• 更新日 : 2022年3月18日

給与計算ソフトを買う?社労士に依頼する?手段別にメリット・デメリットを解説!

給与計算ソフト_社労士

給与計算業務は、給与計算ソフトを導入するほか、社労士に依頼する、もしくはエクセルで行うといった方法があります。今回は、エクセル・社労士への依頼・給与計算ソフトの導入と3種類に分けてメリット・デメリットを比較。どの手法が自社に適しているか、給与計算業務の改善を検討する際の参考にしてください。

エクセルなどを用いて給与計算を行うメリット

表計算ソフトであるエクセルは、給与計算ソフトの代わりとして活用できます。とりわけ、従業員数が30名以下といった小規模企業や個人事業主にとっては、手作業の負担を考えても、費用がかからず自動化ができるため、満足度の高い手法といえます。

エクセルを契約していれば無料で使用できる

エクセルを給与計算に利用する最大のメリットは、費用が無料だということです。エクセルを使用するための「Microsoft365」の契約料は発生しますが、給与計算だけのために初期費用や追加のランニングコストが発生することはありません。

Word、Excel、PowePoint、Teamsといったサービスが含まれるMicrosoft365は、企業で一般的に利用されているものです。わざわざ給与計算ソフトを検討・導入しなくても、今あるサービスを使って業務を行える点が魅力といえます。

また、無料配布されているエクセルテンプレートを活用することも、自社に合わせてフォーマットを自由にカスタマイズすることもできるメリットが挙げられます。他の業務でエクセルを使用している場合は、操作方法にはじめから慣れているため、スムーズに給与計算を行えるでしょう。

【エクセルの給与計算のメリット】

  • エクセル機能が入っていれば、給与計算のための追加費用がかからない
  • 無料配布されているエクセルの給与計算テンプレートを利用できる
  • 自社のやり方に最適なフォーマットにカスタマイズできる
  • 操作画面に慣れているため、はじめから業務を行いやすい

エクセルなどを用いて給与計算を行うデメリット

コストはかからない一方で、エクセルによる給与計算は「手作業」の部分がデメリットとなります。

手入力による人為的なミスが生じやすい

ミスのない給与計算には、正確な労働時間の集計と、割増賃金が発生する時間外労働や深夜・休日労働の集計が最も重要です。入力する数字を1つ間違えるだけで、これらの集計が狂ってしまいます。

また、どのような手当が割増賃金の単価に含まれ、1時間当たりの割増賃金を計算するための「1ヵ月の平均所定労働時間」をどのようにして算出するのかについても、専門的な知識をもとに判断しなければなりません。給与計算のベースとなるこれらの集計や計算式が間違っていると、その後に続く支給額や控除額に誤りが生じてしまいます。

さらに給与計算は、保険料率や所得税率などを法改正ごとに変更する必要があります。給与計算ソフトではこれらの法改正は自動反映されるのが一般的ですが、エクセルの場合、法改正があるたびに、最新の計算式になるように手作業で修正しなければいけません。

こうした人為的ミス以外に、エクセルのフォーマットを更新していた給与計算担当者が退職した後の対応も懸念事項の1つです。新たに法改正が行われて保険料率や所得税率に変更が発生したり、自社でフレックスタイム制など新たな働き方を導入したりする場合に、給与計算のエクセルシートのどの部分をメンテナンスすればいいのかわからないといった事態が考えられます。

【エクセルで給与計算を行うデメリット】

  • 計算式や関数などに間違いがある可能性
  • 労働関係の専門的な知識がなければ、正確な給与計算ができない
  • 法改正による保険料率や所得税率の変更時には、手入力で反映させなければならない
  • 給与計算シートを作成した担当者がいなくなると、エクセルシートのメンテナンスが行えなくなる可能性が高い

社労士(社会保険労務士)に給与計算を依頼するメリット

社労士(社会保険労務士)に給与計算を依頼すれば、単に給与計算ソフトを導入する場合とは異なるメリットを実感できます。

専門の方のため、安心して依頼できる

社労士へ給与計算依頼した場合、給与計算担当の従業員を社内に置く必要がなく、担当者の退職による業務引継ぎや後任探しといった負担が解消されます。

また、給与という重要な個人情報を、社外の人間が管理するという点も安心のポイントです。社内に給与計算担当者を置いた場合、特定の従業員が全社員の給与を把握することになります。昇給や昇格状況が反映されている給与情報は、一歩間違えれば従業員間の不満を募らせる種となることもあるのです。社外の専門家への依頼は、情報漏えいのリスクを抑えるという点でもメリットがあります。

【社労士に依頼するメリット】

  • 給与計算担当者を雇用するコストを抑えられる
  • 給与計算担当者が退職した際の後任探しや引継ぎといった負担が無用になる
  • 社外の専門家に任せられるため、特定の従業員が他の社員の給与情報を知るといった心配がなくなる

法改正などにも対応してもらえる

法改正の際もスムーズに対応してもらえ、適切なアドバイスを受けられるのも、専門家である社労士に依頼するメリットです。

たとえば、2010年に改正された労働基準法のポイントの1つに、1ヵ月60時間を超えた部分の時間外労働の割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられたことがあります。その際、中小企業へは企業の経営体力面を考慮して猶予措置が設けられました。

しかし、この猶予措置は廃止されることが決まっており、2023年4月以降は、企業規模に関わらず1ヵ月60時間を超えた部分の時間外労働の割増賃金率は、50%以上の割増賃金率が適用されることになっています。

さらに、社労士は給与計算業務の代行を行いますが、もともとは人事労務のエキスパートです。給与計算にまつわる法改正だけでなく、育児休業・介護休業などの労務相談や社会保険の手続き、就業規則変更のアドバイスなど、幅広い労務管理に対応できます。

「休職したいけれどその間の給与はどうなる?」「育休を延長できる?」といった従業員の質問に対して、社労士から適切な対応のアドバイスを受けられるため、「気づかないうちに労働関係の法律に違反する対応をしていた」という危険を回避することが可能です。

関連記事:残業代とは?残業の種類や計算方法について解説
参考:しっかりマスター労働基準法 割増賃金編|東京労働局

社労士(社会保険労務士)に給与計算を依頼するデメリット

多くの社労士事務所では、給与計算ソフトや勤怠管理ソフトなど、各種社内情報を円滑に連携できるシステムを導入し、企業からの代行依頼に応えています。しかし、その専門性ゆえに、社労士に給与計算代行を依頼する場合、社内に人材が育たないというデメリットが考えられます。

社内にノウハウが蓄積しない

社労士に給与計算を依頼している場合、社内に知識を有した人材が育ちません。アウトソーシングコストの削減など、何かしらの理由で業務の内製化を行う際は、一からの状況把握やノウハウの整理が必要になります。

給与計算だけでなく、労務管理など幅広い業務の相談・代行を依頼している場合も同様です。依頼先の社労士と信頼関係を築いている場合は問題がありませんが、依頼先を変更するという事態になった際、事業を支えるパートナーとして信頼できる社労士を、一から探すという負担が発生します。外部の専門家とつながるのはメリットがある一方、社内だけで対応できないというデメリットについても把握しておいたほうがいいでしょう。

また、社労士事務所によって、得意とする業務領域が異なります。「労務管理と連携して給与計算と一括代行を依頼したい」と「メンタルヘルス対策を就業規則や労務管理に盛り込みたい」を、同じ社労士事務所に依頼するのが最適とは限りません。

給与計算は特に資格がなくてもできる業務であり、給与計算業務を代行しているアウトソーシング会社に依頼することもできます。給与計算を行わない社労士事務所も多くあり、依頼する業務に合わせ、予算やサービス内容を十分に検討するのが望ましいといえます。

給与計算ソフトで給与計算を行うメリット

企業の給与計算業務をより短時間で効率的に行う場合、具体的な解決策となるのが給与計算ソフトの導入です。給与計算ソフトは、自動化を進め正確性の担保された給与計算を行うとともに、一連の業務を効率化するメリットがあります。

計算などの人為的なミスを防げる

給与計算ソフトを活用すれば、給与計算にまつわる一連の業務をより早く、より正確に行うことが可能です。給与の支給額・控除額を計算するための項目を自動計算で算出するため、給与計算のための専門知識を有しない人でも正確な給与計算業務を遂行できるのが最大のメリットといえるでしょう。

給与計算ソフトは、保険料率などの変更も自動で反映されるほか、給与計算で悩みの種となる端数処理も、法律に基づき自動で処理されます。業種によって保険料率が異なる雇用保険や労災保険の保険料率にも対応しており、自動取得機能を活用することで正しい保険料率が給与計算に反映されるため、人為的なミスを防ぐほか、業務の効率化につながるのです。

ペーパーレス化を進めることができる

給与計算ソフトの導入により、給与明細の電子化といったペーパーレス化につながるのも大きなメリットです。

従来の給与計算では、従業員ごとに給与計算を行ったのち、金額を間違えないように銀行振込を行い、1枚ずつ給与明細書を印刷して封入するといった作業がありました。しかし、給与計算ソフトでは、給与明細の電子発行・WEB閲覧などの機能を備えており、クリック1つで給与明細送付の業務が完了します。近年増えている在宅勤務といったリモートで働く従業員への対応も心配ありません。

データで保管された過去の給与明細を、必要に応じてすぐに確認できるため、保管場所の確保や整頓といった手間からも解放されます。

給与計算ソフトで給与計算を行うデメリット

給与計算ソフトの導入により業務の効率化が期待できますが、その効果を実感するまでには「導入負荷」、つまり、正常に運用できるようになるまでの手間がかかります。場合によっては既存システムを見直すといった、別の検討事項が発生する可能性もあり、デメリットがあることも把握しておきましょう。

既存のシステムや従業員に合わせた仕組み作りが必要

給与計算ソフトの導入にあたっては、担当者が新たな操作を覚えるといった業務上の変更だけでなく、新たな業務フローが発生します。勤怠情報の入力方法や給与明細の受け渡し方法などを従業員に説明する必要があり、これまでのやり方とは異なるフローを作り上げる必要が出てきます。こうした、新たな仕組みを検討し、構築するまでの時間や労働力がデメリットとして考えられるでしょう。

たとえば、給与計算ソフトの導入にあわせて給与明細の電子化を行う場合、給与明細を「メール配信」とするか「WEBでの閲覧」とするかなどアクセス方法を検討する必要があります。また、会社の一存で電子化に切り替えられるわけではなく、事前に従業員から個別の同意を得る必要があり、同意しない従業員への対応も検討しなければなりません。

また、給与計算以外の、人事・労務関連ソフトとの連携も重要です。たとえば、給与計算ソフトが勤怠管理ソフトと連携していれば、データのやり取りがスムーズになり、より業務効率化につながります。人事・労務だけでなく、経理や財務分野のシステムと連携することができれば、バックオフィス業務を大幅に削減することもできるでしょう。

近年では、他のシステムとの連携をうたった給与計算ソフトが数多く登場しています。ただ、全てのシステムと給与計算ソフトが連携できるとは限らないため、一旦導入すると変更が難しくなる可能性があります。実際の業務フローや、従業員の反応を考えながら、どの業務までシステム連携を進めるかを検討するのがよいでしょう。

メリット・デメリットを踏まえ自社に合った方法を選ぼう

給与計算業務は、ミスの許されない重要な仕事です。エクセルでの給与計算はコストが各段に抑えられますが、適切な知識を有していない人がテンプレートを作成したり運用したりすると、思わぬところで計算ミスが発生してしまう可能性があります。コスト以外の観点でも、社労士への依頼や給与計算ソフトを導入したときのメリットとデメリットを検討し、自社にとって最適な方法を選びましょう。

よくある質問

社労士の方に給与計算を依頼するメリットを教えてください

外部に業務を委託できるため、給与計算担当者を社内で確保する必要がありません。また専門家が情報を扱うため、社内で他の従業員の給与情報が漏洩するといったリスクを減らすことができます。詳しくはこちらをご覧ください。

給与計算ソフトを給与計算に使用するメリットを教えてください

給与計算ソフトの導入により、専門知識がない人でも正確な給与計算を行うことができます。割増賃金の計算や社会保険料率の計算などを法律に基づき自動で行ってくれるため、ミスのない給与計算が可能です。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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