- 更新日 : 2024年11月1日
タイムカードの保管期間は?起算日や対象者、保管後の取り扱いについて解説
タイムカードは、従業員の勤怠管理に広く利用されている方法です。また、タイムカードは、労働関係に関する重要な書類として、保存期間が定められているため、法定の期間保管しなければなりません。当記事で解説する起算日や対象者などを参考にして、適切にタイムカードを保管し、正確な勤怠管理に役立ててください。
目次
タイムカードとは
タイムカードは、従業員の勤怠管理に用いられる方法のひとつです。ここでは、タイムカードの基本知識を解説します。
従業員の出勤・退勤時刻の記録
タイムカードは、従業員の出退勤時刻を記録するために用いられます。生体認証方式やICカード方式など、様々な種類がありますが、カードをタイムレコーダーに差し込んで印字する形式が一般的です。タイムカードに記録された出退勤時刻によって、労働時間の把握が可能となるため、労働時間を基にした賃金計算には欠かせません。
法定三帳簿のうち出勤簿に該当する
労働基準法では「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を法定三帳簿として定め、作成と保管を義務付けています。出勤簿は、従業員の出勤日や、出退勤の記録、労働日数などを記載した書類であり、タイムカードに近い存在です。
しかし、タイムカード単体では、出勤簿とはなりません。タイムカードと実際の労働時間の間に差が生じている場合があるからです。ただし、作業日報や残業命令書などの資料と照合することで、代用が認められる場合もあります。
労働基準法により記録と保管が義務づけられている
タイムカードは、労働基準法第109条に定める「労働関係に関する重要な書類」に該当し、記録の保存と保管が義務付けられています。なお、労働関係に関する重要な書類には、タイムカードのほかに雇用契約書や労使協定書なども含まれます。
紙・電子データなど形態を問わない
タイムカードは紙製が主流ですが、デジタル化が進んだ昨今では、電子データの形式を取っている場合もあります。タイムカードを電子化することで、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でも打刻できるようになり、柔軟な働き方にも対応可能です。また、電子化により保管スペースが不要となるため、保管コストを削減する効果も期待できます。
タイムカードの保管期間
タイムカードはただ保管するだけでなく、定められた期間保管することが求められています。タイムカードの保管期間について解説します。
2020年の労働基準法改正により保管期間は5年
タイムカードの保管期間は、従来3年間でした。しかし、2020年の改正労働基準法施行によって、5年間に保管期間が延長されています。これは、民法の改正を受けて、賃金請求権の消滅時効が5年となることに合わせたものです。ただし、経過措置として当面の間は、3年間の保管で足りるとされています。これは、賃金請求権も同様です。
賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は7年
出勤簿(タイムカード)などの法定三帳簿は、労働基準法第109条により、いずれも5年間(当面の間は3年間)の保管が必要とされています。ただし、三帳簿のひとつである賃金台帳は、所得税額の算出に用いられる源泉徴収簿の役割を兼ねることが可能です。この場合には、本来の5年(3年)ではなく、申告書等の提出を行う期限の属する年の翌年1月10日の翌日より7年の期間の保管が必要となります。誤って5年(3年)で廃棄しないようにしましょう。
タイムカードの保管期間の起算日
タイムカードの保管期間には、期間の初日となる「起算日」が定められています。任意の日から期間を計算することはできません。直接雇用と派遣社員の場合に分けて、それぞれの起算日を見ていきましょう。
直接雇用の場合
直接雇用の従業員の場合には、最後の記録をした日(完結日)を起算日とする5年(3年)がタイムカードの保管期間です。具体的には、従業員が最後にタイムカードに打刻をした日が起算日として扱われます。しかし、タイムカードの記録に基づく賃金の支払い期日が記録の日より遅い場合には、当該支払期日から、5年(3年)が保存期間となります。
派遣社員の場合
派遣社員の場合も直接雇用と同様に、完結日を起算日として5年(3年)がタイムカードの保管期間です。ただし、派遣社員の場合における完結日は、派遣契約が解消された日となります。直接雇用との違いに注意しましょう。また、記録に基づいて支払うべき賃金の支払い期日が記録の日より遅い場合には、同様に支払期日が起算日となります。
タイムカードの保管対象者
タイムカードの保管対象者について解説します。解説を参考に、保管漏れのないようにしてください。
退職者を含め全雇用形態が対象
タイムカードの保管は、退職者を含めたすべての雇用形態の従業員を対象としています。アルバイトやパートタイマーなどの短時間労働者や、契約社員のような有期雇用労働者であることを理由に、保管の対象から外すことはできません。
管理監督者や、裁量労働制の従業員は例外
すべての雇用形態が、タイムカードの保管の対象となりますが、管理監督者や裁量労働制の従業員は例外です。これらの者はタイムカードを5年間(3年間)保管する必要はありません。ただし、管理監督者等であっても、会社は勤怠管理を行うことが義務付けられているため、一定の期間はタイムカードを保管するようにしておきましょう。
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タイムカードの保管違反に関する罰則
タイムカードの保管義務に違反した場合には、どのような罰則が科せられるのでしょうか。適用される具体的な罰則を解説します。
タイムカードの保管を怠った場合
タイムカードを定められた期間保管しなかった場合は、労働基準法第109条違反となり、同法第120条によって、30万円以下の罰金が科せられます。タイムカードは、労働関係に関する重要な書類であるため、期間中は誤って破棄などしないようにしましょう。
裁判で賃金未払いとみなされた場合
タイムカードを保管していなければ、正確な労働時間が把握できません。賃金は労働時間を基にして計算されるため、保管を怠ったことで正確な賃金が計算できず、未払いが起きてしまう可能性もあります。
賃金の未払いは、労働基準法第24条違反であり、同法第120条によって30万円以下の罰金が科せられます。また、タイムカードの保管を怠ったことで、割増賃金の対象となる時間外労働時間等が把握できず、割増賃金が支払われない場合も考えられるでしょう。このような場合には、割増賃金の支払いを定めた労働基準法第37条違反となります。労働基準法第37条違反の場合には、同法第119条より、6か月以下の懲役または、30万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意が必要です。
タイムカードを正しく保管するメリット
タイムカードの保管には、手間がかかり面倒と感じてしまうかもしれません。しかし、タイムカードを正しく保管することは、会社にとってメリットをもたらします。
労働基準監督署の調査に対応できる
労働基準監督署は、従業員の申告などに基づいて、会社が労働関係法令の違反を犯していないか調査を行いますが、このような調査は「臨検」と呼ばれます。臨検の際には、労働者名簿や賃金台帳をはじめとする労働関係の書類の提出を求められますが、タイムカードの提出が求められる場合もあります。タイムカードを正しく保管していなければ、労働時間の証明ができず、会社が不利な立場に置かれてしまうでしょう。
助成金の申請に役立つ
助成金の申請には、添付書類として出勤簿やタイムカードの提出が求められる場合が多くなっています。これは、対象となる従業員の出勤や労働時間の状況を確認するために必要とされるからです。タイムカードを保管していなければ、必要書類を揃えることができず、助成金の申請ができない可能性もあります。
「キャリアアップ助成金」「人材開発支援助成金」などは、対象となる従業員の出勤簿(タイムカード)の提出が求められます。これらの助成金を活用したいと考えている場合には、しっかりとタイムカードを保管しておきましょう。
参考:
タイムカードの保管期間が過ぎたら
タイムカードは、期間中の適正な保管が求められます。では、保管期間が経過したタイムカードは、どのように処分すればよいのでしょうか。
個人情報は適切に処分する
タイムカードには、打刻時刻のほかにも社員コードや従業員の氏名、所属部署などが記載されている場合もあります。タイムカードに個人情報が記載されている場合には、個人の特定につながる形で復元できないように処分することが必要です。処分法としては、シュレッダーにかけるほか、焼却や溶解処分が考えられます。自社で処理できない場合には、機密文書の処理業者に依頼しましょう。
処分した記録を残す
タイムカードのような個人情報が記載された書類を処分する際には、処分した記録を残しておかなければなりません。処分した年月日や処分の担当者、処分方法などを記録しておくことで、後のトラブルを防止できます。また、外部に委託する形で処分した場合には、処理業者に確かに処分したことを証する証明書等を発行してもらいましょう。
タイムカードを適切に保管し正しい勤怠管理を
タイムカードは、従業員の出退勤時刻を記録する勤怠管理上欠かすことのできないものです。また、助成金の申請や労働基準監督署の調査対応にも必要とされます。その重要性から法定の保管期間も定められており、違反には罰則も予定されています。当記事の解説を参考に、対象者や保管期間をしっかりと理解し、正しくタイムカードを保管するように努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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