• 作成日 : 2022年1月21日

固定的賃金とは?非固定的賃金との違いを解説

固定的賃金とは?非固定的賃金との違いを解説

従業員に支払う給料のうち、基本給や家族手当などのように毎月一定額が支払われるものを「固定的賃金」と言います。勤務状況や労働成果などによって支給額が変わる「非固定的賃金」とは違い、固定的賃金は昇給や家族状況の変化などがあった場合にしか、支給額は変わりません。固定的賃金に変動があると、標準報酬月額の随時改定が必要な場合があります。この記事では、固定的賃金について詳しく解説します。

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固定的賃金とは?

固定的賃金とは、どのような意味合いの給与・手当なのでしょうか?どんな性質・特徴を持ち、どうやって計算されるのか、また非固定的賃金との違いは何かを知り、固定的賃金について理解を深めましょう。

固定的賃金と非固定的賃金の違い

従業員に毎月あるいは毎週、労働させた日などに支払う給料は、固定的賃金と非固定的賃金の2つに分けられます。固定的賃金は一給与計算期間に対して、いつも同じ金額が支払われる支給項目のことを言います。具体的には基本給、家族手当、住宅手当といった給与支給項目が、固定的賃金に該当します。

これに対して、給与計算のたびに支給額が変わる支給項目を非固定的賃金と言います。勤務状況や労働成果によって金額が変わる給与・手当のことです。具体的には、残業手当、能率手当、宿直手当などが非固定的賃金に該当します。

固定的賃金の算出方法

給料は、固定的賃金と非固定的賃金を合わせたものであることから、固定的賃金は以下の計算式で算出することができます。

固定的賃金=給料の金額-非固定的賃金

また固定的賃金のそれぞれを足していくことでも計算可能です。

基本給+職能手当+役職手当+家族手当+資格手当+住宅手当+通勤手当+・・・

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固定的賃金とされる給与や手当

固定的賃金とされる給与や手当には、月給や役職手当といったものが挙げられます。各給与・手当の性質・特徴は、以下の通りです。

月給・週給・日給

1カ月○○円、1週間○○円、1日○○円のように、給与計算期間に対して支払う金額が決まっている給与です。定額支給で、稼働日数や勤務状況、労働成果などによる金額の増減はありません。1カ月単位で支払う給与が月給、1週間単位で支払う給与が週給、1日単位で支払う給与が日給です。ほとんどの会社員は、月給で支払う月給制が採用されています。日給で支払う日給制は、建設業や土木業といった現場作業で多く採用されています。

役職手当

役職手当は、部長職に対しては○○円、課長職には○○円、係長職には○○円というように、一定の役職に就くことで支給対象になる手当です。「役職付」という属性に対して定額を支払う手当で、支給金額は会社内でのポジションや役割、責任の重さに応じて、就業規則や給与規程に定められた額になります。

家族手当

従業員が家族を持っていることを理由に支給する給与手当が家族手当です。扶養家族を対象にしているため、「扶養手当」の名称としている会社もあります。収入が一定金額以下の配偶者、未成年の子ども、同居している一定年齢以上の両親などがいる場合に支給する給与手当です。「扶養手当」といった名称もよく用いられます。

住宅手当

持ち家か借家といった、従業員の住居の種類によって支給される手当です。借家の場合の家賃を負担するといったように、実際にかかる費用を支給金額とする場合もあります。「持ち家手当」や「家賃手当」などの名称も用いられます。

勤務地手当

勤務地の特性に合わせて支給される手当です。物価の高い都市部に勤務している場合、反対に不便なことが多い過疎地に勤務している場合などに支給対象になります。「物価手当」や「地域手当」あるいは「山間地手当」といった名称も用いられます。

基礎単価

時間外労働や休日労働、深夜労働に対する割増賃金の算定基礎となる金額です。1時間あたりの賃金額で、月給制の場合は月給を1カ月の所定労働時間で割ることで、週給制の場合は週給を1週間の所定労働時間で割ることで、日給制の場合は1日の所定労働時間で割ることで求められます。

通勤手当

通勤にかかる費用を負担するために支給する手当です。電車賃やバス代と言った公共交通機関の費用、あるいはマイカー通勤の場合のガソリン代など、従業員の住所から会社までの移動にかかる費用に応じて支給します。

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非固定的賃金とされる給与や手当

勤務状況や労働成果によって支給金額が変わる、残業手当や能率手当といったものが非固定的賃金とされる給与・手当です。各給与の手当の性質、特徴は、以下の通りです。

残業手当

1日につき定められている労働時間を超えて労働した場合に支給される手当です。労働基準法には1日につき8時間を超える労働時間に対しては、通常賃金の2割5分を増した割増賃金を支払うことが規程されています。この割増分や、さらに加算して支給する際の手当です。

能率手当

従業員が一定以上の能率を達成した場合に支給する手当です。作業成果によって支給する出来高給のひとつで、支給することで従業員の労働意欲を高めることができます。

宿直手当

宿直とは夜間にわたり、宿泊を要する業務のことです。緊急時の対応や非常事態への備えなどのため、待機したり軽微な労働を行ったりします。宿直手当は、この宿直した回数に応じて支給する手当です。

皆勤手当

給与計算期間中、従業員が1日も欠勤することなく、遅刻や早退もせずに労働した場合に支給する手当です。人員を確保しなければ営業できない業種で多く採用されています。

精勤手当

給与計算期間中、従業員が欠勤や遅刻、早退をせず、良好な勤務状況にある場合に支給する手当です。皆勤手当と同様に、会社として人手確保が重要な業種でよく採用されます。

食事手当

就業中に食事する従業員に対して支給する手当です。会社が飲食費の全部または一部を負担するなど福利厚生を図る目的で支給される手当で、「食事代補助」や「昼食手当」、「夜食手当」、「弁当手当」と言った名称も用いられます。

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固定的賃金が変わる際の手続き

固定的賃金が変わる際には、健康保険料と厚生年金保険料の標準報酬月額の変更を伴う場合があります。この場合は月額変更届を提出して、随時改定を行います。随時改定はどのような場合に行わなくてはならないのでしょうか?随時改定が必要な場合と手続き方法は以下の通りです。

月額変更届(随時改定)が必要な場合とは?

標準報酬月額は、資格取得時決定・定時決定・随時改定によって決定されます。入社の際に行われるものが資格取得時決定、年に1回行われるものが定時決定です。定時決定は、4月から6月の3カ月間の給与を元に、7月から翌年8月までの1年間に適用される標準報酬月額を算定するために行われます。しかし、以下に該当する場合には、次の定時決定を待たずに標準報酬月額を変更しなければなりません。このことを随時改定と言います。

随時改定が必要な場合

  1. 固定的賃金が変動したとき
  2. 変動前の標準報酬月額と、変動後の3カ月の給与による標準報酬月額で、2等級以上の差が生じるとき
  3. 変動後の3カ月の賃金支払い基礎日数が、各月とも17日以上あるとき

これら3つの要件をすべて満たす場合、随時改定を行う必要があります。残業手当などで給与に2等級以上の差が生じても、固定的賃金に変動がない場合は随時改定を行う必要はありません。

月額変更届(随時改定)の手続き方法

随時改定は、月額変更届を提出して行います。該当する従業員について月額変更届を作成し、日本年金機構に提出します。手続き方法は以下の通りです。

提出書類健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届
提出期限変動により随時改定が必要になって以降、速やかに
提出先事業所の所在地を管轄する年金事務所

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

固定的賃金について正しく理解し給与計算を行おう

従業員に支払う給与は、固定的賃金と非固定的賃金から構成されています。固定的賃金は一給与計算期間に対して、一定の金額が支給される給与・手当です。勤務状況や労働成果によって増えたり減ったりせず、定められた金額での支給になります。月給・週給・日給や役職手当、家族手当などが固定的賃金に該当します。

固定的賃金に変動があった際には、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を変更しなければならない場合があるので注意が必要です。また、要件に該当する固定的賃金の変動時には、随時改定を行う必要があります。固定的賃金をよく理解し、正しく手続きや給与計算が行いましょう。

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よくある質問

固定的賃金とは何ですか?

一定の金額が支給される給与・手当のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

固定的賃金に含まれる給与にはどういったものがありますか?

月給・週給・日給や役職手当、住宅手当、家族手当などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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