• 更新日 : 2024年11月22日

社会保険の加入条件・年齢別一覧!40歳~75歳の手続き方法を解説

社会保険の加入条件や手続きは、年齢によって異なります。介護保険をはじめ、健康保険・厚生年金保険雇用保険など、「従業員が何歳に達したとき、何をしなければならないかがよくわからない」という方も少なくないのではないでしょうか。本記事では、社会保険に関するさまざまな手続きについて、年齢別にわかりやすく解説します。

社会保険の種類と対象年齢

社会保険とは、健康保険、介護保険、厚生年金保険と、労働保険である労災保険、雇用保険のことです。これらの保険には、それぞれ異なる加入対象年齢が設定されています。ここでは、各保険の対象年齢について詳しく解説しましょう。

介護保険(40歳以上~65歳未満)

介護保険は、老齢や病気などで介護が必要になった場合に、必要なサービスを受けられるようにするための社会保険です。年齢は、誕生日前日に1歳加算される形で計算し、40歳以上64歳までの方は原則全員が第2号被保険者となります。65歳になると第1号被保険者となり、介護保険料は市町村が決定します。

基本的に、65歳以上の人は、要介護認定で介護が必要とされた場合は、いつでもサービスを受けることが可能です。40際以上64歳までの方でも、加齢に伴う疾病(特定疾病)により要介護であると認定された場合には、サービスを受けることができます。

健康保険(~75歳未満)

健康保険は、病気やケガにより医療機関で治療を受ける際の経済的な負担を軽減するための保険制度です。会社に雇用されている場合は、会社の健康保険組合か、全国健康保険協会(協会けんぽ)の被保険者となります。健康保険の被保険者は、75歳の到達時に後期高齢者医療制度へ移行し、以降は後期高齢者医療制度の保険料を負担します。

また健康保険に加入することで、療養により休業する場合や、出産・育児により休業する場合に、傷病手当金や出産手当金・出産育児一時金などが支給されます。

厚生年金保険(~70歳未満)

厚生年金保険は、老後の生活を保障するための年金制度です。厚生年金保険の被保険者は、勤務する事業所によって、第1号厚生年金被保険者から第4号厚生年金被保険者に分かれます。

民間の事業所に勤務する場合は、第1号厚生年金被保険者です。ただし、公的年金制度では、国民年金の基礎年金が全国民共通部分となっているため、厚生年金保険の被保険者も国民年金の第2号被保険者として加入する仕組みです。原則として、65歳に達した時点で受給要件を満たしていれば、国民年金から老齢基礎年金、厚生年金保険から老齢厚生年金が支給され、原則として70歳に達すると厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。

雇用保険(~65歳以上は要件あり)

雇用保険は、働く人の生活の安定や就業促進を目的とする社会保険制度です。被保険者は失業した際の基本手当のほか、自ら能力開発に取り組んだ場合の教育訓練給付、育児休業をした場合の生活保障である育児休業給付金など、さまざまな保険給付を受けることができます。正規雇用の会社員であれば、通常、入社時に雇用保険の被保険者となり、パート・アルバイトのような非正規雇用でも以下の要件に該当する場合は加入しなくてはなりません。

  • 1週間あたりの所定労働時間が20時間を超えていること
  • 雇用見込み日数が31日以上であること

65歳以上でも、一定の条件を満たせば雇用保険に加入することが可能です。雇用保険の保険料は、賃金に基づいて算出されます。

労災保険(~年齢上限なし)

労災保険は、本来、労働基準法で定める業務災害に対する事業主の補償責任を確実・迅速に実現するため、事業主に加入義務がある保険制度です。したがって、雇用されている全ての労働者が対象となり、被保険者のような資格要件や年齢要件はありません。業務災害のほか、通勤災害による傷病、障害、死亡に対して被災労働者や遺族に保険給付されます。

社会保険の年齢別手続き一覧

複数の保険で構成されている社会保険は、前述の通り、年齢によって必要な手続きが異なります。ここでは、社会保険に関する手続きを年齢別にまとめたので、業務スケジュールにご活用ください。

年齢保険の種類手続き内容必要書類提出先
40歳介護保険徴収開始特になし特になし
60歳継続雇用高年齢雇用継続給付金支給開始

※条件あり

  • 60歳到達時等賃金証明書
  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
  • (初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
ハローワーク
健康保険・厚生年金保険同日得喪
  • 被保険者資格喪失届
  • 被保険者資格取得届
  • 健康保険 被扶養者(異動)届※被扶養者ありの場合
年金事務所
定年退職健康保険・厚生年金保険資格喪失
  • 被保険者資格喪失届
年金事務所
雇用保険資格喪失
  • 雇用保険資格喪失届
ハローワーク
65歳介護保険控除終了特になし特になし
70歳厚生年金保険資格喪失
  • 厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
年金事務所
75歳健康保険資格喪失
  • 被保険者資格喪失届
年金事務所

年齢別で変わる社会保険の手続き方法

従業員の年齢によって、社会保険の手続きは異なります。従業員のさまざまなライフステージに対応するために、人事担当者は各年齢に達した段階で適切な手続きをしましょう。本記事では、年齢別に必要となる社会保険の手続きについて、解説します。

40歳:介護保険料の徴収開始

40歳になる従業員は、介護保険への加入が義務付けられます。介護保険の被保険者資格の取得については、企業側で手続きを行う必要はありません。40歳の誕生日の前日が属する月分より、事業所が健康保険料とともに介護保険料を源泉徴収して、事業主分と合わせて納付します。

60歳:定年退職する場合

従業員が60歳で定年退職する場合、退職日の翌日から5日以内に管轄の年金事務所または日本年金機構では事務センターに資格喪失届を提出します。企業側では、「健康保険・厚生年金 保険被保険者資格喪失届」を作成し、回収した健康保険証とともに届出を行います。また、健康保険証の他に下記の証書が発行されている場合も、回収し返却をしなくてはなりません。

  • 高齢受給者証
  • 健康保険特定疾病療養受給者証
  • 健康保険限度額適用
  • 標準負担額減額認定証
  • 遠隔地被保険者証

従業員に対しては、国民健康保険への加入手続きと必要に応じて年金事務所への手続きを案内することも忘れないようにしましょう。

60歳:継続再雇用する場合

60歳以降も継続雇用する場合は、被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届の2つの届出を提出する同日得喪の手続きを行います。退職日から1日も間を空けることなく再雇用されることが条件で、この手続きを行うことで、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額や社会保険料へと変更されるため、負担軽減につながります。

同日得喪の手続きには、継続的な再雇用を証明するため、下記書類の提出が必要です。

  • 就業規則や退職辞令の写し等の退職したことがわかる書類および継続して再雇用されたことが客観的に判断できる書類(雇用契約書、労働条件通知書等)

または、

  • 継続再雇用に関する事業主の証明

さらに、継続再雇用に際し、賃金が60歳到達時の75%未満となった従業員は、高年齢雇用継続給付を申請することで、減額相当分を補うことができます。申請は、原則事業主が行う必要があるため、下記書類を管轄のハローワークに提出して申請手続きを行ってください。

  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
  • (初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 払渡希望金融機関指定届

上記書類に加え、以下の添付書類も必要となります。

  • 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
  • 高年齢雇用継続給付受給資格確認通知書(※事前に届いている場合のみ)
  • 賃金台帳や出勤簿など、支給申請書と賃金証明書の内容を確認できる書類
  • 受給対象者の年齢確認書類(運転免許証または住民票の写し)

65歳:介護保険料の徴収終了

原則として、65歳になると、第2号被保険者としての介護保険料の徴収は終了します。対象となる従業員が65歳になる誕生日の前日が属する月より、介護保険料の徴収はなくなり、以降は、従業員が住民票を置く市区町村から介護保険料が徴収されることになります。この切り替えに際しては、企業側で手続きをする必要はありません。

70歳:厚生年金保険の資格喪失

70歳(70歳に到達する誕生日の前日)になると、厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、厚生年金保険料を支払う義務がなくなります。70歳以降も継続して、同じ会社で継続して働く場合には、「厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を提出します。対象となる従業員は、勤務期間中に厚生年金保険料を徴収されることはなく、年金額にも反映されることもありません。

また、70歳以降も継続雇用となっている従業員が、老齢年金を受給するために必要な加入期間を満たしていないなどの諸条件に該当する場合においては、任意で厚生年金保険に加入することが可能です。その場合、管轄の年金事務所に「高齢任意加入被保険者資格取得申出書」を提出する必要があります。

75歳:健康保険の被保険者資格の喪失

75歳になると、健康保険の被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度に移行します。人事担当者は、「健康保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所へ提出しましょう。75歳の誕生日から5日以内が提出期限となっているため、速やかに手続きを進めなければなりません。その際、従業員の健康保険証と高齢受給者証の返却も忘れないようにしましょう。

被扶養者の社会保険に関する年齢と手続き

社会保険の被扶養者は、自分で国民保険などに加入しなくても、さまざまな保険サービスを受けることができます。被扶養者の社会保険に関する基本的な知識として、健康保険と厚生年金保険それぞれで被扶養者となる条件や必要な手続きについて解説します。

健康保険の被扶養者

健康保険に加入している被保険者の直系尊属、配偶者(※事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人など、被扶養者となる条件を満たしている人は、被保険者が加入している健康保険を利用してさまざまな医療サービスや給付金を受け取ること可能です。例えば、病気やケガ、出産や亡くなったときに支給される保険給付金は、被扶養者も支給対象となります。

健康保険の扶養対象となるためには、被保険者の範囲(※一定の親族であるほか、生計維持要件や同一世帯要件を満たしていること)に該当することと、被扶養者となる人の収入状況が「年収130万円未満」といった認定基準に該当する水準であることの大きく2つの条件を満たしていなければなりません。

被扶養者となる条件を満たした人を扶養に入れる場合、「被扶養者(異動)届 第3号被保険者関係届」を年金事務所へ提出することで、健康保険と厚生年金保険の双方同時に扶養手続きを済ませることができます。

被保険者が勤務先を退職した場合、被扶養者は、次の勤務先で「被扶養者異動届」を提出して新たに扶養加入の手続きを行うか、被扶養者だった本人が74歳以下の場合は、国民健康保険に加入する必要があります。また、被扶養者となっている人の年収が認定基準を超えた場合も、被保険者の勤務先に「被扶養者異動届」を提出し、扶養から外れなければなりません。

健康保険の被扶養者とされるのは、被扶養者の年齢が75歳になるまでの間です。75歳になると被保険者と同様に、後期高齢者医療制度に自動的に加入することになるため、仮に被保険者が在職中に被扶養者の年齢が75歳に達しても、特に手続きは必要ありません。

厚生年金保険の被扶養者

厚生年金保険における被扶養者となるための条件は、先述の健康保険の加入条件とは大きく異なります。厚生年金保険の扶養に入る条件は、以下の通りです。

  1. 年齢が20歳以上60歳未満かつ、厚生年金保険加入者の配偶者であること
  2. 年収が130万円未満であること

健康保険の扶養と大きく異なる点は、「年齢制限」と「配偶者限定」の2点にあります。まず、健康保険同様、被扶養者は「第3号被保険者」となりますが、厚生年金保険の場合、年金加入者の配偶者しか第3号被保険者にはなることができません。また、健康保険では、0歳から75歳になるまで被扶養者でいることが可能でしたが、厚生年金保険では「20歳以上60歳未満」と年齢制限が設けられています。

これらの条件を満たし、厚生年金保険の扶養に入った場合、被扶養者は老齢年金の他に、病気やケガで傷害が残ったときには障害年金が、配偶者が死亡したときには遺族年金を受け取ることができます。

被扶養者の年収が130万円を超えたときや、年齢が75歳に達して後期高齢者医療制度の被保険者になったときには、健康保険において「被扶養者異動届」が提出されていれば認められ、被保険者から外れます。

年齢別に必要な社会保険手続きを整理して、法改正や高齢者雇用にも慌てない体制づくりを目指そう!

社会保険の手続きは、従業員の年齢によって大きく変わります。特に、近年は高齢者の雇用が促進され、再雇用や継続雇用となった従業員が、保険の任意継続を希望するケースも増えています。企業は、健康保険や厚生年金保険など、各制度の加入条件をしっかりと把握し、年齢に応じた適切な手続きを行うことが重要です。法改正や社会情勢の変化にも注意を払い、常に最新の情報を元に手続きを進めるようにしましょう。(※本文は2024年11月14日時点の数値を反映しています)


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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