を導入後、当初は想定していなかった状況が発生する場合があります。繁忙期などで予想していたよりも残業が多くなってしまい、どうしてもインターバル時間を守れない社員が出てくることもあるでしょう。

このような場合には、同じ組織内で仕事量が調整できれば調整してインターバル時間を守れるようにするのも一つの方法です。

また、例えばインターバル時間を11時間に設定していた場合には、インターバル時間の設定を「最低でも9時間以上は取らなければならない」を追加して2段階にする運用も検討してもよいでしょう。

制度の適用範囲内かに注意する

勤務間インターバル制度の導入は努力義務であるため、会社ごとに制度の設定を行うことができます。そのため、制度の内容を検討していく中で、適用範囲外になるケースを設定することも可能です。

具体的には、下記のような状況の場合は適用除外にするなどのルール化をしてもよいでしょう。

  • 海外の企業との電話やテレビ会議でのやり取りが発生する場合
  • 取引先の都合による納期の前倒しや短納期発注があった場合

このような適用除外を決める場合には、勤務間インターバル制度からあまり外れないように労使でよく話し合った上でルール化することが重要です。

勤務間インターバル制度の助成金

厚生労働省は、勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小事業主に対して、「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」という助成金を設けて取り組みを推進しています。一定の要件を満たした事業主に、助成金を支給する制度です。

ここでは、支給要件、成果目標、支給額、申請方法について見ていきましょう。

支給要件について

助成金の支給を受けるには、支給対象になる事業主の要件を満たす必要があります。その他にも、勤務間インターバル制度を導入するために必要な研修の実施や外部専門家のコンサルティング、システムの導入を行うなど、支給対象になる取り組みを実施しなければいけません。

成果目標について

助成金の支給対象となる取り組みとして掲げた成果目標を達成する必要があります。

成果目標は、下記の通りです。

事業実施計画において事業主が指定したすべての事業場で、休息時間数が「9時間以上11時間未満」もしくは「11時間以上」の勤務間インターバルを導入して定着を図ること。

具体的には、以下の取り組みを達成することが目標になります。

  • 新規導入:9時間以上の勤務間インターバル規定を新たに定める場合
  • 適用範囲の拡大:すでに9時間以上の勤務間インターバルを導入している会社が、対象者を拡大する規程を定める場合
  • 時間延長:すでに9時間未満の勤務間インターバルを導入している会社が、インターバル時間を2時間以上延長する規程を定める場合

支給額について

支給額は、休息時間数(インターバル時間数)や取り組みの内容などの成果目標の達成状況によって異なります。

具体的には、休息時間数が「9時間以上11時間未満の場合」は、制度導入にかかった費用の4分の3(最大50万円)が、休息時間数が「11時間以上の場合」は、制度導入にかかった費用の4分の3(最大60万円)が助成されます。

どちらの場合も、「新規導入に該当する取り組みがある場合」は、記載の上限額の2倍まで助成されます。

また、賃金額の引き上げを成果目標に加えた場合に加算される金額は、指定した労働者の賃金引上げ人数に応じて変わります。

  • 常時使用する労働者が30人超の中小事業主の場合:15万円~上限240万円まで
  • 常時使用する労働者が30人以下の中小事業主の場合:30万円~上限480万円まで

申請方法について

助成金の申請様式は厚生労働省のホームページにあります。まず、交付申請書や事業実施計画、36協定届などの添付書類を準備して交付申請を行います。

交付の決定の通知を受理したら、機器の購入や研修の実施など、事業実施計画の内容を踏まえて事業を実施します。事業実施が終了したら支給申請書や添付書類を準備して支給申請を行いましょう。

すべての申請窓口は、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)になります。

参考:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)助成内容|厚生労働省

今のところ、勤務間インターバル制度の導入は努力義務になっています。必ず導入しなければいけない制度ではないため、導入していなくても罰則を科せられることはありません。ただし、「努力義務」は「努力することを義務づける」という意味であるため、無視してもよいという訳にもいきません。

また、「労働時間等設定改善法」という法律では、2019年(平成31年)4月1日より、新たに「勤務間インターバル制度の導入」についての規定が追加になっています。そのため、今後はさらに重要視されていくものと考えられます。

まだ勤務間インターバル制度を検討中の会社でも、社員の健康を考えて休息時間を確保することを意識し、将来に向かっての勤務間インターバル制度の義務化に備えて準備を進めておく必要があるでしょう。

勤務間インターバル制度の導入で職場環境を整えましょう

2019年4月1日から、勤務間インターバル制度の導入が会社の努力義務になりました。勤務間インターバル制度を導入することによって、社員の健康の維持や向上につながります。また、人材の定着や確保につながっていくことも期待できます。

適切に制度を運用できれば、生産性も向上します。社員に働きやすい職場環境を提供し、業績が向上する効果も得られるでしょう。

制度の導入にあたっては、必要な経費の一部を助成する国の助成金制度もあります。必要に応じて助成金も活用しながら、制度の導入を検討していきましょう。


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