- 更新日 : 2023年10月24日
労働基準法で定められている休日について – 時間・日数・ルールを解説!
慌ただしい毎日、休日を楽しみに働いているという社会人は少なくないのではないでしょうか。
その一方、法律で休日がどのような扱いになっているかについては、意外と知られていません。
この記事では、労働基準法で定められている休日の意義、会社での定め方、休暇との違いなどについて解説していきます。
労働基準法で定められている休日とは
休日とは、法律的にはもともと労働義務がない日のことを意味しています。一般的な休日は、土曜日、日曜日ですが、法的な根拠はあるのでしょうか。
労働基準法における休日は週を単位に定められている
労働基準法では、
「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」
と、法定休日についてのルールを定めています(法35条1項)。
「週休制の原則」と言われるもので、使用者には法律上の休日としては週に最低1日の付与を義務づけています。
ただし、例外として、特定の週に休日がなくても「4週間を通じ4日以上の休日」を確保すればよいとしています(法35条2項)。この例外は変形休日制と呼ばれています。
ある週に休日がまったくなくても、他の週に2日あるなど、4週間を平均して週1日、休日があればよいということになります。
特に土曜日や日曜日を休日としなければならないと定めているわけではありません。
年間休日数については定められていない
法律的には、会社が指定する休日を公休と呼びますが、一般的には土日、祝日を含め、年間120日前後としている企業が多いと思われます。
しかし、労働基準法では、特に年間休日数を定めているわけではありません。
労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律ですから、週休制の原則を守っていれば、企業が独自に就業規則などで休日を増やしてもよいことになります。
その一方、労働時間の限度を、原則として、1週40時間以内、かつ、1日8時間以内としています(法32条)。これを法定労働時間と言います。
労働基準法では週休2日制を想定しており、年間365日(52.14週)を考慮すれば、年間で105日が公休を含めた年間休日の最低ラインとなります。
労働基準法において休日は時間単位で決められている?
休日は、何時から何時まででなければならないのでしょうか。
労働基準法では、時間単位で定めているわけではありません。ただし、厚生労働省の通達(法令解釈)では、1回の休日は、「暦日によって午前0時から午後12時までの24時間」としています(昭和23年4月5日基発第535号)。
休日や休暇の種類と違い
一般的に「お休み」という言葉を使うことがありますが、休日をはじめ、法律上は様々な用語があり、厳密には違いがあります。
所定休日と法定休日の違い
所定休日とは、会社が就業規則などの社内の服務規律で定めた休日のことであり、公休のことを指します。
法定休日は、前述のように労働基準法によって毎週最低1日の付与が義務づけられている週休制の原則による休日を意味します。
休日と休暇の違い
休日は、もともと労働する義務がない日ですが、休暇は本来、労働義務がある日(労働日)の労働義務を企業が免除している休みのことです。
法定休暇と特別休暇の違い
休暇にも法定休暇と特別休暇のような種類があります。
法定休暇は、労働基準法で定められた年次有給休暇や育児介護休業法で定められた子の看護休暇など、法律に付与義務が定められた休暇を意味します。
一方の特別休暇は、それ以外の企業が就業規則などで独自に定めた休暇のことです。一般的には、次のようなものがあります。
- 慶弔休暇
従業員本人や近親者の慶事や弔事に対して特別に付与する休暇です。 - リフレッシュ休暇
従業員に心身ともにリフレッシュしてもらうことを目的として特別に付与する休暇です。
振替休日と代休の違い
振替休日と代休は、一般的には混同して使用されることも少なくないと思われます。しかし、法的な意味はまったく異なります。
振替休日は、就業規則などであらかじめ特定されていた休日を事前に他の日を特定して振り替えた場合の休日を意味します。
もともと設定されていた日は休日でなくなるため、労働させるために労働基準法に基づく「時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)」の締結や割増賃金の支払いも必要ありません。
代休は、事前の振替を行わず、あらかじめ特定されていた休日に労働させ、後日付与する休日のことを意味します。
労働を命じた休日が法定休日であれば、休日労働となり、その前提として36協定の締結が必要であり、割増賃金も支払わなければなりません。
労働基準法における休日の運用ルール
労働基準法では、休日の運用についてどのようなルールを定めているのでしょうか。ポイントを確認していきます。
残業が必要な場合は時間外労働協定(36協定)を締結する
まず、労働基準法では、前述のように法定労働時間を1日8時間・1週40時間以内としています。
法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合、労使で36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
また、雇用契約書や就業規則などに「36協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命じる」旨を明記することも必要です。
なお、いわゆる残業は、厳密には会社が就業規則などで定める所定労働時間を超える労働を意味します。会社によっては、法定労働時間を下回る1日7時間を所定労働時間とするところもあります。
こうしたケースでは7時間を超えた労働は残業になりますが、8時間までは、あくまで法定内であり、時間外労働とはなりません。
労働基準法の休日での出勤対応
休日についても労働基準法で定める法定休日に労働させる場合は、休日労働となり、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要になります。また、雇用契約書や就業規則などに休日労働させる旨を明記しなければならないことは、時間外労働の場合と同様です。
労働基準法の休日に関して自社独自で変更する場合
労働基準法では、休日の特定までは求めていません。しかし、法定休日を特定することが法の趣旨に沿うことから、通達では具体的に一定の曜日に定めることとされています(昭和63年3月14日基発150号など)。
休日は就業規則の絶対的必要記載事項であり、休日を変更する場合、就業規則の変更が必要となります。
しかし、労働条件でもある休日の変更が労働者にとって不利益変更に該当する場合は、就業規則の一方的な変更は合理的な理由がなければできません。
合理的な理由が認められるかどうかは、個々の事案ごとに判断されますが、判例では、労働者の大部分の合意の有無、不利益の程度、変更の必要性の有無、代償措置・経過措置の有無などが判断基準とされています。
割増賃金の取り決め
時間外・休日労働させた場合、割増賃金の支払いが必要になります。
時間外、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働させた場合には2割5分以上、法定休日に労働させた場合には 3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
割増賃金についても就業規則などに明記しておく必要があります。
労働基準法の休日において違反した場合の罰則
法定休日を付与しなかった場合、労働基準法の罰則として6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金を科される可能性があります(法35条1項、法119条1号)。
また、36協定を届け出ず、時間外労働・休日労働をさせたり、割増賃金を支払っていなかったりした場合も同様に罰則の適用を受けることがあります。
振替休日・代休の取得についての取り決め
振替休日は、「あらかじめ」休日を「休日ではない」とする制度ですが、この「あらかじめ」については、何日前までに行わなければならないという基準は法律上ありません。
基本的に割増賃金の支払義務は生じませんが、週をまたいで設定した場合、法定労働時間である40時間を超える可能性があり、割増賃金の支払義務が発生します。
こうしたことから、就業規則などでは振替休日の規定を設けて明確にしておく必要があるでしょう。代休についても振替休日との相違を周知するために同様に規定しておくことが大切です。
労働基準法に依拠した休日の定め方
通達では、法定休日は具体的に一定の曜日に定めることとされています。従業員の予定への配慮だけでなく、労務管理上のリスクもあります。
労働基準法では、完全週休2日制を想定している一方で週1日を法定休日としています。割増賃金の支払義務がある休日労働は、法定休日に対して適用されるものです。
したがって、法定休日を定めていない場合に従業員が1週間月曜日から日曜日まで全て出勤したケースでは、2日の休日出勤のうち、一方は時間外労働として2割5分増、もう一方は休日労働として3割5分増となります。
どちらが休日労働の扱いとなるのか労使間で認識に齟齬が生じ、トラブルになるリスクがあります。
また、従業員の勤務状況を逐一確認しなければならないという煩雑さも生じます。
こうしたことから、法定休日は明確に特定しておくほうがよいでしょう。
具体的な定め方としては、まず、1週間の起算日を特定します。起算日を就業規則などで決めない場合は、暦に従って法定休日は日曜日ということになります。
なお、業務の関係で毎週休日を設定することができない場合は、変形休日制を採用することが認められていますが、その場合、変形期間の起算日を定めておく必要があります。
決めていなければ、平均して週1日の休日が確保できないケースがあるからです。
次に法定休日を特定します。全社共通で休日を特定する場合、サービス業など、業種の特性を考慮し、業務が比較的繁忙ではない曜日を法定休日とします。
従業員ごとにシフト制を採用する場合も、あらかじめ、それぞれ法定休日を特定し、そのうえで所定休日を定めるとよいでしょう。
法定休日が決まれば、就業規則に明文化します。次のような条文が考えられます。
第〇〇条 休日は以下の通りとし、1週間の起算日は土曜日とする。
① 土曜日及び日曜日
② 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
③ 年末年始(12月〇日~1月〇日)
④ 夏季休日(〇月〇日~〇月〇日)
⑤ その他会社が指定する日
2.前項の休日のうち、法定休日は土曜日とする。
この例では、土曜日を起算日とすることで仮に土曜日に出勤を命じ、振替休日をすることになった場合でも、その週の月曜日から金曜日で振り替えることができます。これによって週をまたぐことがなく、割増賃金を支払う必要がなくなります。
休日の法的なルールについて知っておこう!
労働基準法で定められている休日の意義、会社での定め方、休暇との違いなどについて解説してきました。
意外と知られていない「お休み」の法的なルールですが、労務管理する側だけでなく、働く従業員も知っておくことが大切です。
よくある質問
労働基準法で定められている休日の定義について教えてください
労働基準法上、明記されていませんが、法解釈上、もともと労働義務がない日のことを意味しています。詳しくはこちらをご覧ください。
休日と休暇の違いについて教えてください
休日と異なり、休暇は本来、労働義務がある日(労働日)の労働義務を企業が免除している休みのことです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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