• 更新日 : 2023年10月27日

262の法則とは?人材育成での活用ポイントや343の法則との違い

262の法則とは?人材育成での活用ポイントや343の法則との違い

262の法則とは、どの組織でも人材の比率が「優秀な2割「普通の6割」「貢献度の低い2割」で構成されるという考え方です。階層ごとに適切なマネジメントや人材育成を行うことで、組織全体の成長に役立ちます。

本記事では262の法則の意味や343の法則・271の法則との違い、各層ごとのアプローチ方法を解説します。

262の法則とは?

262の法則とは、どのような組織でも、人材の比率が「成果を出す2割」「平均的6割」「意欲の低い2割」に分かれるという理論です。さまざまな組織の事例を通して確認された経験則とされています。

意欲のない下位層の2割を切り捨てて、残りの8割にすれば生産性が高まるわけではありません。メンバーを変えても「2:6:2」のバランスは保たれます。成果を出す人材だけの組織にしても、いつの間にか「2:6:2」の比率に戻るということです。

262の法則と似た法則に「343の法則」と「271の法則」「パレートの法則」があります。262の法則との違いについてみていきましょう。

343の法則との違い

343の法則とは、組織内の人材比率が「好意的で関心が強い3割」「無関心な4割」「好意的ではない3割」に分かれるという理論です。

262の法則は組織を構成する人材のスキルや働く意欲などで分類し、組織に所属している人の性質を表すものであるのに対し、343の法則は特定の事象や要素に対する関心度や好意の比率を示しています。

271の法則との違い

271の法則とは、組織内の人材比率が「気が合う人が2割」「どちらでもない人が7割」「気が合わない人が1割」に分かれるという理論です。

組織内の人間関係を表す指標であり、組織の中では自分の考え方や行動に賛同してくれる人が2割いて、7割はその場の状況で変わり、あとの1割の人は何をしても自分とは気が合わないということです。

パレートの法則との違い

パレートの法則とは、結果の8割は、それを構成する2割の要素が生み出しているという理論です。「80:20の法則」ともいわれ、組織・集団の評価・報酬などが一部の人材に依存するという経験則です。262の法則のもとになった法則ともいわれています。

262の法則が組織内の人材に焦点を当てるのに対し、パレートの法則はビジネスシーンだけでなく、幅広い事柄に当てはめられる点が異なります。

例えば、パレートの法則は、次のように組織や経済などさまざまな場面に適用が可能です。

  • 世の中にある資産の8割は、2割の富裕層に集中している
  • 会社の売上の8割は、2割の社員が貢献している
  • 仕事の成果の8割は、全体の業務時間のうちの2割の時間で生み出されている
  • 売上の8割は、2割の商品から発生している

パレートの法則は商品開発やマーケティングなど、さまざまな分野で活用されています。

262の法則をベースにマネジメントを成功させるには?

262の法則は、組織マネジメントや人材育成にも活用できます。「2:6:2」の各層に適したアプローチを行うことで、適切なマネジメントや人材育成が可能です。

上位に当たる2割の層には、モチベーションを向上させるために難易度の高い課題を与え、マネジメント能力の向上を目指すのが効果的です。

中間層の6割には、問題解決能力を育て、チームを編成するアプローチを行います。下位層の2割はパフォーマンスを発揮できない原因を探し、課題を抽出して目標を設定することが大切です。

このあとは、それぞれのアプローチを詳しくみていきましょう。

上位2割への活用方法

上位2割の人材はもともと優秀で、特別な指導をしなくても、自ら課題を解決する能力があります。意欲的に取り組み、自ら積極的に学んで成長していくでしょう。

組織への貢献度が高いため、モチベーションが低下すると組織に与える影響は大きいものとなります。そのため、モチベーションを高めるために難易度の高い課題を出すことも必要になるでしょう。

また、いずれ組織をまとめる立場になる可能性が高いため、マネジメント能力の向上に向けた施策も重要です。

詳しくみていきましょう。

課題の難易度を高くする

上位2割の人材は、自ら課題を見つけ、解決できる能力があります。組織全体に共通の課題を与える場合、中間層や下位層に合わせたレベルになり、上位層にとって解決は容易です。

そのため、上位層には他の人材よりも目標を高く設定し、やや難易度の高い課題を与えることが効果的です。難しい課題を与えることでモチベーションを高め、クリアすることでさらなる成長を促します。

例えば、新規事業を拡大する際のプロジェクトリーダーを任せるといったことがあげられます。新しいことに挑戦することにモチベーションを高め、プロジェクトの成功により成長し、さらに高みを目指すモチベーションを獲得するでしょう。

マネジメント能力向上への手厚いサポート

上位層は、いずれ昇格し、組織のリーダーになる存在です。すでにそのような地位にある人材もいるでしょう。ただし、課題解決力や成果を上げる実力はあっても、部下のマネジメントも得意であるとは限りません。

将来の組織を牽引する上位層には、マネジメント能力の向上に向けた手厚いサポートをすることが重要です。マネジメント能力の向上には、意思決定力や論理的思考力、部下との信頼関係を築くコミュニケーション力などが求められます。

上位層が高いマネジメント力を身につけることで部下の士気を高め、組織を成長に導くでしょう。

貢献度・頑張りを可視化しやすい評価制度の構築

上位層に活躍してもらうためには、貢献度・頑張りを正当に評価する制度の構築が必要です。目標値に対しどれぐらい成果を出しているかを可視化できる制度を設ければ、モチベーションアップや生産性向上にもつながります。

貢献度に応じて昇給や昇格、表彰など、能力や成果に見合った待遇も用意しなければなりません。パフォーマンスの発揮と高い貢献があり、それに対する報酬が全体に見えるようになることで、他の社員のお手本としての役割も果たします。

中間6割への活用方法

中間6割の層は人材の多くを占め、組織の成長に大きな影響を与えます。組織全体の生産力を高めるためには、中間層へのアプローチが重要です。

中間層への活用方法をみていきましょう。

課題・解決方法・目標達成のロードマップを明確化する

中間層は目の前の仕事に集中しがちであり、組織全体の目標と課題を示し、自分の位置を明確にしてもらう必要があります。また、上位層と比べて課題を見つける能力や、自主的に課題に取り組む姿勢が不足している場合も多く、自ら課題を見つけて解決できるよう指導していくことによって、パフォーマンスを発揮しやすくなります。

目標・課題の設定と自身の役割を明確にし、目標達成に向けて自走できるロードマップを示すことが必要です。目標に向かって主体的に行動できるような環境を与えましょう。

まず、上司が目標を設定し、達成度を評価してフィードバックするという過程を繰り返します。フィードバックで新たな課題・目標が作られ、それを達成するというサイクルのなかで、課題解決力を身につけていくでしょう。個人が成長するとともに、組織の発展・成長へとつながります。

中間6割のメンバーでチームを構築する

中間層には自主的に課題に取り組む姿勢が必要です。中間層のみでチームを作ることで、自ら課題を見つけ、解決していく力を身につけられます。メンバー間の能力が近く、リーダーとなる存在がいないため、活発な意見交換を交わしてお互いに試行錯誤しながら課題を解決していくでしょう。

チームを編成することで、そのチームの中で262の法則が働き、上位層20%を生み出すこともできます。

このアプローチで各自のパフォーマンスが向上し、中間層全体のレベルアップが期待できるでしょう。

マネージャー層からアドバイスを豊富に行う

中間層には個別の細やかなサポートが必要です。目標が明確でない、行動力がない、積極性に欠ける、課題や解決策を見つけるのが苦手といった傾向のある中間層には、マネージャー層から個別に適切なアドバイスをしていかなければなりません。

メンター制度や1on1ミーティングなどの施策で上司や先輩から豊富なアドバイスを行うことで、自ら課題を見つけながら目標を設定できるようになります。

下位2割への活用方法

成果を出せない下位2割層には、パフォーマンスを発揮できない原因を特定するアプローチを行います。現状と課題を把握し、目標設定をサポートしましょう。

下位層への活用方法について、解説します。

現状と課題の把握

まず、下位層がパフォーマンスを発揮できない原因・課題を特定します。1on1ミーティングや人事面談などで丁寧なコミュニケーションを行い、課題を見極めましょう。

課題を特定したら、解決策を考えます。能力と業務が合っていない場合や人間関係が悪いといった原因があってモチベーションが低い場合は、異動や配置転換、職場環境の改善などの施策も考えましょう。

目標設定をサポートする

下位層も中間層と同じく、課題を見つけたり、解決に向けた行動を起こしたりするのが苦手な傾向にあります。的確な指示と管理を行い、簡単な目標や課題を設定して本人の役割・業務を明確にしましょう。

行ってほしいことをわかりやすく伝え、確実に行動してもらいながら、進捗を確認しつつサポートします。

目標を達成できたら、プロセスや成功した理由などを話し合い、気づきを促しましょう。成功体験を重ねることでモチベーションや能力が高まるため、まずは達成が容易な目標を設定し、達成感を得ることが大切です。

下位2割でもチームを構築する

中間層と同様に、下位層でも下位層のメンバーによるチームを作りましょう。いつもの職場ではパフォーマンスを発揮できない場合でも、上位層や中間層のいないチーム内では活躍できるチャンスがあります。

自分と同じレベルの人材が集まることで、仕事がやりやすくなり、相互の学びと成長の機会が与えられるでしょう。

下位層のチームも中間層の場合と同じく、その中から2割の上位層が生まれます。 それらの人材がリーダーとなり、チームメンバーの成長を促します。

262の法則の人材育成での活用

262の法則は、人材育成にも活用できます。3つに分けられた層ごとに、能力に応じた育成計画を進める方法です。

詳しくみていきましょう。

割合ごとに開発する能力を変える

上位2割層は、マネジメント力を高めるための教育を行ったり、自主的に取り組みたい業務・新事業を提案してもらい、中心的役割を担当してもらったりする方法が向いています。

中間6割層は定期的に業務内容の振り返りを行って内省を促し、丁寧にフィードバックします。自分で課題を見つけ、行動する力を高めるでしょう。

下位2割層は、1on1ミーティングや適性テストなどを実施して強み・弱みを見極め、強みを活かし、弱みを克服するための施策を実施するとよいでしょう。

配置転換による割合の調整

中間層や下位層は、業務が本人の適正に合わない、もしくは人間関係が悪いために能力を発揮できないのかもしれません。そのため、配置転換をすれば実力を発揮し、モチベーションを高めて意欲的に働ける可能性があります。

1on1ミーティングや人事面談などを活用して悩みや要望などをヒアリングし、必要に応じて異動や配置転換を行いましょう。

262の法則は人間関係にも活用できる?

262の法則は人間関係にも応用できます。法則の内容を人間関係に当てはめると「自分に好意的な人が2割」「どちらでもない人が6割」「好意的ではない人が2割」という割合が考えられます。どの組織でも、自分に対して好意的ではない人が2割は存在するということです。

そう考えると、人間関係が多少悪いことも仕方がないと考えられます。どれだけ友好的に振る舞っていても、必ず一部の人からは良く思われない可能性があります。下位の2割層に気に入ってもらおうと尽力しても、どこかでまた新たに2割層が出現するかもしれません。

そうであれば、自分に好意を持つ人とのコミュニケーションを大切にしていくことが、人間関係を良くしていくコツだといえるでしょう。

262の法則をベースに施策を行う場合の注意点

262の法則をベースに施策を行う場合は、層に分けていることや、従業員がどの層に分けられているのかを知られないことが大切です。

また、262の法則を活用する場合でも、成果に応じて評価するようにしましょう。

注意点について、詳しく解説します。

層ごとの特徴を決めつけない

262の法則を活用する際は、各層に分けた人材をそれぞれの特徴に決めつけないようにしましょう。

すべての人を上位2割の優秀な人材にすることはできません。上位層だけの組織にしても、その中に262の比率が生まれます。

そのため、層をなくそうとするのではなく、一人ひとりを尊重し、各層ごとに適切なアプローチを行いましょう。

従業員が割り当てられている層を伝えない

マネジメントの際は、262の法則で従業員を割り当てていることや、従業員がどの層に属しているかを伝えないようにしましょう。下位層の人材が自分の位置を知ってしまうと、自信をなくし、自分は会社に必要とされていないと感じます。モチベーションを下げ、離職につながる可能性があるでしょう。

上位層ばかりを過度に優遇するようなマネジメントも、中間層以下のモチベーションやエンゲージメントに影響します。

従業員への配慮は忘れないようにしましょう。

あくまで評価は成果をベースに行う

262の法則を活用する際も、評価はあくまで成果をベースに行いましょう。成果に関係ない評価や待遇にすると、成果を出している上位層はモチベーションを失います。成長意欲をなくすことにもなるでしょう。

262の法則の分類によるマネジメントを行いながらも、目標に向けたプロセスと結果を重視し、成果に応じた評価を行ってください。

262の法則をマネジメントに活用しよう

262の法則を活用してマネジメントや人材育成を行うことで、組織の成長を促せます。適切なアプローチは各層のパフォーマンスを上げ、モチベーションやエンゲージメントを高めるでしょう。組織全体の生産性向上につながります。

262の法則による分類は従業員に伝えないことが大切です。上位層の優遇や、下位層へのいき過ぎた教育も避けましょう。一人ひとりを尊重し、成果に基づいた評価をしていくことが求められます。


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