- 更新日 : 2024年12月12日
月平均所定労働日数とは?実労働時間との違いや計算方法を解説!
所定労働日数は、就業規則や雇用契約であらかじめ定められている労働日数で、月平均所定労働日数は、所定労働日数を1ヶ月ごとに平均した日数です。所定労働日数の決め方は、毎年の年間休日の日数によって変わります。
今回は、月平均所定労働日数の計算方法や活用される場面、所定労働日数を設定する際の注意点などについて解説します。
目次
月平均所定労働日数とは?
月平均所定労働日数は、所定労働日数を1ヶ月平均で算出するために12ヶ月で割り算することにより求められます。
ここでは、所定労働日数とはどのような日数のことを言うのか、月平均所定労働日数と実労働日数、所定労働時間との違い、月平均所定労働日数の法律上の扱いについて見ていきましょう。
そもそも所定労働日数とは
所定労働日数は、就業規則や雇用契約であらかじめ定められている労働日数のことを言います。所定労働日数には、1年間の所定労働日数を定めた「年間所定労働日数」、1ヶ月ごとの所定労働日数を定めた「月間所定労働日数」ならびに「月平均所定労働日数」があります。
例えば、1年が365日、1年間の休日日数が137日の場合、以下になります。
- 年間所定労働日数は、365日-137日=228日
- 月平均所定労働日数は、228日÷12ヶ月=19日
実労働日数との違い
労働日数には、所定労働日数という会社で定められた日数だけではなく、実際に労働した実労働日数もあります。
- 所定労働日数:就業規則や雇用契約であらかじめ定められている労働日数
- 実労働日数:社員それぞれが実際に働いた労働日数
実労働日数には有給休暇や欠勤などの日数は含まれないため、所定労働日数より実労働日数が少なくなる場合があります。
逆に、所定休日や法定休日などの本来の休日に出勤などをした場合には、実労働日数が所定労働日数より多くなる場合もあるでしょう。
所定労働時間との違い
所定労働時間は、労働基準法で定められている「原則1日8時間、週40時間」という法定労働時間の範囲内において、会社が自由に設定できる労働時間のことを言います。所定労働日数(月平均所定労働日数)は、1ヶ月の所定労働時間を計算する際に使用します。
具体的に、所定労働時間(月間所定労働時間)は次のような計算式で算出します。
所定労働時間=月平均所定労働日数×1日の所定労働時間
このように、所定労働時間を計算するために必要な項目が所定労働日数になるという違いがあります。
月平均所定労働日数の法律上の定義
月平均所定労働日数は、法律上の定義がありません。労働基準法で定められているのは、「原則1日8時間、週40時間」という法定労働時間のみになります。
月平均所定労働日数の目安
月平均所定労働日数を、日本で採用されている勤務形態ごとに説明します。
年間勤務カレンダー制の月平均所定労働日数
年間勤務カレンダー制の場合、月平均所定労働日数の目安は20日です。
〈計算方法〉
365(日)から勤務カレンダーでの休日数を差し引いて、1年間の労働日数を求めます。休日数は118日(土日+14日)程度が目安です。
365(日)-118(日)=247(日)
1年間の労働日数247(日)を12(月)で割って、月平均所定労働日数を求めます。
247(日)÷12(月)=20.583・・・(日)
このようにして、月平均所定労働日数は20日と計算されます。
月平均所定労働日数について、小数点以下の端数処理は特に定められていませんが、労働者にとって不利益にならないよう切り捨てが妥当とされています。
完全週休2日制の月平均所定労働日数
完全週休2日制の月平均所定労働日数の目安は21日です。
〈計算方法〉
365(日)から休日数を差し引いて、1年間の労働日数を求めます。1年間は約52週(365(日)÷7(日)=52.142・・・(週))なので、完全週休2日制の場合の休日は約104日になります。
365(日)-104(日)=261(日)
1年間の労働日数(261日)を12(月)で割って、月平均所定労働日数を求めます。
261(日)÷12(月)=21.75(日)
このようにして、月平均所定労働日数は21日と計算されます。
週休3日制の月平均所定労働日数
完全週休3日制の月平均所定労働日数の目安は17日です。
〈計算方法〉
365(日)から休日数を差し引いて、1年間の労働日数を求めます。完全週休3日制の場合、休日は約156日になります。
365(日)-156(日)=209(日)
1年間の労働日数(209日)を12(月)で割って、月平均所定労働日数を求めます。
209(日)÷12(月)=17.41・・・(日)
このようにして、月平均所定労働日数は17日と計算されます。
1年単位の変形労働時間制の月平均所定労働日数
1年単位の変形労働時間制の月平均所定労働日数の目安は23日です。1年単位の変形労働時間制の場合、定めた所定労働日数を12ヵ月で割って月平均所定労働日数を求めます。
〈計算方法〉
定めた所定労働日数を12(月)で割って、月平均所定労働日数を求めます。上限の280日の場合は、次のようになります。
280(日)÷12(月)=23.333・・・(日)
このようにして、月平均所定労働日数は23日と計算されます。
フレックスタイム制の月平均所定労働日数
フレックスタイム制の月平均所定労働日数は、勤務カレンダー制と同様です。
月平均所定労働日数が活用される場面
所定労働日数は、労務管理を行う上で重要な労働日数です。割増賃金の金額計算や有給休暇の付与日数、付与条件の確認などに必要となります。それぞれについて見ていきましょう。
割増賃金の計算
会社は、法定労働時間外の労働があった場合には、その労働に対して労働基準法第37条で定められた割増率を乗じた賃金を支払う必要があります。月平均所定労働日数は、割増賃金の基礎となる1時間当たりの賃金を求める際に使用します。
労働基準法第37条では、割増賃金の割増率は以下のように定められています。
- 時間外労働:25%(ただし、1ヶ月に60時間を超えた場合は50%以上)
- 休日労働:35%
- 深夜労働:25%
【計算例】
基本給:26万円、1日の所定労働時間:8時間、年間休日:128日(1年365日)の場合
月平均所定労働日数=((365日-128日)×8時間/日)/12ヶ月=158時間
時給換算すると、時給=26万円/158時間=1,645.569円≒1,646円
時間外労働が10時間、休日労働が10時間、深夜労働が3時間の場合、それぞれの割増賃金額は以下のようになります。
- 時間外労働の割増賃金=1,646円×1.25×10時間=20,575円
- 休日労働の割増賃金=1,646円×1.35×10時間=22,221円
- 深夜労働の割増賃金=1,646円×0.25×3時間=1,234.5円≒1,235円
有給休暇の付与条件や日数の確認のため
所定労働日数は、有給休暇を付与する条件や付与する日数を確認する際にも使用されます。会社は、一定の条件を満たした労働者に10日間の有給休暇を付与することが義務付けられています。労働者に有給休暇を付与する条件は以下の2つです。
- 雇い入れた日から6ヶ月経過している
- その期間の全労働日(所定労働日)の8割以上出勤している
また、有給休暇の付与日数を決める場合、週所定労働日数、または、1年間の所定労働日数(パート社員などの場合)が何日の契約であるかによって付与日数が変わってきます。
所定労働日数と付与日数の関係については下記を参考にしてください。
引用:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
有給休暇や特別休暇は所定労働日数に含まれる?
所定労働日数を求める際には、所定労働日数に含む休みと含まない休みをどのように決めるかという点をはっきりさせなければいけません。
所定労働日数は、1年間の暦日数から休みの日数を差し引くことによって求められます。この休みには一般的に休日と休暇があります。
休日とは、元々労働義務のない日のことを言います。休日には、労働基準法で定められた最低週1日の法定休日と会社が任意で定めることのできる法定休日以外の法定外休日があります。この2種類の休日については、所定労働日数を求める際の休みには含めません。
次に、休暇とは、本来は労働義務がある日に労働を免除された日のことを言います。休暇には、有給休暇、産前産後休業、育児休業、介護休業などの法定休暇と会社が任意で決めることができる夏季休暇や誕生日休暇などの法定外休暇があります。休暇に関しては、所定労働日数を求める際の休みに含めて計算しましょう。
月平均所定労働日数の計算方法
月平均所定労働日数は、年間所定労働日数を求めてそれを12ヶ月で割り算することにより案出します。年間所定労働日数は、1年間の暦日数から年間休日(法定休日と法定外休日の合計)を差し引いて求めましょう。
年間所定労働日数=1年間の暦日数-年間休日
月平均所定労働日数は、年間所定労働日数を12ヶ月で割り算することにより算出します。
月平均所定労働日数=年間所定労働日数/12ヶ月
【計算例】
1年間の暦日数が365日、年間休日が137日の場合
- 年間所定労働日数=365日-137日=228日
- 月平均所定労働日数=228日÷12=19日
よって、月平均所定労働日数は19日ということになります。
所定労働日数を設定する上での注意点
所定労働日数は労務管理上において重要な日数です。そのため、管理上のルールが設けられています。所定労働日数に関する注意点について見ていきます。
就業規則や労働条件通知書に休日の記載が必要
所定労働日数は、1年間の暦日数(365日または366日)から年間休日を差し引いて求めます。年間休日は毎年変わる可能性があるため、所定労働日数も毎年変わることになります。
ただし、割増賃金や有給休暇の計算の基礎になる所定労働日数が毎年変わるのは現実的ではありません。就業規則や労働条件通知書には休日の記載が義務付けられています。就業規則や労働条件通知書に休日を記載することによって、所定労働日数を示すことになります。
所定労働日数の上限はあくまで理論上の数値
所定労働日数は、法的には上限が決められておらず、会社が自由に決めることが可能です。しかし、法定休日は労働基準法で最低週1日と定められているため、そこから計算することは可能です。
1年間の日数を365日とすると、週数は52週になります。法定休日は52日のため、所定労働日数の上限は、365日-52日=313日(うるう年は314日)になります。
ただし、この日数はあくまでも理論上の数値に過ぎず、実際に労働者を上限日数まで働かせると、心身に不調をきたし、離職者の増加、最悪の場合、過労死にもつながりかねません。年間休日は適度に設定して、労働者にとってワークライフバランスを検討できる無理のない日数になるようにしましょう。
実労働日数が所定労働日数を超えた場合
業務の繁忙や納期のひっ迫が発生すると、休日出勤をする必要が出てきて、実際に労働した日数が所定労働日数を超えてしまう場合もあるでしょう。ただ、この休日出勤した日が法定休日であるかどうかで休日出勤手当を支払うかどうかが決まります。
法定休日に出勤させた場合には、休日出勤手当(割増率35%)を加算した金額を支払う必要がありますが、法定休日でなかった場合には、休日出勤ではないため、35%分の割増率を払う必要はありません。
実労働日数が所定労働日数に足りない場合
逆に、欠勤があったため、実労働日数が所定労働日数に足りない場合もあります。この場合に、会社が考える必要があるのは以下のような点です。
- 欠勤控除が可能かどうか
- 欠勤控除ができる場合に、欠勤控除を行う方法
基本的には、「ノーワーク・ノーペイの原則」に則って欠勤した分の控除は可能ですが、勤務形態によっては対応方法が異なったり、控除ができなかったりする場合もあるため注意しましょう。
欠勤控除が可能かどうか、その対応方法についていくつかあげておきます。
勤務形態・給与形態 | 欠勤控除 | 対応方法 |
---|---|---|
通常勤務 | 可能 | 欠勤した日時分を控除 |
フレックスタイム制 | 可能 | 清算期間の総労働時間に満たない部分だけを控除 |
変形労働時間制 | 可能 | 欠勤した日の所定労働時間分だけを控除 |
所定労働日数をきちんと設定して労務管理を行いましょう
所定労働日数は、割増賃金の計算の元となる日数です。その他にも、有給休暇の付与するための条件や付与する日数を決めるために必要な日数でもあります。所定労働日数は、その年ごとに変わる年間休日により、日数が変わります。
就業規則や労働条件通知書に休日についてきちんと記載しているか、また、所定労働日数と実労働日数の間に大きな隔たりがないかなどを定期的に確認することが必要です。その結果により、所定労働日数が問題なく設定できているかどうかを確認しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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